君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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体育祭の巻
#11 峰田、今までありがとな


「──という訳で!このサポートアイテムを使うことで、目的地まで勝手に足を動かしてくれるんですよ!もう自分の体も機械で操作できる時代なんです!」

 

「へぇー!すっげえな!これ発目が作ったのか?」

 

 とある日の放課後、俺は暇つぶしにサポート科のある教室へ赴いていた。

 

 上鳴から聞いた情報によると、サポート科では様々なサポートアイテムを製作しており、その中には面白い物もあるとかないとか。ヒーローを目指すなら、サポートアイテムの運用も視野に入れるべき。だとか珍しくそれっぽいことを言っていた。

 

 実際、プロになってから学生時代のサポート科の学友に協力をお願いする…なんて事例もあるらしい。要は人脈づくりが大事ってことね。

 

「そうですよ、ちなみにこちらのベイビーもです!これはマジックパワーハンドといって、遠くにある物を20kgまでなら持ち上げることも出来る代物なのです!」

 

 マジックなんたらの説明をしながら、目の前で実践してくれるこの女子は発目明(はつめめい)。サポート科の部屋の前でうろちょろしていたら、試作品の使用感を試す実験台になってくれと強引に連れ込まれた。

 

 にしても、発目の机らしき場所にはおびただしい量の機械やらなんやらが山のように積み重なっている。もしかして、これ全部がサポートアイテムの部品?もしくは未完成品?創作意欲が爆発してるじゃないか。

 

「もうすぐビッグイベントもありますからね。それまでに、この可愛いベイビーたちを完成させなくては」

 

「ビッグイベント…そうか、もうそんな季節か…」

 

 そう、我らが雄英高校が誇る最大級のお祭りイベント。

 

 体育祭が間近に迫っていた──!!!

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

「体育祭があります」

 

「「「クソ学校っぽいのキター!!!」」」

 

 相澤先生の言葉に、クラスの皆が一斉に声を上げた。

 

「全員殺して俺が勝ァつ!!!」

 

「イェーイ!イェーイ!俺イェーイ!」

 

「爆豪くん愛生くん静かにしたまえ!君ら戦闘訓練の時もそれやってたろ!」

 

 我らが委員長の右腕がビシッ!と振り下ろされた。

 

「喧しいッ!これが騒がずにいられるかッ!祭りだぞ祭り、1年に1度の雄英体育祭!飯田オメーこれがどういうことか分かってねぇみてぇだな!はいというわけでデクくん説明ヨロシク!」

 

「どぅえ!?僕ぅ!?」

 

 そうだよ。デクなんて呼ばれ方してるやつ他にいてたまるか。いいから早く体育祭の説明をクラスの皆にしてやってくれよ。もう皆はスタンバってんだよ。

 

「そ、そうだね…雄英の体育祭といえば、昔にあったオリンピックに代わる催し物で…ペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

「──という訳なんだよ!」

 

 話なっが。俺から振っといてなんだけど、こいつ話なっが。1人で何分尺稼いだんだ?ずっとお前のターンだったぞ。

 

 そんでなんだよオリンピックの創始者って、逆になんでお前はそいつのこと知ってんの?

 

 てか途中から誰もデクの話聞いてなかったんだけど。ただひたすら、緑のモジャ毛がペラペラくっちゃべってただけなんだけど。相澤先生に至っては職員室に戻ってったし。

 

「おいコラてめクソデクぅ!!オレ様の貴重な時間をなんだと思ってんだァ!?あぁ!?テメーの頭爆破させてモジャモジャ増量させたろか!?」

 

「マズイ、爆豪がキレた!みんな止めろーッ!!」

 

 なんかもう色々とごめんなさい。俺は顔面爆破されるデクに両手を合わせて、頭の中でチーンとおりんを鳴らした。

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 ──あっという間に帰りのHR。先生からのお話も終わり、後は帰り支度を済ませてサッサとおうちへ帰るのみ。今日はアレだな、好きなバラエティ番組がやるからダッシュで帰らなきゃな。

 

 なんてことを考えてたら、何やら教室の外がやけに騒がしい。扉の方まで行くと、知らない顔がいっぱいだった。誰だよこの人たち。

 

