避ける、躱す、話す、避ける。それの繰り返し。一向に赤くならないFriskのソウルを見て話す間だけ考えを広げる。
Friskなら私がいなくても攻撃を防いでいる。私の方はソウルが緑にならないため普通の槍が降ってくる。手袋でそれを掴んで威嚇のように相手に向かってわざと外しながら投げるけどそれにも怯まずに笑顔を浮かべるアンダインはやっぱり強い奴なんだと実感した。
Friskのガードが消える。その瞬間を狙ってFriskはMERCYを選択した。画面が切り替わって走り出す。私も走る。未だに戦闘画面の切り替えの時にソウルが身体の外に出たり引っ込んだりする感覚が慣れないため少し遅れた。
私達の意図に気づいたアンダインがすぐさま追ってくる。追いつかれるまでどこまで進めるか。これを繰り返せば着くはずと思いながら足を動かした。
また、捕まる。
「逃げるな!私と戦い、死ね!」
「お断りしたい。ね、Frisk。」
「…」
ACT、挑発。Friskが手だけで来いよと煽り、私は言葉にして相手の怒りゲージを上げる。言った内容はそう、お前をいつか3枚におろして醤油につけて踏みにじってやると。思っていた以上に反感を買った。
「んふ、サシミ…」
「そこ笑うところじゃないから。」
Friskのツボがどこにあるのか分からない。どんな味がするんだろう、と言いながらも彼は槍をなんなく受け止めている。あぁ、やり慣れている。私は、それを見て見ぬふりして横から飛来する槍3本をサラリと躱す。槍に対しての訓練は、前世でやった。
「さぁ逃げよう。」
Friskのソウルが再び赤くなったところで逃げの行動を取る。が、待ってとFriskがそれを止めた。瞬間的に私とアンダインは走るのをやめてしまった。アンダインも?と思いながらFriskが電話を取り出すのを見る。そういや度々パピルスと会話をしていたと固まった状態で聞いた。
「後で彼女の家に集合な!」
「え、う、うん。」
「どんな話だった?」
「えと…今は話せない、かも。」
「分かった。」
「………あ、ちょ、待て!!!!」
走り再開。welcome to hotlandの字を横に見てからFriskを抱える。もう一度戦闘画面に切り替わることはないと小声で伝えてスピードを上げた。
「貴様、先程とは比べ物にならないくらい速くなったな?」
「そりゃどうも。機械と鬼ごっこしたら誰でも速くなっちゃうから仕方ないとは思うが。そんな事モンスター屈指の強さを持つアンダインでも知らないとも思ってるけど。」
「口もよく回るな?掻っ切ってやるぞ私直々に!」
ピキピキと青筋が浮かび上がっているのを見てニヤリと笑う。これでヘイトは貰った。橋に到着してサンズがぐうたら寝ているのを視認。Friskをおろしてここからは1人で頼むと背中を押した。
「I・o!」
「この橋は1人用でーす。だから、」
私はFriskが渡りきるまで渡らないし、アンダインに渡らせない。釘バットをようやく手に持って慣れない鈍器の重さに、私の命をもっと乗せる。Frisk、約束守れそうにないけど許してなんて笑って振り返る。
「力試しといこうか。」
「あぁ、貴様は本当に殺しがいがありそうなクズニンゲンだ。」
*
四方八方からの槍。場所が狭すぎるのになんて酷すぎる攻撃だろうか、それだけの憎悪なのかとバットで受け流して手袋で弾いて守りを固める。意地でも通さないと反撃に移る。拳1発、バットを1振り鋭く放つ。バットを槍で一つ弾かれ、もう一つは違う手で受け止められる。振り解けない。
「マグマに焼かれるのはきっと苦しいよなニンゲン!?」
「お前も道ずれ。」
橋の方へとジリジリと後ろに押される。少しでも踏み外したりこけたりしたら私はマグマにドボン、だ。お返しと言わんばかりに手を伸ばす。その拳を開くことは出来ないがもう1つの拳は出来る。気が外れていた片手を今度は私が掴む。相手を煽るように恋人繋ぎをした。
「よく見ると美人さんだなアンタ。」
「こんな時に口説くなど頭までおかしくなったか?」
「お前よりイカれてる化け物なら知ってるよ。」
アンダインもサンズも殺す、生かすFriskとCharaっていう化け物。声にはしないが笑いながら押し戻す。力は私の方が弱い、でも。
「その鎧じゃまともに動けない。」
「!足癖が悪い奴め!」
鎧の間から見える足首に足を引っ掛ける。鎧と鎧の間は当然何もない、簡単にそこをつけば相手を転ばすことも出来る、私はそのまま恋人繋ぎしていた手を引いてひっくり返す。柔道、みたいな投げ技みたいな。マグマには落としはしないがこれでどちらが優勢かなんて変わった。私は押しただけで彼女を死に至らせるまでに。
「Frisk、早く渡れー」
「あと、もうちょっ、と!」
