ここはどこだ?
目が覚めると自分の知らない天井があった・・・なんて表現はどこで見たのだったか
ここはどこかの病院だろうか、ベットで寝ている体を起こそうとすると手が自由に動かない。どうやら手錠でつながれているようだ
「また・・・なんでこんな事に」
そう一人で愚痴るといきなりドアが開く音がする
「目が覚めたか?気分は・・・それ程よくなさそうだ」
声がする女の人の声、自分の苦手な、しかし、この声には聞き覚えがある
「目覚めてすぐのところ悪いがついて来てもらおうか、ちなみに拒否権は行使しない方がいい、君の状況を悪くするだけだからな」
寝ぼけ眼で声のする方を向くとそこにいたのは自分が気絶する前に見た女性だった
「済まないがこれをつけてもらう」そう言った女性はサングラスのような物を取り出して神楽につける」
そうすると神楽の視界は黒で塗りつぶされた
「では、移動しようか」
ダメだ。質問したい事は山ほどあるのに相手が女性だというだけてなに一つ言葉にする事ができない
もうすでに意識はクリアだかいっそ、そのことが恨めしい
「ど、何処に向かって・・・いるんですか?」
かろうじて口から漏れたのはそんな言葉だった
帰ってくる言葉はそっけなく
「取調室だ」
の一言のみ
なすがままに連行され目隠しを外されると連れてこられたのは取調室というには少し大きい部屋だった
しかし、その部屋の真ん中にはいかにもな一つの机と二つの椅子
部屋の明かりは机の上にある時代遅れのスタンドライト一つだけ
「さて、では取り調べを始めるわけだか・・・最初に一つだけ質問を許そう。何か聞きたいことは?」
自分の反対側に腰掛けた女性が携帯端末を立ち上げながらいう
質問しようにもほぼパニック寸前で、聞くべきことが見つからない
「あ、貴方は・・・誰ですか?」
「私?、人に名前を聞く時はまず自分からだと思うのだか?」
使い古されている言葉だが礼儀としてはそうだろう
「ぼ、僕はっ・・・」
「中務神楽十五歳、九月十八日生まれの乙女座、身長158センチ、体重51キロ、背丈はある程度仕方ないが少し痩せすぎだな。血液型はA型RHマイナス、ふむ、非常に珍しい血液型だ。学校は半月前まで通信制で中学卒業分は取得済み、普通の中学校に編入するも不登校、趣味はISの設計を考える事。主な身体疾患無し、主な精神疾患・・・対人恐怖症。・・・他に君から説明する事はあるか?」
言葉が出ないとはまさにこの事だろう
相手が女性という事を除いてもどうしていいのかわからない
頭を真っ白にして口をパクパクさせていると目の前の女性は微笑む
「いや、すまない。事前に調べさせてもらったよ。次は私の番だな。私の名前は織斑千冬だ、君の取り調べを担当させてもらう」
おりむらちふゆ、どこかできいたことがある。おりむらちふゆ織班千冬・・・織斑千冬!?
「も、もしかして、あの第一回モンドグロッソの優勝者の!?」
めんどくさそうな反応で千冬は話す
「あぁ、そうだ、私のようなものなども知っているとは、どうやら趣味がISと言うのは間違っていないようだな」
目の前にいるのはISの世界大会優勝者、ある意味で自分の憧れる人物だった
しかし目の前の人物は当然の如く女性、神楽には一瞬そちらに目を移すのが精一杯だった
「中務神楽、診断書によると女性でも受け答えぐらいはできると書いてあるが、これに間違いはないか?」
静かに頷く
「そうか、ならばいい、今から君にするのは取り調べだ。あっている事はYes、違っていることはNO、できれば細かい説明もしてもらえるとありがたい、いいか?」
再び静かに頷いた
「協力、感謝する。それでは一つ目の質問だ。この男に見覚えは?」
そう言って織斑さんは一枚の画像データを見せる
その顔には見覚えがあった
さっき・・・いや、ポンポン気絶しているせいで時間感覚が曖昧だからいつかはわからないけど・・・自分を脅した人物だ
腕輪を外せと
腕輪・・・IS!?
自分の右腕を見るとそこには黒い腕輪が存在した
「質問、答えられるか?」
そう聞かれてやっと自分が挙動不審になっていると気付いた
「はっ、ハイ、知って、ます」
「こいつは君を攫って恐喝した間違いないか?」
精一杯頷く
「そうか、では次の質問だ。これが誰だかわかるか?」
そう言って端末の画像をスライドさせる。そこに写っていたのは・・・
「僕・・・ですか?」
紛れもなく眠っているのは毎朝鏡の前で佇む顔立ち、中務神楽、自分である
その答えを聞いた千冬は画像の拡大表示を解いた
「覚えているか?コレはお前と私が話す数分前に撮影された画像だ。お前はコレに乗っていたんだ」
あの時は操縦者視点からしか見えなかったが画像ではその全貌が伺えた
それを例えるならどのような言葉がふさわしいだろうか?