「な…何事だーッ!?」

 

 麗日が声を張り上げる。続いて峰田や飯田、デクがゾロゾロと出入口の方へやってきた。

 

「おい爆豪、お前また色んなやつに喧嘩ふっかけてきやがったな。見ろ、まさかの全員でおいでなすったぞ。どうしてくれんだ?」

 

「ふっかけとらんわッ!どうせ敵情視察にでも来てんだろ。ヴィラン共を退(しりぞ)けたのがどんな奴らなのか…。んなことしてなんの意味があんのか知んねーけど」

 

 いつものように顎を上げ他人を見下すように爆豪は、他クラスの集団の前に歩み出た。何かおっかないことでもするんじゃないか…?俺たちは無意識のうちに身構えていた。

 

「どけモブども。俺たちゃ道端の石ころなんざ眼中にねぇーんだ。蹴飛ばされたくなきゃとっとと道を開けろ」

 

「とんでもねーこと言うなアイツ」

 

「"俺たち"ってなんだよ。サラッと一緒くたにされたぞ」

 

 瞳をギラつかせる爆豪。そんな彼にブーイングが巻き起こらない筈もなく、これでもかってくらいにヘイトを集めてみせた。A組VS学年全部の構図が出来上がりそうだな。

 

「あーあ、なんだかなぁ。こういうの見ると、ちょっと幻滅しちゃうなぁ。仮にも雄英の顔なんだから、校内でもらしい振舞いとかしないもんかね」

 

 人混みの中からぬっと出てきたのは、紫の頭を逆立たせた隈の目立つ男。そいつは教室内の俺たちの顔を見渡した後、正面に立つ爆豪に視線を移した。決して良い目つきではない。

 

「あ?誰だテメェ?」

 

「名前も知らない一般市民にも同じことを言うのか?授業で何を学んでるんだ?」

 

 この時、A組の誰もがこう思った。

 

(((コイツ爆豪に噛みつきやがった)))

 

 爆豪勝己とは、売られた喧嘩は買うし売った喧嘩は買わせる男だ。性格も凶暴で荒々しい。誰も近寄りたがらない爆豪に、紫頭のあいつは正面から立ち塞がった。一体どこのどいつだ。相当凄い個性でも持ってるのか?それも、俺たちヒーロー科に届きうるくらいのヒーロー向きな個性が…。

 

 鳩も射殺せそうなくらいの爆豪の目つきも何処吹く風と言わんばかりに、紫頭の彼は口を動かす。

 

「今回の体育祭、リザルト次第じゃヒーロー科への編入も検討してくれるらしいよ。んで、その逆もまた然り。──つまり何が言いたいかっていうと、あんまデカい顔してると足元すくっちゃうぞってことさ」

 

 そう言うと、紫頭の彼は背中を向けて人混みの中へと静かに消えていった。そのうちA組の前に出来ていた集団は数を減らし、いつも通りのなんてことのない放課後の時間が流れ始めた。

 

「結果次第で編入か、逆パターンもあるんだとさ。峰田、今までありがとな。お前との思い出は忘れない。大した思い出ないけど」

 

「ひっでーな愛生!あんなの嘘っぱちだぜきっと!あの紫野郎…オイラたちをビビらせる為に適当なこと言いやがって…!」

 

「あんな大人数の前でパチこくか?」

 

「お…おまえ…オイラの味方じゃねぇのかよ…!?」

 

 峰田とあーだこーだしていると、近寄ってくる影が1つ。視界の端に映るその人物に目を向けると、そこには金髪の男子生徒が立っていた。

 

「やあ、愛生千晴くん」

 

 胡散臭い笑みを浮かべながら、そいつは名前を名乗った。全くもって知らない人物なんだけど、どうしたらいいんだろう。何でこの人は俺の名前を知ってるんだろう。とりあえず無視しとくか。

 

「じゃ、峰田。俺帰るわ。また明日な」

 

「待ちたまえ愛生くん、君どーゆーメンタルしてるの」

 

