「おかーさんー♪」
境内に元気な声が響く。どうやら親子らしい。その証拠に二人とも同じような巫女装束(例のごとく腋が大きく開いている。)を着ており、仲睦まじく笑みが飛び交っている。
「おー霊夢。ただいま。いい子にしてたか?」
大きい方は博麗○○。この時代の幻想郷を守る博麗の巫女だ。女性にしては広い肩幅、袖から覗かせる手の甲には無数の噛み傷や切り傷そして何かとても固いものを殴り続けたように骨が潰れてしまっている。そして彼女の頬には大きな切り傷がひとつ真一文字。それらは彼女が仕事としている妖怪退治の際についたものだ。
一目見れば、大の男でも物怖じしそうな風貌をしながらも、優しい声で元気な声に応える。
「うん!」
小さい方は博麗霊夢。次代の博麗の巫女として修行中である。年はおおよそ5才から6歳子供として一番元気がいいときだ。
実はこの日、○○は湖の近くで起きた異変を解決しておおよそ一週間ぶりに帰ってきたのだ。未だ小さい霊夢が喜びを全身に表しながら、母親の胸に飛び付くのも分かる。
「そうかそうか、それは良かった。霊夢、いいこでお留守番したご褒美に今日は宴会をするぞ!」
○○はそういうとニカッと笑う。
いつからそうなったかわからないが、博麗の巫女が異変を解決すると、宴会を行うのが常となっていた。そこには博麗の巫女の親しい友人はもちろん、異変の主犯の妖怪たちまで巻き込む大きな宴会となるのだ。
「やったー!♪」
もちろん未だ小さい霊夢は酒を飲むことはできないが、様々な者達が集まり、楽しく談笑したりする宴会が霊夢は好きだった。
■■■■
「それでは異変の解決を祝って…」
「「「カンパーイ!」」」
おかあさんの音頭にあわせて大きな声がこだまする。今日は楽しいえんかいなんだからさわがなくちゃね♪
今日えんかいに来ているのは、おかあさんの巫女装束なんか色々作ってくれる香霖堂の店長さんの『こーりん』と私が生まれる前からおかあさんと知り合いで異変解決のときに色々手伝ってくれる『ゆかり』、そしてその式?部下?手下?の『ランさん』そしておかあさんのことを記事にするために来て、今おかあさんから話を聞き出そうとしている『あやや』だ。そして私の知らない人たちがたくさんいる。年は私より少し上かな?
しばらくすると、水色の髪をした女の子が近づいてきた、後ろにいる黄緑色の髪をした女の子は心配そうに見ている。
「アタイはチルノ!あんたは誰?」
いきなり水色の髪をした女の子が話しかけてきた。黄緑色の髪をした女の子はなんだかオロオロしている。
チルノだったっけ?相手が元気に自己紹介してくれたのだからこっちも返さなくちゃね♪
「よろしくチルノ!私は霊夢!次の博麗の巫女なんだよ。ところであなたは妖怪?」
私はチルノの背中に生えている羽を見ながら聞いた。するとチルノは、
「アタイは『こうり』の妖精だよ!アタイはさいきょーだから本気を出せばここの気温を-K(ケルビン)ぐらいにはできるよ!」
チルノは胸を張りながら言う。-K ってどれくらいすごいのかわからないけどなんかすごそうだな~。
ここでようやく後ろの黄緑色の髪をした女の子がチルノの耳元で呟く。
「チルノちゃん、Kにはマイナスはないよ~。」ボソボソ
チルノは驚いた顔をして黄緑色の髪をした女の子の方を見る。
「えっ、そうなの大ちゃん?存在しない温度を作れるアタイってやっぱりさいきょーね!」
チルノちゃんはさらに大きく無い胸を張る。私は黄緑色の髪をした女の子にひとつ尋ねる。
「あなた、大ちゃんって名前?」
すると女の子は悲しそうな顔をしながら首を横に振る。
「うん。よろしくね、霊夢ちゃん♪」
