君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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入学▶USJ襲撃の巻
#4 ガラガラで貰えるティッシュか!


 玄関に備え付けてある呼び出しベルを鳴らすと、明るい女性の声が聞こえてきた。声の主は、すぐに玄関の扉を開けて笑顔で迎え入れてくれる。

 

「あら一佳ちゃん、いらっしゃい」

 

「こんちは、ママさん。千晴いる?」

 

「部屋で一佳ちゃんのこと待ってるわよ〜。ほら、あがってあがって」

 

「おじゃまします」

 

 私は会釈をして、愛生家におじゃまする。階段を上がって正面にあるのが、千晴の部屋だ。

 

「おーい、千晴ぅ。来たぞー」

 

 そう声をかけると、中から返答が来る。

 

「カモーンベイベー」

 

 ドアノブを下に引いて部屋に入る。千晴の部屋は、意外とスッキリしている。あまり物を置かない主義なのか、必要最低限の家具だけが揃っていた。

 

「よう一佳、今日は髪を下ろしてるんだな。俺そっちの方が好きかも。いや別に普段の髪型をディスってる訳じゃないよ? どんな一佳も素敵だけど、今日の一佳の方が俺の好みだなって、そういう話なだけだから。お、香水つけてるのか? オシャレだね〜。服もよく似合ってるぜ」

 

「いきなりうるさっ! そんなことより、千晴のとこにも届いただろ?」

 

 私はバッグの中から、ある物を取り出して見せる。それは1通の手紙。千晴も全く同じものを手に持っていた。そう、これは雄英から送られてきた、試験結果の通知書だ。どうせなら一緒に開けようと、今日は千晴の家に集合した。

 

「ハァーめっちゃ緊張するわぁ。俺こーゆーの苦手だわぁ。どうしよう? 俺だけ落ちてたらどうしよう? 知ってる奴が1人もいない高校に、寂しく通うことになんのか? そんなの絶対嫌だ!」

 

「情けなっ! 泣きそうになってるのが余計に情けないわ! てゆーか、アンタ試験後はえらく余裕ぶってたよな? アレなんだったんだよ」

 

「虚勢張ってた」

 

「ダサっ! そんで今になってこれか! 頼むよ本当に……」

 

 ──とは言ったものの、千晴の気持ちは分からなくもない。実際、私だって100%受かっている自信なんて無いのだから。実技も筆記も、自分の出せる力の全ては出し切った。それで駄目だったのなら、受け入れるしかない。

 

「じゃあ……開けるぞ……」

 

 ゴクリと2人して生唾を吞み込む。全身に緊張が走っているのが分かる。この結果次第で、私たちの行く末が決まるのだから。

 

(どうか……どうか2人とも受かっていますように……!)

 

 入試の日の夜から、毎日ずっとそう願い続けてきた。その祈りも今日が最後だ。

 

「……ん? なにこれ……?」

 

 ビッ! と手紙の封を切ると、中には小さな円盤のような物が入っていた。どうやら千晴の方にも同じ物が封入されているようだ。

 

「なんだコレは!? もしかして参加賞!? ガラガラで貰えるティッシュか!」

 

 千晴がそれを、勢いよく地面に叩きつけた。

 

「そろそろ落ち着けよ……。まぁ私も、何が何だかよく分かってないんだけど──ってうぉ!」

 

 その瞬間、手に持っていた小さな円盤から、立体映像が飛び出した。それにビックリして、思わず手から落としてしまう。

 

『『はーはっは! 私が投影されたァ!!!』』

 

 千晴の方からも同じ映像が出てきたようで、流れてきた音声が重なっていた。そこに映し出されている人に、私は目を丸くする。

 

 角のようにピンと上に伸びた金髪。日本人離れした彫りの深すぎる顔。筋骨隆々の身体に黄色いスーツ纏わせたその男は、日本人なら誰もが知るあの──。

 

「誰だこの愉快なオッサンは」

 

「いやオールマイトだろ! 何で知らないんだ!」

 

 ポカンとする千晴に声を張る。前言撤回、このアホはオールマイトの事を知らなかったようだ。本気なのか冗談なのかは分からないが。

 

『時間も限られているから、シンプルかつ豪快にいこう。拳藤少女、君は合格だ!!! おめでとう!!』

 

 合格……、その言葉を聞いた瞬間、全身にビビっと電流のようなものが走った。雄英に合格できた……私の力が認められたってこと……? 祈りが通じた……? 

