報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

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世界的な犯罪組織ポーリュプスを駆逐し、戻ってきた日常。

そんなある日、POCUは事情がありそうな女性を保護することに。



そして日常は続く
報告書039『花は色鮮やかに咲き誇る』


 

 

ハイメイジェン:陸軍演習場

 

 

 

「――――UGV(無人地上車両)が偵察戦闘車を、偵察ドローンが対戦車ミサイル車両を捕捉しました」

 

100式支援戦闘車の内部で砲手兼ドローンオペレーターが車長に報告する。

 

 

「了解、対戦車ミサイル車両はこちらの対戦車ミサイルで撃破する。UGVが捕捉した偵察戦闘車は100式戦車に任せればいい」

 

 

100式支援戦闘車から発射された対戦車ミサイルが、100式戦車の主砲の射程外で待ち伏せしていた対戦車ミサイル車両に命中した。と同時に100式戦車が主砲で偵察戦闘車を撃破したとの情報がデータリンクを通してモニターに表示される。

 

 

 

そんな演習の様子をハイメイジェン軍高官と共に見守るPOCU司令官。

 

「新世代の陸戦を見る機会を設けてくれて感謝します」

 

 

司令官が感謝の言葉を告げるとハイメイジェン軍高官は微かに笑みを浮かべ、言葉を返した。

 

「皆さんには強くあって頂きたいですから。お見せできる範囲内であれば喜んでお見せしますよ」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

演習でハイメイジェン陸軍兵士がPOCU戦闘員と互いのノウハウを教えあい談笑するなか、司令官のインカムに通信が入る。

 

 

『こちらBMSの上芭です。妙な通信を捕捉して、ある女性を保護したのですが…どうやらPOCUに引き継いだ方が宜しいかと思いまして』

 

 

「了解、その女性はこちらで保護する。連れてきてくれるか」

 

 

――――1時間後、BMSの傭兵に丁重にエスコートされながらPOCUのもとにやって来たのはバイクスーツの上にジャケットを羽織った、まさにクールビューティーという言葉が似合う女性だった。それでいて成人したばかりなのか幼さも少し残っている。

 

 

「脅迫を受けていると聞きました。あちらで詳しい話を伺っても?」

 

 

 

――――女性の名は楊 嘉潤(ヤン ジャルン)で、同居人の女性に危害を加えられたくなければ抱かせろという脅迫を受けていた。

 

「――――脅してきた奴は父親が大企業の社長でさ。これまでも父親の権力を使って自分がやった脅迫や強姦をもみ消してきたって噂だ」

 

 

 

BMSから渡された情報をタブレットで確認するベクター。やがて司令官の方を見て『間違いありません』と告げる。

 

「アイツは抱かせてくれなかったら、姐姐(ジエジエ)を目の前でマワすって…」

 

 

 

――――姐姐?姉さんという事か?

 

司令官がベクターの方を見ると、その意図を察した彼女が口を開く。

 

「同居人の女性の事ですね。楊さんより少し年上で血縁関係はありませんが彼女を大変慕っているようです」

 

「そうか。念のために彼女も保護しよう」

 

 

 

 

連絡して数十分後、ハイメイジェン軍の兵士にエスコートされながら演習場にやって来た女性に周囲が思わず注目する。

 

端正ながら柔らかさを感じさせる顔立ちにルーズサイドテール、ゆったりした服装に包容力を感じさせるスタイル、そしてレンズが大きめの眼鏡。

 

 

「……ほう」

 

思わずそう漏らした司令官だったが、隣で冷ややかな眼差しを浴びせてくるベクターに気付き咳払いする。

 

 

「突然お呼びして申し訳ありません。既に事情はお聞きとは思いますがお二方の身の安全を守るために必要なことです」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

女性――――山吹 翆(やまぶき すい)は嘉潤のそばに早足で歩み寄ると彼女を包み込むように抱き締めた。

 

「私に黙ってアイツらの要求に応じようとしたって本当なの?」

 

「……ああ。正直アタシ1人じゃどうしようもなかったからな」

 

 

その言葉に翆が悲しそうな表情を浮かべる。

 

