結局その日に分かったのは
その1 このISは形態変化が可能
その2 触手のようなもので一定時間触れるとその物体に変形できる
その3 変化した物体は構造、ISによる認識は同一、しかし形状は一致しない
この三点だけだった
いや、今まで何もわからなかったことを考えると大いなる成果なのかもしれない
その時は完全に頭から抜けていた試験の結果だが、織斑先生によると
「最初の時点でお前は風圧で『倒した』だろう?あれで試験終了だ」
と、不敵な笑みでおっしゃっていたのでいいのだろう
その後『IS適正判定書』という一枚の判定書と共に必読とか書かれた参考書をドサッと渡されて帰路についた
IS学園入学までの一ヶ月は光陰矢の如しを体現したような期間だった
昼は遊んで夜は勉強、分からない所は織斑先生に聞くことができたし、大好きなISを知るための勉強は全く以て苦にならなかった
そんな期間を経てついに迎えた入学式
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅぁ」
「神楽!、おい神楽!しっかりしろって!」
会場ホールに集まった数え切れないほどの女性
そのほとんどがこちらを凝視している
どこを見ても目、目、目
パニックを起こさなかったのは一ヶ月の生活と隣に一夏がいてくれるお陰か
過呼吸寸前になりながらもなんとか意識をそらす為に始まった先生方の話を聞いた
式には様々な国の人が様々な言語で話をし、それを翻訳した文章が表示されるという徹底ぶり
そこには様々な利権や力関係が作用しているのだろう
そんな形式通りの式を終えると次に待っていたのはクラス発表
一夏と同じクラスという必死の願いが通じたのか(おそらく自分の症状を知っている識斑先生がどうにかしてくれたのだろうが)一夏と同じクラスに入ることがわかった
嬉しくて安心して涙が出た
それを一夏が笑いながら励ましてくれるのがまた嬉しかった
そして今である
英語にするとnow、それ以外の言語は習っていない
「あの人たちが・・・前代未聞・・・」
分かる
「一人はテレビで顔も出てたけど・・・もう一人ってあの子?」
自分の顔が真っ青になっているであろうことが分かる
席はいちばん後ろになったので視線は一番前にいる一夏ほどではないにしろ・・・
女子たちの視線は明らかに前に立つ先生よりも自分と一夏に集中していた
「全員揃ってますねー。それではSHRを始めますよー」
担任は山田先生なのか、ホワホワと話し出す
「ではでは皆さん、自己紹介をしてみましょうか、クラスメイトのことをよく知ってみんなでなかよくしましょうねー、では相川さん」
はい!元気そうな女子が立ち上がり自己紹介を始める
自己紹介、なんて生まれてこの方したことがない、違う、した記憶がない
自己紹介って何なんのか?自己の紹介だ、自分をを紹介するんだ、じゃぁ自分ってなんなんだ。中務 神楽、ってなんだ?
そうか、一夏のを手本にすればいいんだ、ちょうど次は一夏の番だし
「えー……えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
しばしの静寂・・・からの
「以上です」
・・・あれでいいのだろうか?
なんだか教室の空気が果てしなく微妙というか・・・あ、織斑先生
スッパーン
うわ、痛そうだ
一夏は、あぁ、ダメだ。織斑先生を見て完全に家モードだ
あ、もう一度パァンと叩かれた
「諸君私が織斑千冬だ。~」
織斑先生が自己紹介を始める
先生らしくキツイ言動も決まっていて実に格好良い
先生が自己紹介を終えた瞬間どこぞの国の音波兵器かと思うほどの叫び声・・・基黄色い歓声だった
もはや聞き取ることを投げ出したくなる
さすがは織斑先生、その存在はやはり伝説か
騒ぎは一旦落ち着き再び自己紹介に戻るものの
どことなく自己紹介の中に『千冬様に憧れて』とかが増えた気がする
そんなことを考えて現実逃避しながら迎えた自己紹介
「中務・・・か・・・ぐら・・・で・・・す」
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「今なんて言ったの?」
「というか今しゃべったの?」
周囲がざわざわとしゃべりだす
「自己紹介は終わったな、ではこれより授業に入る、山田先生、よろしくお願いします」
「あ、はい、ではみなさん、最初はIS基礎知識をやりますので参考書を出してくださいねー」
織斑先生に会話を断ち切られた女子たちは不可解な顔をして前へと向き直る
「助かったなどと思うなよ」
自分のすぐ後ろに席を置いている織斑先生が小声で話しかけてきた
「お前はこれから、この環境で三年間生き抜かないといけないんだ。女性恐怖症ぐらい克服して見せろ」
「・・・はい」
この環境で三年間
その言葉は自分の中に強く響いた
