改変せざるを得ない転生者   作:代理

6 / 10
槍を躱すのに拳は要らない

「Frisk、あそこにちょっと隠れようか。」

「うん。あ、あとこれ。魔法も防げるから充分に戦えるよ。」

 

はい、と渡された何かを見る。それは丈夫そうな手袋で装備してと彼は言った。ボクシングか何か習っていると私の動きを見て思ったらしい。まあそこそこ合っているのでお礼を言って手にはめた。

茂みの中にて。パピルスとアンダインらしきモンスターが話をしているのを視認する。パピルスが押されている、見ていて少し憐れになるほどに。

がさ、とFriskが動く。まずいと思った矢先アンダインが槍を構えて見ていた。鎧から見える鋭い瞳が茂みにいる私達を見つけ出さんと動いている。

やがて、諦めたように槍を消してそこから立ち去っていった。

 

「……危なかったな。」

「…怖い。」

「だな。」

「なぁ、アンダインカッケーよな!」

 

一つだけ呑気な声が響く。私でもFriskでもない誰か。黄色い手のない彼は一体?と首を捻ると同い年のモンスターの子だとFriskが言う。さっきの茂みの動いた音はFriskではなくその子供だったらしい。それにしてもかっこいい、か。

 

「確かにかっこいい。けどあれに追われてるんだよな…」

「いいなぁ!おいらもあんな風になりたいなぁ…!」

「なれるよ、きっと。」

 

私達が命を狙われているのを知らないなこいつ。私は初めましてなので名前を告げてから握手をする。Friskは既に彼と仲が良いらしく雑談をしながら道を進んだ。王さまの話とか、アンダインの話とか。キラキラした瞳で彼が話すもんだから悪い奴ではないと分かる。じゃ、後で会おうぜ!なんて言いながら彼は違う道を走っていった。

 

「彼はなんというか…まあ、いい。」

「小屋にいた時に近くにいたはずだけど。」

「え?いや、居なかった。」

 

本当に初対面である。サンズのサボり小屋でCharaと話していた際に近くにいた?そうならば私とCharaの会話を聞いていたかもしれないしそれはそれでやばいのではと考えてしまう。私の周囲にモンスターがいること自体がないため確認もしなかったが…いたのか?

 

「周り見てなかっただけかも。」

「そう。」

 

無関心らしい。

花で出来る道を通り、筋肉の塊や綺麗好きの方に会って、昔あった人間とモンスターの戦争を知りやがて一本道にたどり着く。後ろから光が入っていてFriskの目は見えない。が、なんとなく何か不気味さを感じる道だった。前に進む。

 

「!Frisk、止まれ。」

 

槍が突き刺さっている。いや、今しがた突き刺さった。

Friskが歩いて通るはずだった場所にそれは青白く存在した。上を見る。そこにはやはり、鎧の騎士が。

 

「走れ!」

 

一気にかけ出す。私に向く槍とFriskに向く槍が降ってくる。軌道を読みながら躱す。Friskも当然、躱している。FriskはCharaの言う通り前の記憶があるのかなんて思考がよぎるがどうでもいい。逃げるのみ。

息が荒いFrisk。彼を見て体力の限界があるのだろうと察する。何度周回していたとしても子供だ。彼の身体に槍が刺さるのも時間の問題。

ならば。

 

「ちょっと失礼。」

「ッ!」

「捕まっててFrisk。」

 

振り落とされないよう。

以前トリエルさんと戦った時のように私はFriskを脇に抱える。この子は本当に軽い、と思いぐんとスピードをあげた。苦しくないかと話しながら槍を躱す。うわぁあ、と叫びながらも頷いたりしていて忙しそうである。まあ原因は私だが。

 

「一本道抜けたら走れるか?」

「大丈夫。」

「じゃ、そこから一人で走ってくれ。」

 

そう言って彼を1度、落とさないようにと抱え込む。この先の道に関しては詳しいことは知らないが、サンズ曰くアンダインの槍の攻撃は2度。その後に戦闘が1、2度あると言っていた。この上から降るやつが1度目の一方的な攻撃だとすると目の前の一本道を抜けた茂みで彼女は攻撃を止める。そう、予想する。

 

「あそこの茂みで凌げるか?」

「多分。」

 

下ろして背中を押す。私も全力で走りFriskに向く3本の槍を1本づつ手で弾く。なるほど、私の装備としてはもったいない位にいい。

 

