報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

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ビルの高層階に閉じ込められた状況で、プロジェクト・オーダー(P.o)を率いる男サミュエル・テーヌと対峙するPOCU司令官。


果たして対峙する両者の行方は――――!?




報告書017『対峙:後編』

 

 

「先ず、君を招いた目的を明確にしよう」

 

 

自信を秘めた笑顔を浮かべながら話を切り出すテーヌ。

 

 

 

「我々は君達と共に戦いたいと思っている」

 

 

 

 

その提案はさすがに予想外だったのかベクターがチラリと司令官の方を見る。

 

 

「―――我がPOCUとお前達が共に戦う、だと?」

 

 

テーヌを睨みつける司令官。

 

 

 

 

「いかにも。我々プロジェクト・オーダーが目指すのは強固な秩序によってもたらされる安寧だ」

 

テーヌが席から立ちあがり、その場を歩く。

 

 

 

「我々が世界を従える事で人々は暴力や犯罪に対する恐怖から解放され、安寧を享受できる。その為ならば悪魔と呼ばれ恐れられることなど大した事ではない。君達もそうだろう?」

 

 

決して揺るがぬ信念がそこにはあった。

 

 

 

 

 

(――――――――)

 

 

アントイーター作戦で自らを救ってくれた司令官が心変わりしないだろうか?

 

そんな不安を秘めながら横目で司令官を見るベクター。

 

 

 

そんな彼女に『信じろ』と司令官は目線で応じた。

 

 

 

「我々に対する恐怖は我々への服従に繋がり、人々は決して我々に逆らおうなどどは考えなくなるだろう。そうなれば我々が正しく統治する事で世界に安寧と秩序がもたらされるのだ」

 

テーヌの迷いない言葉が続く。

 

 

「それは、たとえ自らが汚れても正義を為そうとする君達にも理解できる筈だ。さあ、手を組もうではないか」

 

 

 

 

 

「――――断る」

 

 

 

 

その一言に暫し固まるテーヌ。

 

「………今の私の話が理解できなかったのか?」

 

 

「理解した。その上で断ると言ったのだ」

 

 

 

 

 

テーヌの顔から笑みが消え無表情になる。

 

 

「我々は純愛保護機構戦闘部隊、と名乗っている。その意味をお前は理解していない」

 

 

 

「人は大切な人と互いに愛し合い、与えあい、分かち合って当たり前の幸せな人生を生きていく――――それを破壊しようとする者を排除するのが我々POCUの使命だ」

 

 

 

 

「それは我々も同じ筈だが」

 

そう口を挟むテーヌ。しかし――――

 

 

 

「お前達のような連中と一緒にするな」

 

ハッキリと拒絶の意思を示す司令官。

 

 

 

「お前達がやろうとしているのは、恐怖で人々を従わせる事だ。たとえ暴力や犯罪の恐怖から守られたとしても、代わりにお前達に怯え続ける事になる。そこにあるのはただただ恐怖ばかり――――愛などない」

 

 

 

「愛が無ければ安らぎも無い――――そのような世界に価値など無い。たとえどれだけ罵られようが、我々POCUはそれを断固として否定する」

 

 

 

司令官は決して譲らぬと言わんばかりの強い信念がこもった表情でテーヌを見たのち、ベクターに優しい笑みを見せた。

 

 

(司令官――――あなたを信じて良かったです)

 

笑みを返すベクターの後ろで美玉(メイユー)が何かに気付いたのか『伏せてください!』と声を上げる。

 

 

 

 

司令官がベクターに覆いかぶさり床に伏せた瞬間、爆発音と共に壁の一部が剥がれ落ち、外の空気が流れ込んでくる。

 

 

「残念だよ。こうなったらこのビル共々吹き飛んで貰おうか」

 

 

いつの間にかパラシュートを装着したテーヌが穴から夜闇へと消えていく。

 

 

 

 

その時、司令官の端末が鳴り響いた。

 

「こちら、司令官だ――――」

 

 

 

『司令官!このビルの底に大量の爆発物が――――あと1時間で起爆します!』

 

 

 

その時になって司令官はこの街の周辺にある都市に爆発物が仕掛けられた意図を理解した。

 

 

(このビルの爆発物を解体させない為に爆弾処理に精通した部隊の手を塞ぐのが目的だったのか!)

 

 

 

『しかも使用されているのは強力な爆薬――――爆発すればビルは完全に崩れ去ります!更に起爆装置はそちらのVIPフロアにあるようなんです!』

 

 

 

――――つまり、VIPフロアに閉じ込められた司令官、ベクター、メイユー、隊員の4人しか起爆装置を解除できない。

 

 

 

 

「ミス・王(ワン)。あなたの技術をお借りする事になりそうだ」

 

司令官の言葉に頷くメイユー。

 

 

 

 

「向こうの部隊から爆弾のデータを貰えませんか?」

 

その言葉に頷いた司令官が部隊に命じて送らせたデータをメイユーの端末に送る。

 

 

 

「――――そちらの隊員をお借りしても?」

 

 

「もちろん。我々の命を預けますよ」

 

 

 

 

強く頷いたメイユーは隊員と共に部屋を走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「ここの天井裏です!」

 

 

「はい!」

 

 

メイユーの指示した天井扉を開ける隊員。

 

 

そして梯子を駆け上がる――――

 

 

 

 

――――起爆装置の位置に思わず隊員が唸った。

 

 

「ミス・王、位置が高く私の手では届きません」

 

 

 

隊員に続いて上がってきたメイユーはビルを支える鉄骨の高い位置に仕掛けられた起爆装置をその目で確かめる。

 

 

 

「私を肩車してください。それなら私の手が届きます」

 

「はい!」

 

 

 

 

ショルダーバッグを首にかけ、その中からペンチを取り出して一本一本を慎重に切り始めるメイユー。

 

 

 

「――――あと30分。これなら余裕をもって解体できそうですが油断しないでください」

 

 

 

メイユーの言葉に少し安堵した隊員は、その時になって自分の両横に広がる光景に気付いた。

 

 

 

 

――――滑らかで柔らかい肌の感触。

 

 

 

――――もう一度、確認しよう。滑らかで柔らかい肌の感触。

 

 

 

 

チャイナドレス故に肌が露わになった脚、それに挟まれている――――

 

 

 

 

 

――――ドクン

 

 

 

一気に大きくなる心臓の鼓動。

 

 

 

 

――――ドクン

 

 

 

 

(お、落ち着け――――まだ爆弾解体は終わっていない)

 

 

 

メイユーがパチン、パチンとコードを切る音と自分の鼓動が重なっていくのを感じる。

 

 

 

そのまま10分ほどして解体が終わった事が告げられる。

 

 

「――――終わりました。戻りましょう」

 

 

「は、はい――――」

 

 

 

 

当分、この事は忘れられない――――そんな思いと共に隊員は先に降りていくメイユーに視線を送るのだった。

 

 

 

 

 






如何でしたか?次回は司令官がビルに閉じ込められている間に本部で起こった事件を描いていこうと思います。


P.oの襲撃を受ける本部、基地警備隊を率いる和泉 昌一中尉は本部を守り切れるのか!?お楽しみに!
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