「よろしくね、大ちゃん♪」
こうしてチルノちゃん達と知り合った私は他にもいろんな妖精や妖怪と知り合った。リグルちゃんやみすちーちゃんなどみんな私より背が高くおねぇさんみたいだった。
■■■■
みんなと一杯遊んで疲れたからおかあさんのところへいく。
「どーん♪」
といいながらおかあさんの胡座の上に座る。私だけの特等席だ。
「おぉ霊夢来たな♪」
おかあさんはそういいながら私の相手をしてくれた。
「○○」
不意におかあさんの名前を誰かが呼ぶ。
後ろを向くとゆかりがいた。
「少しいいかしら?」
口元を扇で隠しながら、優しそうに微笑んでいた。
「どうした?今は霊夢と遊んでいるんだが、後にしてくれないか?」
おかあさんは私と遊んでいるのを邪魔されているのが気に入らないらしく、不機嫌そうに言う。
「おかあさん、いってきていいよ。ゆかり、大切なお話なんでしょ?」
私はゆかりに向かって尋ねる。ゆかりが口元を隠していたずらそうに言うときは大体大切なあ話があるときだ。こんなんだから『胡散臭い』何て言われるのにね。
「よくわかったわね霊夢、これからお母さんと大切なお話があるの。少しだけお母さんを借りてもいいかしら?」
「いいよ!大切なお話なら仕方ないよね。」
私は自分でも言うのも変だが、聞き分けのいい子だ。おかあさんをとられるのは少し嫌だけど仕方ないよね。
「霊夢を連れて行ってもいいか?」
お母さんが突然口を開く。
「今回の異変の話だろ?霊夢も後何年かしたら博麗の巫女として妖怪退治に参加しなければならないだろう。今のうちから異変について詳しく知るべきだと思うが、紫はどう思う?」
「そうねぇ~、もう少し落ち着いてから霊夢には色々知ってもらおうかと思ったけどいい機会かもね♪」
こうして私も二人の話し合いに参加することになった。
■■■■
「今回の異変、○○はどう思う?」
神社の裏につくとゆかりはおかあさんに聞いてきた。
「どうもなにも、悪戯程度にしか人に危害を加えてこなかった妖精や、元々力の弱い妖怪達が急に暴れたんだろう?しかも本人達は記憶がほとんどないらしい。私が思うに、妖精や妖怪達に人を襲わせた『黒幕』がいるはずだ。つまり今回のの異変は未だ終わっていないというのが私の考えだ。」
「あなたもそう思うのね。妖怪達は嘘をつくことがあっても妖精は嘘をつけない、だから私もその考えに賛同するわ。そうなると問題は、誰が『黒幕』なのか。ってところね。」
「この幻想郷に他人の体を操るような妖怪はいなかったはずだが?」
「そうよ。けどね、『他人の感情』を操ることのできる妖怪はいるのよ。」
「誰が『黒幕』か解っているみたいだな。誰なんだ?」
「『ルーミア』よ。彼女の『闇を操る程度の能力』なら他人の負の感情を大きくして操ることもできるはずよ。しかも彼女は少し長く生きすぎた。能力が強くなりすぎて、制御できなくなっている。」
「ッ!そうか、あいつか。あいつならできるかもな。」
おかあさんは下を向き拳を強く握る。
私は二人の話に着いていけなくて首をかしげる。するとゆかりが、顔を近づけて、
「霊夢、分かりやすく言うと、今回の異変はルーミアによって引き起こされたものなの。今日の宴会に来ているチルノ達はルーミアに操られて暴れていたの。」
おかあさんは下を向き苦しそうな顔をする。
「紫、私はあいつを倒さないといけないのか?」
「そうねぇ~、今のあのは説得されたぐらいじゃあ聴かないわよ。」
「そうか、なら私はルーミアを消さなくてはいけないのか?」
おかあさんの言葉に私は驚く。
「おかあさん!ルーミアを殺しちゃうの!?そんなのゼッタイダメ!!」
