命の危険を感じてブラック企業を退職したのに……   作:オリジーム

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退職したのに……襲われた
始まり(裏)


「帝王、ちょっとお話が」

「何度も言ってるが俺の名前はコウテイな。で、何だ改まって」

「俺、ペンギン急便を辞めようと思いまして────あ、これ退職届です」

「────」

 

 突然に呼び出されたペンギンっぽい、やっぱりペンギンっぽくない見た目をしたペンギンであるペンギン急便のボス、コウテイ。本来ならそのような呼び出しに応じるほど暇な彼では無いのだが呼び出した人物が普段そのような事をしたことが無かった人物であった為、急遽本来予定されていた会合を延期して応じた彼は衝撃的な発言に対して頭を悩ませながらも応じた事に酷く後悔していた。

 

「な、何故だ! 何か不満でもあったのか!?」

「いえ、帝王さんはスラムで育ったクソのような俺に対しも対等に接してくださったり学の無かった俺に様々な教育を施してくれたりと大変良くしてくれました。職場環境もテキサスさんやエクシアさん、ソラさんにクロワッサンさんと気の許せる同僚と共に毎日まるでパーティの如く騒がしくもやり甲斐のある仕事でしたので不満は一切ありません」

「だったら何故辞めると言い出すんだ……」

 

 ペンギン急便の保有するセーフハウスの室内にてお気に入りのソファに腰掛け、ビンテージ物の酒を煽るコウテイは一般人であれば震え上がるほどの殺気を醸し、頭を下げて退職届を手渡す彼へと向けていた。理由も語らず、ただ辞めると告げた彼に憤怒する。しかし同時に理性的な部分では彼に対し、何か自身にも語れないほどの事情に巻き込まれたのではと心配する考えも出てくる。

 だからこそ、何かしらあるのならそれを話して欲しい。頼って欲しいと思いながらも殺気を向け続けた。だが彼の意志は硬いようでそのような事をされても臆する事も無く、ただコウテイがその書を受け取る事を待っている。やがては彼の意志に根負けしたのかコウテイはその震える手を出し、書を受け取った。

 

「……せめてもの餞別だ。退職金はいつもの所に振り込んでおく、持って行きな」

 

「────お世話になりました」

 

 彼は再度頭を深々と下げ、足速にセーフハウスを去ったのだった。

 

「……ッチ、こんな事ならもう少しアイツの事を気にかけとくんだったぜ」

 

 後に残されたコウテイはその細いクチバシで葉巻を吸いながら、これから起こる彼の同僚達の混乱に頭を抱えるのだった。

 

 

 

※※※

 

「や、や、や────……」

 

 ────やっと辞めてやったぞこの野郎ヒャッハぁぁぁ!!! 

 

 

 ブラッククソ企業、ペンギン急便の大ボス兼社長たる糞鳥ことコウテイに退職届を叩き付けてやった俺はようやく得た自由に喜びを抑えきれない。

 

「これで、良いはずだ……」

 

 転生してきて今年二十数年。クソみたいな龍門のスラムで生まれた俺は紆余曲折あって今のペンギン急便に席を置いていたが今日俺は退職した。

 確かにあの職場は糞鳥に語ったように良い場所ではある。同僚は可愛い女の子ばかりだし仕事内容自体も俺の場合はちょこっと旅行気分で遠出し、依頼された荷物を運ぶだけで何故か大金の手に入る楽な内容だった。

 そのお陰で色々な友人も増えるし、行方不明だった幼馴染の片割れに出会えるなどの嬉しい事も沢山あったさ。でも────パーティーだけはダメだ。

 

「巻き込まれる前に────」

 

 ────逃げなくちゃ。

 

 パーティーを説明する前にまず、俺の仕事仲間であった見た目は可愛い元同僚達を話さなければならない。俺の元同僚達は確かに傍から見れば美人でかわいい子もいっぱいだ。正直誰か1人を彼女にしたいと俺でも思うぐらいには美人所が揃っている。けど、それは外見的な話。内面的でズバリ、元同僚の立場から言わせてもらうと──────一言でいえば、クソ。これに限る。

 

 まずは一見問題無さそうで仕事の出来るクールビューティなループスのテキサス。

 コイツは確かに仕事面で限って言えば問題はそうない。ちゃんと注意したらその部分を直そうと努力もしてくれるし問題が起きないように立ち回ってたりしてもくれる。けどコイツの問題はプライベート、つまりは休日に現れる。例えば俺がデスマーチで疲れた体を癒すためにわざわざ他国から取り寄せた布団の中で泥のように眠っているとしよう。こっちは誰にも邪魔されず、仕事によって疲れた体を癒す為に高い金払って割と警備の厚いタワマンで1人暮らししてるってのによ……決まっているんだよ、何故か俺の部屋に。

