君が好きだと叫びたい!   作:みかんフレーク

80 / 115
全面戦争の巻
#80 暇ならUNOでもします?


 事態というのは刻一刻と変化していくもので、その情報は時に洪水のように押し寄せてくる。

 

 No.2ヒーロー、速すぎる男──ホークスは公安の命でヴィラン連合と接触を図っていた。情報を制すものは戦いを制す。常に敵側の内情を把握しておくことで、有事の際に有利に動けるようにしておく。現代ヒーロー社会においても、そこは変わらない。

 

 ホークスがヴィランから得た情報によると、死柄木弔率いるヴィラン連合ならびに異能解放軍が結託。超常解放戦線なる新組織を立ち上げた。

 

 さらに、ホークス決死の情報収集によると超常解放戦線の目的も判明。一言でいうと過去のAFOの再現だ。現行のヒーロー社会、その制度も崩壊させ、瓦礫の玉座に自分たちが立つ。破壊と支配を行い、日本を牛耳るつもりらしい。

 

 ──先に動かれたら敗ける。故に、先回りして事を成す。先手必勝という言葉があるように、勝つ為に、国民を守る為に、ヒーローは常に先手を取り続けなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──っていうの状況だ。頭ん中入れとけよ』

 

「うす」

 

 とある山中に建てられた簡易的なスペース。そこで俺は今日、今から決行される作戦についてナガンから聞いていた。

 

 ホークスからの伝達事項。超常解放戦線一派が本日、とある日本のとある場所で集会があるらしい。群訝山荘、そこにある館の中にヴィラン達が集結しているのだ。

 

 そこを叩くのがプロヒーロー・エッジショットを中心としたチーム。その中には上鳴や常闇くんが配属されている。他にもB組の生徒の数人が、最前線ともいえるその場に呼ばれていた。

 

「にしても、学生の手をこうも借りる事態になるとはね〜。士傑の奴らも呼ばれてんでしょ?」

 

「はい、既に各突撃部隊に配備されています」

 

 隣に座る黒雪が、相変わらずパソコンを叩きながら教えてくれた。すっかりOLみたいになりおって。敵として戦った時が懐かしいぜ。

 

『エンデヴァー達の病院側も、既に現地に到着している。作戦開始は時間の問題だろう』

 

「はい。こちらの準備も抜かりなく終わっております。後は突入の合図が来るのを待つだけ──いま来ました」

 

「そっか。エンデヴァーも別の場所で違うことしてんのか」

 

 もうひとつ、ホークスが仕入れた情報がある。蛇腔病院…ヴィラン連合の1人、脳無やハイエンドを作る闇の医者である殻木球大の居る場所だ。そいつの確保に赴いているのが、エンデヴァーやミルコ、相澤先生を含めたチーム。今そちら側に動きがあったようだ。

 

「山荘側も作戦の開始をした模様。ここから状況は逐一伝えます」

 

「OK、頼むぜ黒雪!そんでもって1個聞きたいんだけど」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「俺はここで何してんの?」

 

 兼ねてよりの疑問を、俺は解き放った。

 

 ヒーローとヴィランの全面対決。デクや爆豪、轟たちも恐らく各所に配置されていることだろう。やっている事や指示されている内容までは把握してないが、恐らく避難民の誘導とかそんな感じだろう。切島や八百万なんかは、割と前線の方に居るっぽいし。

 

「それに比べて俺は、何でここで呑気に茶なんて啜ってんだぁ!?」

 

 とある山中に、俺の声がこだまする。すると、遠くの方からホーホケキョと鶯の鳴く声が返ってきた。う〜ん、平和。

 

「何かご不満でも?」

 

「いや別にそういう訳じゃ」

 

「暇ならUNOでもします?」

 

「いま大事な作戦中だよね!?」

 

 何を言ってるんだ黒雪は。ジョークも上手くなってからに。ほほほ、とお上品に笑いながら彼女はモニターに視線を戻す。

 

『お前は遊撃手だ。今お前が居る所は、病院と山荘のちょうど中心付近。どちらの支援にも駆けつけられるような場所なんだ。戦況が傾いてきた時に投入される』

 

「遊撃手…!なんかカッコイイ…!」

 

『ヒーロー側が有利になって、その後押しの為に戦場に赴くのか。それともヴィラン側が優勢になった時、その盤面をひっくり返す為に投入されるのか。状況に応じた動きをお前にはしてもらいたい』

