君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#70 うへぇ…パンツの中まで土たっぷりだ

 その日はやけに寝覚めが良かった。アラームが鳴る前に自然と目が覚め、前日の疲労が全て回復している。こんな日はいつ以来だと、その日の最初の感情は自分自身に対しての驚きだった。

 

 インターンが始まってから、日中はパトロールやナガンと訓練。そして夜は夢の中でのアンナチュラルとの修行。それの繰り返しだ。

 

「後ろにも目をつけろ」

 

 ナガンは、いつもそう言って俺を虐めてくる。こういうのは体に覚えさせた方が早いとか言って、俺の体に沢山青アザを作ってくる。格闘術だけじゃなく、腕から生やしたライフルも使って叩いてくるのだ。痛い、痛すぎるんですよ!泣いて謝っても許してくれないんだ、あの人は。

 

『自由な自分を再現する為に、脳みそを爆発させろ』

 

 夜は夜でまた別のスパルタ教師が出てくるんだよコレが。アンナチュラルの方は、個性の成長を促す為にひたすらイメージトレーニングを行っている。曰くお前の想像力が武器になるとのこと。イメージ力と個性への理解が深まれば深まるほど、人は強くなれるらしい。

 

 これまたキツイのは、結局寝た気にならないということだ。夢の中でも脳みそフル回転させてるからか、頭が一向に休まらない。その事について文句を垂れてやると、バシンとビンタを食らった。脳みその回復?そんなの個性でやれ、とのこと。んな無茶なと思ったけど、そういや体の再生も"反転"の個性で出来たことを思い出す。それを頭の方にしてみたら…。

 

『いい、それでいい』

 

 いつでも新鮮な脳をお届けってワケ。脳みそが元気なら休む必要は無いし、個性も使い放題!夜も眠らなくて済むね!それならアンナチュラルとずっと特訓してられる!

 

「はは、人間離れしてきたな。たまにはこうして、個性をオフにして眠るようにしないと」

 

 うーんと伸びをし、ベッドを簡単に整えてから着替えを済ませる。朝食を食べに行こうと外に出たら、ドアの外に人が見えた。

 

「あ、おはようございます。千晴さん」

 

「あ、黒雪。おはよう」

 

 そこに居たのは公安でお仕事をしている黒雪だった。しっかりOLの格好をした彼女は、髪を整える仕草をしてみせる。

 

「今から朝ごはんか?」

 

「はい、そうです。千晴さんもですか?」

 

「おう、一緒に行こうぜ」

 

 黒雪を誘って、2人で食堂へ向かうことにする。時刻は朝の7時、活動開始までまだ時間はあるが、早いに越したことはない無いだろう。

 

 …視界の端で黒雪がソワソワしているのが見える。一体どうしたと言うのだろうか…?

 

「なんか落ち着かないな。どした?」

 

「えっ!?いや…!その…!なんだかんだでインターンが始まってから、こうして顔を合わせたのが今日が初めてですし…。それに前の…その…文化祭の…」

 

 黒雪はモジモジしていらっしゃった。よく出るよな、このモードの黒雪は。頬を薄く染めて、指をつんつんさせている。

 

 黒雪の言う通り、今回のインターンで公安に来たのは数日前だが、こうやって黒雪と話すのは何気に今日が初かもしれない。お互いなんだかんだで忙しかったからかな。

 

「文化祭…文化祭…ね…」

 

 その言葉に俺は、彼の日の出来事を思い出す。忘れもしない、雄英高校文化祭の事だ。

 

「…」

 

「…」

 

 空気おもっ。けどこればっかりは仕方なく無い?あんな熱烈なアピールをされてから当の本人同士でこうして会って、気まずくならない人なんている?否、そんな奴はいない。そんな高校生は存在しない。

 

「千晴さん…私は本気です…」

 

 隣を歩く黒雪が、そう言って足を止める。

 

「ずっと…もうずっと隠していたこの気持ち…。今更我慢する気は無いですから」

 

 真っ直ぐな瞳で貫かれる。1人の女の子に、ここまで想われるなんて事は初めてだ。

 

