報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

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中国のマカオに拠点を構える大富豪ヤンは自分の好みの娘を我が物にするべく、その父親の経営する児童養護施設に圧力をかけるという卑劣な手段に出ていた。


子供達を護る為にヤンの毒牙の前に自らの身体を差し出そうとするランメイ。


しかし、その哀しい決断をさせまいとPOCU司令官は「殺し専門部隊」Red Shark Command(レッドシャーク・コマンド。略称RSC)をヤンのもとに差し向ける。




報告書029『蘭の花は歓喜で咲き誇る:中編』

 

 

――――マカオ

 

 

雨に濡れるカジノ街はその冷たさを跳ね返すかの如き熱気を感じさせる、絢爛としたビル群をネオンで一層輝かせていた。

 

 

その中でも一際大きいビル――――その屋上で警備していた悪党が違和感を覚える。

 

(――――ヘリの音?)

 

 

――――次の瞬間、20ミリ機関砲弾をまともに受けて彼の身体は血霧と化した。

 

 

 

直後、屋上に漆黒のスーパーハインドが着陸しアーマーと外骨格で武装したRSC隊員が次々と降りていく。

 

 

――――――――――――――――

 

 

――――ビル内部

 

 

銃弾の雨が悪党達を蜂の巣にしていく。

 

 

「うわああぁぁぁぁっ」

 

 

生き残った悪党が悲鳴をあげて逃げる――――が、その後ろでRSC隊員のひとりがM134ミニガンを構え、発射する――――そしてミニガンが睨んだ先には肉塊しか残らなかった。

 

 

 

「各員、悪党を殲滅しつつヤンを探し出せ――――ヘリ部隊、地上の監視を続行しろ。逃走しようとする悪党は手当たり次第殺して構わん」

 

司令官が指示を出す傍らで銃声が響く。

 

 

 

「やはり情報通りだな」

 

カジノのサービスを担うスタッフ、シェフ、清掃員に至るまでヤンは外部の人間を雇わず自らの犯罪組織のメンバーで固めている――――とのことだったが、彼らが銃を手に向かってくるのを見て確信した。

 

 

そして、その数の多さから見て間違いなくヤンはここに居る――――

 

 

 

悪党達が慌てて逃げ込んだ先を追いかけると案の定、防弾扉が立ちはだかった。

 

 

「SMAWを準備しろ、あの扉を破壊する!」

 

司令官の指示のもと、兵士がロケットランチャーを構え引き金を引く。――――轟音と共に防弾扉が吹っ飛び、悪党達の悲鳴が響く。

 

 

「よし、残らず狩り尽くせ――――多くの女性を踏み躙ってきたゴミ共に慈悲など要らん、奴らには豚箱すら生温い」

 

 

 

防弾扉を破壊され未だ出入口から立ち上る煙の中に漆黒のシルエットが浮かび、バイザーと識別装置の赤い光が怪物の目の如き不気味な光を放つ。

 

 

「あ…ああ……」

 

その姿に恐怖を感じた悪党の何人かが悲鳴をあげながら逃げ出す――――が、兵士達が構えたMG3、M134が咆哮しある者は頭を吹き飛ばされ、別の者は身体が弾けた。

 

 

「ええい!怯むな!奴らを皆殺しに――――」

 

部下に檄を飛ばしつつ応戦していた悪党側の指揮官だったが、顎の上が無くなり糸の切れた人形のように倒れる。

 

その様子を見た悪党達が絶叫と共に蜘蛛の子を散らすように逃げていくが機関銃弾の雨がバリケードもろとも彼らを粉々にするのだった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

ヤンは護衛を引き連れて極秘のヘリポートへと向かっていた。

 

 

(馬鹿な――――奴らの殺し専門部隊が来ただと!?たかが気に入った女性に言い聞かせて少しばかり楽しんだだけではないか!)

 

心のなかでそう呟きながら地下へと向かい、そこに格納されていたヘリに乗り込む。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「ん?」

 

 

カジノ上空を飛行していたPOCUのスーパーハインド。そのパイロットがカジノの敷地の一部が扉のように開いていることに気付く。

 

 

――――次の瞬間、そこからヘリが飛び出して逃げ始めた。

 

 

「逃がすか!!」

 

スーパーハインドの20ミリ機関砲が唸り、ヘリのコックピットを中のパイロットごと吹き飛ばす――――コントロールを失ったヘリが回転しながらカジノの屋上に激突した。

 

 

 

「うわああぁぁぁ!」

 

機内から投げ出され屋上に叩き付けられるヤン。護衛のほうは不運にも地上の方に落ちていった。

 

 

 

コンクリートの床に叩きつけられた痛みに苛まれながらも必死に這いながら逃げようとするが――――そこに重量感ある足音が迫る。

 

 

恐怖で冷や汗を噴き出しながらヤンがゆっくりと後ろを見るとGAU-19を手にした司令官がそこに立っていた。

 

雨に打たれ光沢を放つ漆黒の装備、そしてバイザーと識別装置の赤い光。その姿は紛れもなく死を宣告する死神だ。

 

 

 

「た、頼む……もうしないから許してくれ……賠償もする……」

 

懇願するような眼差しで司令官を見るヤン。

 

 

 

「お前の食い物にされた人達の傷や苦しみがどれだけ深いか考えた事はあるか」

 

慈悲のない冷たい声で司令官が言う。

 

 

 

「お前が謝罪して賠償して、それで被害者が救われると思うか」

 

反論を許さない冷たさがそこにあった。

 

 

 

「被害者のために我々が出来ることはただ一つ。お前という悪夢の根源を消し去り、少しでも安心して眠れるようにすることだけだ」

 

その言葉が死刑の合図だと言わんばかりにGAU-19を構える。

 

 

 

「あ……あああ……!い、い――――」

 

嫌だ――――と言葉になる前にGAU-19が咆哮し、マズルフラッシュが夜の闇を照らす。

 

 

 

――――硝煙がおさまると、そこには無数の弾痕と真っ赤な染みがあった。

 

 

 

「――――ミッション・コンプリートだ」

 

 

 

司令官はそう口にし、部隊に残敵の掃討を命じるのだった。

 

 

 

 






如何でしたか?


次回は事件解決後の後日談になります。

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