君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#18 あ〜…内臓出てきたかと思ったわ…

 聞けば轟も爆豪も無事に1回戦を突破したらしい。めでたい。俺と一佳の試合を上から見ていた轟は、「お前が負けるんじゃねぇかとヒヤヒヤした」と宣っていた。

 

 そして戦いは2回戦へ。次の出番である俺とデクは、ステージで向かい合っていた。

 

「逃げずにここまで来たようだね」

 

 腕を組んで偉そうにデクは言った。やけに腹が立つな今日のコイツ。試合前に1発殴ってもいいかな?いいよな?だってムカつくもんな。ムカつく奴は殴っていいって、この前爆豪も言ってたもんな。

 

 さて、今日のデクだがやはりいつもと様子が違う。いや見た目もそうだけどそこじゃなくて、今までデクに感じていたちょっと頼りない雰囲気というものが一切感じられない。

 

 自信に満ち溢れている。

 

「変わったな、デク。異国の地で何か特別なことでもしてたのか?」

 

「いやはや…。美味い食事と適度な運動、それだけだよ」

 

 肩をすくませるデク。まぁ正直デクが海外で何をしていようが興味はない。ただ、さっきすれ違った時に言っていた言葉がずっと気になっている。

 

 "僕のフルチンを見せてあげるよ"──。

 

 …この発言が正しければ、今からこいつはとんでもないことをしでかすということだ。

 

 ご存知の通り、この体育祭は全国に生中継されている。日本国民のほとんどが、この特大イベントに大注目しているのだ。この大衆の面前で、テレビの前の国民の皆様に、デクは自らのデクをお披露目する気なのか…?

 

「ああ早く見せたくてたまらないよ、僕の真の姿を。一皮むけて生まれ変わったこのデクを!」

 

 ダメだこいつ早く何とかしないと。轟の下着姿とは比較にならん。このままじゃ放送事故なんてレベルじゃ済まない。最悪来年からテレビ放送禁止になってしまうかもしれない。

 

 雄英学生の未来への足がかりを、こんなふざけた奴の為に失わせる訳にはいかないな。

 

『雄英体育祭第2回戦!レディ…スタートッ!!!』

 

「全てを解放しよう」

 

「何言ってんだお前!」

 

 この試合──デクには何もさせない。デクのデクをボロンチョさせない為にも、速攻でケリをつけてやる。とにかく動きを封じて場外に投げとばしてや──。

 

「る?」

 

 試合開始のゴングが鳴り響いたと同時、俺の視界からデクが消えた。バチッという電気のような音だけ微かに残して。その次の瞬間、俺の背中にゾクリと悪寒が走った。咄嗟に振り向いたが、無様にも俺の顔面には拳が突き刺さる。

 

「まだだよ」

 

 続けざまに繰り出された回し蹴り。俺はそれを屈んで躱し、後退しながら空気を押し出して牽制する。

 

 たったの1発…ただのパンチを喰らっただけで分かった。今のデクは、今までのデクとは違う。パワーとスピードがダンチだ。

 

 全身に纏うように走っている緑色の光。堂々とした立ち振る舞い。俺を睨みつける鋭い視線。どこをどう取っても強者のソレだった。

 

「こんなもんじゃない、"フルカウル"の威力は…!」

 

 それはまるで爆発のようだった。バキっと地面が割れる音がして、まばたきをしたら、もう目の前にはデクの顔が──。

 

「ドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドル!!!!!」

 

 瞬間、全身に叩き込まれる無数のラッシュ。謎の言葉と一緒に浴びせられる拳の乱打は、容赦なく俺の体を貫く。

 

 コノヤロウ…緑谷出久この男は…!一体いつの間にこんなに強くなりやがった!これがさっき言ってたフルカウルってやつなのか!?そんなどこで覚えてきたか分かんねーような技に、歯が立たねぇ…!

 

「8秒経過ァ!はははは愛生くんどうしたんだ!?このまま僕にやられっぱなしで終わるのかい!?」

 

 テンションが…いつになく高い…!脳が昂っているんだ、血が騒いでいるんだ。クソっ、何とかしなきゃいけねーのに。さっきからアレが気になって仕方ねえ…!

 

 俺はラッシュを受けながら、デクの下腹部に注目する。現在、デクは学校指定のジャージではなく獣の皮でできた服を着用している。現地の人に貰ったのだろうそれは良い。

 

 問題は…デクがノーパンであることだ!そして…さっきからチラチラ見え隠れしているのだ!デクのデクが!服の丈が合っていないのか、さっきから俺の視界にリトルデクくんが現れたり消えたりしているのだ!

 

(こんなふざけたやつに…なんて屈辱…。全国放送だけど大丈夫なのか…?)