「貴方の中に別の女の子が居ることは承知の上です。それでも、私があの日千晴さんに伝えた言葉は、心の底からの本音です。お願いだから選んでなんて…そんなみっともない真似は致しません」

 

 コツコツとヒールの音を立てながら、黒雪は俺の横を通り過ぎる。そして、黒髪をたなびかせながらこちらを振り返った。

 

「私の力で貴方を振り向かせてみせます。だから千晴さん、覚悟…しておいて下さいね?」

 

 ニコリと笑みを浮かべられる。どうやら完全にロックオンされてしまっているようだ。

 

「は、ははは…俺って幸せ者なのかも…」

 

「あら?気付くのが遅いのでは?」

 

 さあさあと、黒雪が俺の腕を掴んで引っ張ってくる。

 

「朝食を食べに行きましょう。宜しければあーんをして差し上げますわよ」

 

「それはちょっと…人目とかあるし…」

 

「もう照れ屋さんなんだから。それじゃあ、人目につかない所でオモテナシ…させて頂きますわ」

 

 う〜ん…これはただのヒーロー活動だけじゃ済まなくなりそうな気がするぞ。でも、ここで本人の気持ちを考慮しないのも気が引ける。黒雪の気持ちを考えたら、適当な行動は取れない。

 

(あれ?俺ってもしかしてクズ男なのかな?)

 

 そんな事を考えながら、黒雪と一緒に朝食を食べに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 

 

 

 

 

「へ〜い!焼き鳥お待ちぃ〜!」

 

「安いよ安いよォ〜!今日は小籠包が安いよ〜!」

 

「そこの兄ちゃん、見てってよぉ〜!」

 

 都市部、とある繁華街!

 

 ナガンの指示でそこに赴いた俺は、パトロール活動をしながら繁華街で食べ歩きをしていた。

 

 右手に串揚げ、左手にはストローを突き刺したドリンク、これでもちゃんとパトロールしてるんだぜ?

 

「ああ〜…どこもかしこも誘惑だらけで、ついつい買っちまうな〜。このまま食い倒れるのも悪くないかも」

 

 ナガンに聞かれでもしたら、間違いなく拳骨が飛んでくるだろうな。だけど今ナガンは、公安の小難しい手続きやらなんやらで他所へ出向いている。つまり、今この瞬間は完全に自由な時間でもあるのだ。

 

『おい小僧、あの白いフワフワした物はなんだ!雲か?あれは雲じゃないのか?』

 

「おいおい綿菓子も知らねーのか姉さんよ。しゃーない、1つ買ってきてやるか。おーいおっちゃん、綿菓子1つ」

 

 今日はアンナチュラルもどこかテンションが高い。目に映るもの全てが新鮮だとでも言わんばかりに、その瞳は幼子よりもキラキラと輝いている。そんなアンナチュラルに、買ってきた綿菓子を渡す。

 

『綿菓子…一体どんな味がするのやら…』

 

 ゴクリ…と生唾を飲み込んでいる。そんな珍しい物でも無いだろうに、アンナチュラルは綿菓子にかぶりつくのをどこか躊躇している。食べ方が分からない…なんてことは無いか、流石に。

 

「上から行け!こうガブッと勢いよく、獣にでもなったつもりでだな」

 

『レディを急かすな、このケツの青いクソガキが…!』

 

「え…そんな言う…?」

 

 急に吐かれた毒に心を痛めつつ、アンナチュラルが綿菓子を頬張るのを静かに見守る。

 

『あむ…ん…!これは…!』

 

 カッと目を見開いたと思ったら、次の瞬間にはその美味しさを体で表現しようとしてか、腕をブンブンと上下に振るアンナチュラルの姿があった。本当に子どもみたいで、どこか新鮮だな。いつもはもう少しキリッとしているから余計に。

 

『こ、小僧…!これが綿菓子という物なのか…!この口いっぱいに広がる甘みと、自然に溶けていく感覚が堪らんな…!』

 

「はっはっは、お気に召されたようで良かったですわ。ほら、口に付いてんよ」

 

 ひょいと、アンナチュラルの口元に付いていた綿菓子を指で取ってあげる。そんな子どもみたいなことになるなんて、よっぽど美味しかったんだな。

 

