君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#50 通形先輩にジェットストリームアタックを仕掛ける!

「なぁ一佳、おれサイキョーになる!」

 

「また変なこと言い出したよコイツは」

 

 小学校3年生の頃、俺は友達に借りた漫画に出てくるキャラクターに憧れた。

 

 そのキャラクターは、口癖のようにいつも言っていた。「大丈夫、僕最強だから」と。

 

 その言葉は嘘なんかではなく、それを体現するかの如く数々の敵キャラ達を葬っていった。そんなキャラクターに憧れない男子などいないはずもなく、その口癖は瞬く間に校内の男子たちに知れ渡った。

 

 皆の中で流行り出すと急に飽きが来る現象がある。俺はまさにそれだった。皆がアホみたいに「サイキョー!サイキョー!」って言い始めた頃には、俺はサイキョーという言葉に飽き飽きしていた。

 

「なぁ一佳、俺サイキョーよりもツエー言葉知ってるぜ!」

 

「そうか、そりゃ良かったな」

 

 そんな俺が次に見つけてきた言葉は──。

 

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 

 

 

 

『"無敵"の個性だな』

 

 体内のアンナチュラルがそう呟く。それが通形ミリオ先輩を指していることは、すぐに分かった。

 

 通形先輩にしごかれ始めはや数秒、既にほとんどのクラスメイトが地面に倒れ伏していた。

 

「ちくしょ〜、好き勝手やってくれちゃって〜」

 

 初めこそ通形先輩は俺やデクを狙っていたが、まずはそれ以外のクラスメイトから数を減らすことに決めたのだろう。そうして残ったのは近接組のデク、飯田、そして切島と俺の合わせて4人だけ。

 

 僅か数秒でこの始末…実力差があるなんてもんじゃない。この人数差でこれは…ビッグ3は伊達じゃないってとこか。

 

「さ〜て、そろそろフィニッシュといこうか!」

 

 通形先輩が声を張り上げる。これだけの数を相手に縦横無尽に動き回っている先輩だけど、息一つ切らしていない。なんてスタミナ…まだまだ元気いっぱいといった様子だ。こりゃ真っ向から行っても勝ち目は無いな。

 

「先輩ちょっとタイム!作戦会議させて!──みんな、集合だ」

 

「まぁそういうのもいいよね」

 

 とりあえず残ったメンツをかき集めることにする。策なしで突っ込んでも意味は無い。

 

「おい、どうするあの人?ちょっと強すぎんだろ」

 

「何か弱みとかねーかな?実は最近までおねしょしてたとか。それを大声で叫んでやるんだ」

 

「姑息だけど手段としてはアリかもね」

 

「待て待て待て、おふざけは無しだぞ君たち」

 

 話が脱線しそうになるのを、我らが委員長である飯田が止める。

 

 さて、真面目な話どうしたもんか。現状としては打つ手なしだが。

 

「どうにもこうにも、あのすり抜ける個性が厄介すぎんだよな〜。どういう原理でああなってんの?」

 

「地面にも潜り込んじまうしな。モグラかってんだ」

 

「今この場で個性の原理等を考えていてもしょうがないだろう。考えるべきは、この4人でどうやって先輩を打ち崩すかだ」

 

 まあ…そうなんだけどね…。通形先輩の個性の発動条件とか見破ることが出来たら、そこを突けば何とかなるかもしれないじゃない。

 

「分析係のデクくん、何か方法は思い付いたかね?」

 

 何気なしにデクに意見を振る。デクは相手の動きやクセを見抜いて対策を立てるタイプだからな。こういう時に何か閃きが降りてくるかもしれない。期待を込めてデクに視線を注ぐと、切島と飯田も同じように目線を投げかけていた。

 

「…うん、あるよ」

 

「あんの!? シェアしよシェア!」

 

「かなり博打になるけど──」

 

 デクからの提案に、俺たち3人は唖然とした。およそデクから出てくるような考えではなかったからだ。けど、他に方法がないうえ同じことを繰り返しても待っているのは先輩のパンチだけだ。

 

「まぁ、やれるだけやってみるか」

 

 上手く行くかは分からん。そんときゃ皆で仲良く腹パンを受けよう。その覚悟を持って、俺たちは円陣を崩す。

 

「腹は決まったかい?」

 

