君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

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#78 じゃ、じゃあどこで寝たらいいんだ?廊下か?他の人の部屋か?どこなら満足なんだい!?

「ダメだよそんなの!風邪ひいちゃう!」

 

「し、仕方ないだろ!ベッドは1つしか無いんだから!」

 

 雄英に帰還したその日の夜、俺はエリと部屋の中で論争を繰り広げていた。否、これは論争と呼べるものなのかどうか。それすら今の俺には分からない。

 

「この寒い時期に布団も敷かずに床で寝るなんて、そんなの絶対許しません!」

 

「じゃあソファだ!それなら良いだろ!」

 

「もっとダメです!体に悪いよ!」

 

 体に悪いて。まぁ確かに、ソファとかで寝たら次の日体中バキバキになるけども。

 

「じゃ、じゃあどこで寝たらいいんだ?廊下か?他の人の部屋か?どこなら満足なんだい!?」

 

「ここですよここ!千晴さんのベッドで、私と一緒に寝るんです!」

 

「だぁから!それは絶対ノーサンキュー!」

 

 両腕でビシッとバツマークを作る。それだけはダメだ、倫理的に。エリはこの前7歳になったばかり。見た目は女子高生だが、まだ幼子なんだ。いや、この場合見た目がJKなのがアウトなのか?もうよく分からん!とにかく一緒にベッド・インだけは絶対にダメだ!

 

「そんな…千晴さん、そんなに私のことが嫌いなの…?」

 

「へ…?」

 

「私はただ、千晴さんに体を大事にして欲しいだけなのに…。心配してるだけなのに…」

 

「え…?ちょっと…?エリさぁん…?」

 

 何だかエリが泣きそうな声と顔でこっちを見てくる!やめろ、そんな目で俺を見るな!罪悪感が湯水のように湧き出てくるじゃねーか!

 

「そっか…千晴さんにとって私の気持ちなんて、どうでもいいものだったんだね…」

 

「おおお俺が悪かった!だからその精神攻撃やめてくれ!」

 

 全力謝罪を決め込む。そんな言い方されたら、無下になんてできないじゃないか。ずるいぞこの小娘。

 

「…どこで寝るの?」

 

「あ…えっと…ベッドで…」

 

「誰と?」

 

「ひ…ひとりで…」

 

「誰と?」

 

「ひっ…え、エリと…」

 

「ふふ…よろしい…。言質取りましたからね…」

 

 こっわ。この女の子こっわ。ホントに7歳の女の子なの?絶対誰かに余計な知識入れられてるでしょ。行動が7歳のそれじゃない。

 

 エリに招き入れられ、ベッドの中に入り込む。なんで自分のベッドで寝るのに、こんなに緊張してんだろ。

 

「ほら、もっと引っ付くともっとあったかいですよ。最近また寒くなってきたら」

 

「はい…」

 

 ベッドの中でエリが俺の腕に手を回す。なんだろう…俺の中で何かが崩壊していく。

 

「まるで恋人同士みたい。千晴さんがいなかった間、ずっと寂しかったんだよ?だから──」

 

 耳元で、エリの吐息が聞こえる。

 

「私をそんな気持ちにさせた責任、今日取ってくださいね」

 

 こうして夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side:拳藤一佳

 

 …触れ合いが、触れ合いが少ない気がする…。

 

 とある日の昼休み、ふと頭にそんなことが思い浮かんだ。

 

 場所は校内の食堂。いつメンならぬB組女子たちとランチを楽しんでいた最中、親子丼を頬張りながら思う。

 

「一佳、箸が止まってる」

 

「考えごと?」

 

「あ〜、さては愛生のこと考えてたな〜」

 

 想い人の名前が急に出てきて、思わずむせる。そんな私を見て「図星か」と切奈はニヤニヤしていた。

 

「べ、別にそんなんじゃない!」

 

 嘘である。不肖、拳藤一佳。幼馴染である愛生千晴の顔が、頭に浮かんでおりました。コップにつがれた水をグイッと飲み干す。

 

「そういえば最近、あんまりクラスの方にも来ないよね」

 

 レイ子がそんなことを口にする。それを聞いた私は、顔には出さないようにはしたが気持ちは沈んでいた。

 

 文化祭が終わった頃くらいからだろうか、千晴がB組の方に顔を出すことが少なくなった。入学したての頃は毎回の休み時間にB組に来て、隅の方で私の様子を伺ってたりしてたのに。それがめっきり無くなったのだ。

 

「これは…もしかして一佳、愛想尽かされた?」

 

「はぁ!?どどどどーゆーことだよそれは!?」

 

「声デカっ」

 

 思わず立ち上がって大きな声を出してしまう。幸いお昼の時間の食堂は人が死ぬほど多い。その喧騒に私の声はかき消された。

 

 愛想を尽かされただぁ…?一体どんな根拠があってそんなことを…。

 

「だって一佳、愛生の猛アピールに見向きもしないんだもん。もうずっと、小学校くらいの時からだっけ?愛生が一佳にゾッコンなのは」

 

「…幼稚園の時から」

 

「あー、はいはい。でもそれを、アンタはずっと流してきた訳でしょ?高校に入って周りに可愛い子も増えてきて、目移りしちゃってるんじゃないの〜?ほらぁ、A組も可愛い子揃ってるしぃ〜」

 

「そ、そんなこと…」

 

「体育祭やこの前のインターンの戦いも、テレビで中継されてたでしょ?あれから彼の人気、結構凄いよ?先輩とかから声掛けられてるのも見たことあるし」

 

「え、う、うそ…」

 

 なにそれ…私そんなの知らない…。

 

「愛生が心変わりするのも、時間の問題かもね〜」

 

 切奈のその言葉が脳内で反芻する。千晴が…心変わり…。つまり…他の女の子のことを好きになるということ…?私以外の女の子を…?

