命の危険を感じてブラック企業を退職したのに…… 作:オリジーム
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総合評価:3,029pt
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日間ランキング:24位(02/21 22:50)
おらぁ!よっしゃぁぁ!!!
※今回は割と設定の独自解釈の元、書いております。注意されたし。
※一部の日本語版の本名が判明されてないキャラに関しては中国語から英語、日本語の準にグーグル翻訳をカケて書いているのでご了承くだされ。
※今回長過ぎねぇ? って人は本編読まずに後書きへ。そこに今回の事を数行でまとめた奴があるので。
「カランドの光よ。彼の者に祝福を」
「コレハユメダユメナンダー……オヤスミッ!」
イェラグ1の厄介者、イェラグ1のお長子者、イェラグ1の偽善者にて唯一の義賊……この国において彼は過去、短い滞在期間でありながら片手間で足らないほどの沢山の名誉や不名誉の肩書きを皆の脳裏へ刻み付けました。その影響は凄く、今では知らぬ者はいない誰もが知る存在となり、ある意味私よりも有名な人物になってしまっていると言えましょう。しかしそんな彼ですが誰にどう問いかけ、例え酷評しか出て来ないとしても最終的には肩書きは一つへと集約されます────イェラグの英雄っと。
「……私にとっては英雄では無く争った者、さしずめ叛逆の英雄でしょうか?」
疲労が溜まっていたのか、祝福を授けている途中に寝てしまった彼……また会えて本当に良かった。
「あっれれぇーおっかしぃーぞぉー、何でこんな所にこんな可愛い子が……ってまさか、■■■■ッ!?」
思えば彼と最初に出会ったのは私のお気に入りの場所であり唯一の居場所であった本に囲まれ、亡くなった父の使っていた書斎室。
その場所でいかにも不審者と言いたげな格好をしていた彼は床へと座り、本を読んでいた。そして訪れた私を見るや否や自分が不審者だと言う認識を忘れて誰かと間違えながら本心で焦っていた事をよく覚えています。
「いやぁー! 侵されルゥー! 手足を拘束されてあのクソにやられた如く侵されルゥー!!!」
その焦りようは相当なもので、当時は知識がなかった為に意味のわからない単語を連呼しながら恐怖で体を震わせていました。その様子に見ているこちらも侵入者だと言う認識を忘れ去れるほどに。気付けばそんな許してくれと震える彼の手を手に取り、何というかその……可哀想と言う感情に襲われたと言いますか同情してしまったと言いますか……とにかく異常な状況だと言う事を忘れて行動していました。
「えぇっと、とにかく一度落ち着いてください。私でよければお話をお聞きしますから」
「へ?」
その時、私に見せたキョトンとした表情は今でも忘れません。
まるで子供のように震えながら彼が見せた、困惑しながらもまるで唯一の希望を見出したような、そんな表情は私が彼を気になり始めるキッカケとなった表情なんですから。
「虐めない?」
「そんな酷い事しません」
「拘束しない?」
「はい、自由で良いですよ」
「……メスぶっ刺して来たり腕切り取ったり溺れさせたりチェーンソーで細切れにしたりエクセトラetc」
「だからそのような酷い事しませんってば!」
「……よ、よかったぁぁ」
っく、今思い出してもぐう可愛。当時の私ッ! 何故その顔を写真で残して置かなかったのです! 今の私が出せる全財産を支払うのでその時の顔を写真で収めてくだぃぃぃぃ!!!
