平穏な日々を過ごしていたPOCU。しかし、新たなる悪が姿を現そうとしていた――――
――――南インド洋
洋上を航行するPOCU所属のハイネリア級情報収集通報艦。
傍受した情報を収集・整理する一室で暇そうにしていた兵士のひとりがスクリーンに表示された「WARNING」の文字に顔色を変えた。
「人身売買に該当すると思われる通信を傍受!」
「探知、開始しました!」
暇でリラックスしていた兵士達の表情が引き締まり、真剣な眼差しでモニターを見つめる。
《――――簡単なことだよ。私が君の運営する施設に資金を出す代わりに、君の娘を差し出す。悪い話ではないだろう》
《――――し、しかし……》
《返事は一週間待ってやる。もしも拒むようなら施設の子供達は身寄りもないまま路頭をさまようだろうな………賢明な判断を期待しているよ》
その会話に兵士達が怒りの滲んだ表情を浮かべる。
「探知に成功!脅迫者および被害者の位置は両者ともハイメイジェンのマカオ地区です!」
「よし、情報を本部に送信しろ!」
――――――――――――――――
マカオ地区のとある児童養護施設で頭を抱える父の背中に悲しげな眼差しを向ける女性、羅 蘭梅(ルオ・ランメイ)。
「お父様、私――――あの男の所に行くわ」
「しかし、私は君にそんな思いをして欲しくなんかないんだ。まだ回答まで時間は――――」
父親、羅 宇杰(ルオ・ユージェ)が苦しげな表情を浮かべる。
「お父様。もう他に手がないのでしょう?急に食料が大きく値上がりしてこのままじゃ施設の子供たちは身寄りがないまま街に放り出されるわ」
ランメイの言葉にユージェはただ沈黙するしかなかった。
――――――――――――――――
夜景が見える河原でひとり立っていたランメイに治安部隊の戦闘服を纏った青年が歩み寄る。
「ランメイじゃないか、どうしたんだ」
バラクラバの目元だけでも分かるほど端正な顔立ちをしたその青年はランメイの表情から只事ではない事態だと察したようだ。
「宇航(ユーハン)」
街中で知り合ってから幾度もの交流を経て特別な存在になったその青年の名を呼ぶランメイ。
施設の子供達や父親の前では気丈に振る舞うランメイも、この青年――――雷 宇航(レイ・ユーハン)の前では年相応の女の子に戻ることができる。
その安心感から自然と涙が溢れ、気が付けばユーハンの胸で泣いていた。
「――――ランメイ?」
――――その時だった。ユーハンの通信機に連絡が入ったのは。
――――――――――――――――
数日後:ミストルテ国・POCU本部
統合情報部・情報解析班およびサイバー対策班の調査により脅迫者の素性が明らかになったとの連絡を受ける司令官。報告を受け取った副官のリー・ベクターがタブレットと司令官のPCを接続し、情報を表示する。
「脅迫者は楊 智敏(ヤン・ヂーミン)。マカオで複数のカジノを経営する大富豪で地域に顔が利く大物のようです。しかし、彼はその権力と財力にモノを言わせて若い女性を玩具にしているとの噂が囁かれています」
画面に表示された蛇のようにずる賢そうな顔立ちに司令官が顔をしかめる。
「彼は次の獲物として、とある女性に目を付けました。その女性がルオ・ランメイさんです」
その顔写真からは少女のようなあどけなさがありながら活発で可憐な女性であることが窺えた。(眩しい笑顔の写真を見たPOCU隊員の1人は“まるでラ〇ザのアトリエの主人公だ”と評したとのこと)
「ヤンはランメイさんを我が物にすべく、彼の父親であるルオ・ユージェさんの運営する児童養護施設に狙いを定め、施設に食料品を卸している業者に命じて納入価格を不当に吊り上げさせました。このままいけば施設は資金が尽きて閉鎖、保護されている子供達は身寄りも無いまま街に放り出されます――――」
冷静に説明しつつも、ヤンへの怒りを微かに滲ませるリー。
「そしてユージェさんに資金提供の話を持ち掛け、その対価としてランメイさんの身柄を要求しました。これが調査で明らかになった真相です」
司令官が頷き、PC画面に目を落とす。
「確か、ランメイさんは恋人であるレイ・ユーハンさんが保護しているんだな?」
リーが「はい」と答える。
「ヤンの拠点および人員については?」
「把握済みです。なお現時点で囚われている人質はいないようです」
頷いた司令官の口が静かに開いた。
「――――レッドシャーク・コマンドを出動させる」
――――――――――――――――
――――更に数日後、雨の激しい夜――――
マカオ地区から離れた平原で待機する、漆黒の機体に赤い文字で『POCU』と書かれたスーパーハインド兵員輸送ヘリ。そのライトに照らされ平原で整列する兵士達の姿が浮かび上がっている。
雨で濡れた漆黒の装備がライトの光で艶を放っている姿は印象的だったが、それ以上にNVG(暗視装置)、ヘルメットの横に取り付けられた小型識別装置が微かに放つ赤い光が目を引く――――
更にヘルメットのバイザー部分まで赤で統一されており、一般的なPOCU部隊とは大きく異なる雰囲気を纏っていた。
――――強固な装甲と外骨格を身に纏い、高火力の重火器で武装したPOCU司令官直属の「殺し専門部隊」として恐れられるRed Shark Command(レッドシャーク・コマンド。略称RSC)。
そして整列するRSC兵士の前に彼らと同じようなアーマーと外骨格に身を包み専用の火器であるGAU-19を装備したコマンダーことPOCU司令官が現れる。
「標的やその拠点の情報についてはブリーフィングで説明した通りだ――――ゴミ共に情けは必要ない、殲滅せよ」
その言葉を合図にRSC兵士が次々とヘリに乗り込んでいく。やがて搭乗を終えると数機のスーパーハインドは夜の闇へと飛び立っていった――――
如何でしたか?
次回はいつもよりバイオレンス全開の無慈悲殲滅回になる予定です。乞うご期待ください!