報告集『栄冠なき英雄達』   作:趣味全開人生

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POCUが本部を置くヤマ大国の港が国籍不明機の攻撃を受け、クラーレン共和国海軍の艦隊に甚大な被害がもたらされる。

そして攻撃を加えた不明機は逃走を図るものの、POCUの航空隊に道を阻まれた。




報告書005『熱砂の国:中編』

 

 

――――――――――ヤマ大国・領海上空

 

 

『敵は単座型フランカー!詳細な形式は不明』

 

部下の報告どおり、流麗な曲線はフランカー系列のそれだった。しかし、隊長の中の勘が目の前の敵機に疑念を感じとる。

 

 

 

(確かにフランカー系列だが………何だ、この違和感は?)

 

 

 

後ろについた敵機をコブラ機動で前へと押し出し、機関砲で撃ち抜く。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

不明機・コックピット

 

 

『ミラーがやられた!』

 

部下の悲鳴に舌打ちする指揮官。

 

 

 

『キムに続いてミラー………油断するな、こいつらは手練れだ!チェン、ホウジョウ!単機での戦闘は禁止、私と編隊を組み、互いの後ろをカバーしろ!』

 

 

そう命じつつ、ホウジョウ機の後ろについたSu-33を背後から攻撃する。

 

 

 

――――――――――

 

 

Su-33・コックピット

 

 

『おわ!?』

 

すぐ右を機関砲弾が追い越し、反射的に左へと舵を切る。

 

 

 

『くそっ、あと少しで墜とせたのに!』

 

そう毒づくと同時に無線が入り、隊長の声が響く。

 

 

『単機で深追いするな!必ず後ろを僚機に見張らせろ!』

 

 

敵味方の飛行機雲が入り乱れ、互いに攻撃を妨害し攻守が入れ替わっていく中で最初に痺れを切らしたのは敵だった。

 

 

 

――――――――――

 

 

不明機・コックピット

 

 

少しずつゼロへのカウントダウンを刻む燃料計に目をやったチェン中尉がコブラ機動でSu-33の背後を取り、引き金に人差し指をかける―――――が、失速した瞬間を他の33に突かれ、機関砲弾で機体をズタズタに引き裂かれる。

 

 

 

そして数的劣勢に陥り一気に包囲された指揮官の機体にミサイルが浴びせられ、呆気なく砕け散った。

 

『バルツァー大尉!』

 

 

次は私だ――――――そう判断した北条中尉は脱出装置のレバーを引く。

 

 

 

 

――――――――――

 

Su-33・コックピット

 

 

『残り1機!後はこいつを―――――』

 

敵機をロックオンするのと、HUDの中で敵機のキャノピーが弾け飛ぶのは同時だった。

 

 

続いてシートごと射出されたパイロットのパラシュートが開き、ゆっくりと海面へ下りていく。

 

 

『判断が早い。良いパイロットだ』

 

 

 

無線から敵パイロットに称賛を贈る隊長の声が響く中、イーデン・ウィルキー中尉は救難隊に敵パイロットの救助を要請するのだった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

ヤマ大国での事件は国連にも伝わり、世界が注目する事となった。

 

 

しかし、この時世界はまだ気付いていなかった。

 

 

ヤマ大国の事件は、全ての人間がその在り方を問われる大きな動乱へと繋がる序章でしかない事に。

 

そして、POCUにとって『純愛を護る』という理念を問われる大きな試練になる事に。

 

 





『希望の大地』編では、あくまでもPOCUの日常的な内容をイメージして書いていましたが、今回はPOCUの在り方に関わっていく長編にチャレンジしたいと思います。

現在進行中の『熱砂の国』はそのプロローグ部分にあたります。

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