君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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冬のインターンの巻
#68 いつまで経っても成長期!


 ──という訳でやってきました、冬のインターンシップ。でっかい荷物を背負って訪れたのはココ、公安の施設。過去に何度も足を運んでいるから、もはや馴染み深いものになっている。いやはや、まさか公安とこんな関係になるなんて入学前には思ってもいなかったよね。入口の警備ロボ達は今日も元気そう。

 

 中に入り、すっかり顔なじみとなった人たちに挨拶をしていく。公安というだけあってキチッとした人が多いけど、話せばみんないい人なんだよな。座学とかたまに教えてくれる。おかげで前の授業の小テストは半分も点数が取れた。え?半分で満足すんなって?考え方は人それぞれだろ!

 

 指示された部屋に荷物を置いて、制服のままでいいからとりあえず作戦室まで来いとナガンからは言われている。これから数週間、寝泊まりする個室に荷物を放って俺はそそくさと作戦室へ向かうことにした。

 

『おい小僧。なに緊張してる』

 

「はい?」

 

 その道中、いきなりアンナチュラルさんに話しかけられる。ふわりと実体を表し、俺の頭に肘を乗せて頬杖をつく。

 

『少しだけならな、お前の感情は私にも伝わってくるんだよ。んで、今のお前はいつもより若干心臓の鼓動が早い。これ真理』

 

 う、うそやん…。え、それってつまり、俺の考えてる事とかもアンナチュラルに伝わってるってこと?

 

『全部じゃないけどな。感情の流れや精神の起伏から、ある程度は分かるぞ』

 

「よし分かった。アンナチュラル、立ち退きを依頼する。契約解除だ」

 

『それが出来たら苦労は無いんだがな』

 

「どういう意味だそれ!」

 

 …にしても緊張か。なんだろう、そんなのした覚えは無いけど…。いや、思い当たる節が1つだけあるかも。いやいやでもまさかそんなハズは…。

 

 頭に思い浮かんでくるのは、黒髪の少女。いかんいかん、これじゃなんか意識してるみたいじゃないか。俺はインターンの為にここに来たんだ。邪な気持ちなど捨ておけ。

 

 そんなこんなで作戦室に辿り着く。自動ドアが開かれると、そこにはお馴染み巨大モニターやらサポート員のデスクやらが乱立しているお部屋が現れる。今日も皆さんキビキビ働いてらっしゃる。

 

「来たか愛生。思ってたより早かったな」

 

「ちゅーすナガン。相変わらずお綺麗で」

 

「はいはいありがとさん」

 

 待っていたナガンと、いつもの取るに足らないやり取りをする。でもまあ、現にナガンはべっぴんさんだよな。何で貰い手が見つからないんだろ。あれか?仕事一筋すぎるし、強いから男が寄り付かないのか?顔も若干キツめだからか?俺は嫌いじゃないけど。

 

「あいてっ」

 

 ナガンを見てそんなことを考えていると、背中にチクリとした痛みが走った。誰かに抓られたような、そんな感覚だった。背後を振り返ると、アンナチュラルがつーんとした表情で虚空を見つめていた。なにその感情、絶対犯人あなたでしょ。

 

「本題に入るぞ。今回のインターンの目的についてだ」

 

「うっす」

 

 それからナガンの話が始まった。

 

 今回のインターンの目的はそう、俺たち学生陣の能力の底上げ。近年活発化してきているヴィランへの抑止力として、未来のヒーロー候補である俺たちを今のうちにプロの元で育てることが目的とのこと。

 

 九州にてエンデヴァー、ホークスが対峙した"喋る脳無"は記憶に新しい。聞くとそいつは、以前のようにただ力を闇雲に振るうのではなく、知識を持って複数個性を使い分けていたとのこと。ヴィラン連合の悪の技術の結晶体とでも言うべきか、ともかくプロヒーローでも倒すのがギリギリな凶悪ヴィランが出てきたのは事実だ。

 

「1分1秒でも強くなってもらわなきゃいけないんだ、特にお前には」

 

「特に俺には?まぁ強くなるに越したことはない無いけど」

 

 ナガンの発言に首を傾げる。そんな俺を見て、ナガンは薄く笑ってみせた。

 

「体育祭、職場体験、この前のインターンでの死穢八斎會との抗争。お前の活躍はもう上の人たちは知っている。皆が口を揃えて言っているぞ、"凄い子が現れた"ってな。期待されてんだよ」

 

「なるほど、そりゃ頑張らなあかんな」

 

「そーゆーこった。──早速だが、今回のインターンのプログラムを伝える。忙しくなるぞ」

 

