君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#109 いわば革命ってやつ

 悪意の感知──!!

 

 美然(アンナチュラル)に刻まれたもう1つの個性。

 

 悪人のプレッシャーを感じ取ることができ、居場所や動きを朧気にだが察知することが出来る。

 が、その力は強化され、今では強大な力を持った者の探知にも使うことが出来る。

 

 対死柄木用に作られたこの天空の棺に、迫り来る2つのプレッシャーを俺は感じ取っていた。

 

『来てるな……1つはアイツのプレッシャーだ』

 

「ああ、ナインがこっちに来てるってことは……」

 

 間接的に知らされる事実に眉を顰める。

 本当なら俺がナインの相手をしているハズだった。

 それがAFOの小細工によって戦場がシャッフルされ、計画の位置から外れた場所へワープすることに。

 ナインの場所へ飛ばされたヒーローが誰なのかは分からない、だけど感知の個性で否応なく認識させられていた。

 

 ──ナガンの命が消えてしまったことを。

 

 吐きそうになる程の悲哀の想いが全身を駆け巡るが、今は戦いの最中。

 そんな時に抱く感情では無いと、ナガンに叱られてしまう。

 悲しみをグッと飲み込み、目の前の敵を捉える。

 

「そろそろへばってきたんじゃないか?しんどいだろ?不便だよなぁ、消耗するってのは」

 

 死柄木の掌から放たれる衝撃波。

 それに対してこちらも同じように衝撃波を打ち出し、相殺させる。

 互いの空気砲が着弾し、突風が巻き起こった。

 

「このままじゃジリ貧だぜ!だんだん反応が鈍くなってきてるぞ!」

 

 ──死柄木の言う通りだ。

 俺の体は使えば使うほど消耗していく。

 対して死柄木は無限の再生力がある。

 長引けば長引くほど不利になるのは俺達。

 

 だけどもう……。

 

「ハァ……ハァ……!」

 

『小僧……限界か……?』

 

「はぁ……?全然余裕なんですけど……?」

 

「めちゃくちゃしんどそうな顔で言われてもな……」

 

 バレてる……そりゃ体を共有してるんだから当たり前か……。

 実際問題、体の方にはかなり負担がかかっている。

 少しでも気を弛めてしまうと意識を手放してしまいそうな、それくらいの状態だ。

 

「ぶっ倒れてる暇なんて無いよ。みんな頑張ってるんだから。俺だけがここで倒れる訳にはいかない」

 

「随分ご立派だなヒーロー。でも分かるんだろ?お前には……」

 

「……なにが」

 

 俺の問いに死柄木は口角を上げる。

 

「この戦いで消えていった命の数が……!」

 

「……ああ、分かるよ」

 

 確かに感じている。

 死柄木の言う通り、それぞれの戦場で失われる命がある。

 ヒーローもヴィランも同じように。

 

「これが戦争だ。どちらかが滅びるまで終わらないぞ」

 

「滅びるのはお前らだよ死柄木。お前達ヴィランはこの俺が滅ぼす」

 

「……ッ!」

 

 死柄木が目を丸くする。

 だがそれも一瞬だけで、すぐにいつもの表情に戻った。

 

「なんだよ……?」

 

「いやなに、とてもヒーローから出てくる言葉とは思えなくてな。"滅ぼす"か……国内最高峰の学校に通ってる奴の台詞かね……」

 

「あ、実はおれ高校中退してんだよね。主にお前達のせいで」

 

 そう言うと死柄木は高らかに笑った。

 その調子のまま言葉を連ねる。

 

「USJで会った時から本質は変わってないようだな。お前とは何度かぶつかったが、その度に思っていたよ。"狂ってる"ってな」

 

 死柄木の言葉を黙って受け止める。

 

「おかしいんだよお前は」

 

「時間稼ぎ下手かよ」

 

 地を蹴り死柄木へ肉薄。

 握った拳を打ち出すと、死柄木も呼応するように腕を伸ばす。

 鈍い衝撃が右腕を走り抜けた。

 

「俺がおかしい!?自分のことよぉく振り返って考えてみろよ!人のこと言えんのか!?」

 

「何がお前をそこまでさせる?傷つき苦しみ、それでも立ち向かってくる……!何も知らないただのガキが!お前を突き動かす原動力はなんなんだ!」

 

 立ち向かう……?

 原動力……?