 

『待ってるぞ、雄英(ココ)が君のヒーローアカデミアだ!』

 

 映像の中のオールマイトが、私に向かって大きな手を伸ばす。思わずその手を取りそうになったが、映像だということを思い出し引っ込める。

 

 合格……合格か……。私、雄英に行けるんだ。ずっと夢に見てたヒーローへのスタートラインに、立つことが出来るんだ。喜びや達成感、期待感で胸がいっぱいだ。溢れだしそうになる感情をグッと堪え、私は幼馴染の方を見た。喜ぶかどうかは、千晴の結果次第で決まる。コイツはどうなんだ……? 

 

「グスッ……! はい……ありがとうございます……! うっ……うっ……!」

 

「めちゃくちゃ泣いてる!! えぇ、どっち!? 受かったの!? 落ちたの!?」

 

 千晴の顔面は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。なんかさっきから忙しいヤツだな。にしても、この顔はどっちの顔なんだ? 合格にも不合格にも見て取れるけど。

 

 千晴の円盤から立体映像がプツンと消える。そして、千晴はゆっくりと顔をこちらに向け、口を開いた。

 

「受かってた……春から来いって……!」

 

 笑顔の千晴がそこにはいた。相変わらず顔中ぐちゃぐちゃだけど、心底嬉しそうな表情で。

 

 気づけば私は、千晴の胸に飛び込んでいた。急に飛び込んできた私を、千晴は驚きながら優しく受け止めてくれる。暖かい人の温もり、千晴の体温を感じる。

 

「やった……やったな……。いっぱい頑張ってたもんな……」

 

 千晴の努力は、1番近くで見てきたから分かる。あのお泊まりの日から、学校でも家でもずっとずっと頑張っていた。その成果がこの結果に繋がったのだ。それをまるで自分の事のように嬉しく思うのも、変ではないだろう。

 

 とにかく、2人で雄英に行けるんだ。こんなに喜ばしいことは無い。

 

「あ、あの……一佳さん?」

 

「ん、なに?」

 

「流石の俺も、そんな急に飛び込んで来られたらビックリしちゃうというか……恥ずかしいというか……」

 

「はっ!?」

 

 その時に気づいた。自分がとんでもない事をしていた事を。千晴の胸の中の心地良さに溺れてしまっていた。

 

 シュバっと、私は千晴から飛ぶように離れる。

 

「あ……ち、違うって! これは……その……つい気持ちが昂っちゃって! ほら、我が子の成長に喜ぶ親の気持ち……みたいな?」

 

 ……一体なにを言っているんだろう、私は。頭の中がパニックになっていて、下手な言い訳のようになってしまっている。千晴も、頭をポリポリと掻きながら照れくさそうにしていた。

 

「お、おお……そうか……。なら、仕方ないな……。うんうん、そういう日もあるさ……」

 

 無理やり納得してくれたみたいだけど、どうしよう。変な女だとか思われたりしたかな? 拳藤一佳はすぐに男に引っ付きたがる、品性の欠片も無い尻軽女だって。もしもそういう風に捉えられたりしたら、私は死ねる。

 

 っていうか、千晴も千晴でいつもと対応が違うじゃん。普段の千晴なら、私から抱きついたりなんかしたら、舞い上がって踊り出すくらいするだろうに。なんで今日はフツーに照れてんだ。そうだよ、コイツのせいだよ! いつもと振る舞いを変える千晴がいけないんだ! 

