君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#73 ジャジャ〜ン…ハイエンドだヨ

 突如として現れたヴィラン連合の黒き刺客、その名は脳無!

 

 だが、いま目の前に居るソイツは過去に見てきた奴らとは色々と違っていた!

 

 まずはその体長、今までは大きくても2mくらいでちょっと大きい男がおるな…くらいの感覚だった。けど目の前のコイツは違う、体格は優に5mは超えているだろう!それくらいデカかった!

 

 それに極めつけは…。

 

「喉がカラカラ…」

 

「ッ!?い、今なんて…!?」

 

「オイシイ…」

 

「しゃ、しゃ…!」

 

「コレ最高…」

 

「喋ッタァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 そう、今日の脳無はお喋りも可能なのだ!これには流石の俺もビックリ仰天。空いた口が塞がらないとはこの事さ。

 

「ジャジャ〜ン…ハイエンドだヨ」

 

「また喋ッタァァァァァァ!!!!」

 

 ヴィラン連合め、なんて恐ろしい生物を作り出したんだ。人語を話して自己紹介もしてくれるなんて、これはもはや人類の英智なのでは?そうだ、記念に写真撮っておこ。ついでにSNSにもアップロード、クラスの皆にも画像を送ってあげるとしよう。

 

『ハイエンド…神野とやらで戦った奴の上位互換といったところか…。面白い…』

 

「え?そんなバトルジャンキーみたいなキャラだっけ?強敵見て舌なめずりて。モテないから辞めときな」

 

 ハイエンドを見て心を震わせていたアンナチュラルを思わず指摘。いい歳した女性が、そんな風に目をピキらせないでよ。ちょっと引いたぞ

 あ、いた!頭頂部をポコポコ叩くの辞めて!

 

『茶番はこの辺にしておいて。どうするんだ?奴はかなりの強敵だぞ』

 

「どうするもなにも、択は1つしか無いだろ?こうなりゃやぶれかぶれよ」

 

 …正直分は悪い。相手は脳無…を超えるエネルギーを持つヴィラン。まず見た目がヤバいし恐らく個性も複数持たされている。プロの応援が来るまで、大人しく安全な所でプルプル震えている訳にもいかん。街の人を守らないと。

 

 拳をギュッと握り、全身にエネルギーを回す。戦う準備はOK、いつでもどこでも、100%のパフォーマンスが出せるようにしておくことは大事なのだ。

 

『そうこなくては。丁度いい、夢での修行の成果を見せてみろ。超能力を応用した組立で敵の動きを──」

 

「──ステゴロォ〜マグナムっ!!!」

 

『馬鹿ガキが…!』

 

 先手必勝!戦いとは先に手を出した方が有利!俺は拳を握って、ハイエンド目掛けて勢いよく飛び出した。必殺の右ストレート、"素手発砲(ステゴロ・マグナム)を味合わせてやる!

 

 説明しよう──ステゴロ・マグナムとは。まるで弾丸のような拳を繰り出せるよう、星に願って手に入れた最高の力のことである。

 

 腕を引き絞り全力を込めて打ち出す。穿った拳は、ハイエンドの腹部に深々と突き刺さる…ハズだった。

 

「…岩?」

 

 硬い…最初に頭に浮かんできたのはその言葉。俺が殴ったのは堅固な岩石なのかと錯覚してしまう程に、ハイエンドの腹は硬かった。見ると腹筋が8つに割れている、こりゃ硬い訳だ。

 

「ヒーローノ…数と配置ハ…?」

 

「え…?急に何を…?」

 

 突然ハイエンドから飛び出てきた質問に、変な声が出る。ヒーローの…数と配置…?こいつ一体どうしたんだ?