 

「ほほう…チャンスの時の抑えに使われるのか、それともピンチの時に形成を逆転させる為に出てくのか。絶妙な立ち位置ですな」

 

「ええ。だからこうして、私が傍に居て状況を確認しておりますの」

 

 なるほど、理解した。つまり俺は、指示があるまでここで待機をしていなきゃいけないんだな。それが今の俺の仕事。心の底から理解した。

 

『悪い、動きがありそうだ。1度切る』

 

 そう言ってナガンが通信を切った。彼女は今、山荘側の高台に配備されている。スナイパーの個性を用いて、遠距離からヴィランを仕留めていくらしい。なんとも恐ろしや。ヴィラン達には同情するぜ、目にも見えない遠く離れた所から、弾丸が打ち込まれてくるんだからな。

 

 そこで、俺はとあることに気付く。

 

「でもさ、もし俺がこっから離れた時、黒雪はどーすんの?」

 

「どうする…というと?変わらずここに居続けますけど」

 

「いやいやそうじゃなくて。俺がこっから離れたら、お前1人になんじゃん。そんな時にヴィランとか出てきたら、誰が黒雪を守るんだよ」

 

 見たところこの場所には、俺と黒雪以外に誰もいない。特別ヴィランの気配を感じている訳ではないが、何が起こるか分からない状況でもある。今はまだ俺が居るから大丈夫だけど、万が一俺がこの場所を離れている時に何かあったら…。黒雪は今は無個性で、戦闘能力なんて無いに等しい。自衛の術が有るなら良いけど。

 

「ああ、そういう事ですか。それなら心配要りません。もしもの時、この装置を使えば緊急脱出が出来るようになっております。少し無骨な機械ですが、性能は文句無しです。試運転はバッチリでした」

 

 なにその緊急脱出装置。トラップカードか何かか?

 

 まぁ万が一の時のことも考えてあるなら、一旦は心配要らない…のかな?よく分からんが、ケースバイケースでいこう。

 

「にしても、ふふ…私のことも心配して下さるのですね」

 

「あ?なに当たり前のこと言ってんだよ。そんなの今更だろ」

 

 黒雪の発言に思わず首を傾げる。

 

「今更…?」

 

「ああ。そりゃ最初はヒーローとヴィランだったけどさ、黒雪は俺たちの手を取って戦うことを決めたじゃん。その時から、お前は俺の中での守るべき人だよ」

 

「千晴さん…」

 

 黒雪にはかなり世話になってる。戦闘中の支援や公安で沢山話しかけてくれたり、一緒にご飯を食べてくれたり。色々な所で助かってるんだ。

 

「だからさ、まだ頼りないかもしれないけど、心配くらいさせてくれよ。そら黒雪からしたら、もっと実力のある男に守られた方が安心出来るかとは思うけどさ!」

 

「千晴さん…もしかして私のこと口説いてます?」

 

 いやなんでそうなるんだよ…。そんでちょっと嬉しそうな顔すんな。

 

「私は元ヴィランです。他人に酷いこともしましたし、ご迷惑も掛けてきました。こんなこと自分で言うのもアレですけど、ロクな最期は迎えられないんだろうなって思ってます」

 

「黒雪…」

 

 モニターから俺の方へ向き直り、黒雪は続けた。

 

「それでもね千晴さん。貴方と過ごした日々や経験したこと、教えてくれた感情が有るだけで、私はもう充分なんですよ?これ以上ないってくらい、幸せなんです」

 

 黒雪の言葉を、ただ黙って聞く。

 

「貴方の優しさが私の人生を変えてくれた。今までも、そしてこれからも。貴方と一緒に居たら、私の人生はもっと色鮮やかになる。だから千晴さん、私は貴方の傍に居たい。私のこと、これからも守ってください」

 

 ニコリといつものように笑ってみせる黒雪。出会った時とはまた違った笑顔の花を咲かせる黒雪が、そこには居た。

 

「何だかしっとりさせちゃいましたね。さ、引き続き戦況の確認をしないと」

 

「だな。俺もいつでも出てけるように準備を──」

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間──全身を駆け巡る嫌な予感。

 

 

 

 

 

 

 

 これは、前にハイエンドと戦った時に感じたモノと似ている。

 

 悪意のプレッシャーとでも言うべきか、脳からの危険信号が全身に知らせている。とんでもない敵が出てきたのだと。

 

