#41 僕の余興には定評があるんです本当なんです!
ヴィラン連合による夏の林間合宿襲撃──。
激しい戦闘の傷も癒えぬまま、僕達は近くの病院に運び込まれていた。
重傷者1名、そして行方不明者1名という事態に、世間はどよめいているだろう。部屋に用意されてある小さなテレビでは、雄英のニュースで持ち切りだ。
世間への謝罪会見。スーツに身を包んで身だしなみを整え、凛とした佇まいでいるテレビの向こう側の相澤先生の姿に、逆にこっちが緊張するくらいだったのは言うまでもない。
重症だったのはB組の拳藤さんだ。だが彼女は、すぐさま駆けつけたリカバリーガールの治療により事なきを得る。が、絶対安静なのは変わらない。あと数分でもリカバリーガールの到着が遅れていたら、危なかったようだ。
「…で、どーするよ?」
窓際に腕を組んでいたかっちゃんは、低い声で唸った。
「どうもこうもねーよ」
椅子に座っていた轟くんが、すくっと立ち上がり次に僕の方を見る。僕はチラッとかっちゃんを見ると、彼もまた同じように僕の方へ視線を向けていた。
決意は同じ。なら、後は決めたことをやるだけ。
"血狂いマスキュラー"との戦闘で負傷した腕、そこに巻かれた包帯を眺めつつ僕は口を開く。
「行こう、愛生くんの元へ」
僕らの戦いはまだ終わっていない。攫われてしまった友達を助ける。
僕達は、今すべきことはそれなんだと確信していた。
「問題は居場所だな。プロたちは既に掴んでるかもしれねぇが、そんなの俺たち高校生には教えちゃくれない」
轟くんの言う通り、最大の問題はそこにある。ヴィラン連合に連れていかれた愛生くんが何処にいるのか。皆目見当もつかない状態だった。
「エンデヴァーに頼んで教えてもらえねーのか?」
「もう聞いた。そしたら"お前は家でお利口さんにしてなさい"だとよ」
そう言って轟くんは、エンデヴァーとのメッセージのやりとりの画面を見せてくれた。エンデヴァー…意外と顔文字とか打つタイプなんだな…。
「ちっ、使えねーな。おいデク、職場体験で世話んなったジジイはどうだ?」
グラン・トリノのことだ。もちろん僕の方でも確認はしてある。だけど回答はエンデヴァーと同じ。僕は首を横に振って2人に示してみせた。
「かっちゃん、ベストジーニストはどうだった?」
かっちゃんは職場体験でベストジーニストの所へ行っている。もしコンタクトが取れる関係性なら、そこから愛生くんへの糸口を得ることが出来るかもしれない。僕と轟くんは期待を込めてかっちゃんを見る。
「あのジーパンはうんともすんとも言わねーな。…待て、今メッセージが入った」
僕と轟くんはかっちゃんの元へ駆け寄る。ずいとかっちゃんのスマホをのぞき込み、ベストジーニストから送られてきた謎の画像にキョトンとする。
「なにこれ」
「ジーパンだな」
「値札が付いてるってことは新品…卸したてのジーパン」
訪れる静寂。ジーニストの謎行動に、僕らは脳みそがフリーズした。
それを打ち破るかのように、僕の病室のドアが勢いよく開かれる。突然の来訪に僕らは肩をビクッと震わせた。
「ここに居たか、仲良しグループ」
現れたのはピンクとダークブルーのバイカラーの髪をした大人の女性…。凛とした顔つきが麗しい。思わず見とれてしまう僕がいた。
「ここじゃなんだ、屋上にでも行こう。君らが知りたがっている情報を教えてやる」
○
──頭の中に声が響いている。
誰の声だろう。知らない声だ。
何だかサイレンのような音も聞こえる。なんだ?何か事件でも起こったのか?
『うっ…うっ…まさかあんなことをするような子だったとは…』
誰かすすり泣いてんぞ。一体誰だ?状況がよく掴めない。
けど、声は段々とハッキリ聞こえてくるようになる。それに人の気配も。複数に囲まれているような、そんな感覚がある。
『愛生千晴、器物損壊の罪でお前を』
ん?器物損壊?俺を?
『逮捕するッ!!!』
「ぬわぁにィ〜!!!」
その瞬間に意識は覚醒する。ぐわっと目を見開き、まずは弁明するところからだ。俺は断じて器物損壊などしていない。話し合えば分かるはずだろう、ポリスメン。
「待て待て落ち着け皆の衆!俺は無実だ、話せばわかる!な?俺達はまだ話し合ってないじゃないか!?」
よく見たらなんか体縛られて変な椅子に括り付けられとる!これじゃ身動きが取れねぇ!くそ、このままお縄で一生を豚箱で過ごす羽目になるのか!?そんなの嫌だ!
