大体午前10時あたりに梅雨ちゃんのアパートにやってきた、この時間に遊ぼうとだけ伝えて約束しておいたのだ。
「おはよう梅雨ちゃん」
「おはよう竜ちゃん、今日はいったい何をするのかしら?」
昨日からずっとこの時を待っていた。口元に人差し指を当てるいつもの仕草をしている彼女に自分にも個性が芽生えたことを伝える。
「あら、一体どんな個性なのかしら、気になるわ」
「それを見せようと思ってさ、今から遊びに行かない?」
「良いわね、それじゃあ早速準備してくるからちょっと待っててくれないかしら」
「もちろん!梅雨ちゃんが待てと言うなら千年でも待つさ!」
俺がキメ顔でそう言うと、梅雨ちゃんはそれはちょっと気持ち悪いわねと言いながら部屋の中に戻っていった、泣いた。
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場所は変わって山の中、と言ってもそれほど傾斜もないため樹海の中といった方が適切かもしれない。そこで俺は梅雨ちゃんと向かい合っていた。
「じゃあさっきも言った通りの個性アリ、制限時間は十分、あまり遠くに逃げるのもダメね、それで俺が鬼、梅雨ちゃんは逃げてね」
「わかったわ」
「それじゃ行くよー」
俺がそういうと梅雨ちゃんは後ろを向いてスタンディングスタートの姿勢をとる。
「よーい、どんっ」
「──ッ」
俺が始まりの合図をした瞬間梅雨ちゃんは、弾け飛ぶように駆け出した、優れた跳躍力を活かして地面に対して平行に跳んでいる。いつも通りだとこのまま一メートルも距離を縮めることができずに終わっていたが今日の俺は違う、何故なら今の俺には”個性”があるからだ。梅雨ちゃんの目の前に触手を生やして壁を作るイメージをする。
シュルー!
五本の触手が梅雨ちゃんの目の前に立ちはだかる、彼女は今スピードに乗っているため曲がることはできないだろう。
「良い”個性”ね、けれどもまだまだ甘い、かしらっ」
JUMP‼︎
そう簡単にはいかず梅雨ちゃんの大ジャンプで乗り越えてしまった──いちおう最大の三メートルなんだけどなぁ──しかし、それは想定済みだ、宙に浮いて身動きの取れない梅雨ちゃんの着地点を予想して、そこに触手を生やして梅雨ちゃんを捕らえられるように構える。
「あら」
CATCH‼︎
よしっ!巻き付けれた!梅雨ちゃんも逃げようとじたばたするが雁字搦めにされた状態では手も足も出ないらしい、観念して暴れるのをやめた。一つだけだがやっと黒星を返すことができた。
「ふふ、今回は俺の勝ちだね」
「これって負けると意外と悔しいのね」
「俺はずっとそう感じてたんだぜ」
梅雨ちゃんに巻き付けていた触手を消すと地面に吸い込まれるようにして消えていった。何処から出てきてるのかも分かんないけどさっきまで質量があったものが一瞬で消えていくのもおかしいよな……。
「それじゃあ第二回戦と行きましょう」
「もちろん、お昼までは付き合ってられるよ、午後は個性登録するから無理だけど」
「こんどは勝つわ」
正直個性を伝えていない状態じゃ勝てるのは当たり前なのでここからが本番と言ったところ勝ち越せると良いのだが。
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あのあとさらに七回やって俺が四勝する事でなんとか勝ち越すことができたけれど、最後の三回は梅雨ちゃんが壁に張り付けることができるようになって触手の壁が役割を果たすことができずにそのまま連敗してしまったのでもっとやったら勝ち数を逆転されるかもしれない。
「……結局負け越したまま終わっちゃたわね」
「いや、最後の三回は梅雨ちゃんが全部勝っていたからこの後時間があれば分からなかったよ」
「そうかしら、竜ちゃんなら対策くらい考えたんじゃないかしら?」
「確かに考えてはいたけど、あまり良い案は思いつかなかったよ」
本当に何も思いつかなかった。いや、やりたい事はいくつか思いついたのだが思考速度も使える触手の本数も足りなかったので、今の自分にはできなかったのだ。つくづく自分の至らなさを実感させられる、しかし幼少期とはいえ梅雨ちゃん相手に勝ち越せるというのはなかなか自信を持っても良いのでは無いだろうか。少し高揚した気分で梅雨ちゃんに話しかける。
「ねぇ梅雨ちゃん、一緒にヒーローに目指して2人で事務所つくらない?」
「ええ、いいわよ」
「あ、結構軽い感じで了承してくれるんだ」
「当たり前よ、私、竜ちゃんのことをすごい子だって思っているもの」
「──!」
何処か気の抜けた返事をした後のそれはちょっとズルいと思う。それと原作のキャラクターに褒められるのって想像の倍くらい嬉しいこと、初めて知ったな。胸がいっぱいになりながら更に自分のやりたいことを伝える。
「それじゃあ合体技も考えよう、例えば──」
いくら梅雨ちゃんと話してもまだ話し足りないや。
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