 帰ろうとしたらガシッと力強く肩を掴まれた。いやだってそうじゃん。知らない人に話しかけられても、目を合わせちゃいけないって教わったじゃん。逆にその教えを今でも守ってる事に対して褒めても良いくらいよ。

 

 仕方なく、俺はその男子に向き直った。

 

「どちら様?」

 

「ひっどいな、いつもB組に来る時に君の方からちょっかいかけてくるじゃないか。あの狂犬のように威嚇してくる姿、思い出すだけで薄ら寒い」

 

「お前いつ殴られてもおかしくないからな?」

 

「おっと、そういうつもりじゃないんだ。悪かったよ」

 

 手を前にしてそう言う。なんだろう、話してるだけでむかっ腹が立ってくるのは気のせいか。

 

「物間だよ物間、隣のクラスの物間寧人。君よくこっちの教室来るからさ、覚えちゃったんだよね。ほら、ウチの拳藤にゾッコンでしょ?キミ」

 

「ウチの…?」

 

 ピキっと青筋が立つのが分かった。

 

「話したいことはそんなことじゃないさ。最近キミたち、やけに目立ってるよね?ヴィランに狙われたとかでさ。世間の注目度もキミたちに集まっている…中で今度の体育祭さ」

 

 なんだ、コイツもさっきの紫頭と同じ魂胆か。男なら言いたいことはハッキリ真っ向から言ってこいよ。

 

「回りくどいヤツだな。宣戦布告ってことだろ?いいよ勝手にかかってこいよ。やけに外野が盛り上がってんな、今年の体育祭は」

 

「驕慢だなぁ、流石ヴィランと正面からやり合っただけはある。死線くぐって強くなった気にでもなってる?」

 

「アホらし。俺は帰る。何故ならバラエティが待っているからだ」

 

 出る杭は打たれるってやつか。A組が目立っているらしいけど、そんなこと俺には関係ない。文句があるならかかってこいってスタンス。そっちの方が簡単でシンプルだ。

 

 時間の無駄だと感じた俺は、物間の横を通り過ぎる。今日は一佳は委員会だからな、一緒に帰れない。残念だ。

 

「まだ話の途中なんだけど?」

 

「うるさいな、言いたいことはもう分かったよ。いつまでもガチャガチャ言ってないで、本番で見せてみろよ。お前の力を」

 

 そう言い残し、教室を後にする。

 

 ──死線くぐって強くなった気にでもなってる?

 

 頭の中で、物間が吐いた言葉が反芻している。

 

 今でも体に張り付いている脳無戦、死と隣り合わせだったあの瞬間。脳が終わりを悟ったあの一瞬が、頭から離れない。

 

「仕方ないさ。分かんないもんは」

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 オレは恵まれていると、常日頃からそう思っている。

 

 裕福な家庭、優しい家族、毎日学校に通わせてもらっている事実が、オレにそう強く実感させてくれる。

 

 加えて──、

 

「よし、夜の鍛錬はこの辺にしておくか。今日もよく頑張ったな、焦凍」

 

「ああ、いつもありがとな親父」

 

 現No.2ヒーローが夢への後押しをしてくれるこの環境は、最早恵まれすぎているといっても過言ではない。

 

 鍛錬場から居間へ戻ると、そこには母と姉が作ってくれた豪華な食事が並べられていた。

 

「お疲れ様、焦凍。お腹すいたでしょう?いっぱい作ったから、沢山食べてね」

 

「今日はお父さんの好きな葛餅もあるよ!食後に皆で食べようね!」

 

「おお、美味そうだな。焦凍の好きな蕎麦だぞ。さっそくいただくとしよう」

 

「ああ」

 

 並べられた好物ばかりの料理に心を躍らす。しかも今日は天ぷらまでついているのだ。疲れきった体にこれは非常にありがたい。

 

「お母さん、姉さん、いつもありがとう」

 

「あら、どうしたの急に」

 

「好きだからやってるだけだよ。さ、皆で"いただきます"しよ!」

 

「待て冬美、"いただきます"はオレの仕事だ」

 

 親父の変なこだわりに笑いつつ、オレたちは手を合わせ食事を始めた。

 

 そんな、いつもと変わらない風景が好きだった。

 

 

 

 

 

 

