報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

32 / 37

世界的な犯罪組織ポーリュプスが南米大陸北部・アティアント豪商連合領に建設した巨大要塞トラロックはその強力な防空設備によりプロジェクト・オーダーが派遣したステルス機部隊を壊滅させる。


POCUの調査により、要塞自体がPOCUの目を引き付ける為の囮である事は判明していたがその強力な武力を背景に好き勝手するならず者達を放っておけず、司令官は要塞の破壊を決定。


要塞を破壊する前の前段階として要塞付近の村から攫われジャングル内の廃村に集められた女性達の救出作戦が開始され、POCUが誇る選抜特殊作戦部隊『ARES』がその牙を剥く。




報告書032『難攻不落の要塞:後編』

 

 

廃村の片隅で暇を潰していたギャングがタバコを吸おうとポケットを探るなか、背後から静かに接近する人影。そしてギャングがタバコを咥え火を付けようとした瞬間、首にナイフを突き立てられ絶命する。

 

 

地面に倒れたギャングの死体を草むらに引きずり込む人影――――パンドラ迷彩を施された迷彩服姿の兵士が無線でギャングを無力化した事を伝える。

 

 

部隊を率いる指揮官のもとに同じような報告が次々と届けられ、廃村は静かなままARESに制圧されつつあった。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

村の中でも一際大きな建物の一室に集められた女性達。

 

暇を持て余したギャングのひとりが室内の女性を品定めするようにニヤニヤしながら眺める。

 

 

「ボスの味見が終わっていないとはいえ、たまらねえな」

 

そんなギャングの様子にもう1人が呆れたような目をする。

 

 

「止めておけ、ボスより先に手を出せば処刑されるぞ」

 

そんな相棒の制止も虚しくギャングは女性へと歩を進める。

 

 

「おお、お前…日系人か?肌がたまらねえな」

 

遠慮ない目つきに恐怖する女性。

 

 

「ヤったらバレちまうが、触るくらいなら大丈夫だろ」

 

そう自分に言い聞かせつつ、女性の衣服のボタンを外していくギャングは背後の入り口で相棒が頭部を撃ち抜かれた事に気付かなかった。

 

 

「へへ……」

 

ボタンを外した服の隙間に手を滑り込ませようとした次の瞬間、脚を撃ち抜かれ強烈な痛みが走る。

 

 

「う、うああああ!?」

 

絶叫するギャングを女性から引きはがし、床へと放り出すARES隊員。

 

そのままKriss Vectorサブマシンガンを構え、その頭部を撃ち抜く。

 

 

呆然とする女性の近くに別の隊員が歩み寄り、跪くような姿勢で目線を合わせる。

 

「もう大丈夫ですよ、助けに来ました」

 

 

すると安堵したのか女性の目から涙が溢れ、しばらく泣き声が響くのだった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

ARES隊員に護衛されながらジャングルの中を駆ける女性達。

 

その後ろで数人の隊員がしんがりとなって追っ手にサブマシンガンを発砲する。

 

 

「間もなく救援が来ます!」

 

その報告と同時に遠くからヘリのエンジン音が聞こえてくる。

 

 

「皆、持ちこたえろ!間もなく援軍が来る!」

 

隊員の無線に指揮官がそう呼びかけた数十秒後、漆黒の塗装が特徴的なスーパーハインドが到着し機関砲を唸らせた。

 

 

その火力の嵐を前にギャング達が次々と血霧になって消えていく。

 

 

掃除が終わり、ジャングル内の開けた場所に着陸するスーパーハインド。

 

「さあ皆さん、乗ってください!あなた方を保護します!」

 

 

――――――――――――――――

 

 

洋上:POCU海上作戦部隊

 

 

戦闘型重航空母艦デイノスクス級1番艦デイノスクス

 

 

「ARESと保護対象を乗せたヘリが離陸したとのことです!」

 

オペレーターの報告に視線を向けた艦隊司令が頷き、再び正面のモニターを見据える。

 

 

「本艦に到着し次第、保護対象に必要なケアを行うよう医療班に伝達せよ。――――これよりトラロック要塞への攻撃に移る。極超音速ミサイルの発射準備を開始せよ」

 

 

その命令が艦隊に伝達され、デイノスクスの周囲を護るように航行するカルカロクレス級およびクレトキシリナ級イージス駆逐艦、バシロサウルス級アーセナルシップのVLSハッチが次々と開放されていく。

 

 

「ミサイルへのデータ入力、完了。いつでも発射できます」

 

オペレーターの報告を受け、艦隊司令が一息置いて口を開く。

 

 

「ゴミ共に極超音速の死を――――撃て!」

 

 

 

その命令と共に洋上の漆黒の艦影から次々とツィルコン極超音速ミサイルの噴煙が伸びていき、上空の青空に幾本もの軌跡を描いていく。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

――――トラロック要塞

 

 

その司令室でモニターを眺めるギャングのボス。

 

「あの連中がくれた要塞のお陰で俺達に逆らう奴は皆無。周辺の村は俺達のナワバリ、女は好き放題出来る――――最高だな」

 

 

もっとも、要塞内に連れ込めないのは少々残念だが、と続けようとした次の瞬間、要塞の警報が鳴る。

 

 

「何事だ!?」

 

 

「ボス、攻撃です!何発もの極超音速ミサイルがこの要塞に!」

 

 

部下からの報告を受けてモニターを凝視するボス。そこには要塞の防空レーダーが捉えた映像が表示され、洋上から要塞へと向かう多数の反応が映し出されていた。

 

 

防空施設のレールガンが起動し、ミサイル反応が次々と消えていく――――が、それを上回るペースで新たなミサイル反応が次々と出現していく。

 

 

「お…おい……大丈夫なのか!?」

 

不安を顔に浮かべるボス――――次の瞬間、レールガンの迎撃をすり抜けたミサイルが着弾しレールガンのひとつが破壊される。

 

 

「!?」

 

皆が戦慄した次の瞬間、迎撃をすり抜けるミサイルの数が次々と増えていきレールガンが破壊されていく。

 

 

やがて要塞本体にも次々とミサイルが着弾するようになり、各所から爆発音が聞こえてくる。

 

 

「ば……馬鹿な……俺達の要塞が……」

 

 

ボスが信じられない、と言わんばかりに言葉を絞り出した次の瞬間、凄まじい振動と共に天井が破壊されツィルコンの弾頭がボスの目前に着弾、爆発する。

 

 

「う、ああああああああ!」

 

 

その断末魔の叫びはボスの肉体もろとも木っ端微塵にされるのだった――――

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

数日後:ミストルテ国・POCU本部

 

 

「トラロック要塞は完全に破壊され、周辺地域の治安は回復したようです」

 

ベクターの報告に頷く司令官。

 

 

「そうか。あそこは我々とは敵対しているが、女性が不幸になるのは放っておけなかったからな。良かった」

 

 

そう言い、オフィスの窓から基地を眺める司令官。ちょうど上空のパトロール任務に向かうであろうアルバート隊所属のF-35Aが轟音と共に離陸し、雲一つない青空に真っ白なコントレイルを引いていくのだった――――

 

 





如何でしたか?次回は久々にPOCUとプロジェクト・オーダーが激突します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。