 

「ヒーローノ数と配置ハ?」

 

「…知らない」

 

 瞬間、頭部に衝撃が走る。景色が一気に移り変わり、次にやって来たのは背中の痛み。鉄筋造りの構造物を何個も突き破り、その場から勢いよく吹っ飛ばされた俺の体は、数メートル離れた所で止まる。その後にようやく、コトを理解した脳が頭部に割れるような痛みを知らせてきた。いや、これ既に割れてるかもしれん。なんてパワーだよ相変わらず。

 

『おい、私が咄嗟に反転を回していなかったら今ので死んでたぞ』

 

「助けてくれたんだ、サンキュー。さっきまで三途の川でバタフライしてたわ」

 

『そりゃ結構』

 

 ダメージは…多少はあるが動けない程じゃない。これもアンナチュラルさんの"反転"のおかげだ。それにしても随分遠い所まで飛ばされたな、とりあえず街の人達が襲われる前にさっきの奴の所まで戻らないと。

 

「よっ!と」

 

 両足で地面を踏み締め、そのまま大跳躍。周りの景色をあっという間に追い抜かして、ハイエンドの元へと舞い戻る。

 

「やいそこのまっくろくろすけ!お前よくも殴り飛ばしてくれたな。これ以上バカになったらどうしてくれんだ!」

 

「強イヒーロー、と、戦ウ」

 

 こいつさっきからそんなのばっかだな。よっぽどの戦闘狂が母体にでもなっているのか…。ともかく、この脳無を造り出すのに人1人を犠牲にしているという事実が、俺は許せない。

 

『会話など無駄だ、さっさと倒してしまえ』

 

「だな、何とかして食い止めねーと」

 

 さっきの攻撃の威力的に、そう何度も喰らってもいいものじゃない。敵の攻撃は躱しつつ、こちらの攻撃を確実に当てていかなきゃ勝機は無い。相変わらずのハードモードだが仕方ない…ヒーローはそういうお仕事だ。

 

『私がついてる、億さず行け』

 

「応!!!」

 

 経験豊富な師匠もいるから戦える。俺は両の手を前方に突き出し、空気を押し出す。それは空気の弾丸となってハイエンドへと向かって行った。

 

「こノ程度…」

 

 ハイエンドはそれを避けようともせず、自身の頑強さを主張するようにその身で受けてみせる。空気の弾丸はハイエンドの体にぶつかるが、特別ダメージは無さそうだった。牽制にもなりゃしない。

 

 

 

 ──やれることは多いが、圧倒的に火力が足りてない。

 

 ──もっと出力を上げろ。じゃなきゃ一生強くなれんぞ。

 

 

 

 思い起こされるのは、スパルタな師匠たちの言葉。超能力によるサイコキネシスやパイロキネシス、バリアといった技のバリエーション。そういうのには長けているが、決め手にかけるのが俺の課題だ。普通の敵が相手ならそれで押し切れることもあるが、今みたいな防御力が高い相手や再生持ちが相手となると、決定力の弱さが浮き彫りになってしまう。

 

「くすグったイダけだな」

 

 途端に伸びてくる黒腕が、俺の眼前にまで迫る。背中を反らすことでそれを躱し、そのまま地面から足を離す。地面と平行になるような姿勢のまま宙を駆け抜け、とりあえず上空へと体を持っていく。

 

「黒雪、街の皆の避難状況は?」

 

『もう大丈夫です。周辺の方々の避難は、全て完了しています』

 

「OK、もう乱暴しても良さそうだな」

 

 黒雪からの伝達を受け、力を解放する。サイコキネシスの出力を全開にし、周囲にある使えそうな物全てを操る。車、電柱、標識、オフィスの中にあるデスクや棚。申し訳ない気持ちもあるが、今はハイエンドを止めることが先決。後で公安の人に何とかしてもらおう。

 

「せー…のッ!!」

 

 サイコキネシスで浮かせた物を全て、ハイエンド目掛けて放つ。大量の製造物が雨のようにハイエンドへと落ちて行くと、すぐにその体はそれらに覆い尽くされていった。

 

『これで終わりじゃないよな?』

 

「当たり前だろ、見くびんなよ」

 

 畳み掛けるようにパイロキネシスを発動させ、火炎をハイエンドの居る場所へ放出。さっき投げつけた物の中には車も含まれている。狙いはその中のガソリン。それに引火してくれたら──。

 

「ボカン」

 