「おっす!」

 

 こうして、冬のインターンシップが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 

 

 

 

 

 

『やあ、画面の前の諸君!楽しい公安式格闘術の時間!』

 

 そう言って、モニターの中のマッチョが親指をビシッと立てる。おかっぱ頭のゲジマユに全身緑のスーツを着ている。悪いがただの変態にしか見えん。俺は黙ってその映像の前で、無言でファイティングポーズを取っていた。

 

『イメージするのは常に最強の自分、己が正義の為に悪を貫くのさ!じゃあまずはステップ1、ムカつく奴の前歯をへし折る正拳突きからやってみよう!』

 

 リズミカルなBGMが流れ始める。コーチの周りに生徒らしき人たちがワラワラと集まってきて、その全員が俺と同じポーズを取り始めた。

 

『音楽に合わせてやっていくぞ!はいワンツーさんしっ、ワンツーさんしっ!いつまで経っても成長期、ハイっ!』

 

「いつまで経っても成長期!」

 

『OKいい調子だ、ここからペースアップしていくぞ!じゃあまずは股関節を鍛える運動からだ。1・2・3・4・このは〜せんぷう〜』

 

 歌に合わせて股関節を動かす。うん、こりゃいい。普段動かなさそうな場所も動いてる気がする。

 

『1・2・3・4・5、朝孔雀』

 

 今度は片足立ちで体幹を鍛える動きだ。手を上に広げて孔雀のようなポーズで停止する。いいね、バランス感覚が鍛えられそうだ。

 

『1・2・3・4・ダイナミ〜ックエントリ〜』

 

 ほほう、飛び蹴りで強襲するイメージか。実践で使えそうだな。

 

『1・2・3・4・ハラワタをえぐり出してやる』

 

 深呼吸と同時にエグい言葉で締める。緩和と緊張…戦闘において重要な要素の1つか…。なるほど、チープな動きに見えてかなり理にかなっている…。

 

「──ワケねぇだろ!!んだこのふざけた教材ビデオは!!」

 

 思わず首にかけていたタオルを地面に叩き落とす。何が公安式格闘術だ、正気か?

 

「もちろん大真面目だ。公安の皆はこれで技術を磨く。私だって、このロックンロール・リー先生のご指導のおかげで強くなれたと言っても過言では無い」

 

「過言だろ!!」

 

 隣でファイティングポーズを取りながら、真剣な顔で言うナガンにツッコミ。ダメだ、この人もこのロックンロール・リーとかいうゲジマユに毒されてる。なんか俺を差し置いて勝手に続きを始めてるし。

 

 ナガンにインターンの内容を聞かされて数分後、俺が訪れたのは公安施設内の戦闘訓練ルーム。そこで俺の近接格闘術を鍛えるとか言われて、始まったのがこの謎のビデオ。正直先行きが不安すぎて仕方ない。

 

「さて、準備運動はこれくらいにして…」

 

 ふぅ、と息をつくナガン。羽織っていたジップパーカーを脱ぎ捨て、手首の柔軟を始める。

 

「さてとだ。今からお前に、私が公安に叩き込まれた技術の全てを伝授する。こんな個性だからな、もしもの時のことも考えて銃身を使った格闘術なんかも仕込まれたもんだ」

 

 言いながら腕を変形させて、銃身を見せつけてきた。

 

「一芸特化じゃヒーローは務まらないってこと?なんか相澤先生もそんなようなこと言ってたな」

 

「そんな感じだ。で、お前の個性は"超能力"。どっちかと言えば中〜遠距離が主体の戦闘スタイル──」

 

「──がはっ!?」

 

 突如、ナガンの銃身が俺の腹部に突き刺さる。急に訪れた腹部の痛みに、思わず口から空気が漏れた。

 

「接近戦がお粗末なんだ。それが今のお前の弱点」

 

「そ…そゆことね…。いきなりぶち込まなくても…」

 

 お腹を押えながら見上げたナガンは、厳しい瞳をしていた。それを見て察する。これからとんでもない特訓が始まるのだと。

 

「甘えは一切許さない。寝る時以外は常に戦いのことを考えろ。ヒーローとしての素地を今から身につけるんだ。いいな?」

 

「うっす…!」

 

「一緒に頑張ろうな。──あ、それとだな」

 

 思い出したかのように、ナガンは言葉を連ねる。

 

「このインターン中、お前は個性使用禁止」

 

「はい?」

 

 思わず素っ頓狂な声を上げた俺に、ナガンニヤリと嫌な笑みを浮かべていた。

 

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