 

 何それなにそれナニソレ。そんなのありえない。だって、だってそうでしょ?千晴は昔から私のことが好きで、私以外の女の子のことなんて眼中になくて、それで…。

 

「あ、愛生だ」

 

 希乃子の発言に肩が跳ね上がる。皆が見ていた方へ顔を向けると、確かにそこには千晴の姿があった。お盆を持ってキョロキョロしている、クラスの奴でも探してるのかな。

 

 そんな千晴を見つめていると、そこに寄ってくる2人の女子生徒。あれは2年生の先輩だな。ヒーロー科では見ない顔だから、普通科かサポート科辺りの人だろうか?その2人は千晴に話しかけ始めた。

 

「わぁ、言ったそばからじゃん」

 

 流石に距離があって会話の内容は聞き取れないが、何やら楽しそうな雰囲気は見て取れる。次の瞬間、女子の先輩たちがおもむろに千晴の腕に抱きついた。両サイドを固められる形で、そのままどこかへ連行されていく。

 

「…見た?あれが今の状況」

 

 見ての通り…と首をすくめた切奈の言葉は、耳の中を右から左へとスルッと抜けていく。私はただ、先輩と人混みの中へ消えていく千晴の背中を、呆然と眺めていた。

 

 千晴が、あの千晴がモテ始めている…。これは由々しき事態だ。

 

 心のどこかで慢心があったのだと思う。昔からの付き合いで、千晴の性格や行動は嫌という程すぐ近くで見てきた。あのゾッコン模様からして、他の女の子に目移りしようものなんて、全く考えてこなかった。そんなのあるはずがないことに、どうして私は今まで気づかなかったんだ。

 

 このままじゃ、千晴が他の子に盗られちゃう。私の、私だけの千晴が。

 

「…誘う」

 

「え?」

 

「私は千晴を…デートに誘う…!」

 

 これしか方法はない…!あれを見せつけられて何もアクションを起こさないなんて、恋する乙女じゃない。

 

 この日、私の闘志に火がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、拳藤さん。何かご入用ですか?」

 

 その日の夜、私は早速A組の寮にやってきた。

 

「お、八百万。そうそう、ちょっち千晴の奴に用があってね」

 

 理由はそう、千晴をデートに行く為だ。

 

「愛生さんならお部屋に居るかと」

 

「サンキュー。ちょっくらお邪魔するね」

 

 八百万にお礼を言いつつ、他のA組の子らにも挨拶をしながらエレベーターに辿り着く。千晴の部屋の場所は前に聞いた。っていうか千晴の方から教えてきた。何か部屋の窓越しに顔とか見れるかどうか知りたかったらしい。寝る前に私の顔をひと目見ないと安心できないとか。…アホか。実際には千晴の部屋から私の部屋は見れないんだけどね。

 

「うし、ここだな」

 

 そうして辿り着いた千晴の部屋。何の変哲もない扉が目の前にはある。

 

 1度深呼吸…心を落ち着かせるのだ。なに、ただの幼馴染を買い物に誘うだけだ。昔からよくやってたこと。男子目線のコーディネートを知りたいとか、そんな理由でよく千晴を連れ出してた。その実、千晴の好みを探るという裏テーマもあったのだが。千晴の奴、キャップにオーバーサイズのパーカーとか着てくると喜んでたな。

 

 意を決して千晴の部屋の扉をノックする。部屋には居ると八百万が言ってたから、すぐに反応は来るはずだけど。…なかなか返事が来ない。もしかしてお手洗い?いや、それでも千晴はバカみたいにデカい声で反応はくれるはず。トイレに居てもお構い無しに。

 

 念の為もう一度ノック。返事がない。おかしい。部屋に居ないのかな?

 

 …ドアノブをゆっくり下ろしてみる。鍵は空いてるみたいだ。なら部屋に居るはずだろうに。なんで何も反応が返ってこないんだろう。

 

「千晴…?開けるよ…?」

 

 埒が明かないのでゆっくりと扉を開くことにする。キィと小さな開閉音を鳴らしながら、千晴の部屋のドアを開けて中に入る。

 

「大人しくしてください、千晴さん。抵抗しても無駄ですから。それに、動けば動くほどその捕縛布は身体に巻きついてきますよ?」

 

 …なんだ?誰の声だろう?知らない人の声が聞こえてくる。

 

「むーっ!むむーっ!」

 

 これは千晴の声だ。何かむーむー言ってるけど、口に詰め物でもされてるのか?それに何やらバタバタ音も聞こえる。暴れてるのか?

 

「おーい、千晴。お前いったい何やって──」

 

 瞬間、私の視界に飛び込んできた異様な光景。

 

 ベッドの上で謎の白い布を手に持つ白髪の女子。その子に下敷きにされている千晴の姿。手足と口元には白い布が巻かれている。声も出せないし、身動きも取れない状態だった。

 

 極めつけは、千晴の服が脱がされていた。鍛えられた上半身が露出している。その上に跨る女の子。

 

「あなたは…」

 

「むー!みみあー!」

 

「なんっだこの状況…」

 

 知らない女に、私の千晴が蹂躙されている。

 

 白髪の女子が私を見て薄く微笑む。

 

 それを見て認識した。

 

 ああ、この女も敵なんだと。

 

 久しぶりの黒い感情が、体の奥底から湧き出てきた。

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