『あ…。きゅ、急にレディに触れるな、不届き者が!引っこ抜くぞ!』

 

「物騒なこと言うの辞めてくんね!?」

 

 なんだ?今日のアンナチュラルさんは、やけに言葉遣いが刺々しい。でもアレだ、どうやら繁華街を楽しんでくれているみたいで良かった。柄にも無くはしゃいでいる彼女の様子を見ていると、俺の方も思わず釣られて楽しくなってくる。

 

『おい小僧、ちーずはっとぐってなんだ?気になるから買ってこい、ダッシュで』

 

「あ…顎で使ってくるなぁ…」

 

『ふん、こんな美人に使われてお前の本望だろう』

 

「んな趣味ねーよ」

 

 口ではごちゃごちゃ言いつつも、この人に逆らうと後が怖いので大人しく従う事にする。それがここ数ヶ月で学んだ事だ。え?下っ端根性極まれりだって?喧しい!上下関係の理解は、社会に出た後に1番重要な要素なんだよ!

 

 特に女の人は、不機嫌にさせないように気をつかってやらないといけない。ピリピリしてる女の人って、何であんなにおっかないんだろうね?一佳もたまにそういう時があったけど、流石の俺でもそんな時にちょっかいとかはかけらんなかったも。

 

「チーズハットグGETだぜ」

 

 お店の人から頼まれたチーズハットグを受け取り、アンナチュラルの元へ駆けていく。ダッシュで頼まれてるからな、それに少しでも冷めたらあの人多分キレる。食にはうるさいタイプだからな。

 

「へいお待ち」

 

『うむ、苦しゅうない』

 

 将軍かオメーは。まぁ最近は夢の中での修行とやらで、色々と世話になってるからな。これくらいの御奉仕はさせてもらうさ。

 

 っていうかこの人さっきから見るもの全部に興味を示してるな。そんなにも珍しいものが多いのか…?一体いつの時代に生きていたんだろうか、アンナチュラルは…。どんな生活を送っていたのか…。

 

 ──俺、アンナチュラルの事ほとんど何も知らないな。

 

 そんな事を考えている時だった。

 

「きゃあああああ!!!!!」

 

「──なんだぁ!?」

 

 突如として響き渡る、女性の叫び声。その方向へ顔を向けると同時に、俺とアンナチュラルは目の前の現象に目を丸くすることしか出来なかった。

 

 なんと、俺たちの目の前に広がる地面が大きく波打っているではないか。うねうねとまるで生き物のように、コンクリートが蠢いている。

 

「なんっじゃこりゃ!一体どうなってやがる!」

 

 言ってる間に揺れとうねりが俺たちの足元にまで迫ってきた。ぐねぐねし始めた地面のせいで、立っていることもままならない。

 

 ──うん、ヴィラン以外の何者でも無いなこりゃ。

 

「うわぁぁぁぁああああ!!!」

 

「た、助けてーっ!!!」

 

 さっきまでの明るい雰囲気とは一転、阿鼻叫喚が蔓延る街へと変貌を遂げる。揺れ動く地面に露店や人々が巻き込まれていた。そしてそれは俺達も例外ではなく…。

 

『あ』

 

 アンナチュラルからそんな声がした。確実に何かが起こったのだろうとそちらへ振り向くと、揺れの衝撃でさっき買ってきたチーズハットグを落としてしまったようだ。

 

『わ…私のチーズハットグが…』

 

 地面に落ちたチーズハットグを見て、項垂れるアンナチュラルがそこにはいた。両手と膝を着いておもっくそ残念そうにしてらっしゃる。う〜ん、かける言葉もない。

 

「また後で買おうよ?な?それでいいだろ?」

 

『う…うう…』

 

 え、こんなアンナチュラル見たことないんだけど…。てかそんなにショックだったの?

