#80 暇ならUNOでもします?
事態というのは刻一刻と変化していくもので、その情報は時に洪水のように押し寄せてくる。
No.2ヒーロー、速すぎる男──ホークスは公安の命でヴィラン連合と接触を図っていた。情報を制すものは戦いを制す。常に敵側の内情を把握しておくことで、有事の際に有利に動けるようにしておく。現代ヒーロー社会においても、そこは変わらない。
ホークスがヴィランから得た情報によると、死柄木弔率いるヴィラン連合ならびに異能解放軍が結託。超常解放戦線なる新組織を立ち上げた。
さらに、ホークス決死の情報収集によると超常解放戦線の目的も判明。一言でいうと過去のAFOの再現だ。現行のヒーロー社会、その制度も崩壊させ、瓦礫の玉座に自分たちが立つ。破壊と支配を行い、日本を牛耳るつもりらしい。
──先に動かれたら敗ける。故に、先回りして事を成す。先手必勝という言葉があるように、勝つ為に、国民を守る為に、ヒーローは常に先手を取り続けなければならない。
『──っていうの状況だ。頭ん中入れとけよ』
「うす」
とある山中に建てられた簡易的なスペース。そこで俺は今日、今から決行される作戦についてナガンから聞いていた。
ホークスからの伝達事項。超常解放戦線一派が本日、とある日本のとある場所で集会があるらしい。群訝山荘、そこにある館の中にヴィラン達が集結しているのだ。
そこを叩くのがプロヒーロー・エッジショットを中心としたチーム。その中には上鳴や常闇くんが配属されている。他にもB組の生徒の数人が、最前線ともいえるその場に呼ばれていた。
「にしても、学生の手をこうも借りる事態になるとはね〜。士傑の奴らも呼ばれてんでしょ?」
「はい、既に各突撃部隊に配備されています」
隣に座る黒雪が、相変わらずパソコンを叩きながら教えてくれた。すっかりOLみたいになりおって。敵として戦った時が懐かしいぜ。
『エンデヴァー達の病院側も、既に現地に到着している。作戦開始は時間の問題だろう』
「はい。こちらの準備も抜かりなく終わっております。後は突入の合図が来るのを待つだけ──いま来ました」
「そっか。エンデヴァーも別の場所で違うことしてんのか」
もうひとつ、ホークスが仕入れた情報がある。蛇腔病院…ヴィラン連合の1人、脳無やハイエンドを作る闇の医者である殻木球大の居る場所だ。そいつの確保に赴いているのが、エンデヴァーやミルコ、相澤先生を含めたチーム。今そちら側に動きがあったようだ。
「山荘側も作戦の開始をした模様。ここから状況は逐一伝えます」
「OK、頼むぜ黒雪!そんでもって1個聞きたいんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「俺はここで何してんの?」
兼ねてよりの疑問を、俺は解き放った。
ヒーローとヴィランの全面対決。デクや爆豪、轟たちも恐らく各所に配置されていることだろう。やっている事や指示されている内容までは把握してないが、恐らく避難民の誘導とかそんな感じだろう。切島や八百万なんかは、割と前線の方に居るっぽいし。
「それに比べて俺は、何でここで呑気に茶なんて啜ってんだぁ!?」
とある山中に、俺の声がこだまする。すると、遠くの方からホーホケキョと鶯の鳴く声が返ってきた。う〜ん、平和。
「何かご不満でも?」
「いや別にそういう訳じゃ」
「暇ならUNOでもします?」
「いま大事な作戦中だよね!?」
何を言ってるんだ黒雪は。ジョークも上手くなってからに。ほほほ、とお上品に笑いながら彼女はモニターに視線を戻す。
『お前は遊撃手だ。今お前が居る所は、病院と山荘のちょうど中心付近。どちらの支援にも駆けつけられるような場所なんだ。戦況が傾いてきた時に投入される』
「遊撃手…!なんかカッコイイ…!」
『ヒーロー側が有利になって、その後押しの為に戦場に赴くのか。それともヴィラン側が優勢になった時、その盤面をひっくり返す為に投入されるのか。状況に応じた動きをお前にはしてもらいたい』