「……ん? もしかして■■■■じゃない? だ、誰!?」
驚く顔、これもまた格別……取り乱しました。話しを戻しましょう。なんとか彼を落ち着け、本来は自分で飲むつもりであったホットミルクを手渡します。
「それは後でも良いですから、まずは貴方のことです」
「な、謎に(心の)器がデケェ……」
「一体何があったのですか?」
「流石に会ったばかりの他人である可愛子ちゃんに話すのもどうかと思うが……実は────」
それから聞かされるは側から聞けば一つのカップルが経験した惚気話。やれ何処どこに行っただの、やれ何々を一緒に食べただのと……よく当時の私がソレを堪えることが出来ましたね。今だったら確実に発狂の一つや二つ、起こしている自信があります。
それはさておき
しかしこの惚気話には続きがありました。それもかなり強烈で、ショッキングな内容が。
「でなぁ、■■■■はその時なんて言ったと思う?」
夕陽の見える観覧車、当時付き合っていた彼女との出来事を語る彼。しかしその目は完全に光を消失しておりまるで死人のよう……完全に正気では無いようでした。
「何と、言ったのですか?」
そんな様子に気付き、少しばかり気構えてしまう私。思わず当事者でも無い私が震えるほど彼の様子はおかしかった。
「……直訳するに俺の細胞をクレ、だとよ」
細胞を要求? 一体何故……っと当時の私は彼の言葉を聞いて考えていました。しかし、今考えればあの女がそんな簡単な要求、するはずが無いのです。この話には裏があります、っと申しますかありました。
「それを了承を?」
「あぁ。何も知らない俺は簡単にそれを受け入れてた……受け入れてしまったんだッ!」
「!?」
最後の言葉には後悔の念と怒りにも似た、怒号にも近い声で思わずビクッと体がビクついてしまいますがそれを気付いてない彼はそのまま話しを続けます。
「だがそれも、その当時の俺はアイツがあんな風に常軌を逸して狂っている奴だと、微塵も思わなかったからだッ!!!」
涙ながらに彼は語る。その残酷且残忍な、吐き気を催すほどの無邪気な悪意の無い悪意な行動を。これまで受けたありとあらゆる拷問にも似た仕打ちを。それを聞いた、聞いてしまった私はまずこう思ってしまいました。
それではまるで────
「────人体実験」
相当心に傷を付けられ、トラウマを負っているのでしょう。語る声は段々と小さくなり、最後には言葉では無く啜り泣く声しか聞こえません。
彼に言われて初めて気づきますが、確かに彼の首筋には治りかけではあるもののいくつもの縫合痕があります。あの痛々しい傷跡は彼にとっての枷なのでしょうか? 過去に受けた壮絶な痛みの証なのでしょうか? そのような事、口にすることなど出来るわけもなく沈黙が私達の間を支配し、聞こえるのは暖炉にて燃え続ける薪の弾ける音のみ……
「……何と言うかありがとな、可愛い子ちゃん」
「なにが、ですか。私は貴方の話を聞いて、絶句しかできなかったというのに」
違う違うと首を横に振る彼。何が違うのだとその当時は思いましたが、その後に言われた言葉に納得するしかありません。
「やっぱり人に話すのって大事だわ」
人によっては悩みと言うのは吐き出せず、溜めに溜めて潰れる事や変な形で爆発するモノ……っと何処かで聞いた事があります。恐らくですが彼はこのタイプなんでしょう。誰にも悩みを打ち明けれず、唯々自身の中で悩み苦悩する。今考えるにこの出来事は神が導いた私達の運命なんだと考えています。彼の能力から考えて偶々この家に侵入し、偶々私が全ての事情を一時忘れて、偶々彼の話を真摯に聞かなければ後々その全てが爆発して大変な事になってたでしょうから。彼は何が可笑しいのかミルクを飲みながら一頻りに笑うとその突然の変化に呆然としていた私を置き去りに立ち上がり、真っすぐと猛吹雪により光の届かない窓越しの外を見ています。