「それに対してまるでお飾りみたいな槍だな。」

 

煽って槍が増えたのを見てそれも弾く。一つだけ肩を掠り痛みが襲うがどうということはない。

茂みにがさがさと隠れ音を消す。ガシャン、ガシャンと近づいてくるそれに緊張が走る。槍の攻撃は消えて、何かを掴みあげようと手が伸びる。

 

それが掴んだのはモンスターの子どもだった。

 

…目が抉れてるというか、少々ホラーじみた事になっていると茂みの中から覗いていた。それがゆっくり下ろされてアンダインが遠ざかっていく。あー、怖かった。

茂みから出る。あの目が抉られていたモンスターの子は大丈夫なんだろうかと思ってちょっとだけ進んだ時に彼は普通に出てきた。

 

「なぁ…!アンダインがおいらの事触ってくれた!いいだろ〜!お前、運が悪かったな!絶対にもう顔洗わないぜ、おいら!」

「そ、そうか…よかったな。」

「あとアンダイン見たか!相当怒ってたぜ!悪いやつが近くにいたのかなぁ?」

「い、居たんじゃないかな…」

 

この子ども、疲れる。

私が言った頃には彼は駆け出していった。途中派手にころんでいた。私はFriskからもらったバビコを半分食べてカバンにしまった。肩から痛みが消える。Friskが歩いていくのを見て私も歩き出した。

 

 

長すぎる道。ネズミがチーズヲタ持ち出す術があるか考えてサンズのいたずらな商売の相手をして、敵をMERCYして、パピルスから電話に応じて、オニオンさんとやらと仲良くなって、エコーフラワーとやらの声を一つづつ聞いて、石像に傘をさしてあげて部屋の秘密を解いて、犬の相手をして、あのちっこいモンスターの子が傘に入って、アンダインの話をして、めちゃくちゃに綺麗な道を歩いて、崖で別れて…

とりあえず色々ありすぎて私は心身ともに疲れていた。歩き続けるって大変。前世はそんな事してないから余計に疲労がたまる。

モンスターの子の話を聞いていたらアンダインがどんなやつかも大体分かった。モンスター思い、人間嫌い。我々が鉢合わせたらそりゃ殺し合い。穏便に済ませられるのだろうか。

と、思っている矢先。また雰囲気が変わって逆光になる。また攻撃が来る。

 

「ッ、Frisk、地面が。」

「分かってる。」

 

今度は下からの攻撃。ズギャン、と槍が先程よりも多く生えるようになっている。一本道じゃないからどこをどう行けばなんて私は知らない。知っているのは周回を覚えているFriskのみ。

 

「この先の道、分かるか?」

「……うん。」

「!なら、教えてくれ。」

「わ、わ!」

 

今度は背中に彼を乗せる。おんぶの形になる、が軽いなと思うと同時に控えめに私の首に腕をまわして落とされないよう固定するFriskに誘導を聞く。知っていると言われて何故と聞こうと思ったがCharaの言っていた言葉がまた頭を過ぎる。

"貴様をその手で殺す程に貴様を信じていない。"

それが本当ならば聞くのは私の身の危険に繋がる。知らないフリをしていた方がいい。

 

「速くなってる…」

「別にただの避けゲーだろ。」

「よけげー?」

「何でもない。次はどっちだ。」

「下。」

 

私が生ぬるいといった感じで言うとあからさまに速くなった。Friskがわぁ、なんて言いながら私のナビをする。足の裏に突き刺さったら痛いんだろうなと思いながらも慎重に素早く動く。

 

「!行き止まり…」

「おっと。」

「ごめん、結構当てずっぽうで言ってたから違った。」

「本当は知らなかった?」

「うん。」

「オッケー引き返せば大丈夫だ。でも、…」

 

戻ったらいるんじゃないか。とりあえず来た道を引き返そうと後ろを向くが当然、彼女はいた。アンダインが槍を構えていた。咄嗟にFriskを庇う形になる。

 

「なんだ?攻撃するならとっととしてこい。」

 

挑発をする。せめてFriskを逃すことが出来るように手袋をはめた拳を構えて前に突き出す。

槍が5本。

3本が地面に刺さって地面が途切れた。スローモーションで地面が離れていく。構えていた身体がぐら、と揺れて私はFriskを抱き締めて切れた地面に手を伸ばすが2本の槍が私の左肩と、脇腹に刺さる。痛い、熱い、痛い。Friskさえも手放して、私は意識を失った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。