私は大きな声をあげておかあさんに言う。ルーミアはお母さんが異変解決に行く度に私の面倒を見てくれていた。いつも笑顔の彼女が私は大好きだ。今回は来てくなかったけど、きっと忙しかったからだ。ルーミアはきっと犯人じゃないんだ。
おかあさんが膝をつき私の目を見て言う。
「霊夢、お母さんもルーミアが大好きだ。できることならあいつのことを信じてあげたい。でもな、今回は駄目なんだ。状況が悪すぎる。」
おかあさんは私の目を見ながら諭すように言う。
私は悲しくなり空を見上げながら大きな声をあげてなく。するとおかあさんが私に抱きついた。そして耳元で小さく「ゴメン」とだけ言った。
「紫、今日は引いてくれないか?霊夢と一緒にいてあげたい。」
おかあさんがゆかりの方を見て言う。その顔は今にも涙が溢れそうだ。
「そうしてあげたいのは山々なんだけど、もうひとつあなたに言いたいことがあるの。」
「用件だけいってくれ。そうしてくれないと、私も保てそうにない。」
「ハァ、わかったわ。」
ゆかりはため息をつくと、今までにないくらい真剣な顔をして言った。
「人に信頼されなさい。それだけよ。」
そういうと、ゆかりはスキマの中に帰っていく。
■■■■
しばらく二人で泣き。収まった頃にこーりんが来た。
「あぁ、いたいた。こんなところにいたのか。紫さんだけ帰ってきていつまでも帰ってこないから心配したじゃあないか。もうすぐ時間だし宴会を閉めたいんだが幹事の君がいないと閉まるものも締まらないよ。」
おかあさんは涙を袖でぬぐいこーりんに笑いかける。
「霖之助、その洒落は分かりにくいし面白くない。」
おかあさんがそういいながら立ち上がると宴会の会場である境内に向かって歩きだした。
するとこーりんが何やら耳打ちする。
「~~」ボソッ
するとおかあさんの顔がみるみる紅くなり、こーりんの胸ぐらを掴み持ち上げる。
「うるさいなッ!乙女には泣きたいときがあるんだよ!」
そういいながらこーりんを投げ飛ばすと、おかあさんは何事もなかったように、
「それじゃあ霊夢、行こうか。」
といい、私はそれに元気よく返事する。
「うんっ!」
■■■■
「よし、それじゃあ皆、それぞれ気が済んだらできるだけ早く帰ってくれ。このままじゃあ『博麗神社は楽園ではなく地獄だ』とか言われないからね。」
そういうと眠そうに目を擦りながらチルノちゃん達が帰っていく。
「じゃあね、チルノちゃん達~!」
チルノちゃん達が振り向き応える。
「じゃあな~霊夢。今度あったときはさいきょーのアタイが色々教えてあげるからな~!」
そして大ちゃん達を初めとして皆一言ずつ言って帰っていった。
残されたのは私とおかあさんと、ボロボロのこーりんだけだ。
「霖之助、もう少し付き合ってもらうぞ。」
そういいながらおかあさんはこーりんを引っ張っていく。
私はお片付けでもしようかな♪
■■■■
『素敵な楽園の巫女様』に引っ張られながら彼女はこちらを見らずに僕に尋ねる。
「霖之助、どこまで聞いた?」
「どこまでって…うわっ」
そこまで言いかけて僕は縁側に座らされる。彼女の片手には一升瓶が握られている。まだ飲む気か…。
「もう一度聞くぞ、どこまで聞いた?」
「なにも聞いてない。僕は紫さんだけ帰ってきて不思議に思ったから君たちを探しにいったんだ。そうしたら二人抱き合って泣いてるから入るタイミングを探っていたんだ。」
僕は真実をのべる。そう僕がつくと二人は泣いていた。時々聞こえる霊夢の「ルーミア~」ということからあの子が関わっていることはわかったがそれ以外は全くわからなかった。
「そうか…。」