「ほほう…チャンスの時の抑えに使われるのか、それともピンチの時に形成を逆転させる為に出てくのか。絶妙な立ち位置ですな」
「ええ。だからこうして、私が傍に居て状況を確認しておりますの」
なるほど、理解した。つまり俺は、指示があるまでここで待機をしていなきゃいけないんだな。それが今の俺の仕事。心の底から理解した。
『悪い、動きがありそうだ。1度切る』
そう言ってナガンが通信を切った。彼女は今、山荘側の高台に配備されている。スナイパーの個性を用いて、遠距離からヴィランを仕留めていくらしい。なんとも恐ろしや。ヴィラン達には同情するぜ、目にも見えない遠く離れた所から、弾丸が打ち込まれてくるんだからな。
そこで、俺はとあることに気付く。
「でもさ、もし俺がこっから離れた時、黒雪はどーすんの?」
「どうする…というと?変わらずここに居続けますけど」
「いやいやそうじゃなくて。俺がこっから離れたら、お前1人になんじゃん。そんな時にヴィランとか出てきたら、誰が黒雪を守るんだよ」
見たところこの場所には、俺と黒雪以外に誰もいない。特別ヴィランの気配を感じている訳ではないが、何が起こるか分からない状況でもある。今はまだ俺が居るから大丈夫だけど、万が一俺がこの場所を離れている時に何かあったら…。黒雪は今は無個性で、戦闘能力なんて無いに等しい。自衛の術が有るなら良いけど。
「ああ、そういう事ですか。それなら心配要りません。もしもの時、この装置を使えば緊急脱出が出来るようになっております。少し無骨な機械ですが、性能は文句無しです。試運転はバッチリでした」
なにその緊急脱出装置。トラップカードか何かか?
まぁ万が一の時のことも考えてあるなら、一旦は心配要らない…のかな?よく分からんが、ケースバイケースでいこう。
「にしても、ふふ…私のことも心配して下さるのですね」
「あ?なに当たり前のこと言ってんだよ。そんなの今更だろ」
黒雪の発言に思わず首を傾げる。
「今更…?」
「ああ。そりゃ最初はヒーローとヴィランだったけどさ、黒雪は俺たちの手を取って戦うことを決めたじゃん。その時から、お前は俺の中での守るべき人だよ」
「千晴さん…」
黒雪にはかなり世話になってる。戦闘中の支援や公安で沢山話しかけてくれたり、一緒にご飯を食べてくれたり。色々な所で助かってるんだ。
「だからさ、まだ頼りないかもしれないけど、心配くらいさせてくれよ。そら黒雪からしたら、もっと実力のある男に守られた方が安心出来るかとは思うけどさ!」
「千晴さん…もしかして私のこと口説いてます?」
いやなんでそうなるんだよ…。そんでちょっと嬉しそうな顔すんな。
「私は元ヴィランです。他人に酷いこともしましたし、ご迷惑も掛けてきました。こんなこと自分で言うのもアレですけど、ロクな最期は迎えられないんだろうなって思ってます」
「黒雪…」
モニターから俺の方へ向き直り、黒雪は続けた。
「それでもね千晴さん。貴方と過ごした日々や経験したこと、教えてくれた感情が有るだけで、私はもう充分なんですよ?これ以上ないってくらい、幸せなんです」
黒雪の言葉を、ただ黙って聞く。
「貴方の優しさが私の人生を変えてくれた。今までも、そしてこれからも。貴方と一緒に居たら、私の人生はもっと色鮮やかになる。だから千晴さん、私は貴方の傍に居たい。私のこと、これからも守ってください」
ニコリといつものように笑ってみせる黒雪。出会った時とはまた違った笑顔の花を咲かせる黒雪が、そこには居た。
「何だかしっとりさせちゃいましたね。さ、引き続き戦況の確認をしないと」
「だな。俺もいつでも出てけるように準備を──」
瞬間──全身を駆け巡る嫌な予感。
これは、前にハイエンドと戦った時に感じたモノと似ている。