 

「な、なにをしているんですか。テキサスさん」

 

「? 見て分からないか、朝食を作っているんだ。もう少しで出来る、待って居ろ」

 

「────」

 

 分かるか? 1人でのびのびと暮らし、気分良く目覚めた休日の朝に何故か同僚がキッチンにて朝食を作っている、そんな光景。軽くホラーだよ。

 

 お次は赤毛のトリガーハッピー、ラテラーノ出身の子、エクシア。

 コイツはとにかく撃つ。守護銃って言うラテラーノが持ってるゴツイ武器を使って撃って撃って撃ちまくる頭がちょっと所ではないぐらいにやべぇ奴だ。

 そんでもって大体のトラブルの原因がコイツでもある。ちょっと目を離した隙に軽いお使い程度の依頼が何故か中規模マフィアを潰す争いへと変貌した時もあった。今でこそテキサスと一緒に組んでいるお陰か、規模も縮小したっちゃしたんだが‥‥‥‥時たま俺と組む時はその才能を遺憾なく発揮してくれて正直言って命がいくつあっても足りねぇ。

 

「えくしあぁあぁああ!!!」

 

「バイクの二人乗りって初めてしたけど風が気持ちい、ねぇッ!」

 

「そんな事言う暇あったらちゃんと前見て運転しろぉぉぉぉ!!!!」

 

「えぇ~そんな事したら追いかけて来る敵を撃てないよー」

 

「なら運転かわれぇぇぇぇ!!!!」

 

 いやーあの時は本当にビビったよ。ちょこっとテキサス用のお菓子の買い出しに出たらいつの間にかエクシア操るバイクの後部座席に座らされて、命懸けのカーチェイスならぬバイクチェイスに巻き込まれてたんだから……本当に怖かったよ。あ、後同僚の中で唯一呼び捨てできる奴でもある。

 

 ほんでお次は何時もやべぇーモノを安値で大量買いをしてそのツケが何故か俺に及ぶ別方面で頭がオカシイ過ぎるフォルテの子、クロワッサンだ。

 コイツは仕事、プライベート共に問題が無い普通? な女の子だ。むしろ商売に関しては俺も見習わなければならない事が沢山あり、素直にその点でいえば尊敬出来る人だ。けど、コイツの問題は性格云々ではなく俺の名前を勝手使用して商売をするって点にある。

 

「ねぇクロワッサンさん、俺前にも言いましたよね? 勝手に俺の名を使って商売するなって」

 

「えぇー? あんたさん。そんな事言ってたっけ?」

 

「再三申しあげたはずですがッ!」

 

「嘘っ、うちそんな事一回も聞いた事あらへんわー」

 

「────」

 

 

 あ、やっぱ性格に問題あったわ、コイツ。

 

 何度言っても止めない俺の名を騙ってでの取引。その規模は知り合いによると結構大きいモノらしく、裏の世界では結構有名になってる……らしい。正直怖くて確かめられてないです。で、裏で有名になって来ると総じてやべぇ奴が近づいて来る訳で────結論を言おう、俺ってば市場の独占を狙うやべぇ裏組織に狙われてます。そんな訳で俺はコイツを絶対に許さない。まぁ、そのお陰で何故か知り合う事の出来たカランド貿易のトップ達とお茶飲み友達となった点に関しては感謝だな。

 

 後輩であるソラに関しては割愛させていただく。だってアイツに関してはアイツが迷惑かけたってより俺が近くに居る事によって彼女に迷惑が掛かるって点が他の奴らとの相違点だからな。

 

 

 以上、4名が俺の元同僚だった見た目は可愛いけど中身が何かしらヤバイ奴らだ。ホントはもう一人いるけどそいつに関しては一切話したくない。だってアイツは俺にとって──────悪魔だからな。

 

 

「準備は出来ている。後は消すだけ────」

 

 

 俺は色々と問題を抱えながらも懸命に糞鳥の元で色々と頑張っていたさ。

 こんなクソな同僚相手でも愛想良くしていたと思う。テキサスには休日に激甘スイーツ巡りによく付き合ってあげたし、一発50万ほどかかる特殊弾を複数回エクシアにプレゼントしたり、特殊弾を手に入れるのにクロワッサンへ1ヶ月名前を貸す代わりに安値で購入させてもらったりと色々あった。けど、そんなトラブルや厄介事に巻き込まれても何一つ文句を言わない俺が我慢のならない事がある、それが最初に言ったパーティーだ。

 