彼女が少しだけ安心したように言う。そんなに聞かれたくなかったのか。
彼女は自分のグラスに酒を注ぎそのまま一気に飲み干して再び僕に尋ねる。
「なぁ霖之助、今回の異変、どう思う?」
なるほど、今回の異変はよくわからない点がいくつかある。
「そういうことか、妖精が悪戯をして、妖怪が人を襲う。いつも通りの異変と言えばそうだが、僕としても気になる点はあるよ。」
そういうと、彼女は僕の方にグィッと近づいてくる。顔近いし酒臭い。
「例えばどの辺が?」
「そうだな、まず一つに妖精の悪戯は大概他愛もないことだ。道に迷わせたり、驚かせたりするくらいだ。一番ひどくてもチルノが旅人を凍らせた時くらいだね。けど今回は明らかに殺しにかかっているような襲い方をしている。実際人里では何人か亡くなっている人もいる。……ところで僕には酒をくれないのか?」
彼女は僕が話している間もずっと飲んでいる。僕に飲ませる気はないのであろう。すると彼女は少し嫌な顔をして自分の袖に手をいれる。
「できれば飲ませたくなかったんだけどね…。」
そういいながらグラスを取り出す。まさか本当に飲ませてくれるとは思わなかった。彼女に酌してもらい一口飲む。うん…うまい酒だ。
「続きは?早く話してくれ。」
彼女は口を尖らせながら文句を垂らしている。
「そうだったね、あともう一つ、今回の異変でチルノに襲われた人に話を聞くことができたんだ。『いきなり現れて、いきなり氷の刃を飛ばしてきたから持っていた鎌を振り回して威嚇した』と言っていたよ。ついでにチルノにも同じように尋ねてみたんだ。すると、『人が急に現れて襲われそうで怖かったから氷の刃を飛ばした』って言っていた。君ならこの意味が分かるだろう?」
僕は彼女に尋ねてみる。彼女は口に手を当てながら考えて、問いに応える。
「チルノが人を恐れた?」
「あぁそうだ。普段悪戯をして人を見下しているはずのチルノが人にたいして恐怖を感じたんだ。これは少しおかしいと思わないか?」
「そうねぇ。チルノが人を恐れるとは思わないわ。」
彼女は未だに口に手を当てながら考えている。
「そこで僕はひとつ考えた。今回の異変は他人の恐怖心、つまり心の『闇』を操り妖精達を操ったかなり強力な妖怪がいるかもしれない、とね。」
僕はそう言う。彼女も既に解っているはずだ。今回の異変について『あの子』が関わっていることも、この異変を放っておくと幻想香が大変になることも…。
「やっぱり、霖之助もそう思うか。なら霖之助にもうひとつ聞くぞ…」
そう言い、彼女は悲しそうな顔をして僕の方を向く。
「私はどうしたらいい?」
「『どうしたらいい?』か、いつぶりだろうね、君がそんなことを僕に聞くのは。」
小さいときはよく聞いたものだ。「こーりん~、どうしたら強くなれるの?」いつものように聞いた言葉も彼女が強くなるにつれて聞かなくなった。
「誤魔化さないで答えてくれ。私はどうしたらいいか解らないんだ。」
彼女は泣きそうになり唇を震わせながらもう一度聞く。
「僕が言えるのはひとつだけだ、君は『博麗の巫女』であり、その仕事は幻想卿の秩序を守ることだ。」
僕はそう応えると彼女から瓶を奪い2杯ほど一気に注いで飲み干す。これ以上素面ではいられない。こんな重たい話は酒と一緒に飲み干さないとやってられない。
彼女の方を見ると、何か決心したようだ。
「霖之助、私は霊夢もルーミアも幻想卿も失いたくない。私は欲張りなのか?」
彼女はそう言うと、僕にしがみつく。
「こーりん、助けてよ。私にはもう何を信じていいかわからないんだ。」
久しぶりに彼女にあだ名で呼ばれ少し吃驚する。
