始まり
唐突だが転生してしまった。こんなことを言っても誰も信用しないだろうが、俺には確実に前世の記憶を持っている。なんの面白みもない普通に病気で死んだ男の人生ではあるがひとつだけ、知れ渡ればとてつもない事になりそうなことがある。
それはこの世界がどう見ても『僕のヒーローアカデミア』という漫画の世界であるということだ。この漫画にハマりだしたのが死の直前ということもあり、途中まで、具体的には死穢八斎會が出てくるところまでしか知らない。
それで、今何をしているかというと──
「それじゃあ、この子をよろしくお願いします」
「はい、任せてください」
孤児院からオッサンに親権を移しているところであります!
「……と、いうわけだからよろしくね
「はい、お願いします
「はは、家族になるんだから敬語じゃなくていいよ、あと、父さんって呼んでほしいな」
「はい、義父さん」
俺の父親になるこの人は
「じゃあ、僕たちの家に行くとしようか、さぁ車に乗って」
────────────────────────
「さぁ、着いたよ」
大きい山の前にある綺麗でそれなりに大きい家だった聞くところによると俺を迎えるにあたって九頭家で持っている山の近くに新築の家を建てたらしい。思ったよりも里親がブルジョワジーなことに動揺が隠せない、どうやら義父さんはこれを新しい住居に入ることに緊張していると感じ取ったのか。
「ここが僕らのお家だよ」
と言いつつ家に入っていく、なんでこんな財力があるのにお嫁さんとかがいないのだろうか。
「お帰りなさい」
「……ただいま」
先に家に入ってたお義父さんがそんな言葉をかけてくる。そんな言葉に少し胸が温かくなった。それと、住む場所が変わるからだろうか、何かが始まるような実感が湧いてくるような気がする、ここから俺の人生が始まるのだ──。
────────────────────────
なんてこともあったなぁ──と今現在幼稚園の自由時間に感傷に浸っている。そう、俺が九頭家に入ってからもう一年が経って俺ももう4歳になり個性が発現する時期となっていた。
「竜ちゃんどうしたの?」
そうそう俺が幼稚園に入って自慢したい友達ができたのだ、蝶結びにされたツヤとボリュームのある髪とカエルっぽさを持ちながらも可愛らしい容姿を見れば幼稚園児のままでもわかるだろう、梅雨ちゃんこと蛙吹梅雨である。
「ああ梅雨ちゃん、ちょっと昔を懐かしんでたんだよ」
「おじさんみたいなこと言うのね、まるでお父さんみたいだわ」
まあ前世の年齢も入れればアラサーであるから否定はできない。
「そんなことよりも、今日も特訓しましょう」
「いいよ、今日は何するの?」
「そうね、走り込みをしたいわ」
梅雨ちゃんのマイブームは特訓である。最近、周りの園児たちもヒーロー目指して己を鍛えようとしているためこの世界ではあるあるなのかもしれない。
しかし、たかが幼稚園児の特訓と侮るなかれ梅雨ちゃんは最近個性が本格化したことにより周りの園児よりもちょっとジャンプ力が高かったり足が速かったくらいの身体能力が、低い建物ならひとっ跳びで屋根にのれるジャンプ力と先生を含めてもこの園では誰も追いつけないくらいの足の速さが合わさり、恐ろしい機動力となっている。これでまだ壁に張り付いたり、舌を伸ばしたりなどの能力が残っているのだから恐ろしい。それにしても、これで俺の個性が無かったり弱かったら落ち込みそうだ……。
────────────────────────
「ゼェ─ハァ─ちょっと休ませて梅雨ちゃん……」
「ごめんなさい竜ちゃん、ちょっと楽しくて激しく運動しすぎだわ」
あーきっつ、走り込みとは言ったが実際には一対一の鬼ごっこである、梅雨ちゃんが逃げて俺が追いかける。それで結局捕まえられなくて俺の負けで終わる、最近のルーティンになってしまった。誰かこの走り続ける役変わってくれないかな、それか捕まえて動きを止めてくれたりとか。
「はーい、おやつの時間ですよー」
た、助かった〜。ちょうど自由時間が終わったらしい。あとはもう帰るだけだ。
────────────────────────
「ただいま〜義父さん〜」
「あ、竜人、おかえりー」
と、言うわけで帰ってきました我が家〜。と言っても家に帰っても特にやるべきことも無いし、梅雨ちゃんを追いかけまくってた影響でめちゃくちゃ眠たい。なので最近は帰ってきてすぐ寝てしまうのがルーティーンとなっている。
「明日は個性が出ると良いなぁ──」
できれば強い個性でお願いします──。