 鈍い音と熱気が解き放たれる。ハイエンド目掛けて放った物たちが一斉に爆発を起こし、黒煙を巻き起こす。周囲の人の避難が済んでいて良かった。まだ人が居たら、こんな荒事到底できっこない。爆発のおかげで周囲がちょっと凄いことになるかもだけど、それには目をつぶって欲しいかな。

 

『やったか…?』

 

「それやってないフラグになるやつ」

 

 アンナチュラルのあるある発言に思わず苦言。変なとこベタなんだよなこの人は。そりゃこれで倒せてたら御の字だけど、恐らくそんな簡単では無いはず。かと言って、これ以上の火力を出せと言われても今の俺には…。

 

『生体反応を確認!千晴さん、まだ敵は動いてます!』

 

「ほら来たァ!この一級フラグ建築士め!」

 

『うるさい、耳元で騒ぐな!』

 

 言わんこっちゃない。やっぱりアンナチュラルが"やったか?"なんて言ったから、そのフラグをしっかりへし折ってきたよ。くそ、こうなりゃ次の手を考えないと。でもどうする?肉弾戦なんてオールマイト並みのパワーが無いと意味を成さないだろうし、手数で攻めようにもチンタラしてたら再生される。

 

 考えろ、今の俺には何が出来る?

 

『──ッ!?千晴さん、気をつけて!』

 

「!?」

 

 黒雪の切羽詰まった声が響き渡った。それとほぼ同時に、目の前にハイエンドが現れる。なんてスピードだよ、さっきまで地面に居たじゃねーか。それに無傷だぁ?

 

「コレデ終わリ」

 

 丸太のように太く変形させられた腕が見える。特大のパワーを込められたそれが、俺目掛けて撃ち放たれようとしていた。ヤバい、こんなの喰らったら体が弾け飛ぶ。死の輪郭が見え始め、背中に寒気が走る。この絶望は…USJの脳無の時以来だ…!

 

「死ネ」

 

 死の宣告、放たれた黒腕が視界を埋め尽くす。それに対し即座に見えないバリアを創り出し、寸でのところで防御する。危ない危ない…間一髪だっ──。

 

『後ろだッ!!』

 

 アンナチュラルが声を荒らげると同時に、反射的に背後に振り向く。するとそこには、二本の黒い腕が眼前にまで迫ってきていた。なんだこれ。このハイエンドにはそんな機能が搭載されてんのか?腕を増やすなんて、そんな芸当が。

 

 っていうかヤバい…完全に意識の外側からの攻撃…。反応が間に合わない…!

 

 その時、ドクンと心臓が跳ねる音がした。これは…アンナチュラルと体が入れ替わった感覚だ…。

 

 およそ人間のものとは思えない反応速度で、アンナチュラルはハイエンドの腕を回避してみせる。確実に人間の限界値を超えていると思うけど、そんなことはどうでもいいか。

 

 伸びきったハイエンドの腕が目の前にある。アンナチュラルはおもむろにそれを掴み、力を発動させる。

 

『「捻れろ」』

 

 瞬間、新たに生やされたハイエンドの二本の腕がねじ切れた。その黒い皮膚の内側には、ちゃんと筋繊維が見て取れる。改造人間だけあって、素体は俺と同じ人間なんだと改めて感じる。

 

 ねじ切った腕を宙に放り投げ、少しハイエンドから距離をとる。…うん、やっぱりそうだな。切れた腕は即座に再生させるよな。現にいま切断した腕は既に半分ほど修復が完了しており、背部から突出している。計四本の腕を備え付けたハイエンドが、怪しくこちらを睨んでいた。

 

『「さて、どうしたものかな」』

 

(ありがとうアンナチュラル。代わってくれなきゃ確実に殺られてた)

 

『「ふん、礼など要らん。くすぐったくてしょうがない」』

 

(…命の恩人なんだよ、アンタは、俺の)

 

 アンナチュラルには何度も窮地を救われてきている。俺が死んだらアンナチュラル自身も消滅することになるからそれが理由だと言われてはきたけど、それでもだ。この人が居なかったらもう何回死んでたことやら。