「確かここって没落貴族の家だったよな……」
その言葉に私は驚きと一緒に悲しみに支配されます。この人は私自身の正体を知って近づいて来たのではないっと言う驚きとこの家に訪れてしまった不幸の歴史を思って……
「……はい。お恥ずかしながら、我が家は世間一般的に言えばそうなるかと」
だから私はつい事務的に返してしまいました。何も感情を込めずに事務的に淡々と事実を語るだけなのですから。それを聞くと彼は何を言う訳でも無く、窓を開けて一言。
「わかった、なんとかしよう」
そう言い残してその場を去ってしまいました。
正直言いますとこの時の名を最後まで告げなかった彼の行動は分かりませんでした。アレだけ取り乱していた彼。その人が唯々話をして、そして認めるしかない悲しい現実を確認して退散。まるで熱を出した時に見る夢の如く、まるで幻のような出来事で私自身何が起こったのか理解出来ていませんでした。
しかし、あの出来事は幻ではなく現実。だって残された飲みかけのミルクが彼がここに居たのだと証明していましたから。
そんな不可思議な体験をして、彼が屋敷から去って数日。何とも驚いた事に彼の様子が様々な場所で囁かれ始めたのは。
彼はその当時、様々な場所へと足を運んで居たようでその経験から様々な事を国内で成し遂げていました。ある時は折り紙なる技を使い、紙一枚から出来る幻想的なオブジェや玩具などの作り方を子供達を含まえて教え回ったり。またある時は閉鎖的なこの国ではまず知る事無い、誰も食べた事無いような様々な美味しくも美しい料理を教授したり。そしてある時は兵士に混じり、いつの間にか秘伝の技術であろう格闘術なんかを教えてまわっていました。それもシルバーアッシュの名を語って。
恐らくは彼なりにシルバーアッシュ家の株を上げたかったのでしょう。様々なところで恩を売り、人を救い、シルバーアッシュの名を騙る。それを繰り返している内にシルバーアッシュの名は単なる没落貴族の名ではなく没落しても尚民を思いやり、見捨てない立派な貴族の名だと認識が変わっていきました。
だけどそのような事をすれば密入国している彼の存在が露見するのは当たり前の事。結局彼の教えた格闘術が生かされる形で彼は捕まり、強制退去となりました。しかしそれでも彼の活躍は終わる事は無くシルバーアッシュ家の功績と名を借りて活躍し続け、その中には今ではお兄様が支柱となって動かしている貿易会社であるカランド貿易の発足となる切っ掛けとなった取引を持ち掛けていました。
もちろんそのような事、当時の私が知る由も無く。彼との出会いは思い出の一部となり、今起こっている出来事は単なる偽善者が起こした何かだろうと考えていました。そしてお兄様の主導で会社が設立し、安定軌道に入って生活の水準が上がって来て貴族への正式な復活が見込まれ、後は時を待つだけの段階へ移行していた頃。思わぬ形で私達は再会する事となるのです。
「エンヤ、お前に紹介したい人がいる」
最初は等々お兄様にも春が来たのかと浮足立っていましたがその相手、彼の姿を目にした途端。そのような考えは全て吹っ飛んでしまいました。
「私の友にしてカランド貿易設立の最大の功労者である恩人だ」
「よぉ、可愛い子ちゃん。宣言通り何とかしてやったぜ」
紹介されたのはまさしくあの時に私の元へ訪れたあの最後まで名を告げなかった人物であり、何かを任せろと言い残した人物。レインだったのです。
「む? どういう事だレイン。妹と知り合いだったのか?」
「ちょぉーっと縁があってな。俺の方が彼女に助けてもらったんだ」
「そうだったのか……意外なところで縁があるものだな」
「うぃ」
その頃の私はその状況が上手く理解出来ていませんでした。ただでさえ誰にでも気を許す性格をしていない気難しいお兄様が親しそうに、あの人と話しているんですから。
「あ、そうだ。エンシオディス」
