お久しぶりです。約半年もお待たせしてしまい申し訳ございません。
今回は以前予告しましたようにベクターちゃんの焼肉回を書かせて頂きます。
――――ミストルテ国・ゴーストタウン
――――今日はとことんツイていない。
POCU司令官はゴーストタウンとなった旧市街地でテロリストに不意を突かれ、こうして同行した部下、国連高官以下数名の職員と共に廃墟の遮蔽物に身を隠しながら呟いた。
なんという事はない、紛争が落ち着いて再開発が進んでいる国の視察を終えた後に現地在住の日本人が経営する焼肉店を副官のベクターと共に訪れる――――筈だった。
だが、現政権に反発する旧政権側の軍人で構成されたテログループが国連高官の視察計画を掴み、人質にすべく待ち伏せしていた――――
――――――――――――――――――――
ミストルテ:POCU本部
『――――この度、ヤマ大国が国号をミストルテに変更する事が決定しました』
ニュースから流れる音声を聞きながら書類を見直す白銀の長髪が特徴的な女性。
心無しか今日はご機嫌に鼻歌を歌っている。
『今日は焼肉に連れて行ってくれるんですよね?』
今朝、視察に出発する前に司令官に念押しするように確認したのを思い出す。
『ああ、視察が終わったら行こう。好きなだけ頼んでいいぞ』
――――――――――――――――――――
POCU本部・飛行場
滑走路に着陸する漆黒のKF-21。誘導路からパイロンに進み、エンジンを停止した機体のキャノピーが開く。
そしてタラップがかけられ、パイロットが降りてくる。
「お疲れ様です、調子は如何でしたか?」
整備兵がパイロットからヘルメットを受け取る。
「ああ、問題なく扱えた。F-35も扱いやすかったがこちらも良い機体だ」
部隊の統廃合で、ルゴプス隊のF-35をアルバート隊の予備機材にし、代わりにKF-21が配備される事が決まった時はどうなるかと思ったが案外なんとかなるものだ――――そんな事を考えながらパイロットは空を見上げた。
――――――――――――――――
そのニュースが飛び込んできたのは突然の事だった。
『旧政権派の将兵らがゴーストタウンで確認されました。現在視察中の国連高官は同行者共々行方が知れず――――――――』
戦地での使用を想定した頑丈なタブレットが大きな音と共に床に落ちる。
ベクターはタブレットを落としたまま固まっていた。
「………やきにく………」
これまで見た事もないような絶望した表情になるベクター。
――――次の瞬間にはインカムで全部隊に緊急事態を宣言していた。
「緊急事態!!ゴーストタウンを視察中の司令官を迅速に救助する!動ける航空部隊は直ちに出撃準備、準備ができた隊から発進せよ!」
――――POCU本部・飛行場
各隊が慌ただしく準備するなか、即応待機中で既に出撃できる状態にあったディロフォ隊のF-15 S/MTDがエンジンの唸りを響かせながら滑走路へと向かう。
『離陸後、最大推力で向かうぞ。副官殿の焼肉デートは我々が護る――――断じて中止などという悲劇は認めん』
次々とエンジンを轟かせながら蒼空へと上がっていくイーグル。
そして準備が完了した他の航空隊も離陸を始める――――
――――――――――――――――――――
超音速巡航でディロフォ隊を追い越したアルバート隊のF-35がゴーストタウンを機首のEOTSセンサーで偵察し市内を移動するテロリストの部隊を捕捉する。
そして司令官のGPS反応を微弱ながら捕捉、全部隊と情報を共有する。
「こちらアルバート1、司令官の現在位置を捕捉した。妨害がひどく多少の誤差はあるがこの建物で間違いない」
と、そこへベクターからの通信が入る。
『こちらベクター、アルバート隊は引き続き偵察を続行し情報を最新に保て』
「アルバート1、了解……アルバート1より各機へ、この作戦の成功は我々にかかっている。気を引き締めてかかれよ」
その頃、地上ではテロリスト部隊の指揮官が標的である国連高官の引き籠る建物を双眼鏡で確認し口元を吊り上げていた。
もうじき後方で待機させていた航空隊や地上の予備隊がここに来る筈だ。そうすれば優勢はこちらのもの――――奴らも諦めて降伏するだろう。
と、その時だった。ジェットエンジンの轟音が響いたのは。
「お、やって来たか――――」
――――POCU所属レックス隊のA-10がアルバート隊の示した攻撃目標を視認する。
「こちらレックス・リーダー、攻撃を開始する――――ゴミ共には地獄がお似合いだ」
直線翼が特徴的な機体をバンクさせ、地表めがけて急降下していく――――
「――――――――黒いA-10!?ま、まさか――――」
その瞬間、国連高官に同行するメンバーに見慣れない男が居た事を思い出すテロリスト指揮官。そして、今になってそれがPOCU司令官だった事に気付く。
