報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

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自らがプロデュースするアイドルにして恋人である莉里を護る為、枕営業の話を持ち掛けてきた社長の暗殺を図ったプロデューサー。

しかし、彼は失敗し莉里をおびき寄せる餌にされていた――――



報告書027『鋼の意思:後編』

 

 

 

椅子に縛り付けられた傷だらけの青年――――プロデューサーを見下ろしながら上等な葉巻を吸う中年男性――――社長。

 

 

「ここに忍び込む時にうちの護衛を何人か殺ったらしいね。だが――――無駄だ。おとなしくりりるちゃんを差し出してくれれば大事に可愛がってやろう。拒否するなら見つけ出して知り合いと何人かでマワしてやる」

 

 

その言葉に怒りを込めた眼差しを向けるプロデューサーだったが、拷問担当の傭兵に椅子ごと蹴飛ばされた。

 

 

 

「私に尻尾を振らなかったこと、存分に後悔させてやる」

 

 

 

そんな高笑いと共に部屋を去る社長。

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

――――数日後

 

 

日本:POCU日本支部

 

 

 

壁面の巨大モニターに映る地図。そこには山岳のルート上にPOCUの部隊を示すシンボルが配置されている様子が映し出されていた。

 

 

「豪邸がある山岳地帯の周辺を封鎖しました。本部や他支部からの増援部隊も所定の配置についています」

 

 

 

中央のメインモニターの左右に隊員のボディカメラ映像や上空を偵察するドローンの暗視映像が表示され、現場の空気感が指揮所にも伝わってくる。

 

 

 

状況は整った――――そう判断した指揮官は頷く。

 

 

「よし……上芭さん、聞こえますか」

 

 

『こちら上芭。今回は参加させてくれてありがとう――――あのクソ野郎、どうしてもこの手でやらないと気が済まないのよね』

 

 

「ええ――――宜しくお願いします。予測通りに事が運べば出番が来る筈です。そのままスタンバイを」

 

 

『了解!』

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

社長は獲物であるりりる――――安里 莉里の水着写真を眺めながら舌なめずりしていた。

 

 

――――この女性に目を付けたのは数年前、とある南の島だ。

 

 

元気で活発――――そして男を惹きつける体つきをしたこの若い女を食べたい、と思った。その為に手段を選ばずゴロツキをけしかけて彼女が当時真剣に交際していた恋人を殺しもした――――がギリギリの所で逃げられてしまう。

 

 

だが、運命と言うべきか数年後にあの時の女に似たアイドルを見かけた――――そして他人の空似ではなく取り逃がした本人だと確実な情報を手にした。

 

 

「私はねえ、欲しいものは絶対に手に入れないと気が済まないんだよ――――」

 

 

 

 

――――と、その時。

 

 

大きな音と共に豪邸が揺れた――――!!

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

超低空飛行で地面スレスレを飛んで豪邸に接近したスーパーハインドの編隊に傭兵達が慌てふためいて銃撃を加えるが、20ミリ機関砲の掃射を浴びて次々と弾けていく。

 

 

と、そこへパイロットに通信が入る。

 

 

『パイソン7、こちら指揮所。無人機が対空兵器を持った奴を見つけた、気を付けろ!』

 

 

「指揮所、こちらパイソン7。了解した」

 

 

 

焦る様子もなく対空ミサイルを抱えた敵を的確に捉え、機関砲の嵐を浴びせていくパイソン7。

 

 

 

そして数分後には辺りには赤い染みしか残らなかった――――

 

 

 

『パイソン隊、こちら指揮所。歩兵部隊を降下させろ』

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「奴らだ!!食い止めろ!!」

 

 

バリケードの陰からアサルトライフルを連射する傭兵達。

 

 

 

「おい、やべえ奴がいるぞ!!」

 

彼らの視線の先には――――今作戦の為に派遣された重装兵の姿が。

 

 

 

そして手に握られたミニガンが吼え、傭兵達がバリケードもろとも吹き飛ばされる。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「こんな馬鹿な……!?これほどの力を有しているというのか!?」

 

 

慌てふためきながら護衛と共に逃走用の車両に乗り込む社長。

 

 

 

「幸い逃走用のルートのひとつが空いています!」

 

運転席の傭兵が心から安堵したように社長に報告する。

 

 

 

「そうか、直ぐに出てくれ!近くまで来ている!!」

 

 

 

シャッターが開き、そこから飛び出すように出発するセダン。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

社長が『予想したルート』で逃走したとの報告が指揮所に届き、心の中で口角をつり上げる指揮官。

 

 

「上芭さん、出番です」

 

 

『オッケー!確実にやるから心配しないで、オーバー』

 

 

 

その返事と共に通信が切れる。

 

 

 

「大丈夫だとは思うが、あのルートの遥か向こう側で待機している部隊にも連絡を入れろ。奴が明日の朝日を拝むことなど絶対にあってはならんからな」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

静かな山道を駆け抜けるセダン。

 

 

 

「よし……空港に到着したらひとまずハイメイジェンに飛ぶぞ!」

 

 

社長がそう言った瞬間、左側に眩しい光を感じた――――

 

 

「な――――?」

 

 

 

振り向いて、目を剥く。

 

 

――――漆黒の装甲にPOCUの赤い文字が綴られた16式機動戦闘車が数台追いかけてくるではないか!!

