君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#14 物事の本質ってやつを見失ってないか?

 遡ること数分前。

 

 地雷原に到達した俺は、どうにかして先頭に追いつく方法を考えていた。

 

 フツーに走ったり飛んだりして行っても多分追いつけない。俺が動いた分他のみんなも先に進むから。ならどうするか。

 

 俺は近くにあった小石を、それまた近くにあった地雷に向かって投げつける。すると、その地雷は小石がぶつかった衝撃で簡単に爆発を起こしてみせた。

 

「ほーんなるほどなるほど。おーし、だったら話は簡単だ」

 

 今から全員追い抜く方法。それは俺が全員を追い抜くまで、他のみんなの足を止めさせればいい。なんだ簡単じゃん。皆の足をその場で止めさせればいいんでしょ?

 

 ここの地雷全部爆発させたら、みんなビックリして走るのやめるでしょ。

 

 そうと決まれば作戦決行。さっさと行動に移すべし。

 

 俺は手のひらにエネルギーを集中させ、地面に手をつきそれを流し込む。

 

 するとどうでしょう?俺のエネルギーによって、埋められていた地雷たちが一気に爆発をするじゃないですか。そしてそれらは、俺より前にいた奴らを巻き込みながら連鎖していく。

 

「がははははは!イオグランデってかー!」

 

 そのまま空を飛んで先頭集団の元へ。眼下で爆発に巻き込まれる皆を見ながら心を痛める…なんてことはなかった。仕方ない、妨害アリにした先生方が悪い。恨むなら運営を恨んでくれ。

 

 ──体育祭終わったら、友達いなくなってそうだな。俺。

 

 

 

 

 

 

 

「お呼びじゃねーんだよ!爆発で服が汚れちまっただろーが!あぁん!?」

 

 吠えながら向かってきたのは安定のかっちゃん。俺に向けて爆破の雨を降らしながら、先へ進もうとする。爆破を防ぎながら、爆豪の服の裾を掴んで前進を食い止める。

 

「おいゴラァ!!服が破けちまうだろうが!!」

 

「さっきからお前から出てくるセリフだと思わねーんだけど!?」

 

 キレ散らかした爆豪の大振りが、綺麗に顔面に突き刺さる。ちゃんとぶん殴ってくるじゃん。

 

「殴り合う競技じゃねーぞ」

 

 その隙に轟が、氷を張って滑走していく。毎度思うけどアレずるくね?

 

「待てやぁ!」

 

「うぐっ」

 

 そんな轟を超能力で動きを止める。そのまま足を滑らせ地面に転がしてやった。この隙に俺がゴールへ。

 

「行かせねえよ!」

 

 そうはさせまいと、爆豪が俺の学ランを引っ張る。なんだこの泥臭い小学生みたいな戦い。こういう競技じゃないよね、きっと。

 

「待てお前ら!一回落ち着け!」

 

「あ!?」

 

「なんだ?」

 

 俺の制止する声に、爆豪と轟は素直に従った。

 

「物事の本質ってやつを見失ってないか?」

 

 二人の「なにいってんだこいつ」っていう顔が心に刺さる。その痛みを振り切って、俺は話を続けた。

 

「俺たちが今やってる競技は障害物競走のはずだ。それなのにお前らと来たら…殴るだの蹴るだの転ばすだの。そんなの障害物競走じゃねえだろ!」

 

「なにテメーのことは棚に上げてんだ」

 

「こっちは顔から地面にぶつかった」

 

 うん、実に正論だ。だが時に、正論では正せないものもあるんだ。

 

 俺は轟と爆豪に近づき肩に手を置いた。爆豪が露骨に嫌そうな顔をしてくる。

 

「ここらでリスタートとしよう。スポーツマンシップに則って、正々堂々と戦おうじゃねえか。さあさあ横に並んで」

 

 俺たち3人は横一列に並び、それぞれスタート体勢を取る。そうだよ、こういう公平なルールで今回のレースも行うべきだったんだよ。何がなんでもありのガチンコレースだよ。っていうかコイツら意外と従順だな。