それと同時にいつも力強く威風堂々としている彼女が弱々しくまるで子供のように僕に抱きつく彼女に何か守ってやりたいと思ってしまった。自分よりも遥かに強く最強の人間として幻想卿の権力の一角に立つ彼女にたいしてそう思ってしまった。
僕は彼女の頭に手を置き撫でながら口を開く。
「自分だけを信じなよ。他人は裏切っても君自身は絶対に裏切らない。君の思うベストの結果を目指してベストの努力をすること、それが君にとって一番大切だと思うよ。紫のためでも幻想卿のためでもなく自分自身のためだけに頑張ってくれ。そうすることが一番素敵な未来になるはずだ。君はどうしたいんだ?」
「…ルーミアと霊夢と一緒に幻想卿で、いや博麗神社で笑って過ごしたい。」
彼女は目に涙を浮かべながら応える。その声は涙に震えていた。
「そうか、分かった。それじゃあ君のなかにそうするための方法はあるかい?」
彼女に尋ねてみる。僕のなかにはひとつだけあるが彼女はどうだろうか。
「ある…。しかし、成功するとは思わない。」
彼女も僕と同意見らしい。ただ条件をつけなければならないな。
「○○、生きて帰って来てよ。さもないと、…」
「さもないと?」
「君のことを忘れてやる。」
そう言って笑う。すると彼女も笑い、
「一方的な交渉は嫌いなんだ。こちらも代わりの条件を出させてもらうぞ。」
「なんだい?」
「私が生きて帰ったら死ぬまで面倒を見てもらうからな。」
言い終わるが早いか彼女は頬を赤く染め下を向く。
「そうか、分かったよ。だから生きて帰ってくれ。」
そう言うと、彼女は顔をあげて子供のような笑顔を見せる。
「ありがとう。」
そう言うと、彼女は眠ってしまった。
『一生面倒を見ろ』か…。面倒な約束をしてしまったな。僕は君の夫でも何でもなだろうに。そう言うことは婚約でもするときに言わないと勘違いする男が出てしまうぞ。…僕みたいに。
「さて、僕ももう寝るかな。」
そう言って二つのグラスを手に取りひとつにまとめ、一気に喉に流し込む。
「絶対に死なないでくれよ。」
「おかあさんもう寝ちゃったの?」
急な声に僕は振り向くすると、そこには霊夢がいた。
「あぁ今日は色々忙しかったみたいだからね。すぐ寝てしまったよ。」
「そうなのかー。こーりん、今日は帰るの?」
霊夢に問われる。○○も寝てしまい、霊夢は卿一人だ。霊夢自身も今日は辛い思いをしているはずだ。それなら答えはひとつだ。
「いや、今日は泊まっていくよ。お母さんも寝てしまったし、霊夢が寝るまで一緒に遊ぼうか。」
そう言って霊夢に微笑む。
すると霊夢は向日葵のような笑顔を僕に向けた。
「ありがとう、こーりん」
こうして博麗家の夜は更けていく。
■■■■
「こーりん、起きろ~!」
僕はその一言で飛び起きる。日頃忙しくない生活を送る僕にとってこの時間に起きるのは苦痛だ。
「はいはい、おはよう、霊夢。」
「おはよー、こーりん!」
挨拶をしたら僕は顔を洗うため外に出る。
顔を洗い居間に向かうと二人が座って僕が帰ってくるのを待っている。
「おはよう、霖之助。」
いつも通りの彼女だ。昨日の弱く儚い彼女はもういない。それだけで少し嬉しい気分になる。ただひとつ気になることがある。
「○○、何で上座が空けられているんだ?」
何気ない疑問をぶつける。もてなされるべき客なら普通のことだろうが、僕と彼女の間にはそのような堅苦しいものは無いはずだ。しかも、僕が戻ってくるまではしに手をつけず待っているなんて、天変地異でも起きるのではないかと僕は今一度空を見上げる。
「なにも間違ってないぞ。お前の席は今日からそこだ、霖之助。」