誰かに助けを求めるんだ!そうだ、それがいい!あとは弁護してくれる奴を!──ダメだ、俺弁護士の友達なんかいねぇ!
「うわあああ!頼むぅ、何でもしますから!靴も舐めますし裸踊りもしますから許してぇ!僕の余興には定評があるんです本当なんです!1回それ見てもらってから判断は遅くないですよぉ!」
ポンと優しく肩に手を置かれる。その感覚にハッと我に返り、俺はその人物に目を向けた。
「よぉ…元気だったか?愛生千晴…」
「お、お前は…!」
「ふっ」
「死柄木弔20歳、無職、年齢=彼女いない歴、私服ダサ男、引きこもり運動不足ヤロウじゃないか!」
「そんな言う!?」
おー、ヴィランに突っ込まれるってなんか新鮮だな。怒りなのかプルプルと震えてるお久の死柄木が、そこに立っていた。
「相変わらず私服のセンスが壊滅的だな。崩壊してんのは個性だけじゃ無いなんて流石っす」
「やかましいッ!テメーボロカスにしてやんぞッ!?」
「どうでもいいけどさ。とりあえずここどこ?」
キョロキョロと辺りを見渡す。やけに薄暗い地下室みたいな所に、俺は椅子に座って手足を縛られている状況。まるで拷問用の椅子に捕らわれているかのようだ。
「言うわけ無いだろ。ま、言ったところで分かんないだろうけどさ」
「そっか。んじゃ次の質問。俺なんか攫って何する気?」
「…ククク。そいつはこれからのお楽しみってやつだ」
何言ってんだこいつ。呆れ顔で死柄木を見ていると、ニタニタ笑いながら俺の頭をポンポンしてくる。男が男にそれやっても気色悪いだけなんだが。
「お、目を覚ましたみたいだな」
知らない声が増えた。見ると、変な仮面をつけたシルクハットの男が部屋に入って来た。その後にも続いてゾロゾロと、数人のヴィラン達が俺を取り囲むように集まってきた。
「あら〜可愛い顔してるじゃな〜い」
「こいつが大暴れしてた奴か」
「みんな気をつけろ、何をしてくるか分からないからな…。仲良くしようぜ!」
なんか濃ゆいのがいっぱいでてきた。
「待って、そんな一気に覚えらんない」
「別に覚える必要は無い。俺達はヒーローとヴィラン。そのうち嫌でも覚えるさ」
…これが今のヴィラン連合のメンツってことか。オカマにトカゲにJK?も居るな。ハロウィンのパレードでもするのかと思った。
そんな中、俺の方へ1歩踏み込んでくる男がいた。黒髪の…火傷跡のような体中に痛々しい傷跡が目立つ男だ。
「思ったより元気そーじゃん」
「えーと、どちら様?」
「今は荼毘で通してる」
「そうか。俺はファッションマスター・ハルちーで通してる」
「ちょっと待てあれお前なの?」
死柄木がびっくりしていた。思わぬ所で種明かし。そういえばツッタカターを通して死柄木とコンタクトを取ったこともあったな。
「ふざけてんのか」
「いたっ」
ゴスっと鈍い音と痛み、そして口の中に血の味が広がった。
「さんざん痛めつけてくれやがって、まだ腕上がんないんだけど」
グイッと俺の方へ顔を近づけてくる荼毘。腕を見ると包帯がぐるぐる巻きにされていた。可哀想に。
「痛いんですけど」
そんな荼毘の鼻っ柱に頭突きを喰らわせてやる。ぷぐっと変な声を出しながら、荼毘は尻もちを着いた。
「てめっ…今の自分の状況が分かってんのか!」
「じゃあなにか?それ知って大人しくしてるとでも思った?」
脳から全身にエネルギーを回す。大丈夫、個性はちゃんと使える。
「お前らが変なことしてくるなら、もちろん抵抗するぞ」
「なにで抵抗するんだ?そんな状態で」
俺は念動力で縛られている椅子ごと自身の体を持ち上げる。ついでに、周りに落ちていた小物やら何やらも一緒に浮かせることにした。
「
敵は複数、手足は絶賛縛られ中。けど俺の個性には関係ない。
こんなところさっさと抜け出して、皆の所へ帰るんだ。