 

「いちについて、よーい…」

 

 ドン!と言う前に、俺は勢いよくその場を駆け出した。そう、いわゆる"ずる"である。愛生千晴はセコい人間なのである。

 

「あぁ!?」

 

「あいつやりやがったな…!」

 

「バカどもめ!なに大人しく指示に従ってんだよ!忘れちまったのか?こいつはルール無用のガチンコレースだぜ?なははのはー!」

 

「クソ野郎がァ!!おい半分野郎、あいつに遠距離ぶち込めやァ!!」

 

「言われなくてもやるつもりだ」

 

「あ、ちょま。背中狙うのはやめて。対処がムズいから」

 

 爆豪が炸裂弾を、轟が鋭く尖らせた氷を飛ばしてくる。そいつらを避けながら、ゴールが待っているゲートを目前としていた。

 

 よし、このまま行けば1着でゴールだ。ヒーローらしからぬ行為もしたが…悲しいけどこれ、体育祭なのよね。

 

 後はこの薄暗いゲートをくぐれば終了だ。飛び道具を仕掛けてくる2人に対応しつつ、俺は光の方へ足を動かす。あと数十m、あと数歩。これで俺の勝…。

 

「おさき」

 

 ──瞬間、緑の閃光が頬を撫でた気がした。

 

 何かが、緑色の光を放っていた何かが俺の横を颯爽と通り過ぎて行った。

 

 一瞬すぎて何が何だか分からなかった。けど、微かに見えたあの緑の毛むくじゃら…まさか今のって…?

 

 その人物が誰なのか、その答えはすぐに知ることになった。

 

『いったい!いったい誰がこの結果を予測できただろうか!?並み居る実力者たちを押しのけ、この第一種目障害物競走を制したのは──緑谷出久ッ!!!』

 

 湧き上がる歓声。

 

 それを一身に受けるデクの背中を、2番手でゴールした俺はただただ呆然と眺めていた。続くように轟、爆豪がメインスタジアムに戻ってくる。2人ともきっと、俺と似たような感情を持っているんだろう。

 

 障害物競走を1位で通過したデクは、そんな俺たちの方を見て薄く笑って見せた。以前のデクからは想像もつかない、自信に溢れている印象だ。

 

 しかし、俺たちがデクの真価を目の当たりにするのは、もう少し先のことだ。

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

『第1種目お疲れ様!それじゃさっそく第2種目にいっちゃうわよ!』

 

 お手持ちの黒く長い鞭をしならせながら、ミッドナイトは声を張り上げた。ミッドナイトがモニターに体を向けたので、自然と俺たち生徒諸君もそっちに顔を向ける。次の種目は一体なんだろう。綱引きとかかな?それとも玉入れ?とにかく平和そうな競技がいいな。この学校、自由な校風が売りなのは良いけど、自由すぎて超えちゃいけないラインをいつか超えてきそうな雰囲気ある。

 

『第2種目は──騎馬戦!!!』

 

「どちゃくそハードなやつきたな…」

 

 騎馬戦…体育祭ではド定番の競技ではあるが、障害物競走がアレだったからな。また何でもアリのデスゲームになるのか…。

 

 そうして始まる騎馬戦のルール説明。ルールは簡単、さっきの障害物競走での順位を元に各人にポイントが割り振られ、そのポイントが書かれたハチマキを頭に巻いて行うとのこと。

 

 障害物競走が2位だった俺の持ち点は205。2人から4人でチームを組み、それぞれの合計点がそのチームの得点。最終的に持ち点が多いチームから順に、次の種目に進めるようだ。

 

「とゆー訳でチーム分けよ」

 

 そんな流れで、ひとまずチームを作るところから始まった。はてさて、一体誰と組むのが良いのだろうか。

 

 シンプルに考えるなら、得点の高い奴らをまとめて入賞を目指す。となれば、必然的に轟や爆豪とチームを組めばいいって話になるけど。

 

「あ?誰がテメーと組むかボケ。雑草でもはんでろ」

 