悪意のプレッシャーとでも言うべきか、脳からの危険信号が全身に知らせている。とんでもない敵が出てきたのだと。
「──ッ!!黒雪、どっちかの戦況に異常は発生してないか!?」
「ちょうど病院側の方で、強力な生体反応を確認!これは…ハイエンドと思われます!」
ハイエンド…やっぱり出てきたか。そりゃあんな優秀な駒、量産できるならしてるよな。
けど違う。ハイエンドだけじゃない。もっと凶悪なモノが居るはずだ。まだセンサーでも拾いきれてない邪悪なモノが。
「ナガン、ナガン聞こえる?」
『どうした?簡潔に言え』
「病院側にヤベーのが居る…気がする」
『んな曖昧なこと…。信じていいんだな?』
「ああ!俺も俺を信じる!」
『よし、なら行け』
「うす!」
流石ナガン、判断が早い。俺を信じてくれている証拠だ。
「黒雪、ちょっち病院の方がヤバそうだから行ってくる。マジでなんかあった時は、すぐに呼んでくれ。その後ろの緊急脱出装置は、迷わず使うんだぞ」
「はい、お気を付けて」
思ってたより早くこの場を離れることになったな。ヒーローの襲撃を受けて、ヴィラン側もすぐに対応してきたということか。侮れない。
「うし、じゃあ飛ばすとすっか」
「あ、千晴さん待って」
全身にエネルギーを流し込み、飛行の準備をする。その時、黒雪から声を掛けられた。
「ん?どした?なんか伝えときたいことでも──んむ!?」
その時、唇に柔らかいものが押し付けられた。視界は黒雪で埋め尽くされている。口づけをされているということには、割と早くに気付いた。
数秒経っただろうか、黒雪はゆっくりと俺の唇を返す。
「黒雪…こんな時に何を…」
「こんな時だからこそです。いま行われているのはヒーローとヴィランの戦争。貴方たちが今まで経験してきた戦いのどれよりも危険なもの。最悪の場合だって…もしかしたらあるかもしれません…」
最悪…そうだ、そうだよな。黒雪が言う通り、これは戦争なんだ。こちらが勝たないと日本が危ないし、ヴィランも本気で俺たちを落としに来る。命懸けの戦いってやつだ。
「だからこれはゲン担ぎです。貴方がしっかりと力を振るえるよう、私の想いを千晴さんに与えました」
黒雪は俺の両手を握って、真っ直ぐな目で見てくる。吸い込まれそうな大きな瞳をしていた。
「必ず帰ってきてください」
黒雪の想いが、その言葉から伝わってきたような気がした。
そうか、俺には帰り待ってくれる人がいるのか。
「うん、絶対に戻ってくる。何があっても」
「約束ですよ」
「おう!」
浮遊能力を発動させ、俺は空へ浮かび上がる。眼下の黒雪に目を向けると、俺の方をじっと見てくれている姿がそこにはあった。
「お前の想い、ちゃんと受け取ったよ」
空気を押し出し、その勢いのまま病院の方へ向かう。
かつてないプレッシャーを感じながら、俺は空を駆けた。
ちょうどいい区切り(?)なので、今の愛生千晴くんの能力についてまとめておきます。
【念動力】
・物を浮かせたり飛ばしたりする基本的なやつ
・空気を押し出す真空刃もこれの応用
【パイロキネシス】
・発火能力
・個性伸ばしで火力は轟にちょっと及ばないくらいのものに
・白い炎が出ます
【アトミキネシス】
・凍結能力 ハイエンド凍らせたやつ
・顕現させた氷を投げつけたりしてる
・流石に轟には出力で負ける
【飛行】
・念動力で自身を浮かせて空を飛ぶ
・発動中に更に空気を押し出すとスピードアップ
【バリア】
・最初はよくあるドーム状の視認できる方法で使ってたが、アンナチュラルに指摘された
・今は周囲の空気を操って物理的に攻撃を届かないようにしてる 五条悟の無下限バリアみたいな感じ
【反転】
・アンナチュラルの2つ目の個性
・まんま反転術式
・他人の体はまだ治せん
【悪意の感知】
・アンナチュラルの生前の体質が遺伝
・僕にも敵が見える…ってやつです
【???】
・今後出す予定の新能力
・身体強化術(仮)
もはや超能力なんてレベルじゃないですね。