「どうした友よ。そんなに改まって」
「すまんがちょぉーっち、この子と二人っきりにさせてくれないか?」
「ほぉ、レイン。等々お前も春が──「今からこの劇腐缶詰を開けて皆で酷い目に合うのとエンシアちゃんにある事ない事罵声を食らうの、どっちが良い。お前に選ばせてやる」────何でも無い。ごゆっくり」
そそくさと文字通り尻尾を巻いて逃げ去ったお兄様の姿は今から考えても信じられない光景でした。これから先も後も缶詰と妹の罵声に負けたCEOは彼だけでしょうね。
「さてさて可愛い子ちゃん」
彼は私が座る席の正面へ移動すると頭を下げ始めました。それに焦った私はすぐに上げるように言うんですが彼は一向にあげる気配がありません。
「あ、頭をお上げください!」
「いや、俺は下げさせてもらうね。あの時は本当にありがとう」
それから見せた顔はあの時と同じ子供のような表情。だけど、決定的に違うのはそれが喜びの表情だと言う事でしょうか。その後は彼は自身の責務だと、あの夜に私と別れてからの行動を語り始めます。最近流行している折り紙しかり、料理しかり、軍隊の質が上がったと話題の格闘術しかりと文字通り自身がこれまでやって来た事全てを話してくれました。まさか私の軽はずみな行動がここまで人の人生を大きく変える出来事になると思ってもみなかった私は驚き、そして少しばかり責任を感じていましたが、彼は続けざまにこう言い放ちます。
「君が責任を感じる必要はない。コレはあくまでも俺が勝手にあの夜の事を恩義に感じ、勝手に恩返しを行った結果なんだから」
「しかし……」
「だぁかぁらぁ、しかしもヘチマ……は確かこの世界に無かったな。ま、とにかく。そんなに深刻に考える必要はないって」
彼はなんでもない、私が責任を感じる必要は何処にもないと語ります。それでも納得できなかった私ですがそれを何故察知出来たか分かりませんが、彼は気付いたよう。
「そのぉ……どうしても感じるってんなら……俺と友達になってくれねぇか?」
「ともだち、ですか」
「あぁ」
友達。その当時、家に引きこもりがちで友達など作った事も無かった私には予想もしなかった提案です。今でも何をもってして友達と定義するのか不明ですが、その時の私は密かに友達と言うものに憧れがあったのでまさに渡りに船でしたね。二つ返事で了承してしまいます。
「そ、そうか」
「はい……はい……」
「何だか気恥ずかしいな……」
「えぇ、少し……」
何とも言えない空気が広がる中、彼はおもむろに手を差し出します。
「あぁー後、多分これから先、俺は可愛い子ちゃんとは家族ぐるみでの付き合いになると思うからその……よろしくな?」
「ふふ、はい」
照れながらこれから事を語る彼の様子に思わず笑いが漏れましたが私はその差し出された手を握るのでした。
それからというもの彼の言う通りレインとの関係は家族、使用人含めてシルバーアッシュ家全体を巻き込んだ関係となっていきました。お兄様でしたら仕事関係やそれに対する愚痴を吐き合える信用に値する友人へ。ヤーカに関してはお互い料理が得意な事もあってか腕を競う料理仲間へ。ワイスに関しては後から聞いた話ですがお兄様や私などを守る為、常に警備体制の更新案や戦闘技術の伝授など日々言葉でも肉体的にもぶつけ合って話し合っていたとか。そして妹のエンシアに関してですが……恐らくですがもう一人の兄と言う感覚だったのでしょうか? 我妹ながらある程度気分屋な性格が入ってる為真意は分かりません。そして私に関してなんですが……まぁ色々と一緒に過ごしてはいました。
「……あ、三掛け目間違えた」
「た、楽しそうにしてたので言うのを躊躇ってましたが最初から間違ってますよ?」
「――――なんて?」
お兄様の余計な計らいの影響で二人っきりの時間が多かった私達は私の趣味である一緒に編み物をしたり。