「もう検討つけてるやつがいるんだ。わりいな」

 

 この始末。それだけ言い残して、2人ともスタコラサッサと人混みの中へ消えていってしまった。ポツンとその場に取り残される俺。なんだよ、薄情な奴らだな。

 

 ふと、珍しく女子2人に囲まれているデクを発見する。そばに居るのは麗日と発目、見ない組み合わせだな。

 

「お〜い、デク。見たところ人が足りてないみたいだな。どや?俺を使ってみる気はないか?」

 

「愛生くん」

 

「1位には1000万ポイントだっけ?一攫千金狙って、色んな奴らに追い回されるだろうよ。んだから、そこを俺の超能力でドカーンと!」

 

「なるほど、確かに愛生くんの個性なら攻守ともに万能。これは相当な戦力になるかも」

 

「だろ?それならあと1枠は俺に──」

 

「──だが断る」

 

「ナニッ!!」

 

 デクの瞳がキラリと光る。

 

「この緑谷出久の最も好きな事の1つは、自分で強いと思ってる奴にNOと断ってやることだ」

 

「何言ってんだこいつ」

 

 無駄に濃ゆい顔をしたデクは、人差し指と中指を俺の方にビシッと向けそう言った。どうしたんだコイツ。ヤッホイで修行して頭が悪くなったんじゃないのか?

 

「1000万も守る。自分も勝利する。どっちもやらなくっちゃあならないのが、1位の辛いとこだな」

 

「麗日、発目。俺と組まねえ?」

 

「ごめん…私からデクくんに持ちかけたんよ」

 

「1位の人は目立ちますので」

 

「ブルっちまうだろ?」

 

 そうかいそうかい!ならもういいよ!他をあたることにするよ!お前らの1000万ぜってー奪ってやるからな!覚悟の準備をしておけ!

 

「残り1分よ!」

 

 もうそんな時間か、本格的にヤバいんじゃないか。もうほとんど皆チーム決まっちゃってるみたいだし…。

 

 てかなんで俺ハブられてんの?俺ってそんなに友達少なかったっけ?確かにまだ同じクラスの奴らとしかマトモに喋ってないけど、顔くらいは知ってるでしょ。駄目だ、涙と鼻水で顔がグシャグシャだ。なんでこんな悲しい気持ちになってるの、俺。

 

「残り30秒」

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!

 もう時間がねぇーっ!

 俺こういうの駄目なんだわ。

 焦るとテンパって余計に駄目な方向に行くタイプなんだわ。

 

 誰か、誰かこの悲しい生き物を拾ってくれる神様のような人はいないのか──。

 

「なにアンタ、もしかして1人なの?」

 

 そこに現れる、3つの影。

 それらは、地面を涙で濡らす俺に視線を浴びせていた。

 

「あ、あなた様方は──!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チームの皆のポイントが合計されたハチマキを額に巻く。

 

 "385"ポイント、それが俺たちの持ち点だ。

 

 チームの覚悟を背負って、その騎馬に乗り込む。

 

「何で学ラン着てるの?」

 

「良い質問だ、柳。これを着ることによって通常の3倍のパワーを出せるようになるんだ」

 

「男子ってよく分かんない」

 

 そんな柳レイ子の返答に苦笑。

 

「にしてもアンタ幸せもんだね〜。女子に囲まれてその上に乗っかるって」

 

「コラ、言い方には気をつけろ取蔭」

 

 おっと、と言うように取蔭は口元に手を添えた。

 

「みんな準備はいいわね?それじゃあ、雄英高校体育祭、第2種目騎馬戦!!」

 

 ミッドナイト先生の張り上げた声が聞こえる。俺は深呼吸をして、今にも始まろうとしている次の戦いに意識を集中させる。

 

「千晴」

 

「なんだ一佳」

 

 前騎馬には愛しの幼馴染。

 ただ正面を見据えて俺の名前を呼ぶ。

 

「絶対勝つよ」

 

「ガッテン承知」

 

「STARTッッッ!!!!!」

 

 騎馬戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

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