 

「あなた1人に苦しみを背負わせて自分だけ助かっても嬉しくないわ、お願いだからもうこれっきりにして」

 

「…ごめんよ、姐姐」

 

 

そんな2人の空気に慎重に割って入る司令官。

 

「ご心配なく。彼らは我々が排除します」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

とある豪邸、その一室で談笑する社長とその息子。

 

「気の強そうな女を服従させてマワすのって気分が良いよな、親父」

 

 

息子の言葉に社長も同意するように頷く。

 

「ああ、あの瞬間ほど征服欲を満たせるものはない。良いものだぞ息子よ」

 

 

互いに下卑た笑顔を浮かべる親子。

 

「そうだ、あの翆とかいう女も連れてきて目の前で嘉潤をマワせば止めてくれと懇願するだろうな?」

 

「おお、それは見てみたいな。それで嘉潤の目の前でマワすのも一興。身体を張って守ろうとしたのに結局守れなかった……そんな絶望を叩き込めば心身共に屈服するであろう。護衛の連中もしばらくは飽きないだろう」

 

 

人としてあるまじき会話で盛り上がる親子――――そんな彼らの耳に銃声が響き渡る。

 

 

 

――――豪邸:エントランス

 

 

「你好! 去死吧!(こんにちは!〇ね!)」

 

現地語でお馴染みの台詞を口にしながら組織の標準カスタムが施されたAK-74Mをぶっ放すPOCU戦闘員。

 

 

まさか軍隊並みの武装を有する相手に襲撃されるとは思わなかったのか、スーツに拳銃程度の装備しかない大半の警備員は為すすべもなく次々となぎ倒されていく。

 

そこへ少数ながら小銃を装備した者が駆け付けて銃撃に加わったものの、重装兵のシールドに弾かれる。そして重装兵がその手に持ったMG338機関銃を横なぎに撃った後は沈黙のみがその場を支配するのだった――――

 

 

 

その時、混乱の隙を突いて一台の車が猛スピードで屋敷を飛び出していった。

 

 

 

――――車の運転席でハンドルを握る息子。助手席に座る父親共々顔面蒼白になりながらも何とか逃げ切った事への安堵が表情に浮かびつつあった――――

 

――――その瞬間、後方から追い越してきた漆黒のスーパーハインドが目の前で180度反転し、機首の20mm機関砲が社長と息子の乗った車を睨み付ける――――

 

 

2人の顔が恐怖で歪んだ次の瞬間、20mm機関砲弾の奔流が車を粉砕し爆発炎上させた。

 

 

「よし、標的を始末した。帰投する」

 

機長の言葉とほぼ同時にラプターシステムの画面から標的の反応が消失し、それが作戦に参加した全部隊に作戦終了を告げた。

 

 

――――――――――――――――

 

 

――――某ホテル

 

 

司令官が気を利かせて用意してくれたホテルのスイートルーム、そのベッドで背を伸ばす嘉潤。洗ったばかりの髪からシャンプーの香りが漂う。

 

 

「これで安心ね」

 

その言葉と共に翆が嘉潤の隣に腰を下ろす。――――湯上り姿がとても艶めかしい。

 

 

「いい?もうあんな無茶は絶対にしちゃ駄目よ」

 

実の姉が諭すような口調でそう言う翆に嘉潤は頭が上がらず頷くしかなかった。

 

 

「あなたの身に何も起こらなくて良かった――――」

 

そう言いながら額を合わせてきた翆に嘉潤の身体がビクッと反応する。――――眼鏡のフレームが肌に当たって冷たい。

 

 

 

「あなたは私にとって大事な人だもの」

 

その言葉の端々からは相手を愛おしく想う気持ちが滲み出ていた。

 

 

「姐姐――――ううん、翆」

 

額を合わせたまま、滅多に言わない相手の名を口にする。

 

 

「愛してるよ」

 

 

――――そして夜が更けるまで2人は久々に愛を交わすのだった――――

 

 

 





如何でしたか?久々に外道を軍事力でシバくという、ベナトル氏のPOCU原作に近い回になったと思っております。
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