 

 

 

「ば、馬鹿な!?ここに来ると予測して潜んでいたというのか!?」

 

 

 

山道のカーブを巧みなハンドル捌きで速度を落とさず通過するセダン――――だが、それは後方から追いかけてくる16式も同じだった。

 

 

「もっとスピード出せんのか!?」

 

 

「無茶言わんでください!これが限界です!!」

 

 

 

――――と、その時。追撃していた16式の先頭車に異変が起こる。

 

 

 

「――――なんだ?明後日の方向に砲を向けて――――」

 

 

 

 

その瞬間、16式の105mmライフル砲が吼えたかと思うとセダンの前方に着弾しバラバラになったアスファルト片が飛び散る。

 

 

「ま、マズい――――」

 

思わずブレーキで減速――――それを見逃さず16式の機関銃タレットが火を噴き、穴だらけになったセダンが横転した。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

16式の車長席から降りた上芭 巳栖嶺。

 

 

 

拳銃を抜いて横転したセダンに近付くと、上芭から見て反対側の方から奇跡的に軽傷で済んだ社長が這い出てくるところだった。

 

 

 

足音に気付き、身体をこちらに向ける社長――――その口から悲鳴が漏れる。

 

すかさず股間に拳銃弾を数発ほど撃ちこむ。

 

 

 

絶叫――――続いて足にも数発。

 

 

 

「ひいいいいい………!!!!お願いです、どうか……!」

 

 

「アンタが散々食い散らかした女の子達もそうやって助けを求めたと思うのだけど、一度でも応えたことがあったかしら?」

 

 

 

だが、社長は何も答えず泣き叫びながら首を横に振るばかりだ。

 

 

「――――――――」

 

無言で拳銃を構え、額に照準を合わせる上芭。

 

 

 

社長の恐怖に満ちた表情が銃声と共に凍り付き、やがて血だまりが広がっていく。

 

 

 

「――――こちら上芭、標的を始末した。繰り返す、標的を始末した」

 

 

『こちら指揮所、ボディカメラで標的の死亡を確認しました。生き残りからの事情聴取とその後の後始末はこちらでやります――――お疲れさまでした』

 

 

 

 

「ありがとう、これより帰還する――――スッキリしたわ、オーバー」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

――――数ヶ月後

 

 

 

「みんな――――!!今日はりりるに会いに来てくれてありがとうー!!大好きだよ!!」

 

 

ファンの大歓声と共にステージを去るりりる――――莉里。

 

 

 

 

と、そこに歩み寄る青年。

 

 

「相変わらず最高のパフォーマンスだったよ、莉里」

 

 

「――――プロデューサーさん、もう包帯取れたんだ」

 

 

 

あの後、保護されたプロデューサーは病院に運び込まれ治療されたが――――顔や身体には拷問の傷跡が残ってしまっていた。

 

 

「ああ、この通り元気さ。それよりツアー完遂お疲れ!ご褒美は何がいい?」

 

 

 

暫く考え込んだ莉里だったが、その口から出てきたリクエストはプロデューサーを驚かせた。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

――――ホテル・客室

 

 

 

レストランの豪華な料理を堪能した莉里と共に同じ客室に入ったプロデューサーは莉里に続いてシャワーを浴びていた。

 

 

 

――――緊張で胸が高鳴る。

 

 

 

 

このシャワーを止めて浴室を出たらもう後戻りするわけにはいかない――――

 

 

 

ふと、このお願いをしてきた時の莉里の決意したような眼差しを思い出す。

 

 

――――このまま有耶無耶にして逃げてしまえばきっと後悔する――――

 

 

 

 

莉里の気持ちに真正面から向き合うと決めたプロデューサーは意を決してシャワーを止めた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

バスローブに身を包んで浴室を出ると同じくバスローブ姿でベッドに腰掛ける莉里がこちらを見つめてきた。

 

 

その隣に腰掛ける――――緊張した息遣いと鼓動が聞こえてくる。

 

 

 

 

「プロデューサーさん――――」

 

近距離で見つめてくる莉里。

 

 

 

「ずっと一緒にいてくれる?」

 

 

その言葉が嬉しくて、静かに、しかしハッキリと頷く。

 

 

 

「――――ああ。僕のほうこそ莉里の側にいさせて欲しい」

 

嬉しそうな表情になった莉里が顔を寄せて額を合わせてくる。

 

 

 

背中に腕が回されるのを感じた――――こちらも莉里の背中に手を回し、身体を抱き寄せる。

 

 

 

バスローブ越しに感じる柔らかくて温かな感触――――

 

 

 

気持ちが昂り、どちらからともなく唇が重なった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

炎が燃え盛るひと時が過ぎ、息切れするプロデューサー。身体から大量の汗が滴る。

 

 

 

――――こうして向き合っている莉里も同じようだった。

 

 

 

「――――――――」

 

 

 

莉里の身体を抱き寄せ、その柔らかく温かい感触を嚙み締める。

 

 

「愛している、莉里」

 

 

 

その言葉に莉里も幸せそうな笑みを浮かべ、額をくっつけてきた。

 

 

「私も愛しているよ――――〇〇」

 

 

 

一部の人しか知らないプロデューサーの本当の名前を呼ぶ莉里。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

久々の休暇でミストルテを訪れ、ホテルのプライベートビーチを歩く2人。

 

 

穏やかで幸せそうな表情を浮かべる彼らの左手にはそれぞれ薬指に銀色のリングが嵌められていた。

 

 

 

 

気持ちいい潮風がビーチを駆け抜け、足が止まる。

 

 

すると莉里がプロデューサーに身体を寄せてきた。

 

 

 

そしてその肩にプロデューサーの手が触れ、優しく、しかししっかりと抱き寄せる。

 

 

2人の視線の先には蒼く美しい海、そして空が広がっていた――――

 

 

 






いかがでしたか?


ぶっちゃけ書きたいやつを書いただけなのでストーリー性はあまり無いですが楽しんで頂けたなら幸いです。

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