まるで一つの絵画を見ているようだほとんど骨格だけとなってまるで骸骨の様な身体部分の装甲に対して明らかに不釣り合いな大きさでのに存在する巨大な黒い翼
翼と体を比率に表すとしたら1:8ぐらいだろうか
その翼はまるで自分を守る様に体部分を包み込んでいる
この光景は異様を通り越して異常だ
「これが・・・IS?」
「ISではない」
ついつい発してしまった独り言に返事が返って来たことに驚く
「ISではない・・・って」
「規格、骨格、装甲、外装、その他おおよそ全て、異端ではあるがISのそれに相応する・・・たが、一つだけ、決定的な違いがあるんだ」
冷静な目で画像を見つめる千冬
その視線にどのような感情が混ざっているかなどは全くわからない
「コアがないんだよ・・・このISには」
天才化学者の篠ノ之束博士、その天才が467個生み出したとされるISのコア
製造法などほとんどすべての情報は未だに解明されていない
ただ一つの真実としてコアがないことにはISは『動かない』
「でも、あのとき・・・」
確かにISは起動していた。
実際に活動形態から待機形態にすることもできた
ふと、あの後の出来事が頭を過るが無理やり抑え込む
緊張と動揺と嫌悪感と羞恥心と、他の自分でも説明がつかない感情で顔が真っ赤になった
「少し誤解を生む言い方をしてしまったか・・・済まない、訂正しよう。正確には『ISの中には』コアがないんだ、どれだけ検査してもその腕輪からも機体からもコアの反応を発見できなかった、しかし・・・」
千冬は神楽を指差した
正確には神楽の胸をである
「君の心臓、なぜかは知らないがそこにISのコアの反応があるんだ」
ドクン
その時一際心臓が跳ね上がったような気がした
「そ、そんな・・・僕の・・・心臓のなかに・・・」
そんなものが入っていて自分は大丈夫なのだろうか
少し早い自分の心臓の鼓動が聞こえるような気がする
そんな自分の不安を察したのだろうか識斑さんは目を見つめながら言った
「心配するな、様々な検査をしたが『異常はない』という結果しか出なかった、良かったのか悪かったのかわからんがな」
まっすぐ見つめてくる瞳は少しも揺らぐことはない
耐え切れずに一秒もせずにそらしてしまう
「実を言うとな・・・取り調べは事件のことではないんだ、事件の方は犯人は確保できたしこれから関係性の洗い出しだな」
「え?じゃぁ何の・・・」
「君の今の状況だよ、君は私の弟と同じ・・・いや、もしかしたらそれ以上に厄介な事態になっているぞ?」
織斑さんの・・・弟?
「む?知らないか?織斑一夏というのだが・・・最近有名だろうアイツ」
その言葉で思い出されるニュース記事
「もしかして・・・男で・・・初めてISを動かしたって・・・いう」
「あぁ、まぁその話はおいておこうか、ではこの取り調べの最大の意義を話そう」
そう言って端末を操作し画面を神楽に見せる
そこに大きく書いてある最初の三文字
誓約書
その下にはつらつらと長く文が綴られている
「短く要約すると君を調べるための同意書だ。キミのおかれている状態は非常にやっかいだ。男性でISを操縦したことに加えてその心臓にコア反応を持っている、君のことは箝口令が敷かれほとんどの人間は知らない、国家機密級の自体だということを理解して欲しい、そしてその状況がほとんどわかっていないとなれば・・・もちろん調査をしなければならない、その容認を確認するための同意書だ
大きく分けると約束事は3つ
ひとつ、自分の心臓にコアがあること、を口外してはいけない
ふたつ、我々の機関の研究に貢献すると同時にISに関して把握したことの全ての情報公開
みっつ、身の安全と急激な変化の対応ために監視のもとに生活する
ほかにも細かいものはあるが以上だ、そのことを守れば他の事に関して君の自由と安全は保証する。」
「身の自由って、監視されてたんじゃ自由も何も・・・」
「君の監視についてはやることは一つ、とある高校への入学だ」
「とある高校?」
「そう、国立IS学園だ」
え・・・IS
「全寮制だが悪い学校ではない、それについては」
「同意します」
「は?」
言ってから自分がこれまでになく熱くなっていることに気がついた
だからといってこの気持ちは止められないISの勉強が出来る・・・それだけで理由としては十分だ
「おいおい、セール中のショッピングみたいに即決して良い問題じゃない、まずは要項をよく読め。その同意書のボタンをタッチしたらもう取り消せな・・・」
ぽち
「は?」
織斑さんが再度素っ頓狂な声を上げる
これでいい、ISを知れるならほかのことなど・・・
そう思っているといきなり腕と襟を捕まれる
端末が床に落ち派手な音を立てるがそれどころではなかった
「おい、中務、その画面をタッチした時点でお前は私の生徒だ、その上で言わせてもらう、あまり軽率な行動は取るな、お前がISに興味を抱いているのは知っているが、それでも今のは危うい。一応私も全て目を通させてもらったが条件に「全命令の厳守」なんて書いてあったらどうするつもりだった」
腕に力が加わって痛みを感じる
久しく感じたことがない人の感情
怒っている
この人は怒っているんだ
「す、すいません・・・」
「理解したか?次このようなことをしたらを私の全力を持って教育的指導させてもらう、そのつもりでいろ」
ゆっくりと襟と腕を話すとため息をついて座りなおす
あれ、今『腕を掴まれて』いた?
腕には抑えられていた感触が未だに残っている
「はぁ・・・これから大変になりそうだな・・・あぁ、そうだ、お前が馬鹿なことをしてくれたせいで遅くなったが・・・」
部屋がいきなり明るくなる、部屋の窓が暗室モードから切り替わったようだ
まぶしさに目を細め、視界がぼやける
しかしそれは段々となれていき視界が戻り始めた
まぶしそうにしている織斑さんの後ろには大きな電子黒板
窓の外を見るとそこには入れないとわかっているのによく眺めていたパンフレットの光景がある
「入学おめでとう、中務神楽、IS学園へようこそ」
これは物語のはじめに過ぎない、しかしこの時の神楽は確かに感動を感じていた
<第一章>カワルセカイ【突然の変革】---complete