 

「なかナカしぶとイ」

 

『「まだ死ぬには早いんでね。ま、私は一回死んだ身ではあるけど」』

 

(笑えるのか笑えないのやら)

 

 ともかくだ、ここからどうハイエンドを打ち崩すか。無い頭で少し考えてみよう…。う〜ん…そうだな…今回は…。

 

『「おい、無駄な努力はよせ」』

 

 一生懸命考えていたら、アンナチュラルなら冷徹な一言が。それはグサリと俺の心を突き刺した。

 

(なんでそんな酷いこと言うんだ!俺だって頑張ってんだ!)

 

『「そう悠長に構えてる時間は無い。私に一つだけ方法がある」』

 

(方法…?なにそれ…?)

 

 聞くと、一呼吸置いてアンナチュラルが口を開いた。

 

『「私とお前が合体するんだ」』

 

(がっ…たい…!)

 

 合体…合体だって…!?なんだそれは、左右対称に変なポーズを取って指と指を合わせるやつか?それともお互いの耳に変なアクセサリーを付けたら、体同士が引き合って交わるやつか?それとも…それとも…!

 

『「…悪いが、今お前が考えているようなことじゃ無いぞ。もっと細かく言うと、私とお前の魂を同調(シンクロ)させるんだ」』

 

(魂のシンクロ…だと…?)

 

 なんだそのカッコいい響きは…!魂…シンクロ…!いかん、俺の中の厨二心がくすぐられる…くすぐられるぞ…!

 

『「いつも言ってる"想像(イメージ)"だ。お前の中に埋め込まれた私の細胞一つ一つと、お前自身の細胞を重ね合わせろ」』

 

(おっす!)

 

 AFOによって埋め込まれたアンナチュラル細胞と記憶…それと俺自身の細胞を重ね、繋ぎ合わせる…。集中しろ…俺の体は一人のものじゃない…。

 

『「"感情は武器だ"。いつもと同じ、今お前の中に渦巻いている感情を原動力に。精神を研ぎ澄ませ」』

 

 感情…原動力…目の前のハイエンドを止めないと街の人たちが危険に晒される。沢山の罪も無い人達が傷つくことになる。そんなこと許しちゃおけない。

 

『「そして掴め、私とお前に刻まれた個性(奇跡)の──」』

 

 

 

 

核心を──!!!

 

 

 

 

 

 

 

 頑張れよ、美然。

 

 

 

 

 

 

 …なんだ?誰の声だ…?

 美然って、誰のことだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと目を見開く。

 目の前には変わらず、眼部を光らせたハイエンドが見えた。

 息を吸い、ふぅーと吐き出す。

 うん、体の調子は悪くない。むしろいいくらいだ。

 

「不思議な感覚だ…。自分の体だけど自分の体じゃ無いような…」

 

 全身の感覚が今までとは異なっていた。今までは俺の体があって、それに外付けされる形でアンナチュラルという精神があった。けど今は違う。一心同体という表現が一番しっくりくる。一つの体を二人で分け合っているような、そんな感覚だ。

 

「な二か変ワったか?」

 

「さぁな。けど、お前に言っても理解できないと思うぜ」

 

「そウか…そレじゃアそろソロ続きを…」

 

 ハイエンドの四本の腕が、俺に差し向けられる。一つ一つが確実に命を潰せる力を秘めている。けど不思議と怖くは無かった。

 

 なぜなら、今の俺は一人じゃないから。

 

 全身から途方もないエネルギーを感じる。今はただ、この力を試したくてうずうずしていた。

 

「がっカリさせテくれルなヨ…ひーろー…!」

 

「その目に焼き付けておくんだな。俺とアンナチュラルの強さを!」

 

 今なら思い描いてたこと、全部できそうだ。




めちゃくちゃ今更ですが、アンナチュラルが喋ってる時は『』で括ってます

千晴の体を操ってる時の吹き出しは『「」』で表現してます

インカムで通信が入る時も『』がつくので、ややこしいですね
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