「甘いな、ニンゲン…いや、I・oと言ったか。」
「?」
いつから槍を構えていないと。
その声が聞こえた時、私の身体には3本の槍が刺さっていた。前に刺さった肩と脇腹に深く抉るように、新たに足を貫通した。痛みが走る。じわじわと熱さが込み上げて汗が吹き出る。やばい、よりやばい。私は叫びを上げない。口を噛んで強く噛んで耐える。刺さった方の足がかくんと、崩れる。片膝をついても手は握られたままで。
「Fri、逃げて…」
「I・oッ!やだ、!!嫌ぁッ!」
「ニンゲンの魂は一つだけで十分だ。」
そっちのガキは逃がしてやるという。ありがたい、私の役目をここで終わることになったとしてもFriskは強いからこの先も止まらずに進めるだろう。
「忌々しいニンゲンめ。」
「はぁ、…その、一つ言うとさ。私達はあんたらに危害を加えた訳でもないのに襲ってくるのはどう考えても昔、ニンゲンがモンスターにやった事と同じなんだぞ?つまり、あんたの…騎士様のやってる事は君の嫌いなニンゲンのやってる事に過ぎない。」
「……死んで詫びろ。」
目が冷たくなった。図星か?と笑ってやる。その言葉、フラグなんだよなぁなんて言いながら自由になって力の抜けた手で鞄を開ける。さすがに辛いのでそろそろ彼女の出番だ。サンズは眠っていたがうるささにやれやれと言いながら瞬間移動した、ならと考えた上での行動だ。
「とっておきの魔法を見せてあげよう。殺さない程度に頼む。」
本が開く。あれだけ隙を見せるなと言ったのに私以前に彼らに殺されると呆れたため息が聞こえた。
ザクリ、とナイフを振る音。鎧に十字が走って、ヒビが入った。アンダインが呻いて飛び上がる。橋の方にはいけないので私の背後に回り込んだ。Friskは既に橋から次の土地へと移っている。なら、橋を渡るだけ。
「ありがとう。」
「ふん、そう思うならせいぜい生きることだな。」
「今、のは前と同じ…」
Charaが見える。アンダインが驚き動揺しているのを見て足を引きずり橋を渡る。渡りきってアンダインが一生懸命に来ているのを眺める。私の隣でFriskが大粒の涙を流しながら食べ物を口の中に入れてくれた。
「あっ…つい………身体が……焼け……」
「そりゃ、そう、だ。」
気づかなかったのだろうか、私と戦っている間もきっとその熱はジリジリと体力を削っていただろうに。
私はFriskが近くのウォーターサーバーから水を出してコップに注ぐのを見る。それをバシャ、とアンダインに頭からかけてやったFriskに賞賛し、アンダインにはまたもや挑発をする。
「あんた、相当戦闘、バカなの、か?」
「……」
敵から情けをかけられて屈辱なのか私からの言葉に怒りを通り越して言葉を失っているのか。震えながらも立ち上がって無言で去っていった後ろ姿に般若を見た気がした。だが、それよりもだ。
「……ねぇ。」
小さな主人公さんを慰めてあげなくてはと言い訳を考えていた。
「言ったよね、ぼく。」
「いや普通に申し訳ない。が、耐えきれなかった。どうも誰かの為なら犠牲になれる人間らしいな私は。」
「でもさ。……でも、」
ぼくは傷ついてほしくないって言ったのに。
再び溢れる涙。その目には怒りやら、苦しみやらがあったが一番悲しみが占めていた。どれだけ周回をしていてもFriskは優しいままでいられるほどなのか、と他人事のように関心する。その間も弁解が続くがFriskは聞いてくれなかった。
「ぼくを守ろうとするならもうついてこないでよ。」
「!…前もそれを言おうとしてたのは察していた。しかしそれだけは無理だ。わたしの存在理由に関わる。」
「じゃあもう戦いに入ってこないで。」
「それも、」
「無理なの!?ぼくには、これ以上きみが傷つくのを見ているだけなんて、その事のほうがぼくは辛いよ!!ねぇ、この辛さを、きみは知らないんだろう!!ぼくの傷を、無視しないでよ!!」
……
驚きが、隠せない。
この子がこんなに声を荒らげて言うなんて。私に対して、この怒りはきっと優しさから来る怒りなのだろうと頭の中で言葉が離れないように繰り返されているようだ。はっ、としてFriskは口を手でおさえる。
言葉を繰り返して、温かさが身に染みた。
「…ごめん、Frisk。そんなにまで私の事を思ってくれてありがとう。」
「!…分かったなら、いいよ。でも本当に無茶しないで。」
「あぁ。もう隙は見せないし、大丈夫だ。」
Friskはやはり守らねば。この優しさを蔑ろには出来ない、しかしFriskの優しいソウルが砕け散るのを私は見ていられない。
Friskを抱きしめて涙を拭いてあげながらひっそりと心に誓う。アンダイン戦は終われどまだまだ試練は多い。
私のソウルは、Friskを守るために有るのだから。