「……戦術学は……まったく分からん! 他のだ他の、可愛い子ちゃん何か面白い本とかない? 英雄伝とか」
「でしたらこれ何てどうでしょう」
「お、何々────月刊スノー創刊ッ! 奇跡の復活 シルバーアッシュ家の伝説……妹的に自分の兄が本の主役キメさせられてんはどんな気持ちよ」
「……一言で表すなら、恥ずかしく、複雑です」
本を読んだり。
「ゆぅーき屋ぁ来ん来ん、鋼はドンドン。降ってはぁ降ってはぁ、どしんどしんつーもる」
「何ですかその変な歌は」
「え、俺の記憶が正しければ雪だるま作る時はこの歌を口ずさみながらってのが定番のはずだけど……」
彼が奇妙な歌を口ずさみ、積もった雪を玩具に遊ぶなどして互いに心から笑い合えるほど楽しい毎日を過ごしていました。
「友よ見てくれ、こんなにも大きい物が作れたぞ!」
「私がお兄ちゃんに頼んだら大きいの作ってくれたんだ!」
「っふ、この様な簡単な事。私に出来ないはずがない! 特に最愛の妹の一人であるエンシアの応援あっては尚更だ!」
「おっふ、何で頭担当のエンシオディスが巨大な雪玉作ってんだよ。いくらシスコンでちょっとばっかし頼られたからってこれじゃ頭でっかちになってしまうでしょうが!! ってか予定変更だ、それだけデカいなら体でカマクラ作れらぁぁ!!!」
「おぉぉ! 流石だレイン。お前はフォローに関しては私以上の逸材だな!」
「一言余計だコノヤロぉ! って、逃げんな待てこらぁぁあ!!!」
「っふ。知っているか、待てと言われて素直に待つCEOはこの世に居ないんだぞ」
「ップチ テメェのその余裕ぶったスカした顔に、この雪玉ぶつけたらぁぁぁ!!!」
「あぁ!! レインにぃーちゃん怒った怒った!」
「あぁ怒りをお納めください我主の恩人レイン様。どうか、私の顔を立ててどうか……」
「ふむ、このカマクラ―っというスノードーム。子供でも作れる設計ながらこの機能性、設計者の拘りを感じます。中も暖かくて、心地の良い空間ですね……zZ」
「ちょっと! ヤーカの兄貴も暢気に寝てないで、怒れるレイン様を止めるの手伝ってくださいよぉ!!!」
「フハハハ! 当てて見ろ、我友よ!」
「ぜってぇに当ててやる、このスカシ顔面モフモフ星人がぁぁああ!」
「いっけぇ! レイン兄ちゃんぶっ飛ばせぇ!」
「ふふふ」
あのお兄様が見た事も無い無邪気な様子で戯れ、それを本気ではないでしょうが怒りながら追いかけるレインとその肩の上で楽しそうに肩車してもらっているエンシア。それを必死に止めようとするワイスにヤーガはリラックスしているのか彼が最初に作ったカマクラ―なるスノードームの中で寝ている始末。
それぞれが心から楽しみ、笑い、そして泣いて。彼の加わった日常を過ごしていました。そんな生活を過ごして行く内に私の中で考え方も少しずつ変化し、外への興味も生まれ始めていました。
「そういえばレイン」
「何だ、可愛い子ちゃん」
「何故私をそのような名で呼ぶのですか?」
「……俺は知っての通り元彼女があんな狂った奴だった」
「えぇ、知ってます」
「だからか意識しちまいそうになる相手には自然と距離を置いちまうんだ……」
「――――!」
その告白は衝撃的でした。てっきり私は眼中にないものと今まで考えていたので全くの予想外でした。
「……だから名前で呼ばせたいなら俺が無意識に警戒しないぐらいには仲を深めなきゃ駄目だね」
そしてその告白が、私の中で燻っていた想いに火を点ける事となります。そしてその想いに対しての自覚さえも引き起こす事に。
「――――でしたら今度旅行に行きましょう。私達二人で」
「おまッ!?」
「これなら否応なしに仲を深め、更に意識せざるをえないですよね?」
今まで見せた事の無かった挑戦的な部分の私。後にも先にも、ここまで押しを強くしたのはあの時だけでした。彼は突然の私からの提案に色々と考えているようで様々に顔色と表情を変えながら、最終的には何か諦めたような表情へと落ち着きます。