 

「ドルゥ!!!」

 

 高く打ち上げられた拳。俺はそれをモロに喰らい、宙を舞う。ああ、太陽が眩しい。今日はこんなにも良い天気なんだな。こんな日に友達と殴り合うなんて、誰だよ体育祭なんて野蛮なイベントを考えたやつは。

 

ドルチェノッテ(甘い夜を)

 

「うっ…がふ…!」

 

 そのまま地面に墜落し、口から少量の血が噴き出す。くそ…なんて情けない。まだ俺は何にもしてねえじゃねぇか。ただデクの攻撃を喰らって、地面に転がっただけだ。こんなんじゃ一佳に顔向けできねぇ。

 

「終わりさ。愛生くんの全身を撃ち貫いた、しばらく立てはしないだろう。気に病むことは無いよ。僕も驚いているんだから、自身の可能性とやらにね。さしずめ、可能性の獣とでも呼んでみようかな」

 

 デクの高らかな笑いが響き渡る。なんだろう、凄く悪役みたいなムーブかましてるけど大丈夫かな。

 

 しかし、ダメージはかなり大きい。体だって思ったように動かない。このまま何もしなければ、俺の負けになるのか…?

 

 そんなの嫌だな。

 

「…ミッドナイト先生、この試合はもう」

 

「──待てよ」

 

「ナニ!?立ち上がっただとォ」

 

 震える膝にムチを打って、歯を食いしばりながら何とか地に足をつける。目を丸くするデクが、目の前にいた。

 

「俺はさ…あんまり頭が良くねぇから…。だから戦い方とかいっつも雑で…そんなんじゃデク…お前には勝てねえってことに気づいた…」

 

 デクは頭がいい。勉強面もそうだけど、戦いの場合でも相手の弱点や自身に足りないものを分析して、レベルアップを常に図っている。今回の大幅な強化も、自損ばかりだった戦い方からどうやったら体を壊さず戦い続けられるかを追求した結果なのだろう。

 

「だ〜から俺は無いアタマ使って考えた。どうやったらお前に届くのか…どうやったら今より強くなれるのか…。そこで俺はひとつ思いついたことがあったんだ」

 

 ふぅと一息つき、全身に巡るエネルギーを改めて認識する。大丈夫…まだ俺は生きている…。俺の体内には、まだまだ元気に走り回っているパワーがある。

 

 イメージしろ…固く閉ざされた扉を開く…そんなイメージ。

 

「人の脳ミソはたった10パーセントしかその力を使えていない。だから俺は、持て余しているその力を使うことにしたんだ」

 

 ズキンと脳内に響く痛み。鍵のかかった扉を無理やりこじ開けているようなものだ、それなりの負担は覚悟している。その痛みに耐えつつ、俺はデクを見据える。

 

 ガチャリ…と、制約(ロック)が外れる音がした。

 

 

 

 

 

 

「──なんて才能だよ、君は。そんなこと思いついたって、ホントにできる人なんて…」

 

「あー…上手くいった…のか?よくわかんね〜けど、すげ〜力が溢れてくる気がすんなァ〜…」

 

 一線を画す。区切りをつけること。

 

 自分でも痛いくらい分かる、さっきまでの自分よりも今の自分が確実に強いということを。

 

 全能感…とでもいうのか。今ならなんでもできる気がしてきた。

 

「いいね、最高だよ愛生くん!やはり人は!土壇場でこそ輝く!」

 

「そうだなァ…そうかもなァ…!ククク…あははは…!」

 

 おかしくなっている自覚はある。けど今は…この溢れる力に身を任せたい。たとえ脳ミソが焼きちぎれようと。

 

「いくよ!」

 

「フッ!」

 

 デクの超スピードによる肉薄、さっきは捉えられなかった、今度は見える、デクの動きに体が反応できている。

 

 正面…そこに…拳を重ねる…!

 

「ツッ…!?頬が切れたか」

 

 続けざまに繰り出した蹴りは、デクの前腕に防がれる。すかさず俺は手を銃の構えにし、デクの腹部に押し当てた。

 

「ばん」

 

 指先から放った高密度の空気砲は、ミシミシという音と共にデクの体を遠方へ飛ばす。想像以上の威力に自分でも少し驚く。

 

「どんどん実っていくね…きみは…」

 

「自分でもこえ〜よ…クク…ぐふっ!」

 

 体の中から何かが出てきそうになり、咄嗟に口元を手で抑える。それでも指の隙間から、赤い血がボタボタと地面に流れ落ちていった。…その割には量が多い気がする。これ鼻血も一緒に出てるな。ついでに目元からも流血が。

 

「あ〜…内臓出てきたかと思ったわ…」

 

「体が追いついてないんだね。前の僕と同じだ」

 

「はっはっは…もっとだデク…もっとやり合おうぜ…!」

 

「…ハイになってるじゃないか。このままじゃ危険だろうに」

 

 分かってる、デクの言うことはごもっともだ。理解はできるが体が言うことを聞かない。このまま…この心地良さに身を委ねながら、自分の力を出し尽くしたい。

 

「友達の願いを叶えるのも大切さ。けど、自ら傷つきにいく人を止めるのもヒーローの役目なんだよ」

 

「ご立派な夢があっていいなァ!じゃあ俺の夢とどっちが偉いか勝負しようぜェ!!」

 

 地を蹴りデクの懐に飛び込む。デクもまた、真っ向から俺を受け止めるつもりのようだった。

 

 

 

 夢…夢…俺の夢…。

 

 雄英に入って、ヒーローになって。

 

 俺の夢って…一体なんだっけ…?

 

 

 

 互いにぶつかりあった衝撃で、俺は目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

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