POCUがBMSを通じて存在を察知した世界的な犯罪組織『ポーリュプス』。
彼らにとって重要とされる、大型船舶を改造した移動拠点――――
その存在をPOCUとは別ルートで察知したプロジェクト・オーダーはこれを潰すべく過激な手段へと出る。
――――アフリカ大陸南部・キマラニアの東に広がるインド洋
幾つもの貨物船や石油・ガス運搬船が行き来する航路を航行する1隻の大型貨物船。
その甲板で海を見つめる船員――――に偽装したポーリュプス戦闘員がタバコを咥える。まさかPOCUの支部がある国の近くをポーリュプスの移動拠点が民間船舶に偽装して航行しているなど誰も思わないだろう。
その時だった。空で何かが光るのに気づいたのは。
「――――何だ?」
何かが陽光に反射したか――――?そう思った次の瞬間、それは凄まじいスピードで飛来し近くを航行していた民間船を一撃で真っ二つに割った。
「!?」
あまりにも衝撃的な出来事に口からタバコを落とす――――再び爆発音がし他の民間船も先ほどと同じように破壊されるのが目に入った。
そして再び空で反射光――――対艦ミサイルが戦闘員の乗る偽装船へと命中、戦闘員はその凄まじい爆発に吞み込まれて消滅するのだった。
――――ミストルテ・POCU本部
司令官のオフィスで鳴り響く電話。
「こちら統合情報部!司令官はおられますか!」
司令官が手にした受話器から只ならぬ緊張感をまとった声が響く。
「――――こちら司令官だ、どうした」
「司令官、キマラニア支部から緊急連絡です!プロジェクト・オーダーがキマラニア近海において民間船舶を無差別に撃沈しました!被害は30数隻以上!」
その言葉には流石の司令官もしばし絶句するのだった。
――――――――――――――――
「情報解析班によれば、その時間帯のネット通信記録に不審な点が見られるそうです」
タブレットを手にしたリー・ベクターが司令官に説明する。
「救難信号とは別に暗号化されたメッセージがネットワークを通じて世界各地へと送信されており、これはポーリュプスの偽装船から発信されたものと推測されます」
その言葉に司令官が納得したような表情を浮かべる。
「――――奴らの狙いはポーリュプスの偽装船か。………それを沈めるために何の関係もない船まで無差別に沈めるとは」
しばし考え込む司令官。
「統合情報部の分析班にネットワークの通信を調べさせろ。偽装船を捕捉できるかもしれない」
ベクターが分析班に指示を出し、再び司令官を見る。
「プロジェクト・オーダーについてはどうされますか?このまま放置するのは得策とは思えませんが」
「無論だ。無差別攻撃は看過できん――――各支部にいつでも出撃できるよう待機命令を。調査局およびBMSにも怪しい動きがあれば速やかに情報を上げさせるように」
――――――――――――――――
「なるほど。プロジェクト・オーダーの無差別攻撃はポーリュプスなる犯罪組織の偽装船を狙っての事か」
電話の相手は他者を落ち着かせる雰囲気を纏った声でそう応えた。
「司令官、あなたがこうして情報をくれた事に感謝する。直ちに軍に戦闘準備を指示し待機させる――――それと情報に基づいてこちらも独自に作戦を遂行するが、あなた方にも情報を共有しておく」
「感謝します、大統領――――ポーリュプスもプロジェクト・オーダーも強力な組織です。どうか幸運を」
「大丈夫だベナトル司令官、我が軍に敗北は無い」
米国・ワシントンにあるホワイトハウスの主との電話を終えた司令官が一息つく。
「おそらくアメリカは問題ないだろう――――心配なのはプロジェクト・オーダーが次はどこを無差別攻撃するか――――」
と、その時ベクターがスマートフォンを取り出して司令官の方を見る。
「自由アルデバラン連邦の防空レーダーが太平洋上空に不明瞭な反応を捉えたとの事です」
「分かった、アルデバラン支部の航空部隊に迎撃させろ!」
――――――――――――――――
太平洋上空を飛行するプロジェクト・オーダー所属のオーディン(プロジェクト・オーダー仕様Su-57)の編隊。
その上を天空の王の如くコントレイルを引きながら飛行する純白の巨大な爆撃機――――Tu-160のプロジェクト・オーダー仕様モデル、『フルングニル』。(※由来は北欧神話に登場する巨人の1人)
「標的は自由アルデバラン連邦の港に停泊している大型船舶全てだ。残らず撃沈するぞ」
編隊の先頭を飛ぶフルングニルに搭乗する指揮官が部隊に指示を出し、フルングニル全機が爆弾倉を開く。
「撃て!」
爆弾倉から対艦ミサイルが次々とリリースされ、エンジンから噴煙とコントレイルを引きながら標的目掛けて飛んでいく――――
――――だが、次の瞬間。プロジェクト・オーダー側の指揮官はレーダー上に突如として出現したミサイルに目を見開いた。そしてそれらはフルングニルが放ったミサイルの7割以上を撃墜してしまった。
「何――――!?」
今までレーダーには何の反応も無く、突如としてミサイルが出現した――――そこまで思考してハッとなった指揮官がマイク越しに指示を飛ばす。
「敵のステルス機が待ち伏せしている!周囲を警戒しろ!」
次の瞬間、付近をエスコートしていたオーディンが爆発四散し、特徴的なシルエットの機体がすれ違う。