「ハァ……分かった、良いぞ」
「えぇ!? ほ、本当によろしいのですか?」
てっきり断られるか良くてお兄様達を誘ってっと思っていたのでその時は私の方も驚きでした。
「あぁ、せっかくの可愛い子ちゃんからの頼みだ」
彼は笑った。あの時見せてくれたような子供のような無邪気な顔で。
「俺が君をこの小さな雪の国の外へ、広大なテラの大地へと連れて行ってやる!」
「分かりました。では、その時をお待ちしておりますね」
こうやって私は初めての友達と約束をしました。決して守る事の出来ない、初めての約束を――――
どんな人にも必ず訪れるオワリ。それは期間にも該当するようで……私達の楽しい時間は唐突にオワリを告げました。
「巫女様が逝去、なされた?」
「あぁ」
その知らせは丁度彼が遠方へと赴き彼にとっての、そしてイェラグの国そのモノにとっての最大の転換期となる大仕事を行っている最中にお兄様から聞かされました。
「だから私も心苦しい事だが、国のしきたりに乗っ取りお前も聖祠へ行くとなる」
私のいるこの国、イェラグは他の国家から見ても珍しいカランド山を聖山としている宗教国家。当然宗教的な組織が存在します。そして組織があると言う事はつまり、トップも存在する訳でして巫女様のお立ち場がそれに当たります。そして国のしきたりによって前代の巫女様が逝去されますと私達、適齢の少女は全員集められて次世代の巫女様になる為の挑戦権を得る者を選抜する儀式を受けることとなります。これに個々の自由意志は介在する事は許されず、強制的に行われる事となります。私自身選ばれる事はないだろと軽く考えていたのですが……どうやら私の考えは甘かったようで――――
「では健闘を祈るエンヤ・シルバーアッシュ。どうか無事試練を達成し、我らを導く巫女となってくれ」
――――その挑戦権を、資格を会得してしまいました。本心ではこのような事、冗談でもやりたくはありませんでした。しかし、誰も私を止める者は居らず。
「すまないエンヤ……これに関しては私にはどうする事も出来ない」
「お兄様……」
「だから、やり遂げてくれ」
「――――」
お兄様でさえ止める訳ではなく、寧ろ私を巫女様への立場へ押し上げようとする有様でした。妹は私が何を成すのか分かってはいなかったし、あくまでもヤーガ達には私を止める事は出来ません。そうやって周りが私を持ち上げ、収まりがつかない状況。
「へぇーい可愛い子ちゃぁーん、助けに来たぜ!」
そんな中、彼は現れた。私の本心を知ってか知らずか護衛の隙を突き、私を攫うと集まった見物客の間を縫うようにすり抜ける。その手際は達人と言っても過言じゃないかもしれまへん。
だからでしょうか、そんな風に安心しきっていたから……
「!? くそッ!」
「? キャ!」
……こんな風に不幸が訪れる。
突如、私は彼から離れるように後ろへ飛ばされ思わず倒れ込んでしまいます。その直後に現れるは私、ひいてはお兄様の活動をよく思っていない方がーーーー
「死ね、売国奴め!!!」
耳を塞ぐような大きな音。ジンジンと耳に痛みを感じながらも音の発生源へ目を向けると
「ぶじ――――か――――」
その時、彼の背後でこの国ではまず見ない黒光りしたゴツゴツとしたモノが見えました。先端からは煙がもくもくと出ており、何かが燃えたような嗅いだことのない臭いが私の嗅覚を刺激します。これは――――血の匂い。
「! 今すぐそち「危険です、お早くこちらに来てください」――――!??」
すぐさま駆け付けたかったのですがそれは叶わず。直ぐ近くにいた警備の者に私の身は確保され、護送されてしまいます。
「やく―――そ―――く――――」
そんな中、最後に見た彼の姿は血に染まり、最後の力を振り絞ってか何かを叫びながら私へとあの笑顔を向けている顔でした
パァンッ!
パァンッ!