 その質問のレベルの低さに思わず失笑しそうになる。

 そして同時に理解した、俺と死柄木の決定的な違いを。

 

「大切な人が居るんだ……!何もしてくれなくていい、ただ傍で笑ってさえいてくれたら……!だから戦ってんだ!!だからお前を超えていくんだ!!」

 

「それがお前の正義か!?ペラペラだなぁ!!」

 

「ああそうさ!!」

 

 死柄木の顔面を上から叩く。

 

「戦争なんてそんなもんだよ!!ただの押し付け合いさ、ペラッペラの正義のな!!」

 

「同感だな!!」

 

 お返しとばかりに、死柄木の拳が腹部に突き刺さる。

 思わず血反吐が飛び出すが、死ぬ訳じゃない。

 

「愛生、いいなお前は!俺を殺す気で来てくれる!」

 

 死柄木から距離を取り空へ舞い上がる。

 そこで再び俺達は激突した。

 

 ──僕はあの人を救いたいと思ってるよ。

 

 決戦前のデクの言葉が思い起こされる。

 あいつは言った、死柄木の中には救けを求める小さな子がいると。

 

 ──どんな人でも間違いを犯してしまうことはある。でも、生まれた時から悪い人なんていないと思うから。だから、やり直すことだって出来るんだと思うよ。

 

 デクは優しい。

 悪人の心すら救おうとしているのだから。

 だから相手の命を尊重して、何とか踏みとどまることを祈っている。

 

 けどそんなこと、俺からしたら綺麗事だ。

 

 デクの言いたいことは分かる。

 でも俺に同じようなことは出来ない。

 悪人は悪人、行ってきた罪の責任は負わなければならない。

 

 悪の芽は摘まなきゃ……。

 

 そうでなきゃ──……。

 

 雄英から遠ざかっていた時に見た、市民の顔に……。

 苦しい生活を強いてしまった皆の心に……。

 笑顔が戻らない……。

 

 全部取り戻さないといけないんだ。

 俺が……俺達ヒーローが取りこぼしてしまった物は多い……。

 とんでもなく多い……。

 

 今なお避難生活を送る人たち。

 雄英や士傑で窮屈な暮らしを強いられている人たち。

 皆の人生に安心を、希望の光を灯さなきゃ。

 

 それが──。

 

「ああそうだ、死柄木弔。俺はお前を殺せる。今から泣いて悔やんでも、お前に明日は譲らない」

 

 人より強く生まれた者の役目なのだから──。

 

「そうこなくちゃ……」

 

 ペロリと舌を出し舌なめずりをする死柄木。

 俺はもう、目の前にいる奴を同じ人間だとは思っていない。

 ただ破壊を楽しむ人の形をしたナニカだ。

 

 ……もう死柄木に救う程の価値なんて。

 

『愛生くん、電磁バリアを一瞬だけ開ける!来たよ!』

 

 突如として脳内に響く、伝令役のマンダレイの声。

 死柄木を閉じ込めておく電磁バリアの開放、それが意味することは。

 

「ようやくお出ましか……」

 

 死柄木も彼の到着に気付いたようで、首をその方向へ向ける。

 死柄木には"サーチ"の個性がある、それでアイツの居所は察知出来ているんだ。

 

『オマケも付いてきてるな』

 

「だな……」

 

 それと一緒に、こちらに向かってくる強大な悪意も感知している。

 忘れもしない、以前の戦いで苦戦を強いられたアイツも来ている。

 

「いよいよクライマックスって感じだな。ヒーローとヴィラン、どっちが最後まで立っていられるか」

 

「仲間が加勢に来てくれて良かったな。お前一人じゃタコ殴りにされてたところだぞ」

 

「減らず口を……。仲良く手を取り合う気なんて無いさ」

 

『──今!!』

 

 マンダレイの声掛けで、雄英を囲っていた電磁バリアが一瞬だけ開かれる。

 そこから戦場へ舞い降りてくる影が2つ……上空に現れた。

 

 

 

 

 

 

「ごめん愛生くん……!遅くなった……!」

 

「本当だぜデク……罰金払わせるぞ……」

 

 

 

 

 

 

「死柄木……まだあんなのに手こずってたのか……」

 

「煩いな……てかお前どの口が言ってんだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 OFA正当継承者であるデクと、複数の個性を併せ持つナインが天空の棺に降り立つ。

 

 OFAの力を全解放させたデクは、学校内でも最強クラスの実力者となった。

 いや、ヒーロー界全体で見ても今のデクに敵う者はほぼ居ない。

 受け継がれてきた力の結晶が、デクの中には秘められている。

 味方としてこれほど頼もしい人はいない。

 

「最後の戦いだヒーロー!!終止符を打とう!!この戦いに勝った方が、この世界の正義だ!!」

 

 長く険しい戦いが少しずつ、だが確かに終わりへと向かっていくのを感じた。

 この戦いはどちらかが滅びるまで終わらない。

 

「まだ動けるかい?」

 

「世界を救う力くらいは残ってるよ」

 

 デクと拳を打ち合わせる。

 

 正真正銘、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

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