「パピルスとは上手くいったか?」
「うん。サンズとの会話はどうだった?」
「私の方は大丈夫さ。本当にただ話をしただけだよ。」
本当に、少し死にかけたけど。
あの後の情報共有。
この世界についてのあらすじを頭に叩き込まれた。何が起きて、何をすべきか。Friskのためにと思って聞いていたがまぁ重たい。サンズ曰くFriskはパピルス同様に大切な存在だからと言って笑っていた。例の一人目の少女は大嫌いだがと目を光らせていたのも事実。
代わりに私のこれまでの経験を話した。前世やまたその前世、何をしたかされたか。左手の4本しかない指を見せて切られちまったんだと言うとおぉ…と引かれた。首輪や本の事は隠しておいた。なんせ本の中には彼女がいるからな。
これで我々は完全なる協力者だ。サンズと私の間において裏切れば殺し、殺されるという関係になったと互いに承諾した。
最初はPルートだと彼は言った。
私の妙な部分に関しても話をした。私はFriskのように、戦闘用の画面に切り替わらないこと。私が誰かと戦闘になっても生身でダメージを受けるしFriskと一緒じゃないとソウルは出てこない。そして私の体力値が異常であるということも言っていた。きっと前世から引き継がれたのだろうと言うと納得したがLv1でFriskのLv20の体力値を超えてるなんてな、と笑いながらもどこか疑っていた。
「無茶をし過ぎたからかな。」
「さぁ…ほれ、汚れてるけどハンカチ貸すよ。」
「え、どういう吹き回しだい?」
「…アンタ気づいてないのか?泣いてるんだ。」
「………あ。」
前世でもこんな事があった気がする。ハンカチを受け取り涙を拭う。拭っても拭ってもそれは溢れて止まらない。1度溢れたら流れ続けるかのように、私は声に出さずに泣いていた。サンズがはぁ、と珍しくため息をついてその後にへへ、と笑う。
「ちと重かったんじゃないか?転生っていう重荷は誰にも言えないし辛いこともあったんだろう?」
「そう、かも。今までに、誰に、も。」
言っていないや。
それで会話は終わる。私が落ち着いた後に瞬間移動でFriskの元に戻り現在にいたる。
パピルスとのデートイベも無事に終わったらしく私達が話し込んでいる間に随分仲良くなっていた。パピルス曰く、アンダインが来るから気をつけてと。
アンダイン。不死身のヒーロー。ニンゲンを殺そうとしてくる女騎士。槍を使い、ソウルを緑色にする事で"逃げられなく"する。
サンズが言うには逆にホットランドまで逃げれば勝ちだから頑張れよとのこと。そこまでは私が守るしかない。
「よう、元気にしてるか?」
「さっきぶりだね。」
「今度はガキンチョの方に用があるんだ。オイラと二人きりの熱いデートに行かないか?」
「誘い方がまるでおっさん。」
「んふふ、仲良くなったね二人とも。」
げし、とスリッパで足を踏まれる。その様子を見ながらFriskは楽しそうに笑った。パピルスと話してから少しづつ感情が顕になっている気がする。その笑顔をみて私も頬が緩んだ。
「行ってこい。私はサンズがサボっていたここで待っているからな。」
「分かった。」
「グリルビーズに、行くか。」
手を繋いで瞬間移動した二人。仲睦まじいと思いつつ私は小屋に楽な姿勢でもたれる。本をパラパラとの開いて一つの人物の名前を呼んだ。
「Chara。」
赤いぱっちりした目に口元の笑顔がチャーミングな少女。Gルート、と関わりのある重要人物。ナイフを持ってモンスターを殺していく。プレイヤーの意思さえも無視して殺して。
そんな彼女は既に死んでいる。バターカップの花で自殺したのかはたまた病か、そこは詳しくないがそんな彼女がFriskのソウルとごっちゃになって最終的に乗っ取る。それが、Chara。
「やっと、呼んだか。」
*
「呼び出したということは殺して欲しい奴がいるのか?あの時はママを傷つけないでって聞こえたから炎だけ切ったけど今は違うんでしょう?」
「いいや、殺して欲しい訳じゃない。話をしたいんだ。」
「話?私は貴様に従うべき存在なんだろう?ならば会話は必要ないし貴様は命令を続ければいいだけだ。」
その内乗っ取ってやるなんて言葉は聞かなかったフリをして。
どうやら私がこの本の持ち主であると同時にCharaを利用する人間であると思っているらしい。別に、自分の格闘術でどうにかするから本当に切り札という感じだ。
それに、
「…私は君には触れないけど君は私に触れるんだ。この本の性質を教えてやるから大人しく聞いてくれないか?」
「それくらいなら。」
本について話す。死んだ人、身体のない人が入れる。他の人も幽霊として見える。そこまで本から離れて行くことは出来ないし本が破れたりしたら痛いらしい。本の中の人は他のものに触れるが私や他人から触る事は不可能など。本が開いている時だけ話せるとかなんとか。言っている間彼女は横槍を入れることなく聞いてくれた。
「ふむ、おおよそ理解した。」
「そりゃ良かった。君の事についても知りたいんだがッ……」
言葉が途切れる。首にナイフ、ツー、と流れる血が私の命の危機を知らせていた。これは。
「貴様は今までにない存在、ならば排除すべきだろう。私を縛り付けるなら尚更な。」
「……そうかもしれないけど私を殺したら君が動けないんじゃ。」
「GルートになってFriskが私を求めるのを待つだけだ。」
困ったものだ。ナイフが食いこんでいくのを見て本を開いたまま少し遠くに投げる。本から離れることが出来ないのが彼らのデメリットだ、ナイフは離れ私は首を抑えた。べとりと血が手について赤く染まる。
Charaは笑顔だけどさもつまらなさそうに私の事を見ていた。
「私としては物語が変わらずに続くことを望んでいるんだ。だからFriskがこのままPルートで進むのを見届けるだけ。何も君に危害は加えないし誰かに干渉したとしても何もしない。」
改変は望まない。そう伝える、それにさえも興味無さげに私の首を狙ってナイフを投げてきた。すかさず避けるがそろそろこの意味の無い攻防もやめておきたい。
「私が居なくなればFriskは悲しむ。君にとってFriskがただの器だと言うなら話は別だし私はその本をビリビリに破く。」
「……少しでも隙を見せたら殺すからな。私にとって貴様は嫌いな"人間"の一人だ。」
「あと、サンズの言っていたことには一つ嘘がある。」
「?」
「Friskは前の事を忘れていない。どころか全て覚えている。私と同じようになんの感情も持たずに彼らと接して、彼らを殺す。もはや躊躇はない。」
「…何だと。」
「生き延びたいのなら気をつけろ。Friskはいつか、」
貴様をその手で殺す程に貴様を信じていない。
そう言って彼女はナイフを収め本の中へと消えていく。パタ、と閉じて私は一息ついた。
ちょっとでも本の中に潜む危険を無視したら私の首はどこか遠くへと飛んでいく。そうはならないように私は汗を手に握りながら鞄に本を閉まった。Friskの事は…本当なのだろうか。
「I・o。」
「おかえり、Frisk。サンズは?」
「もう帰ったよ。行こう。」
手を差し出すFrisk。その姿はどう見ても、普通の無表情のちょっと大人びた子供。彼の手がモンスターの塵にまみれても、誰かの傷ついた顔を見ても、その中でも無表情でナイフを握っているのだろうか。
私に、Friskの事はまだ分からない。
Frisk→性別不明
Chara→女
とします。