 俺が勝手に言ってるだけだが毎度の如く依頼終わりに開かれる宴会を俺はパーティーと呼んでいる。それは一見ただの俺の仕事終わりを祝う宴会だ。糞鳥主催の飲んでは食らえのどんちゃん騒ぎ。それだけなら俺も文句どころか感謝さえ述べていただろうがそうじゃない。アレは宴会に見えて、実の所は何らかの形で俺が命懸けの逃亡劇を繰り広げないといけない血で血が洗われるこわぁーい地獄だ。

 

 エクシアを筆頭に元同僚たちは必ずと言って良いほど俺が遠出している間に何かしらかなりの面倒を起こす。

 その種類もぱっと思い出せるものでマフィアの会合を潰してしまっただの、組織を潰しただの、裏取引を邪魔しただの多種多様だ。それだけなら何時もの事かと割り切れるがそいつらは何故か決まってまるで事前に打ち合わせをしたかの如く、迷惑な事にその宴会中に大規模な襲撃をしてくるんだよなぁ。

 何回か中止にもしたり直前に会場変更などもした、けれど毎回毎回どこかしらから情報が洩れてるのか分からないが襲撃は実行され、そして決まって俺はその渦中にいる。

 想像してみろ、普段だったらまず遭遇する事のない憎しみやら復讐やらを果そうと血走った目で襲って来る奴さんらを相手にすんだぜ、下手なホラーより怖すぎる。

 そんでもって俺は実戦経験こそ積み、一応は軍上がりでもある人間だが戦いに関してはてんで駄目だから毎度の如く逃亡する……が、必ずと言って良いほど失敗。半ば泣きながら次の日の朝まで命のやり取りしながら逃げまくるんやで、そんな生活正直我慢ならねぇ! 

 

 幸いな事にまだ今回の帰還を祝ったパーティーは行われてない。だからこれはチャンスだ、始まる前に逃げ出してこの不幸の連鎖から逃れる為のな! 

 

 

 だからさ大人しく行かせてくれよ────不幸を呼ぶ堕天使さんよぉ。

 

 

「────何処へ行くんだいアルペジオ、今日はこれから皆で飲む約束があるだろ?」

 

「────―ッ!」

 

 全身に恐怖が伝染し、何とも言えない悪寒が背筋を通る。や、やべぇ。一番見つかりたくない相手に見つかった。

 額に汗が浮かんでいくのを感じながら、俺はゆっくりと声のした背後へ振り向く。そこにはいつの間にか気配も感知させずに忍び寄り、このセーフハウスの唯一の出入り口でこちらを面白そうに笑いながら見ているラテラーノの青い髪の女性がいた。

 

「……モスティマ、さん」

 

 彼女はモスティマ。俺の紹介しなかった元同僚の1人であり、俺が最も会いたくない不幸の象徴ともいえる人物だ。

 コイツに関しては能力が時止めって言う、DIO様もびっくりな能力以外は全くわからない。過去に試しに調べた事はあったが割と自慢できる独自の情報網には一切ヒットせず、むしろ何故か一部のラテラーノから暗殺者を送りつけられる始末で本当に分からない、関わりたくない人だ。……声と容姿は好みなんだがなぁ。

 

 ってか、どうする、どうしよう。コウテイからこんなに早く帰って来るとは一切聞いてないんだけど。せっかく逃げ出すのに際し、一番厄介なモスティマの帰還日に被らないよう調整して予定を組んだってのに、なんで三日も早く帰って来るんですかねぇ! 

 

「ねぇアルペジオ、早く行こうよ。エクシア達も待ってるよ」

 

「……」

 

 思わず腰に下げた護身用でしか無い扱えない剣を握りたくなる。

 身支度は済ませて必要最低限の物は目の前のリュックに全て収納し、後は手配してる逃走手段を使って姿を暗ますだけのこの状況。このままモスティマの提案を受け入れ、ついて行ったりしたら確実にパーティーへ巻き込まれるだろう。だからと言って強硬手段に出ようにも相手はあのモスティマだ、糞とは言え元同僚に冗談でも剣を向けるのは気が引けるし何よりぺーぺーの俺が勝てるはずねぇ。

 

「……行けません」

「────へぇ」

 

 気が重い。手足が震えてさっきよりも強烈な悪寒が背筋を刺激し、俺の生存本能が爆音でここから逃げろと叫続けてる。

 確かに気は引ける、勝機が無いことも分かっている。けど、俺自身の命が掛かっているんだ。例え勝てない戦いだとしても挑戦しないで諦めるのはもっと嫌だ! 

 

「モスティマさん、お覚悟を」

 

 ……でも、出来るなら無傷で逃げられると良いなぁ。

 

 俺は剣を抜いた。

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