 

「がーっはっはっはァ!!!俺の力に恐怖しろーッ!!!」

 

 半べそかいてるアンナチュラルを慰めていると、いかにもなセリフを吐きながら這い出てきた人物が1人。地面の底から盛り上がるように隆起してきたそいつは、蠢く地面を見て高らかに吠えていた。

 

「どいつもこいつも能天気に店を出しやがって!俺の…俺のからあげ屋だって、本当なら今頃よぉ!!」

 

「今日日あんなわっかりやすい奴いるんだな」

 

 何だかあのヴィランにも悲しい過去が有りそうな気もしなくも無いが、それでも悪い事をしていい理由にはならない。街の人たちが頑張ってきたものを、こんな悪党のストレス発散如きでぶち壊しにさせる訳にはいかない。

 

 まずは念動力で街の人たちの安全を確保。まとめて浮かせて宙に留まらせる。地面にいるよりよっぽど安全だろう。そうしたら後は敵本体をどうにかするだけだ。

 

「ククク…地面と一体化した俺に触れる事など出来ぬ…!」

 

「んなもんやってみなくちゃ分かんねーだろ──シッ!」

 

 アンナチュラルは置いておいてヴィランに肉薄する。地面からタケノコのように生え出ている本体に向かって拳を振りかざすが、ヒットの寸前でヴィランの体は地面の中に吸い込まれていった。

 

「ガハハハハ!そんな単調な攻撃、俺には通用しないぜ!」

 

「地面の中と外を行ったり来たり出来んのか。めんどくせぇ個性だな」

 

 すかさず地面を蹴って再度ヴィランに殴りかかるが、その度に地面の中へ逃げ込まれてしまう。何だかモグラ叩きでもやっているかのような気分だ。こちらを煽ってくるような敵の顔がとてもムカつく。

 

「くっそ、逃げ回ってるばっかりじゃ埒が明かねえのは奴も同じだろうに」

 

「──と、思うじゃん?」

 

 その声は俺の真下から聞こえてきた。

 

 見下ろした時には既に俺の足首はヴィランに掴まれており、ニヤリという笑みが視界に映っていた。

 

「地中ツアーへようこそォ!!」

 

 瞬間、体が一気に地面の中へ引きずり込まれた。そのまま地中の暗闇の中を、縦横無尽に引きずり回される。尖った石とかがちょくちょく体に刺さって地味に痛いぞこれ。

 

「あだだだだ!おいコラ、もうちっと優しくできねーのか!」

 

「土遊びは嫌いかァ!?幼い頃はあんなに好きだったろう!」

 

「お前と遊んだ記憶はねぇ!」

 

 まるでジェットコースターに無理やり乗らされている気分!

 陽の光も入らないから真っ暗だし、いま自分がどこに居るのかすら判断できない!

 想像以上に厄介だな…。

 

 ふと、俺の足首を掴んでいた奴の手が離れる。おかげで体は止まったが、どうにも嫌な予感がする。これで終わるとはどうにも…。

 

「やぁ」

 

 右の耳元から声がした。次の瞬間、顔の右側に鈍い衝撃と痛みが襲いかかってきた。続けざまに連続で全身を殴打される。

 

「くははははは!!どうだ、俺の力はァ!?暗闇の中で目も開けられない!訳も分からない状態でただひたすら蹂躙される気分はァ!?」

 

「くっ…!ちょこざいな…!」

 

「俺もそうだったさ!ひたすらクソ真面目にからあげの味を追求していた!何年も、何年も!そしてようやく出来上がった究極のからあげ…俺は確信した"天下が獲れる"と!!」

 

 唐突に始まったな自分語りが。死ぬほど興味無いんだけど。

 

「ようやく出来た俺だけのからあげ…そのレシピを、たった1人だけいたアルバイトの子に共有したんだ…。そいつも言っていた、"今までで最高のからあげだ、絶対に天下を獲れます!"と。──半年後、天下を獲ったのはそいつの方だった!!」

 

 何の話だコレ!?