「はい!再開させていただきます!」

 

 デクが俺たちの方を見る。それに対して無言で頷く。離れた所で先輩が、待ちわびたかのような表情をしていた。

 

「行くよみんな!通形先輩にジェットストリームアタックを仕掛ける!」

 

「んなダセェ作戦名だったのかよ!」

 

 デクのネーミングセンスに呆れつつ、まずは先鋒の切島が勢いよく飛び出して行った。全身を硬化させ、例え通形先輩に拳を繰り出されても最小限のダメージで抑えられるようにしておくのだ。デクと飯田も、自身の行動の為にいつでも動き出せる態勢でいる。

 

「バカ正直に突っ込んで来るとはね!俺も舐められたもんだ!」

 

「そーしたいところですけど、狙いはァ!!」

 

 切島が拳を握り、腕を引き絞る。そして繰り出された一撃の向かう先は──。

 

地面(ココ)だァ!!!」

 

 射出された硬拳がぶつかったのは、通形先輩ではなくその足元の地面だ。

 

 全力で振り抜かれた切島の右手は容易く訓練場の地面を打ち砕き、先輩の足元を不安定にさせる。

 

「潜る為の床は割っといたぜ、お二人さん!」

 

「続くよ飯田くん!!」

 

「ああ!!」

 

 なだれ込むようにデクと飯田が地を蹴る。

 

 一瞬先に出たデクが閃光を帯びながら、右の掌を通形先輩に向けていた。

 

「レシプロ…エクステンド…!」

 

 マフラーが飛び出している飯田のふくらはぎから、青白い熱光が噴出し始める。

 

 フルスロットル、今の飯田の最高速度を出す為の力が、そこに集まっている。

 

「掴んで離さない…伸縮自在のような…鞭のイメージ…!」

 

 次の瞬間、俺たちはデクの行為に目を見開いた。

 

 見たことの無い技だった。

 

 それは、聞いていたデクの個性とはまた異なる力…。

 

「放て"黒鞭"ッ!!!」

 

 デクから出てきたのは黒色の1本の線。それが通形先輩へ向かって放たれ、眼前で多方向に分裂した。

 

 まるで対象を取り囲む網のように変化したのだ。

 

 ビタビタッと黒緑の鞭は先輩の身体に張り付き、動きを封じ込める。

 

「捉えた…!飯田くん!!」

 

「──バースト!!!」

 

 一陣の風になった飯田は、目にも止まらぬ速さでデクを追い抜き、通形先輩へ肉薄する。

 

 懐へ飛び込んだ飯田は、先輩にサマーソルトキックを喰らわせた。

 

 宙に浮かび上がる通形先輩。それを捉えた俺は、フィニッシュの為に膝を折る。

 

「愛生ィ!ぶちかませッ!!」

 

「ガッテン承知ぃ!!!」

 

 切島が叫ぶ。

 

 俺は地面を踏み締め先輩の方へ飛び出した。

 

 ギュッと力強く拳を握り締め、体の中のエネルギーをそこに集約させる。

 

『やり方は分かっているな?ヘマするんじゃないぞ』

 

「おう!!」

 

 

 教えてもらった、俺の悪癖。

 

 

 常に全身に流しているエネルギーを、衝撃(インパクト)の瞬間だけはその部分に凝縮させる。

 

 

『──且つ、お前の拳の速度にエネルギーを合わせるんだ。拳の威力とエネルギーの密度を乗算させる』

 

 

 打撃との誤差0.000001秒以内に、エネルギーを衝突させろ。

 

 

『その瞬間、空間は歪み、お前の繰り出した一撃は──」

 

 

 

 

 (しろ)(ひか)る──!!

 

 

 

 

「これは…!?」

 

「うおらァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 すり抜ける暇なんて与えない。

 

 それよりも早く、己の拳を打ち貫く。

 

 通形先輩の腹部に刺さった拳は、白く輝く一撃となる。

 

『成ったな』

 

 アンナチュラル曰く、この現象に辿り着くか否かで、俺たちに刻まれた個性の核心との距離に天と地ほどの差があるという。

 

 この日掴んだ個性の核心を、俺は一生忘れることが出来ないだろう。

 

 そう思わせる程に、放った一撃と背後に聳える女神の微笑みは。

 

 美しかった。

 

 

 

 

 

 

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