どうも気味が悪い。しかし僕は気にせず上座に座り朝食を頂くことにした。
■■■■
朝食を食べ終わり、僕が帰ろうとすると、彼女が飛んできた。
「霖之助、帰ってしまうのか?」
何かに絶望したかのような顔で僕に言う。
そう思っていると彼女が続ける。
「約束はどうしたんだ?一生面倒を見てくれるんだろ?」
彼女がそう言うと、僕は理解した。
「あぁ覚えているとも。けどな、それは君があの子と戦って生きて帰って来たときの話だそれまで僕は約束を果たす義務はないはずだよ。」
そう言うと、彼女は黙ってしまい、
「分かったよ。だけどな、生きて帰ったら本当に一生面倒を見てもらうからな、絶対だぞ!」
「あぁもちろんだとも。だからそれまでは今まで通りの生活を送るんだよ。精一杯霊夢を愛してあげなよ。」
そう言って僕は神社をあとにする。人里の外れにある神社から僕の店まで飛べば30分とかからない。しかし二日酔いでまっすぐ飛べる自信がないので歩いて帰ることにする。
■■■■
おかしい、さっきから目線を感じる。こんな山奥に人が来るはずがない。参拝者何てものがここに来るはずがない。
…となると、あの人か。
「紫さん、いるんですよね?」
僕は藪の方を見ながら尋ねる。
「はろろ~ん。残念、こっちよ」
後ろの方から突然人が現れる。僕は驚かない。慣れているからな。
「で、用件はなんですか?」
少し強い語気で尋ねる。すると紫さんは口元を扇でかくしながらクスクスと笑う。
相変わらず胡散臭いな。
「用件って言うほどではないのだけれどね、そういえばお二人、昨日の夜は激しかったわね♪」
激しいこともなにも僕と彼女はそう言う関係ではない。僕は落ち着いて反論する。
「昨日もなにも、僕たちは夜に激しいことをするような関係ではありませんよ。」
そう言うと彼女はまたクスクス笑いながら口を開く。
「かまかけたつもりだったのだけれども、ダメみたいね♪」
この人と話しているととても疲れるから嫌だ。僕みたいな趣味にいきる人間は気楽に話せる相手の方を好む。
そんなことを思っていると、さっきまでのおふざけとはまるで違う鋭い眼光を僕に向け訪ねてくる。そして僕はそれに対して応える。
「○○との約束、本気かしら?」
「えぇ、もちろん。約束ですからね。彼女が生きて帰って来たら彼女と霊夢の面倒を一生見るつもりですよ。」
「あら、本気だったのね。それじゃあ、あなたがした方の約束はどうするの?」
「『○○のことを忘れる』でしたよね?それはしませんよ。彼女のことを忘れるなんてできるわけないですからね。」
「あら、それは理不尽すぎない?あなたは約束を守らされるのに彼女は約束を守らなくてもいいの?それはいいことだとは思わないわよ。」
そう言うと、首に衝撃が走る。遠退く意識のなかで後ろを見ると藍さんが申し訳なさそうな顔をして立っていた。
■■■■
気がつくと布団のなかで目が覚める。回りを見自分の家のようだのようだ。とりあえず、なぜ自分がここで横になっているのか分からなかった。
藍さんが隣にいるのに気がつく。
「藍さん、どうして僕がここで寝ているか知っていますか?」
「理由か?それなら用事があるので博麗神社へ行く途中で、意識を失って倒れている君を私が見つけたんだ。」
藍さんはさらに続ける。
「目立った外傷もないし、どうせ二日酔いで倒れたんだろう?」
藍さんがそう言うとそのような気がしてきた。
昨日の夜何があって○○と何を話して、今朝あったことも覚えている。恐らく記憶の方は大丈夫のようだ。
約束のことも忘れている様子はなかった。
■■■■
続く。
すみません。長くなりますので前後半とします。