ドサッ
「あぁ? あんた、誰?」
結論から言いますと彼は記憶を失っていました。
私が立ち去ってしまった後、彼も懐から銃を取り出したようでそのまま銃撃戦に発展。負傷していた彼は何とか相手を倒すも、頭部に一発受けて重症だったそうです。そこで騒ぎを聞きつけたお兄様はカランド貿易の伝手を頼りある名医を呼び出して治療、成功し一命は取り留めましたが……代償に私達に関係のあるほぼすべての記憶を失ったそうです。
何と言う不幸、何と言う不運。
その後、その名医とお兄様の間でひと悶着あったようでいつ決定していたのか分かりませんが彼の身柄は移され、国外追放という形で国から追い出されてしまいます。その件に関してはお兄様も何かしら手を打ったらしいのですがこちらも不明。再度彼に接触しようにも相手は私達の知っている人物であっても記憶を失っている為に全くの別人かもしれないと言う事実が足を引っ張り、誰も会えぬまま彼は何時の間にか行方を暗ませ、何処にいるのか分からない状態となってしまいました。
彼が去った後、彼の残した大仕事は成功を治めイェラグには巨万の富と繁栄が訪れました。そしてその仕事は彼名義で行っていた為に自然とすべての人々に知れる事となり、何時しか彼は英雄と呼ばれる事に……
「だけど、私は忘れません」
彼が怪我をする原因となったのがそのイェラグの鎖国的な考えを持つ国民性や1人1人の意志にある事を。
「だから私は変えます」
彼が二度と怪我をしないように。私達の事をもう忘れない、忘れられない素敵な国にするために。
「この、手で――――」
―――――変革する。
「……でもレイン、どうして貴方は私の前からいつも居なくなるのですか?」
仕事を終え、ようやく彼に再会できる朝の時間。彼が監禁されている部屋に訪れるが……彼の姿は何処にもなく、後に残されているのは彼を拘束していた鎖だけなのであった……
今回過去一長くなったわ。書きたい事が多すぎたぁ。
あ、あと現在タグに何を付けようか困ってます。今のままだとある意味のタグ詐欺になるので。
Q:何故このように長くなったのですか?
A:書きたい事があり過ぎた影響です。
Q:コレって独自解釈と言う名の妄想の産物ですよね? これについてどうお思いですか?
A:いいじゃない! だってそんな展開にしたかったんだもん!
Q:最後に一言、後半の展開が急に雑になった件についてお願いします。
A:睡魔に負けた、以上です。
今回の出来事を数行で説明!
アルくん、アッシュ邸に侵入ス。
プラマニクスど出会ってしまい誰かと見間違えさぁー大変。
抱えてた愚痴を吐き出した彼は何故か恩義を感じ、アッシュ家の復興を狙う。
復興完了。
家族絡みで付き合っていくうちにプラマニクスと友達に。将来2人っきりの旅行の約束を取り付ける。
巫女が死去。プラマニクス、儀式の結果次世代の巫女候補に選ばれ試練へ。
それをよく思わなかったアルペジオが襲撃、プラマニクスを攫おうとするがそれとは別の関係が原因となって発生したテロリストと遭遇して失敗。
銃撃戦を繰り広げ重症に。
頭部への1発が原因で奇跡的に命は助かるも記憶喪失に陥る。
何かが原因で国を追い出された後だった。
やっと見つけて攫って囲おうとしたらまたも行方不明に。
こんなとこかな?
※誰かさんに対する好感度表
・平均値
交流の無い一般龍門市民:0%
交流のある友人龍門市民:50%
交流のある親しい龍門市民:100%
恋愛関係にある龍門市民:150%
・交流のある人物達一覧
テキサス:?39%
エクシア:?82%
クロワッサン:??8%
ソラ:-999%
モスティマ:?90%
W:?00%
シャチ:???%
修道女:???%
マッターホルン:100%
シルバーアッシュ:143%
クリフハート:???%
プラマ二クス:?94%←new!
謎の名医:???←new!
???:数えるのもバカらしいほど高い。
???:あんたら血が繋がってるだけに男の好みは同じですかぁ????
元カノ:測定不能←new!
クエスチョンマークを取って欲しいキャラ
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モスティマ
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W
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プラマ二クス