司令官および副官の不在、周辺都市への部隊派遣によって手薄になったPOCU本部を突如としてプロジェクト・オーダーの部隊が襲撃する。
その襲撃の本命は捕虜となった兵士――――北条 沙紀の救出だった。
緊急電源に切り替わり、非常灯で赤く染まった廊下を走る和泉とイーデン。
「暗視装置のネックは肉眼と比べて視界が狭いことです――――周辺の警戒を厳に!」
「了解です」
足音を追いながら徐々に外へと近付いているのを感じる和泉。
――――――――――――――――
北条 沙紀は、先ほど聞こえた声に聞き覚えがあった。
『――――サキ!?』
――――あれはイーデン・ウィルキー中尉の声だ。
ついこの前、同じフランカー乗りとして楽しく話をしたばかりだ。
『ねえ、本当は色々聞いてこいと言われたことあるんでしょ?聞かなくていいの?』
『ああ、仕事の事を聞くよりもパイロットとして話してる方が楽しいからな。それに……悪人には見えなかった』
世界に絶望してプロジェクト・オーダーに入った自分にとって彼は邪魔な存在――――敵だ。しかし、飾らない笑顔が脳から離れない。
彼と話していた時、世界に対する絶望や憎しみを忘れられた――――そう思った事に気付いて首を横に振る沙紀。
そうこうしているうちに、警備が手薄なゲート付近まで来た――――
「見張りが居ます――――今から呼びますので、来るまで見つからないようにしてください」
P.o兵の1人が通信機を操作しヘッドセットのマイクに呼びかける。
――――――――――――――――
そのゲートでは4人のPOCU兵士が警備にあたっていた。
「不気味なくらい静かだな――――他のゲートじゃ激しい銃撃戦だと聞いているが」
兵士のひとりが同僚に話しかける。
「こういう時って、むしろここが狙われそうなもんだ。油断せず構えとこうぜ」
同僚の返事に『ああ』と頷いた次の瞬間――――
エンジン音と共に数台のセダン、バンが全速でこちらに向かってくる!
「全員よけろ!」
思わずそう発し、POCU兵士達が左右によけたかと思うとセダンから降りた数人のP.o兵がバリケードに向かって銃撃してきた。
「くっ――――迂闊にバリケードから顔を出すなよ!頭ぶち抜かれるぞ」
同僚たちにそう呼びかけ、通信機を操作する兵士。
弾切れ――――マガジンチェンジの隙を突こうと顔を出した兵士が直ぐに引っ込み、バリケードに弾が当たる音が響く。
「射撃開始のタイミングをずらして、マガジンチェンジをしている時も仲間が常に撃っている状態を作っている――――手練れだな」
こうして、左右にばらけたPOCU兵士が迂闊に動けない状況が出来上がったのを確かめたP.o兵のひとりがヘッドセットで味方に合図を送ると同時にゲートの反対側で待機していた救出チームがバンに向かって走り出す。
「逃がすか!」
バリケードから少し身を乗り出したPOCU兵士の銃撃で敵兵のひとりが倒れる――――次の瞬間、二の腕を弾が掠る。
「くっ――――このままじゃ捕虜が」
反射的に引っ込めた身を再び乗り出そうとした兵士の腕を掴む同僚。
「無茶するな!死んだら元も子もないぞ」
救出チームを乗せたバンがゲート前から立ち去る――――そのタイミングで後を追ってきた和泉とイーデンが現れる。
「逃がさん!」
逃走しようと走り出したセダンの1台が和泉の銃撃でタイヤを撃ち抜かれ電柱へと激突――――爆発炎上する。続いて2台目がひっくり返り火だるまになる。
更に3台目――――を仕留めようとした瞬間、反転してこちらに突っ込んでくるではないか!
運転席に狙いを定め引き金を引く――――弾切れ――――反射的に拳銃に持ち替えて可能な限り多くの弾を撃ちこむ。
そして横に跳んだ次の瞬間、和泉が立っていた場所を猛スピードで通過したセダンがそのまま建物の壁に激突して爆発した。
横に跳んで地面に倒れた姿勢のまま夜の冷えた空気をめいっぱい吸い込んで白い息を吐く和泉。
何度かそれを繰り返し、発した一言は――――
「――――よし、生きているな」
上半身を起こし、周囲を見回すと敵はもう引き揚げたのか静寂がそこにあった。
遠くから聞こえていた銃声もしない――――ヘッドセットで基地警備隊のメンバーに呼びかける。
「こちら和泉だ。今の敵の状況を連絡してくれ」
それに対する返事はいずれも『敵は引き揚げた』というものだった――――
――――――――――――――――
――――数日後
「AAP(Allied and Associated Powers)およびその友好国家との合同演習?」
和泉が思わず部下に訊き返す。
「はい、今回は弾薬共有など後方の兵站業務も演習の要点らしいですよ」
ゲートを次々と通過するトラックにはいずれもAAP参加国かその友好国の所属マークが記されていた。
「へえ……プロジェクト・オーダーに屈しない、というメッセージを発信するわけか。それにしてもやけに――――」
「やけに?」
部下が訊いてくるが、和泉は『考えすぎかな、忘れてくれ』とはぐらかす。
(――――量が多いじゃないか。演習でもこんなに使わないぞ?)
演習の真の意図を何となく察した和泉の胸中は穏やかではなかった――――
如何でしたか?
今回は敵が手練れの集まりという設定なのであまり無双させるわけにもいきませんでしたが、和泉中尉含めて基地警備隊メンバーの意地を見せつける感じになったかなと思います。
次回は司令官とリーちゃんのデート……ではなく息抜き回です。お楽しみに!