 

「奪われたんだ、何もかも!俺の完成させたからあげのレシピ!コツコツ増やしてきた店のファン!そして…密かに恋焦がれていた街のパン屋の女の子まで…!何がからあげパンだ、ちくしょー!!あの子にサンドされるのは、俺の方だったのにー!!」

 

「いやホントに何の話!?」

 

 言うと同時に顎を打ち上げられ、そのまま地表へ打ち出される。全身土まみれで最悪の気分だ。そのまま腹部に蹴りを入れられ、地面に叩きつけられる。

 

「これは復讐だ、俺を裏切った全てへの。どいつもこいつもみんな俺の敵なんだ。俺は願ったさ、ムカつく奴ら全部を黙らせられるような力が欲しいと」

 

「うへぇ…パンツの中まで土たっぷりだ」

 

「聞けよ!──するとどうだ、怪しげな嘴の付いた怪しげなマスクを着けた怪しげな男に声をかけられ、怪しげな路地裏に行ったんだ。そこには怪しげな連中がいて、見るからに怪しげなクスリを渡していた…」

 

「怪しいが過ぎるな!」

 

「怪しげな男は言ったんだ。"こいつを使えば簡単に強くなれるぞ"と。渡されたのは注射器、それをいざ使ってみると」

 

 ヴィランが両手を地面に突き刺す。すると地面が再び蠢きうねり出す。こりゃ立ってられないな、空中に居た方が戦いやすい。俺は体を浮かせて、姿勢を制御させた。

 

「この有様さ」

 

 直後、間欠泉のように地面から土石が噴出し始めた。中にはかなり大きい岩なんかも含まれている。さらに、飛び出してきた尖った石が周囲のビルの窓ガラスに突き刺さり、破片が降り注いできていた。

 

 うかうかしてると、街のみんなに更なる被害が及ぶ。これ以上時間をかける訳にはいかない。

 

「俺は世間に認めさせるんだ、俺の実力を!そうしないと俺は──」

 

「──うるせぇ!!お前がホントに欲しかったのは、他人からの評価だったのか!?」

 

 辺りに散らばった土石を念動力で操り、ヴィランの方へと差し向ける。

 同時に俺も奴へと突貫、掌から衝撃波を繰り出して牽制する。

 

「──ッ!?ガキが知ったふうなことを!お前らのようなヒーローが、俺のような日陰者を理解出来る訳が無い!死に物狂いで掴み取ったたった1つの光を、奪われる気持ちが分かるか!?分かるまい、俺にはそれしか無かったんだよ!」

 

 接近してそのまま飛び蹴りを喰らわそうとするが、即座に地面に潜られ回避される。これじゃさっきまでと同じだ、力の使い方を変えるんだ。奴を地面から引っ張り出さなきゃ、防戦一方になっちまう。

 

「もう引き返せねぇ!ここまで来ちまったんだ、力も手に入ったんだ!ならもう行くしかない!」

 

「なら俺が──」

 

 体の中のエネルギーを両手に集約させる。

 念力を帯びた手が朧気に光り始めると、次に集めたエネルギーの矛先を地面に向ける。

 

 ──地面に潜った奴を、無理やり引きずり出してやる。

 

 …まるで地面と綱引きでもしているかのようだ。とてつもない重みが、全身にのしかかってくる。歯を食いしばってないと競り負ける。耐えろ、耐えろ、耐えろ。昔ばーちゃんちで手伝った大根掘りを思い出せ!

 

「む、体が…!?」

 

「ッ…うおりゃああああああ!!!!!」

 

 懇親の力を込めて引き抜く──!!

 大地と一緒に引き上げられたヴィランの体が宙に舞う。

 攻撃の好機は、奴が地面に墜落するまでの間だけだ。

 俺は地面を勢いよく蹴った。

 

「な…こんなことが…!」

 

「お前を止める」

 

 ヴィランの眼前にまで差し迫り、固く拳を握り締める。

 遠慮なんかしない、コイツはここで叩きのめす。

 

 引き絞った右腕を勢いよく射出させ、顔面を撃ち抜く。

 瞬間、俺の拳は白く光った。

 放った拳を振り抜き、地面に叩きつける。

 砂煙と共に、ヴィランの体が地面へと突き刺さった。

 

「チェックメイトだ、モグラ野郎。また今度からあげを食わせやがれ」

 

 白目を向いて動かなくなったのを確認して、一息つく。これにて一件落着、いきなりしんどい敵だったな。

 

『私の…チーズハットグが…』

 

 アンナチュラルは、未だショックから抜け出せていなかった。

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