空戦で相打ちとなり機を捨てたPOCU航空部隊パイロット、イーデン・ウィルキー中尉は敵であるプロジェクト・オーダー(以下P.oと略)のパイロットである北条 沙紀中尉と共にサウデスト帝国のジャングルに迷い込む。
――――サウデスト帝国・某ギャング組織
「プロジェクト・オーダーとPOCUが武力衝突してくれたお陰で我々も動きやすくなりました」
幹部の1人がボスに話しかける。
「どうです?久々に活きのいい女でも攫ってマワしましょうか」
いやらしい顔をする幹部にボスも同じような笑いを浮かべる。
「それも悪くないな。POCUとプロジェクト・オーダーが潰しあってくれれば俺達はカネも女も奪い放題、好き放題できる」
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サウデスト帝国・ジャングル
目の前にはたき火、向こう側にはロープに吊るされた2人分の飛行服――――毛布の中を見ると下着一枚だ――――そしてたき火の傍らには暖をとる下着姿の沙紀がいる。
「君が助けてくれたのか、サキ――――ありがとな。ところでここはサウデスト帝国か?」
「ええ、それもテロ組織のアジトがあるジャングルよ」
参ったな――――そう呟くイーデン。
「はい、ご飯」
栄養バーを差し出してきた沙紀の方を見て、下着に包まれた豊かなモノから反射的に目をそらす。
「あ、ありがとよ」
「あら、大きいのは好きじゃなかった?」
イーデンの反応を楽しむようにクスクスと笑う沙紀。
「い、いや、そんな事は――――って言わせんな」
イーデンは赤面しつつ栄養バーをかじるのだった。
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その頃、イーデン・ウィルキー中尉が機を捨てて脱出したこと、その位置からテロ組織が跋扈するサウデスト帝国のジャングルに迷い込んだ可能性があることはPOCU本部の知るところとなり、救出作戦が練られていた。
エイジャン連邦共和国・POCU臨時借用飛行場
航空基地の駐機場に停められたKF-21、F-35、ハリアー、A-10。漆黒の塗装が施されたそれらはいずれも兵装パイロンにミサイルや爆弾類を満載しており一大拠点を軽く更地にできそうな雰囲気を纏っている。
「なんつうか殺意すごいっすね」
警備兵のひとりがパイロットに話しかける。
「まぁ全機フル武装は伝統芸能みたいなもんだからな」
警備兵とパイロットがそんなやり取りをしている中、駐機場の片隅では数機のYF-23が出撃命令を待っていた。
「魔術師の奴らまで来ているとは――――頼もしいな」
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「なあ、サキ」
温かいスープが入った金属製コップを空けたイーデンが沙紀の方を見る。
「何があってプロジェクト・オーダーに入ったのか聞かせてくれ」
沙紀はその言葉に意外と言わんばかりの表情を浮かべ、やがて口を開く。
「――――私、どうしても曲がったことが許せないんだ」
たき火に照らされた表情には、真っ直ぐで正義を追い求める強い信念が宿っていた。
「ギャングやテロリストが我が物顔で好き勝手やって、沢山の人達――――特に女の人が酷い目にあっているのに政治だの大人の対応だの言って力があるのに何もしない世界が嫌で、この道を選んだの」
たとえ、間違っていると罵られたとしてもね――――そう締めくくる沙紀。
「――――その気持ちは間違っていないよ。俺はサキを否定しない」
イーデンを見つめる沙紀。
「俺はたまたま運が良かったから、いい子ぶって誰かの為に力を使おうとしないクソみたいな連中が力を持つこの世界でも人間の可能性に賭ける選択が出来た――――――――けれども、世の中を信じられずそういう道を選んだのだとしても責められない」
「――――――――――――――――――」
しばらく時間が流れる。
「――――初めて言われた。そういうの」
沙紀の表情は穏やかだった。
「今まで敵対してきた人たちは皆、この理不尽な世界をちゃんと見ようともせず、それに絶望した私の気持ちに寄り添おうとすらせず一方的に間違っていると罵ってきた。けれどもあなたは私の気持ちに寄り添ってくれた――――嬉しいわ」
そう言うと、ブラジャーのホックを外して上半身が完全に露わになった。
「あなたには決して曲げられない信念があるのでしょう?――――――――きっと私達はまたぶつかる。だから後悔したくないの」
イーデンの逞しい胸板に手を添える――――彼の体温が伝わってくる。
「あなたを抱きたい。全部、身体で覚えていたいの」
イーデンの両手が沙紀の肩に添えられる――――大きく固い手から伝わってくる体温が心地よい――――
イーデンの瞳に映る自分の表情が自分でも思ってみなかったほど、女の顔をしていることに気付いた。
そのまま彼の首に腕を回し、額を重ねる。
「今だけ言わせて――――愛している」
POCU本部で初めて出会い、敵兵としてではなく1人の人間として接してくれた日――――幾度も尋問名目でやってきては談笑する日々――――本部を脱出した時に感じた心の痛み――――再会した時の心躍るような気持ち――――そんな感情の奔流が走馬灯のようによみがえる。
沙紀は自分に触れてくるイーデンの温もりを忘れまい、と両腕で彼を包み込んで自らの身体と重ねるのだった――――――――
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――――12時間後・午前3時
ぐっすり眠って体力が回復――――昨晩の筋肉痛はまだ残っているが――――したイーデン・ウィルキー中尉がシグナル発信装置を修理し発信する。
「よし、シグナルを発信した――――もうすぐ救援が来るだろう」
沙紀の方を見ると、ちょうど乾いた飛行服のジッパーを上げるところ――――胸元に昨晩つけたキスマークが残っている――――だった。
「お別れね、イーデン」
互いに抱擁をかわす2人。
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上空を飛行する数機のMig-21戦闘機にはいずれも地元の大規模なギャング組織のエンブレムが塗装されている。
《暇だな――――ん?》
パトロール隊を率いるベテランの隊長が前方に違和感を感じ取る――――
――――POCU航空部隊所属・アベリ隊
《前方に敵飛行隊を確認 アベリ1より全機 奴等に魔術を見せてやれ》
《了解、隊長》
交信が終わるや否や、数機のYF-23が前方のMig-21編隊へと襲い掛かり先頭の隊長機にミサイルを叩き込む。
《何だ!レーダーには何も映っていないぞ!?》
混乱し周囲を見回すが、夜闇に隠れた敵機を探し出すのは至難――――そうしているうちに後方からミサイルを叩き込まれた。
《奴ら魔法でも使っているのか!?》
ジグザグに動きながら敵機を探すギャング側のパイロット。その時、いきなり背中に静かにナイフを突き刺すような殺気を感じてミラーを見る――――驚愕しながら後ろを向くと夜闇にYF-23の平べったい機体がうっすらと浮かび上がっていた――――それがパイロットが最期に見た光景となり機体もろとも機銃弾でズタズタにされる。
《アベリ1より救出隊へ。パトロールは叩いた。繰り返す、パトロールは叩いた》
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『全機、直ちに離陸せよ!』
その号令と共に次々と滑走路を蹴って空へと駆け上がる漆黒の戦翼たち。
『必ずウィルキー中尉を救い出すぞ!』
如何でしたか?次回は火力モリモリなのでお楽しみに!