 No.2ヒーロー、エンデヴァー。豪炎を操る親父を支えるのは、氷結系の個性を宿したお母さん。正反対の力を半分ずつ受け継いだオレが、トップヒーローを目指すのは必然だったんだと思う。

 

 物心ついた時からテレビや雑誌、あらゆるメディアで親父の活躍が報道されているのを見てきた。その力であらゆる事件を解決し、悪を成敗する姿に憧れを抱かない方が無理な話だ。

 

 そして、同じ力を持ったオレが同じように生きるのは当たり前のことだと思っている。

 

 厳格な父に鍛え上げられる日々は苦じゃない。むしろ、日々着々と出来ることが増えていくのが何より嬉しい。親父のおかげで、炎熱(ひだりがわ)の使い方は熟知した。だから今は、氷冷(みぎがわ)を使いこなすことに重きを置いている。

 

「時に焦凍、雄英では炎を使わずに氷の力だけで高みを目指すと言っていたが」

 

「今も変わってねえよ。左の使い方はほとんど完璧だし、これからは右の方に比重を置いてくつもりだ」

 

「なら、今度の体育祭もそうなのか?」

 

「ああ。炎を使わずにトップを目指す」

 

 おおー、と姉さんがパチパチと拍手をした。オレはずぞぞと蕎麦をすすってモグモグする。

 

「氷の方はどう?お母さん、ちゃんと教えてあげられなくてごめんね。本当はもっと力になりたいんだけど」

 

「気にしないでいいよ。炎でやってた事と要領は似ている。そのためにまずは親父から炎の使い方を教わったんだから」

 

「ふん。オレが毎日教えてやってるから、何も心配することはない。お前は安心して、家を守ってくれてたらそれでいいんだ。焦凍はオレが、必ず立派なヒーローにしてみせる」

 

「あらあらうふふ。頼もしい人ね」

 

 仲が良い両親だなと思う。それもオレが恵まれている要因の1つだ。

 

「ところで夏雄はどうした?最近顔を見てないぞ」

 

 親父の疑問に、姉さんがすぐさま飛びついた。

 

「彼女よ彼女。ひとり暮らしの子だから、入り浸ってるんだよ〜。毎日連絡は寄越しなさいって言ってるんだけどね」

 

「そうか。好きなようにはさせてやりたいが、たまには家族で机を囲みたいものだな」

 

「そうだよ〜!お父さんからも言ってやってよ〜!──ハッ!焦凍は!?焦凍はまだ彼女とか、そーゆーのはないよね!?」

 

「ない」

 

「良かった〜、っていうのも変ね。アナタ顔が整ってるから、女の子がほっておかないと思うけど。友達とかも、どんどん家に呼んでもいいんだからね?こんなに広い家だし、かくれんぼとか出来ちゃうよ?」

 

「今どきの高校生って、かくれんぼとかするのかしら?お母さん気になるわ」

 

「1人クラスにそういうの好きそうなヤツがいるな」

 

「ふ〜ん。まぁまだ高校生だもんね〜」

 

「焦凍、付き合う友達は選ばないかんぞ。悪そうな子とはつるんでないだろうな?タバコとか酒とか、お父さんそういうのは許さんぞ」

 

 ありふれた日常。緩やかに流れる家族の時間。心地よいその場所にいられることに、オレはいつも感謝をしている。そして、それは自分の手で守っていかなくちゃならない。大切なものは、他の誰かじゃない自分の手で守り抜くんだ。

 

「今度の体育祭、皆で応援に行くからね。お母さん、お弁当張り切っちゃうから」

 

「うん、ありがとう」

 

 厳しくも頼りがいのある父、優しく見守ってくれる母、いつも助けてくれる姉兄。

 

 オレはこの家に生まれてきて、本当に良かった。

 

 

 

 

 

 




轟炎司①
・いただきますとごちそうさまの挨拶は誰にも譲らない、汗臭い親父。

轟冷①
・あらあらうふふの伝道師。家事スキル◎。焦凍の友達に会ってみたい。

轟冬美①
・ごく稀に弟たちをパシらせる。甘い物を。

愛生千晴⑥
・家でかくれんぼする高校生その1
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