 

「と、とにかく! 2人とも合格したわけだし、これからもまだまだよろしく〜、的なアレでね……? そう、そんな感じで……」

 

「……」

 

 き、気まずい……! 何でこんなに気まずいんだ……! 私なにか変なことしたか? あ、急に抱きついたか。何でそんなことしちゃったんだろう、数秒前の自分を殴りたい。

 

「そ、それじゃあ……用も済んだし、もう帰ろうかなっ! 高校でもよろしくな、じゃあまた!」

 

 いたたまれなくなった私は、逃げるように千晴の部屋から出て行った。居間から千晴のママさんの声が聞こえてきたが、それも聞こえないフリをして外へ飛び出した。自宅への道をひた走る。

 

 嬉しい……死ぬほど嬉しいさ、千晴と同じ高校に、しかも雄英に行けるなんて。でもそれは、まだ夢の途中なんだ。私が千晴に相応しい女になる為の第1歩でしかないんだ。それなのに……中途半端な気持ちであんなことをして……。

 

 もう一度、自分に言い聞かせよう。私が千晴に想いを伝えるのは、千晴の隣に立っていても恥ずかしくない人間になった時だ。幼い頃にそう決めたんだ、そこからブレちゃいけない。恋人らしいことをするのは、私の想いが通じてからだ。今の半端な私じゃ、千晴とそんなこと出来ないから。

 

「あいつも頑張ったんだ。私も頑張らなくちゃ」

 

 再確認した過去の誓いを、もう二度と忘れることがないよう、私は心に刻んだ。これからが本番なのだと。

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 それから月日は流れ、本日、雄英高校入学式。

 

 学校指定のブレザーに身を通し、一佳と電車に乗って、俺たちは高校へとたどり着いた。

 

 憧れの雄英高校、ヒーローになる為のスタートラインに立つ日だというのに、俺の気持ちは深く沈んでいたのだった。

 

「もう、いつまで落ち込んでんだよ。決まっちまったもんはしょうがないだろ? ほら、シャキッとする! シャキッと!」

 

 バン! と一佳が俺の背中を力強く叩いた。だがそれでも、俺のヘタレた心は元には戻らない。それには理由があった。俺のテンションが下がっている訳……それは……。

 

 一佳とクラスが別れてしまったからである──! 

 

 

 

 

 遡ること数週間前、自宅に雄英の入学書類やなんやらが色々と届いた時のことである。その中に、自分のクラスを示すプリントも入っていた。雄英高校1年A組、それが俺のクラス。それを知るや否や、俺は一佳に連絡をした。

 

「クラス? B組だけど……。あちゃ〜、別れちゃったか〜。ま、そういう時もあるよ。どうせ隣の教室なんだから、そんな気にすることないって」

 

 俺は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。この場合、邪智暴虐の王が誰になるのかは分からないが、とりあえず雄英まで行って直談判をしようとした。だが結果は門前払い。教師に話をつけるどころか、入口付近にいたロボット達に不審者扱いされ、そのまま敷地外へ放り出されてしまった。入学証明書を見せたりもしたが、奴らは所詮ロボット。人の言葉や感情を理解できる筈もなかった。

 

 

 

 

「はぁ、一佳のいない教室で1年間も過ごさなきゃいけねぇのかよ……。俺は辛い、耐えられない!」

 

「んな大袈裟な……」

 

「そうだ一佳、素晴らしい提案をしよう!」

 

「なに?」

 

「お前もA組の生徒にならないか?」

 

「はいはい、もう教室つくからね。アンタもそっちで頑張んなさい」

 

 ああ……一佳の背中が遠くなっていく……。その揺れるサイドテールに今すぐ飛びつきたい。一佳成分が足りないと、俺は死んでしまう。

 

「なんなんだこのバカでかい扉は」

 

 教室の扉は5mくらいあった。なんだこれ、俺の腕力で開くのか? と思ったら驚くほどスムーズに動いた。さすが雄英なんて技術力、褒めてやりたい。一佳とクラス別にしたのは許さねえけど。

 

 あーあ、クラスにはどんな奴がいんのかな。仲良く出来そうな奴はいるのかね。血の気が多いヤンキータイプとかいたら、そりゃもう最悪だ。そうだ、セロハンタと常闇クンはどうなったんだろう?合格してるのかな?もしかしてクラスが同じだったり、なんて。

 

 ガラッと音を立てて扉が開ける。すると、目の前に1人の少年が立っていた。薄い金髪に鋭い目つき、初日だというのに制服も着崩している。あれ? よく見たらネクタイしてない? 忘れちゃったのかな? 