「何――――J-20だと!?」
――――POCU航空部隊 第8洋上飛行隊所属・オキサライア隊
同隊所属のJ-20Bに搭乗するパイロットが振り返ってHMD越しに敵を確認する。
「まさかTu-160まで持っているとはな。先ずは護衛機を叩くぞ。先ほど発射された弾数からしてもう中身はカラカラ、良くて数発程度しか残っていまい」
隊長であるオキサライア1がそう指示を飛ばすと、部下のひとりから通信が入った。
「オキサライア1、こちらオキサライア2。先ほど迎撃したミサイルは大丈夫でしょうか」
「こちらオキサライア1、残りは後続のバリオニクス隊に任せろ。大丈夫だ」
隊長の言葉からは仲間に対する強い信頼がうかがえる。
「こちらオキサライア2、了解。目前の敵を叩きます」
J-20Bが大型機とは思えないほど鋭いカーブを描きながらプロジェクト・オーダーのオーディン部隊と相対し、短距離ミサイルをロックオン・発射する。
KMC製ミサイルは会社の評判に違わぬ性能を発揮し、ロックオンした敵機の7割以上が空に炎の花を咲かせることとなった――――
「――――オキサライア3!」
生き残ったオーディンが1機のJ-20Bに群れ、執拗に追跡している。
もはや生還の見込みが薄い以上、1機でも多く道連れにしようという事だろう――――オキサライア3は反撃のチャンスを掴めず回避に徹する事を余儀なくされていた。
「くっ――――しつこい!」
パイロットが悪態をつきながら機体を上下左右に動かす。
――――と、そこへ別方向からミサイルが飛来しオキサライア3を追跡していたオーディンの半数が爆発四散する。
「こちらバリオニクス1、対艦ミサイルは片付けたぞ」
その通信と共にF-35Bの編隊が姿を現す。
「よーし、残りの敵を片付け――――おわ!?」
バリオニクス隊の隊長が驚愕と共に見たのは、急加速するフルングニルだった。
「港の方に向かっている――――?もう抱えているミサイルなんて無いだろうに」
そこまで言って嫌な予感がした。
「まさか、体当たり――――!?」
オキサライア隊の隊長も同じことを考えたのか、通信が入ってくる。
「こちらオキサライア1、バリオニクス1聞こえるか?奴ら体当たりする気だ!」
アフターバーナーを吹かして追撃するJ-20BとF-35B。次々とミサイルが放たれ、その度にフルングニルの純白の機体が炎に包まれていく。が――――
「――――速い!このままでは振り切られる――――」
と、そこへ通信が入る。
「こちら自由アルデバラン連邦海軍。港に向かってくる敵大型爆撃機の迎撃は任せてくれ。――――巻き添えを防ぐために敵機から距離を取って欲しい」
その通信でどうやって迎撃するのかを察したオキサライア1が味方に『敵から距離をとる』よう指示した。
――――自由アルデバラン連邦近海
巨大な船体の上に載った複数の砲塔――――各々の三連装砲が空の遥か彼方、肉眼では見えない敵機を睨む。
自由アルデバラン連邦海軍が誇る戦艦に搭載されたレールガンから発射された弾丸が雷の軌跡を引きながら空の彼方へと消えていき、小さな爆発炎がいくつか灯る。
――――フルングニル・コックピット
「――――馬鹿な!?敵機は振り切った筈――――」
周囲の味方が突如として爆発四散したこともあり指揮官が狼狽した表情になる。
「――――レーダーに反応?洋上に――――?」
そう思考したところでアルデバランが戦艦を保有している事を思い出す。
「――――自由アルデバラン連邦海軍、これほどの実力とはな――――」
敗北を悟った指揮官は次の瞬間、戦艦から放たれた第二射によってフルングニルもろとも空に散るのだった。
――――――――――――――――
――――ミストルテ国・POCU本部
「アルデバランの港に対する攻撃は我々と自由アルデバラン連邦海軍の迎撃により未然に防がれました」
タブレット端末を手に報告するベクターの表情には安堵が浮かんでいた。
「そうか、良かった――――アルデバランの港に停泊していた偽装船は米軍の特殊部隊により制圧されたそうだ」
そう言いながら椅子を回しオフィスの窓越しに夕陽を見つめる司令官。
「――――ポーリュプス。我々とプロジェクト・オーダーが互いに戦って消耗するのを期待しているかもしれんがそうはいかん。必ず貴様らに引導を渡してくれる」
「――――司令官、そのポーリュプスの件ですが資金や人員の流れを追跡したところ、傭兵連合およびセントラル銀行の関与が疑われる痕跡が幾つかありました」
その報告に司令官が反応し再びベクターの方を見る。
「――――つまりポーリュプスの裏にはメルセナリ財団が居る可能性があると?」
「はい、仰る通りです。司令官」
その言葉に司令官は苦い表情を浮かべるのだった――――
如何でしたか?プロジェクト・オーダーおよびポーリュプスとの戦いは最終章に入り、ここでPOCUの信念が改めて示される事になります。今後の展開を楽しみにして頂ければ幸いです。
追伸
今回のエピソードを書くにあたり、航空部隊の設定を確認したところ「バリオニクス隊」の名前があってベナトル氏に感謝の気持ちでいっぱいになりました。ありがとうございます…!