「 ♪ ♪ ♪ んん?」
俺以外に、ポケモントレーナーがいる事に嬉しくて数日分の料理を作りながら鼻歌を歌っていると家の固定電話が鳴ったので、作業の手を止めて固定電話の子機を取った。
「はい、もしもし〜?」
『突然のお電話、失礼します。新海 涼様のお宅でしょうか?』
「はい、そうですが?」
『こちらは内閣府直下の特殊外来生物特設災害対策本部の森山と申します。今の時間、相談してもよろしいでしょうか?』
「は、はぁ………」
(情報量が多い! えーっと、内閣府っつーと政府の中枢だよな? その対策本部っつーと専門的に対処する部門で特殊外来ってなんだ?)
余りの情報量に、碌な反応を返せないままに返事をしてしまったのだが話の内容から前世や今世において到底、自分とは無関係な組織からの接触に首を傾げていると電話の相手が爆弾発言をした。
『ある方が貴方と繋がりがあるとの話でお電話をしていただきました。その方は神楽坂 カンナさんなんですが』
「カンナさんって言うと最近、変わった動物を伴っていたりしますか?」
『よくご存知で。ラプラス、と言うポケモンとやらを独自のルート入手したそうですよ?』
「は、はぁぁぁあああーっ!?」
アイエエエーーー⁉︎カンナサン⁉︎カンナサン、ナンデ⁉︎
思わず、素っ頓狂な声を上げながらそう思ったのも仕方ないだろう。何しろ、チャットルームにて単なるOLだとしか言っていなかったのに実際には政府の役人だったのだから。
下手に探りを入れなかったのが仇になったな、と思いながら大きい声を出した事を謝ってから話を進めた。
「そ、それで政府の人が直接、相談したいとの事とはなんでしょうか?」
『単刀直入に言いましょう。貴方を私達が所属する対策本部にスカウトしたいのよ。なんでも、数年前から特殊外来生物、カンナさん曰くポケモンと言うらしいわね。それについての活動していたと言うじゃない? なら、私達よりも詳しいんじゃないかなって思って』
「確かに多少は知っています。しかし、それはあくまで図鑑や説明書等を元に実演しているだけの事ですね」
『それらがあるのはありがたいわね。益々、スカウトしたくなったわ』
どうやら多少、今まで活動してきた事を知っている様なので事情を説明するとそんな事を言ってきたので参加するとして、どう言った雇用形態なのかが気になったので聞いてみた。
『そうね。詳しい話は人事部の管轄になるから何とも言えないけど専属の調査員として正社員の待遇になるんじゃないかしら?』
「わかりました。詳しい話はそちらに行って伺いたいのでいつ頃なら行っても大丈夫ですか?」
『私達ならいつでもオッケーよ。但し、営業時間内で早めが良いわ』
「そうですか。なら週明けの月曜日、午前中に伺ってもよろしいですか?」
『大丈夫よ。予約、入れておくわ』
「えぇ。お願いします」
詳しい話は、行ってみないと分からないとなれば行くしかないだろうな。
何しろ、ポケモンの出現は加速度的に増えていくだろうし、それに比例してトラブルも増えるだろうから生配信等で目立つ様に行動していたのは、合法的かつ国家ぐるみで今の内に打てる手は打っておく為の布石だったし。
その為、対策本部がある都心で数日間の宿泊ができるだけの荷造りをしながらゲンガー達に相談して誰を連れて行くかを決めていき、週末は近所の人達に家を空ける事の事情を説明しに行った。
☆☆☆☆☆
「直接、会うのは初めてね。今日はよろしくね?」
「よろしくお願いします。カンナさん」
近所に根回しをして、都心で生活する為の荷物をまとめ、連れて行くポケモンを選び、ポケモンに関する道具一式を揃えて今から会いに行く人の元に車を用意してくれた人を待っているとカンナさんが来た。
チャットルームにて、手持ちのポケモンを聞いてから多少の予感はあったので写真を見せてもらったのだが、カントー地方の四天王の一角を占めていた当人だと判明した。
とは言え、それはあくまでゲームやアニメに登場していた範囲の事であり、実際に会ってみると色気のある年上のお姉さんなのには変わりないがポケモンに関してはど素人と言っても過言ではなかった。
正直、今から会う人の事を思うと緊張するのだが今動かないと今後のこの国の為にならないと判断して腹を括ったし、その為に朝早くからカンナさんに来てもらったので短い挨拶の後で彼女が乗っていた車に乗り込んだ。
「私が言うのも何だけれど、本当によかったの?」
「構いません。ポケモンが表立って行動を開始し、ニュースになるレベルで被害が出ている上にポケモンを扱う人が一斉に出てきた、ともなれば政府も重い腰を上げざるを得ませんから。それに 」
「それに?」
「世界は大きく変わりますから」
俺の言葉に、カンナさんは驚いた様子だったが決して難しい話ではない。
前世や今世において、現代社会で構築された社会システムはポケモンがゲームなどのコンテンツに限定されるか、そもそも存在しない前提で作られていたのに対してポケモンと言うのはそこから逸脱した存在だ。
これをわかりやすく例えるなら、異星人が宇宙船に乗っていきなり国会議事堂やホワイトハウスの真上に現れて交渉の場を欲している様な状況だからだ。
そんな異星人に対して、大抵の人は驚きと恐怖を持つ一方で極小数の人は好奇心を持つと思うのだが今のSNSを観察していると、大抵の人はポケモンに対して恐れを持っている様に見受けられる。
その為、政府が音頭を取って色々と指針を出して貰わないとポケモンとの無駄な衝突で、この国の軍隊が出動してからの国家規模の動乱になりかねないのでできる事は早めにやっておくのが吉だな。
ポケモンが詳しいだけの俺が多少、頭を使って予測を立てた程度ですらポケモンの強さによって大惨事になる予想が立てられるのだから、国家の中枢にいる偉い人や賢い人達がその事を考えない筈がないんだよなぁと思いながら話題を変えた。
「それにしてもカンナさん。ラプラスの成長ってどこまでできてますか?」
「仕事があるからまだまだね。それに手足がヒレだから陸上で戦わせるのに抵抗があるから」
「そうですね。なら手持ちのポケモンを増やしませんか?」
「増やすって言うと今の涼くんみたいに?」
「えぇ。今後、現場に出て戦わせる場面も増えるでしょうし、そうなるとタイプの相性もありますしね」
「あら意外。てっきり、そう言うのはないかと思ったわ」
「ポケモン全体で見ればタイプ相性なんてわからないでしょうが、生物が多種多様なのと同じ様にポケモンも多種多様ですからねー」
とまぁ、こんな感じで道中はポケモンについての話で盛り上がった。