「──ッ!!黒雪、どっちかの戦況に異常は発生してないか!?」

 

「ちょうど病院側の方で、強力な生体反応を確認!これは…ハイエンドと思われます!」

 

 ハイエンド…やっぱり出てきたか。そりゃあんな優秀な駒、量産できるならしてるよな。

 

 けど違う。ハイエンドだけじゃない。もっと凶悪なモノが居るはずだ。まだセンサーでも拾いきれてない邪悪なモノが。

 

「ナガン、ナガン聞こえる?」

 

『どうした?簡潔に言え』

 

「病院側にヤベーのが居る…気がする」

 

『んな曖昧なこと…。信じていいんだな?』

 

「ああ!俺も俺を信じる!」

 

『よし、なら行け』

 

「うす!」

 

 流石ナガン、判断が早い。俺を信じてくれている証拠だ。

 

「黒雪、ちょっち病院の方がヤバそうだから行ってくる。マジでなんかあった時は、すぐに呼んでくれ。その後ろの緊急脱出装置は、迷わず使うんだぞ」

 

「はい、お気を付けて」

 

 思ってたより早くこの場を離れることになったな。ヒーローの襲撃を受けて、ヴィラン側もすぐに対応してきたということか。侮れない。

 

「うし、じゃあ飛ばすとすっか」

 

「あ、千晴さん待って」

 

 全身にエネルギーを流し込み、飛行の準備をする。その時、黒雪から声を掛けられた。

 

「ん?どした?なんか伝えときたいことでも──んむ!?」

 

 その時、唇に柔らかいものが押し付けられた。視界は黒雪で埋め尽くされている。口づけをされているということには、割と早くに気付いた。

 

 数秒経っただろうか、黒雪はゆっくりと俺の唇を返す。

 

「黒雪…こんな時に何を…」

 

「こんな時だからこそです。いま行われているのはヒーローとヴィランの戦争。貴方たちが今まで経験してきた戦いのどれよりも危険なもの。最悪の場合だって…もしかしたらあるかもしれません…」

 

 最悪…そうだ、そうだよな。黒雪が言う通り、これは戦争なんだ。こちらが勝たないと日本が危ないし、ヴィランも本気で俺たちを落としに来る。命懸けの戦いってやつだ。

 

「だからこれはゲン担ぎです。貴方がしっかりと力を振るえるよう、私の想いを千晴さんに与えました」

 

 黒雪は俺の両手を握って、真っ直ぐな目で見てくる。吸い込まれそうな大きな瞳をしていた。

 

「必ず帰ってきてください」

 

 黒雪の想いが、その言葉から伝わってきたような気がした。

 

 そうか、俺には帰り待ってくれる人がいるのか。

 

「うん、絶対に戻ってくる。何があっても」

 

「約束ですよ」

 

「おう!」

 

 浮遊能力を発動させ、俺は空へ浮かび上がる。眼下の黒雪に目を向けると、俺の方をじっと見てくれている姿がそこにはあった。

 

「お前の想い、ちゃんと受け取ったよ」

 

 空気を押し出し、その勢いのまま病院の方へ向かう。

 

 かつてないプレッシャーを感じながら、俺は空を駆けた。

 

 

 

 







ちょうどいい区切り(?)なので、今の愛生千晴くんの能力についてまとめておきます。

【念動力】
・物を浮かせたり飛ばしたりする基本的なやつ
・空気を押し出す真空刃もこれの応用

【パイロキネシス】
・発火能力
・個性伸ばしで火力は轟にちょっと及ばないくらいのものに
・白い炎が出ます

【アトミキネシス】
・凍結能力 ハイエンド凍らせたやつ
・顕現させた氷を投げつけたりしてる
・流石に轟には出力で負ける

【飛行】
・念動力で自身を浮かせて空を飛ぶ
・発動中に更に空気を押し出すとスピードアップ

【バリア】
・最初はよくあるドーム状の視認できる方法で使ってたが、アンナチュラルに指摘された
・今は周囲の空気を操って物理的に攻撃を届かないようにしてる 五条悟の無下限バリアみたいな感じ

【反転】
・アンナチュラルの2つ目の個性
・まんま反転術式
・他人の体はまだ治せん

【悪意の感知】
・アンナチュラルの生前の体質が遺伝
・僕にも敵が見える…ってやつです

【???】
・今後出す予定の新能力
・身体強化術(仮)


もはや超能力なんてレベルじゃないですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。