報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

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権力と財力に物を言わせて悪逆の限りを尽くしていた大富豪ヤンはPOCUによって討たれ、平穏が訪れる。


しかし、POCUのミッションはまだ終わっていなかった。



報告書030『蘭の花は歓喜で咲き誇る:後編』

 

 

――――POCUがヤンを討ち取ってから半年が経ったとある日

 

 

意識が徐々に浮かび上がり、目を見開くランメイ。

 

窓のほうを見るとカーテン越しに朝日の光がうっすらと室内を照らしていた。

 

 

――――台所の方からいい匂いがしてくる。

 

ベッドから降り、下着、服を身に着ける。

 

 

 

洗面所で顔を洗い、ダイニングに行くとユーハンが朝食をテーブルに並べている所だった。

 

「おはよう、ランメイ。丁度できた所だよ」

 

 

 

火力一番亭の料理を研究したという彼の言葉に違わず、眠気が吹き飛ぶような旨味がたっぷり詰まった料理を堪能し感想を口にするとユーハンは照れ臭そうな笑顔を見せてくれた。

 

 

 

――――かけがえのない幸せなを噛み締めるランメイの笑顔は赤色の蘭の花に込められた花言葉、「純粋な愛」を表すかのように輝いていた。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

ミストルテ国・POCU本部

 

 

「あの2人は幸せに過ごしているみたいだな。身体を張った甲斐があったというものだ」

 

副官のベクターから受け取ったデータを眺め、満足げに頷く司令官。

 

 

「ヤンと繋がっていた犯罪組織や警察内部の内通者も掃討しましたし、あの一帯はもう安全でしょう」

 

司令官の言葉にベクターが応え、タブレットを操作する。

 

 

 

「――――司令官、以前日本の農村で人身売買が行われていた件の調査で進展がありました」

 

「ああ、日本の村での一件か(報告書007~009参照)」

 

 

 

あの一件で保護した5人の女子高校生は同年代の少女よりも成長が早く、デザインベイビーとして生まれてきた事が判明している。あの後すぐBMSに命じて彼女たちを製造したと思しき組織が何者なのかを調べさせていたのだ。

 

 

 

「調査した結果、彼女たちを製造したのはアティアント豪商連合領内に本部を置く世界的な犯罪組織である事が判明しました」

 

ベクターがタブレットを操作するのと同時に司令官のPCに表示される複数の画像。

 

 

 

「組織名はポーリュプス――――ラテン語でオクトパスを意味します。地方の都市郊外に大規模な施設を建設しており、そこが本部となっています。他にも拠点があるようですが詳細はまだ掴めていません」

 

 

「堂々と目立つ所に本部を置くとはな。我々の目を引き付ける為だろう」

 

司令官の言葉にベクターも同意する。

 

 

「はい、ご指摘された通りです。彼らはネットワークを通じて世界に拠点を持っており大型船舶を改造した移動拠点も複数持っているようです。1つの拠点を潰しても――――いえ、おそらく各地の拠点を潰しても移動拠点がある限り幾ら潰しても組織は滅びないでしょう」

 

 

「まさにタコの名に相応しいな。中小国に匹敵するレベルの資金力を持っているのも厄介だ」

 

そう言いながらポーリュプスの日本における活動内容の詳細を開く司令官。

 

 

 

「なるほど、デザインベイビーが遺伝子操作した通りの機能を発揮できるかどうかの実験地として日本の農村を使っていたのか」

 

あそこなら害獣対策で銃を堂々と扱えるし、怪しまれない。どうも村長はその実験地を提供する見返りとして、デザインベイビー技術を利用した「娼婦売買ビジネス」で巨万の富を築こうと目論んでいたようだ。

 

事実、ポーリュプスが製造した実験体である5人については兵士としての性能試験が完了すればその身柄を村長が自由にしてよいという契約を結んでいた事が明らかとなっており、その後に予定されていた「娼婦売買ビジネス」についても純利益の3割をポーリュプスに上納するという条件付きで村長が自由にできる予定だったことが契約に記されている。

 

 

 

改めて保護した5人の写真を見る――――全員が容姿端麗で男性を惹きつける魅力を持っていると納得できる。気に食わないのは、最初から男の道具として使う為にそういう容姿を与えた点だ。

 

 

もっとも怒りをぶつけるべき村長はとっくにPOCUの手で討ち取られている。

 

 

 

「――――それにしてもポーリュプス、世界のあちこちで好き放題やっているようだな。複数の犯罪組織を隠れ蓑にしている」

 

日本のヤクザやハイメイジェンのチャイニーズマフィア、シベリアン・ロシアのロシアンマフィアなど現地の犯罪組織を介しているため、現時点でBMS以外にポーリュプスについて詳細な情報を得ている組織はおそらくいないだろう。世界の警察機関ですらその存在は掴めていない筈だ。

 

 

 

「実はこのポーリュプスの存在を独自に察知した人物がいます」

 

その人物の顔写真に司令官が驚く。

 

 

「……サミュエル・テーヌ!?プロジェクト・オーダーの司令官じゃないか」

 

 

そこにベクターの補足が入る。

 

「元々彼はフランス軍の高官でしたが犯罪組織と癒着する政治家に不信感を抱いており、軍人として働く傍らで武器の横流しや犯罪者の臓器売買などで得た資金で独自の武装組織を立ち上げ裏社会で一大勢力を築きました。これが現在のプロジェクト・オーダーでしょう」

 

 

ちなみにテーヌが組織を立ち上げるきっかけとなった政治家は後にプライベートジェットで移動中に何者かに撃墜されて死亡しているとのことだった。

 

 

「プロジェクト・オーダー……少しずつ実像が見えてきたな」

 

 

 





如何でしたか?今回は物語のラスボスとなる犯罪組織ポーリュプス、POCUとは相容れないやり方を使ってでも悪を滅ぼそうとする組織プロジェクト・オーダー創設のきっかけなど物語の核心になる要素を登場させました。

今後もお楽しみ頂ければ幸いです。
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