 

「どけくそモブ。殺されたくなかったらな」

 

 ……僕たち、初対面ですよね? 初めて会った人にこんなこと言う人いる? こわい、この子すごいこわい。

 

「おい、聞いてんのか? 俺の前に立つんじゃねぇよ」

 

「はぁ……」

 

「なに人の顔見てため息ついとんだ!!」

 

「うるせーっ!! ただでさえナーバスになってんのに、朝っぱらからオメーみたいなの見たら誰だってため息出るわーっ!!」

 

 つい声を張り上げてしまう。けどなんだろう、言われっぱなしで引き下がるのも癪に感じる。

 

「上等だテメェ、表出ろや。今日一日保健室で過ごせるようにしてやるよ」

 

「いま来たとこなんだよ見りゃ分かんだろ、せめて荷物下ろさせろやそんくらいの配慮もできねーのかテメェどこ中ですかコノヤロー?」

 

「決めた……! ここで殺す……!」

 

 ヤンキーに胸ぐらを掴まれ凄まれた。凄く顔が近いです。男に接近されて喜ぶ趣味はないので、その手をグッと引き離す。

 

「暴力反対でござる」

 

「知るか! んだその語尾は!」

 

「──君たち! 入学早々なにをしているんだ!」

 

 その時、やけに通りの良い声が教室内に響き渡った。ツカツカと足音を鳴らしながら近づいてくる人物に、顔を向ける。メガネをかけ、いかにも真面目そうな雰囲気を纏った奴が、俺とヤンキーの間に割り込む。

 

「全く……まだ初日だというのに……。問題行動極まれりだぞ!」

 

「んだこいつ、メガネかち割るぞ」

 

「そうなった場合、ちゃんと弁償してもらうからな! 請求書を君の自宅へ送付させてもらう!」

 

「俺いいメガネ屋さん知ってるよ。そこならすぐ作ってくれるし、放課後に案内しようか?」

 

「なんで割られる前提で話しているんだ! だが情報だけはもらっておこう!」

 

 なんかキャラが濃いな、このクラス。個性が強すぎて埋もれてしまいそうだ。やっぱヒーローを目指す奴ってのは、一癖も二癖もある奴が多いのか? けど、なんだか退屈はしなさそうな気がする。

 

「あ、あわわ……なんかいきなり凄い状況になってる……」

 

 入口の方から、ビクビクしたような声が聞こえてきた。見ると、緑のモジャモジャ頭の子がそこに立っていた。赤いスニーカーに黄色いリュックを背負った彼は、なんだか弱々しそうに感じる。

 

「チッ、デクか。んでテメーがここにいんだよ」

 

「え、知り合い? もしかして同中? デクって下の名前か?」

 

「黙っとけカス! 気安く話しかけんじゃねえ!」

 

「こら! ヒーローを志すのなら、そのような汚い言葉は慎むべきだ!」

 

「ぷぷ、怒られてやんの。しかもタメの奴に」

 

「か、かっちゃんがイジられてる……。これが雄英……!」

 

「だークソっ!!! 鬱陶しいんだよテメーらっ!!!」

 

 ヤンキーが吠えた。その咆哮は、きっと学校中に轟いていただろう。

 

 喧嘩っ早い不良少年、委員長気質な真面目メガネ、モジャ毛のデク。コイツらを含めたその他のクラスメイトと、1年を共にすることになるのだ。まぁなんだ、意外と楽しめるかもしれないな。

 

 かくして、俺の雄英高校での日常が始まった──。

 

 

 

 

 

 




爆豪勝己①
・入学初日から、ネクタイをしないという暴挙に出る。
・メガネを見ると、かち割りたくなる衝動に駆られる。

飯田天哉①
・メガネのスペアを3つ持ってきている。

緑谷出久①
・モジャモジャしている。

瀬呂範太②
・最近、テープの出が悪い。

常闇踏陰②
・入学までに、鼻栓作りに更に磨きをかけてきた。
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