報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

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水面下で準備を進めてきた謎の武装組織が遂に本格的な活動を開始する。


その声明は大いなる混沌の始まりを告げる狼煙だった――――







報告書013『プロジェクト・オーダー:前編』

 

 

ヤマ大国・POCU本部

 

 

 

基地各所の大型モニターでは各国のニュースが英語で同時翻訳されながら流れていた。その内容は全て謎の武装組織から送られてきたメッセージだ――――

 

 

 

『我々はプロジェクト・オーダー。世界に秩序をもたらす者である』

 

 

 

屈強な肉体を包む野戦服に赤いベレー帽を纏った、向こう側の司令官らしきヨーロッパ系の男性が厳然とした表情で言葉を発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『世界には紛争が溢れ、人々が直ぐに手を差し伸べるべき弱者の苦痛と涙が至る所にある』

 

 

映像が暗転し、戦争で焼け出された難民や瘦せこけた子供の映像に切り替わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『更に、生き延びる為に自らの尊厳を売り渡し恥辱にまみれる者』

 

 

どこかの街で売春婦として客を待つ少女たち――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しかし、世界はこのような人々を救うべく直ちに行動できるだけの力を持ちながら…それを行使しない!』

 

 

再び男の映像に切り替わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『よって、我々は行動しない世界に代わって直ちにあらゆる非合法勢力を殲滅すると共に今まで弱者の存在から目を背けて安寧を貪ってきた世界に対し罰を下す』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一呼吸ぶんの沈黙が流れる。きっとテレビ局のスタッフ達にとっても人々にとっても永遠に近い時間だったであろう――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『その裁きの刃を受ける事を望まぬならば、我々に恭順せよ。そうすれば安寧と秩序を与えよう。――――我々はプロジェクト・オーダー。世界に秩序をもたらす者である』

 

 

 

 

 

そこで映像は終了し、続いて各国政府の代表又は高官のコメントが流れる。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

数十分後、POCU本部ビルの大会議室にはPOCU側の司令官以下各幹部、そしてヤマ大国派遣軍の高級将校らが集っていた。

 

 

「プロジェクト・オーダーの声明は既にお聞きになりましたか?」

 

 

司令官の問いに派遣軍の将校達からそれを肯定する声が返る。

 

 

 

 

 

 

「ええ。彼らが掲げているのはテロリストの論理であり危険な存在です。しかし――――各国が思うように身動きが取れないのは痛いですな」

 

 

日本国自衛隊の代表である織田一佐が忌々しげに第一声を発した。

 

 

 

 

 

 

「カーネル・オダ、日本の政府はどう対応するつもりですか?」

 

 

別の国の将校が織田に問いかける。

 

 

 

 

 

「沈黙――――それが今の方針です」

 

 

 

 

 

大義名分を掲げながら、実際には利権を貪る為に行動しているのではないか――――そういう疑いをかけられればキリはない。

 

 

そして、実際にそうする国は過去にあったし現在も絶えない。

 

 

 

 

 

 

 

「国際社会の承認を待たずにプロジェクト・オーダーをテロ組織と認定して打撃を加えるような事があれば、国際社会に不安を与え政治の世界で猜疑心が強まるのは明らかです。最悪戦争に繋がっても不思議ではありません。

 

 

故にプロジェクト・オーダーが世界の秩序を乱すテロリストだったとしても自衛の域を超えた戦闘行動をとるには国際社会の同意を得るのが望ましいでしょう」

 

 

 

 

 

 

最初から分かり切っていたこと――――そう言わんばかりにため息をつく各国の将校。

 

 

 

 

「その国際社会の合意形成と承認に時間がかかるのは承知のこと。問題はその間ずっと彼らが待ってくれるわけではない、という事です」

 

 

 

 

「迅速に動けば国際社会の混乱を招き不要な揉め事を起こしかねない――――しかし合意形成と承認のプロセスを踏めば彼らに時間を与えてしまう、か」

 

 

 

 

 

しかし、次の瞬間――――

 

 

 

 

「そこで、我が国の首相からヤマ大国派遣軍とPOCUが合同で大規模演習を実施するのはどうかという提案があります」

 

 

織田の言葉に各国の将校達が目をぱちくりさせる。

 

 

 

 

 

「もっとも、急な提案なので準備の為に各弾薬類をPOCU本部に運び込んだ辺りで急遽中止という事も有り得ますが」

 

 

 

 

 

 

その言葉でPOCU側の席に座るリー・ベクターがハッとなり司令官の方を見る。

 

――――司令官も同じ答えに至ったようだ。

 

 

 

 

――――アウトサイド・ガーデン合意によって各国の政治的なしがらみとは無縁なPOCUならばプロジェクト・オーダーに迅速に対処できる。日本はそれを望んでおり、弾薬類を融通する事でせめてもの誠意を示す――――

 

 

 

 

 

「なるほど“合同演習”ですか。我が国も参加しましょう」

 

 

 

「そうですな。どうせなら他国との弾薬共用も見越した内容で調整しましょう」

 

 

 

 

織田――――そして日本国首相の本意を察した各国の将校が暗黙の賛同を示す。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

大まかな調整を終えて各国の将校が戻った後、司令官はオフィスで椅子にもたれていた。

 

 

 

 

 

 

「世界から大きく期待されてしまいましたね?」

 

 

 

リー・ベクターが司令官のデスクにコーヒーを置く。

 

 

 

 

 

 

「ありがとう――――それにしても今回の相手は厄介だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

――――数時間後

 

 

 

 

某所・会議室――――

 

 

 

「日本め、なかなか姑息な手を打ってくるではないか」

 

 

プロジェクト・オーダー(略称:P.o)の司令官が忌々しいと言わんばかりの表情をする。

 

 

 

「その点ですが世界への警告も兼ねて日本の首都圏を攻撃するよう“上”から指示が下りています」

 

 

部下の言葉にP.o司令官の口元がつり上がる。

 

 

 

 

 

 






如何でしたか?次回はプロジェクト・オーダーによる東京攻撃が行われます。


そして、ベナトル氏の創作した組織の1つであるUMAPが登場予定!是非ともお楽しみに!


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