敵に回してはいけない存在を怒らせてしまった――――その後悔は直後に降り注いだ30ミリ機関砲弾の雨によって指揮官や周囲の部下もろとも木っ端微塵になった。
ただでさえ地上の兵士から恐れられるA-10、それもPOCUの機体がやって来た事でテロリストはパニックになって散り散りに逃げていく。指揮官を失い無秩序に逃げ惑う姿は哀れですらある。
しかし、そんな彼らを上空から見つめる存在があった。
『目標を確認、対地攻撃を開始します――――』
漆黒のAC-130Uが機体の左側面に設置された砲を地上へと向ける。
『慈悲など無い、クソ野郎共を吹っ飛ばせ』
機長が檄を飛ばし、砲手達がそれぞれの砲に弾薬を装填していく。
そして砲は逃げ惑うテロリストを睨み、火を噴いた――――
――――ゴーストタウン郊外から中心部へと急行するテロリストの予備隊。
「くっ――――先行していた部隊と連絡が取れない、気を引き締めてかかれ!!」
と、そこへエンジン音が響く。
「――――――――味方、か?」
音がした方を見つめる――――そして漆黒のハリアーが見えた。
「こちらヴェロキ1、攻撃目標を確認。確実に始末するぞ、絶対に逃がすな」
部下に指示を飛ばし、地上部隊の先頭にいる戦車にミサイルの照準を合わせてマーベリックを発射する。
そして数秒後には戦車の砲塔が爆発音と共に天高く舞い上がった――――
――――――――テロリスト航空部隊・Mig-21
『こちら地上部隊、敵航空機の攻撃を受け被害甚大!!助けてくれ!!』
地上部隊から悲鳴じみた通信を聞かされ、顔をしかめるパイロット。
「こちら航空部隊、直ちに助けに向か――――」
その時、レーダーが敵航空機の反応を示した。
――――POCU所属・トルボ隊
「こちらトルボ1、状況を開始する――――副官殿の焼肉デートを邪魔する奴らに明日を生きる価値など無い」
その号令と共に前進翼が特徴的な機体――――Su-47がミグ編隊へと襲い掛かる。
――――囮として先行させていたミグ21の部隊が次々とレーダー画面から消えていくのを確認するパイロット。
「囮共には悪いが、俺達は上空で偵察中のF-35をいただく――――かかれ」
隊長の号令と同時に数機のミグ29が急上昇――――しようとして先頭の機体にミサイルが直撃する。
驚くパイロットの視線の先にはカナード翼が特徴的な漆黒のF-15 S/MTDの姿があった。
「今は味方部隊を守り抜くことを優先しろ、帰還のことを考えるのはその後だ。――――全機最大推力であたれ、悲劇なき世界のためにクズ共を始末しろ」
――――――――――――――――――――
同時刻、テロリストの本部――――
「何、目標の拘束に向かった部隊が壊滅――――高官と一緒にPOCU司令官が居ただと!?」
旧政権軍の将軍に与えられる迷彩服とベレー帽を身に着けたテロリストの頭領が狼狽える。
「本部を引き払うぞ、直ちに必要な物資だけ持って脱出だ!!」
その時、周囲をパトロールしていた航空隊がレーダー上から消えたとの知らせが入る。
「引き続き、他のパトロールも潰す――――アベリ1より全機、魔術を見せるぞ」
漆黒のYF-23は静かにテロリスト側の航空隊を刈り取っていく――――
そして空の護りを失ったテロリストに止めを刺すべく、ギガノト隊が現れる。
「ギガノト1から全機、石器時代に戻せ――――副官殿の楽しみを奪おうとした外道共は皆殺しだ」
多数のSu-34を従えたB-1Bに搭乗する指揮官から隊員らに号令が下ると共に多数の巡航ミサイルが一斉に発射され、テロリストの本部を地面ごと耕していく。
――――ゴーストタウンに着陸するPOCU所属のスーパーハインド。
そして護衛を引き連れて飛び出したベクターはほどなくして司令官を見つけ、笑顔になった。
「助けに来てくれたのか、ベクター」
ベクターは安堵の表情で出迎えた司令官の手を引いてそのままヘリへと向かう――――
「――――ベクター?」
「行きますよ、焼肉!」
――――――――――――――――
市街地の中にある焼肉店の煙突から煙が立ち上る――――隣接する広大な駐車場の片隅にはスーパーハインドが駐機している――――
店内に漂う肉の力強い香り。そして満面の笑顔で肉を頬張るベクター。
「やっぱり人のお金で食べる焼肉は最高です!」
「………………」
人より焼肉の心配かよ――――と呆れつつも満更でもない表情で肉を口に運ぶ司令官であった。
如何でしたか?今回は難しい事は考えず、焼肉の為にベクター氏が圧倒的火力でテロリストを粉砕する感じにしてみました。
次回は物語の本筋に戻り、当分はテロリストとの闘いを書いていこうと思います。