君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#65 モテる為に中学の頃死ぬ気で練習してました

「──という訳で、文化祭の出し物は"ダンス&バンド"になりました」

 

「そうか、頑張れ」

 

「物凄く秒で決まったんだなコレが」

 

 放課後、職員室で俺とヤオモモは相澤先生の元を訪れていた。内容は言わずもがな、日にちが迫ってきている"雄英文化祭"の出し物についての報告だ。

 

 ヤオモモが作ってくれた用紙を眺めながら、相澤先生は興味無さそうな声を出す。これがイレイザー・クオリティなのだ。

 

「愛生、お前キーボード出来るのか」

 

「モテる為に中学の頃死ぬ気で練習してました」

 

 今回俺たちA組は、極上の音でパンピー(雄英の皆様)を殺るという理念の下、楽器隊とダンス隊とで分かれて出し物をすることになった。その楽器隊のキーボード担当が俺ということになっている。用紙を見ながら相澤先生が、生え散らかした顎髭を弄る。

 

「見たところ八百万の名前が無いが」

 

「私はミスコンに出ることにしました」

 

「入賞した人の居るクラスに、豪華お食事券がプレゼントされるらしいんすよ〜」

 

 それぞれのクラスの出し物の他に、文化祭には目玉イベントがある。それが、今回ヤオモモも出場することになったミスコンだ。名前の通り雄英の美形どころがこぞって出場し、誰がその年で1番美しいのかを決める戦い。そこで入賞でもしたら高級焼肉店の招待券が貰えるという話だ。

 

「正直俺的にはこっちの方が興味ある」

 

「こら、愛生さん。ちゃんと出し物の方に精を出してください。皆様方の前でお披露目するんですから」

 

「まぁ何でも良いよ。問題さえ起こさなければね」

 

 ジロっと先生が俺に視線を向けてきた。あれ、俺っていつの間にか問題児扱いされてる?清く正しく生きてきたつもりなのにな。

 

 職員室から失礼して、教室に戻る。文化祭も近いということで、準備を始めているクラスも多い。放課後のちょっとした賑わいが、文化祭シーズンのあの雰囲気を作り出していた。

 

「でも聞きましたよ。ミスコンには拳藤さんも出るみたいですね」

 

 道すがら、ヤオモモが口を開いた。

 

「そう!そうなんだよ!」

 

「急に荒ぶりますわね」

 

 そう、今年のミスコンは我が嫁一佳も出場することになっているのだ。あいつの美貌にかかればトップを獲ることなど造作もないことだが、それはそれで焼肉チャンスの可能性が薄くなる。

 

「応援したいけど焼肉が…。でも応援してあげたい!そうしたい!」

 

「す、好きにしたら良いのではないのでしょうか…」

 

 ヤオモモが若干引いていた。

 

 けど、今年のミスコンは荒れると聞いている。何やら強者共がぞくぞくと出場を決めているだとか。その中にはあの波動先輩もいる。これは先が読めなくなってきた。

 

 ヤオモモはミスコンの衣装決めということで分かれ、俺は一旦教室にでも戻ろうと歩を進める。その途中、ポケットの中のスマホが振動を始めた。

 

「おいっす」

 

『あ、愛生さん。お久しぶりです』

 

「どなた?」

 

『黒雪です、公安の。…もしかして番号登録してない?』

 

 かけてきた相手は黒雪だった。いま思えば、電話とかで話したことはあんまり無かったな。

 

「どした?」

 

『はい、お電話したのもですね。今度、千晴さんの通う雄英高校で文化祭があるんですよね?』

 

「情報が早いな。バッチリ文化祭があるぜ」

 

 どっからその情報仕入れたんだコイツは。まあいつもパソコンをカタカタ

 してっから、その一環でか。ハッキングとかしてないだろうな。

 

『あの、その、今年の雄英の文化祭は情勢等を考慮して内々で行われるとのことですが…生徒や関係者に招待を受けたら遊びに行けるらしくてですね…』

 

「え?そーなの?生徒の俺より詳しいじゃん最早」

 

『と、得意分野ですから』

 

 そっか、得意分野ならしょうがない。

 

「それで?その招待の枠を使って文化祭に参加したいってこと?」

 

『とどのつまり、そういうことですわ』

 

 とどのつまりって、現実で使う人初めて見たわ。

 

 まぁ招待に関しては特段誰かを誘う予定とかは無かったし、黒雪がこう言ってるんだ、せっかくなら来てもらっても良いだろう。

 

「OK分かった、手続きとかその辺のことはやっておくよ」

 

『あ、ありがとうございます…!助かります…!』

 

「俺もクラスの出し物でキーボード弾くんだ。よかったら見てってくれよ」

 

 しっかり宣伝も忘れない。せっかくの機会だ、楽しんでいってもらえたら何より。先にやる内容を伝えておいても良いだろう。

 

『あ、知ってます』

 

「え?」

 

『千晴さんがキーボード弾けて、当日もお弾きになること。知ってます』

 

 ──なんで?

 

 あれ?俺この子にキーボードのこと言ったっけ?いやいやまさか、そんな記憶は残ってないぞ。まだクラスの子くらいしか知らないと思うけど…。

 

『お部屋にカメラをしかけ──ゲフンゲフン!それでは、一旦お仕事に戻ります。千晴さん、当日は何卒よろしくお願いいたします。それではごきげんよう』

 

「ご…ごきげんよう〜」

 

 そうして通話は終了した。なんか最後にカメラがどうとか言ってたなかった?気のせいか…気のせいだな…。

 

 なんにせよ、多少はキーボードの練習をしておかないといけないな。多分腕はなまってる。勘を取り戻しつつレベルアップも図ろう、少しでも良い文化祭にする為に。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 

 

「あ、危なかったですわ。危うく口が滑るところでした」

 

 千晴さんとの通話が終わった後、私は自身の行いに冷や汗をかいていた。

 

「ば、バレてないですわよね?千晴さんの部屋に小型のカメラを設置してあること…」

 

 ポケットからスマホを取りだし、とあるアプリをタップする。そこにはとある一室を上から見た映像が映し出されていた。

 

 そう、千晴さんのお部屋です。

 

「異常はなさそうですね。まぁ、今は誰も居ないからそんなことある訳無いのですが」

 

 部屋の中に複数仕掛けた超小型カメラの、それぞれの映像を確認する。これにより、私は360°千晴さんの姿を確認することが出来るのです。

 

 スっとスマホをポケットに座り、私は喜びに打ち震える。理由は明白、千晴さんと会うことが出来るからだ。

 

 しかも文化祭、THE・青春イベントの1つである。それにお邪魔することも夢のひとつだったが、好きな人と一緒に回れることは、それはもう感無量である。

 

「さ・ら・に、あの幼馴染はミスコンに出るとかでその準備に当日もバタバタしているという…。ふふふ、千晴さんを独り占めする状況は整っているという訳ですわ」

 

 我ながらタイミングが良いというか、天に恵まれているというか。当日私を邪魔するやつは居ない。

 

「待っていてください、千晴さん。今度こそあなたを虜にしてみせますわ」

 

 来たる文化祭に思いを馳せながら、私は仕事に戻る。

 

 私は心に決めた。この文化祭で、千晴さんといくところまでいくと──!

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