ISの勉強がISに一番近い所でできると聞いて反射的に返事をしてしまった自分を今ばかりは呪ってやりたい
女性の集団というものがどれだけ自分にとって恐怖的なものかを確認しに来たようなものだ
やはり自分にこの環境でやっていけるとは・・・
「中務くん、わかりませんか?」
「はいっ!?」
「IS学園の設立の経緯とその特徴について説明できますか?ごめんね、出席番号で一番後ろからってことになってその一番後ろがあなただから、答えられるかな?」
先生は非常に申し訳なさそうにこちらを見ている
「IS学園は・・・っ」
反射的に立って答えようとしたが、まず目に入る光景
全員ではないにしろこちらに視線を送るクラスメイト
自分の言っている事がおかしいと言っているかのような視線
脳裏に一瞬だけあの人・・・母親の視線が映る
それを機に視線がすべてあの頃の目線に変わる
憐れむような、蔑むような、道端で死んでいるネズミを見るような、そんな視線
「あ・・・う・・・」
勢いを失って席に座り込むと周りからクスクスと笑い声が聞こえた
自分を笑う声、嘲笑する声だ
意識してしまうと全てがそんな声に聞こえてくる
呼吸が浅く動機が早くなる
「あれ・・・から・・ったかな?・・・つぎの・・・」
声が遠くなって周りが暗く・・・
ガシッ
「深く深呼吸をしろ、いいか?深くだ」
腕をつかまれて耳元で声が聞こえた
深く・・・深呼吸・・・・
朦朧とする意識の中で言われた通りに深く、深く息をする
自分耳の奥で聞こえる心臓の音が段々と遅くなってく
ドクン・・・ドクン・・・
この音を聞いているのは心地よかった
段々と世界に光が戻ってきて意識がはっきりとする
「あ、ありがとうございます」
腕をつかんでいたのは織斑先生だった
「保健室には行かなくて済んだようだな、それとも最初から席を立って目立ってみるか?」
はは、織斑先生らしい
「気絶しそうになったら深く呼吸するのを意識しろ、緊張からの過呼吸は抑えられる」
深く呼吸、医師の先生からも聞いていたのを思い出した、深呼吸よりも深くだったか
「織斑先生?どうかしましたか?もしかして中務君の体調が悪くなったとかですか!?」
「いや、参考書の開くページを聞きのがした奴に説教をくれていただけだ、気にせずに続けてくれ」
「そうですか・・・中務君?もし先生の声が聞こえなかったら遠慮せずに言ってくださいね?」
またクスクスと笑い声が聞こえる
「とりあえずは、今週中に気絶をしないようにしてみろ。ポイントは『相手』だ。」
そう囁いて後ろの席に戻っていった
相手って・・・どういうことだろう
残りの授業は織斑先生の言った相手の意味を考えるのに使った
そして三限目
休みの間に一夏にも聞きたかったが一限の休みは黒髪のポニーテールの子、二限は金髪ロングの外人の子と話をしていたので遠慮した
激動は起こった
先生の話を聞くにクラス代表を決めることになったらしい
そこで織斑先生の弟である一夏が推薦されたわけだが、金髪の子が猛反対
そこでクラス代表を決める勝負をすることになったわけだが・・・
「な、なんで僕が推薦されたのでしょう」
「男子の実力が気になる奴の投票でーす」
一部の女子がおおっぴらに自白する
「えぇー・・・」
「もういいですわ、この際お二人とも順々に相手して差し上げます、お二人ともそんなに時間もかからなそうですし♪」
「いや、中務との戦闘は許可できない」
「どういうことですの?」
「中務のISは現在調整中で・・・」
言いかけた時、教員用の通信機が音を上げた
その持ち主の織斑先生は外に出ていく
「とにかく、お二人とも私に負けたならば私の小間使い、いえ奴隷にして差し上げますわ、覚悟をしておくことですわね」
奴隷・・・あの生活が再び繰り返される・・・罵倒、暴力
そんなことを考えた瞬間、織斑先生が返ってきた
呼吸を大きく・・・大きく・・・
「いいだろう、では、織斑との戦闘は一週間後の放課後、中務とは・・・まぁ後々決めよう。各自準備をしておくように。それと放課後私のところに来い、アリーナとIS使用許可の手続きをする」
不機嫌そうに教卓に戻る織斑先生をただただ見送るだけだった
あそこまで感情を外に出す先生の姿も珍しいがそれよりはまず自分がISの戦闘をするという事を考えるべきだろう
なんだか悩むことがたくさんできてしまった気がする
この学園で生活していくためには本当に自分を変えていかなければいけない
今までのままじゃだめなんだ・・・でも・・・
神楽の思考は迷宮を出ることはなかった
<第二章>テキオウノウリョク【変わる日常】---complete
ついにIS学園に入りました。
本当は小説みたいにもっと書きたいんですが自分の学が足りないためにこんな文です
ぐぬぬ
次回投稿は水曜日の21時にしようと思います