ヒカセンinダンまち:ファイナルファンタジーだんじょんず   作:TAKUMIN_T

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はい。
はいじゃないが>



02:つたわるウワサ

 ミコッテ族ムーンキーパー族のエリ。本名、エリ・ティンバー。

 彼女の出身地とされているのは、惑星〈ハイデリン〉の北半球に位置する〈アルデナード小大陸〉――〝神々が愛する地〈エオルゼア〉〟の中央に広がる大森林「黒衣森(こくえのもり)」。

 その森一帯を国土とし、大地に宿る精霊と対話して自然を享受。「Wood's Will Be Done(森の意志あらんことを)」を信条とする国家〈グリダニア〉。

 

 ――とはなっている。

 

 わざわざ曖昧な表現を用いていたのには、一応の理由はある。

 彼女はミコッテ族の、ましてや両親たる産みの親に育てられたのではない。黒衣森(こくえのもり)で赤子のまま捨てられていた〝捨て子〟なのだ。

 薄い布に包まれて木陰に捨てられていたところを、たまたま通りがかったヒューラン族――知らない人向けに説明するなら、普通の人間と同じ見た目だ――その夫婦が発見する。

 状況から捨てられたのはわかっていた。赤子に何かがあってはいけない。すぐさまグリダニアに運び込まれた。

 後に、名前と出生地がわからない――正式に捨て子と判明。このあとの赤子の境遇を憂いた夫婦が養子として引き取った経緯がある。

 名前がミコッテ族特有の法則性に沿ったものではないこと。頬骨と額あたりに描かれる戦化粧(いくさけしょう)がなかったりしているのも、ヒューラン族に引き取られたからこそである。

 あとは。そもそも彼女の種族であるミコッテ族のムーンキーパー族が生活地域としている場所が、黒衣森(こくえのもり)一帯のみであることだ。

 

 彼女の生い立ち自体はかなりの不幸だ。幸運だったのは、しっかりとヒューラン族の義両親に育てられたことに尽きる。

 少年期へ入れば、自身の種族であるミコッテの文化を自分はあまり知らないことに疑念が生まれて、知り合いミコッテの家族に突撃を敢行したり。図書館収蔵のミコッテ歴史本を静かに読んでいたり。

 その後にはそれなりにミコッテとしての自覚が生まれるようになった。戦化粧はやんわりと断っているようだが。

 成長したのちに行き着いた先は、冒険者として親元から飛び立って……。

 

 まあ。

 ぼかして語ってぴーちくぱーちくしようが、ムーンキーパー族であったりグリダニアで育ったり。どんなに語ろうが、黒衣森(こくえのもり)とグリダニアが彼女の地元・実家(帰る場所)なことになんら変わりはなかった。

 

 つまりは――。

 女の子ネコです。(語弊あり)

 人に育てられた孤児です。

 森の国グリダニア出身です。

 ネコです。

 ――である。OK?

 

 なにはともあれ、彼女が持ち得た類まれな好奇心が自らの背中を押して、冒険者をこころざし。地元(グリダニア)で出会った人達から数奇な出来事を巡りに巡って……。

 気付いたら、光の戦士、エオルゼアの英雄、解放者、闇の戦士やら。いくつもの呼び名が彼女へついて回ることになった。

 彼女の存在は〈かの世界〉において英雄譚として語り継がれるほど――。

 

 

 ――から、幾年(いくねん)が過ぎて……。

 

 口にペペロンチーノが入る。真っ赤な瞳孔(おめめ)をキラキラさせて、ラハは天井を仰ぎ。

「ああああおいしぃいいいい」

 絶品。そして幸せ。

 テーブル挟んで、同じく着席している彼女。

「よかったぁ〜」

 ラハの喜びように、エリの心は〝ぽかぽかここち〟と釣られるように笑顔だ。

 そう。このペペロンチーノはエリが料理したもの。高級料理店で出てくるほどのツルツルピカピカ(?)している、お金ふんだくれる美味しさのやつ。

 ラハの様子からは「(エリ)の料理は最高だ」とノロケ幸せを感じる。

「うん、すっ――ごく美味しいぞ!」

「そんなに目かがやかせてどうするのー」

「だって美味しいんだよ!」

「もうわかったからぁー」

 ――惚気全開。これが公然の場で行われていたなら、愛と言う名の爆弾を無差別に振りまく戦略兵器と化けていた、かも。

 お熱いことでようござんした。惚気を軽く受け流すだけで済む人は、結婚済みの夫婦ならいるかもしれない。もしくは再燃以下略。

 

 まあ、こんなふうに戦友であり仲間の一人のグ・ラハ・ティアと結婚してめでたく夫婦となったり、仲睦まじく寄り添っていたり……。

 ――どっちから? それは言うだけ野暮なだけ。どっちも。なんて答えられるかもしれないが……そこも描くのは、蛇足なだけなのである。

 

 

 ▶︎

 

 

 この街のことを知らない人も、いることだろう。まず、この街について少し話そう。

 ここ〈オラリオ〉とは、街の中心に聳える神々が建てた50階建ての塔〈バベル〉の真下に存在する〈ダンジョン〉を起点として、大陸有数の経済を築いて発展している円形の街。

 フランス・パリ、エトワール凱旋門――シャルル・ド・ゴール広場を想像すればわかってもらえるだろうか。凱旋門をバベルへ置き換えて……そこを中心として八方向へ、主要な道は放射状に延びている。

 

 そんなオラリオの一大産業――〝人〟と〝金〟が動くのは、〈ダンジョン〉と〈冒険者〉を取り巻く商売だ。

 

 まずバベル一階。ダンジョンの入り口には、管理組織である〈ギルド〉が門を構えている。入口で同業組合、協会(ギルド)を名乗っているからには、冒険者の支援とダンジョンの保全が目的だ。冒険者が持ってきたダンジョン内の素材を買取り、オラリオの店に売る卸売業も行っている。

 ダンジョンに潜れば、〈魔物(モンスター)〉と呼ばれる存在がひっきりなしと湧く。魔物《モンスター》自体はダンジョンの外、オラリオの外でも活動している。

 しかしダンジョンでは、外のより強いのが湧く。もし倒せたならば、様々なものを落とす。

 モンスターの心臓と言える結晶状に凝縮された生命力の核〈魔石〉は、あらゆる場所でエネルギー源として活用されている。現代で言う〈石油〉に近い。加工されては道具へ。宿し生命力は街の営みを支える、灯りなどの燃料とされたり。

 各種魔物《モンスター》の特徴というべき部位は、時折ドロップアイテムとして残され、加工されては服飾品、冒険者達の武具へ変わる。

 

 次に冒険者。

 武器防具に金。暮らす場所に金。食い物に金。そして、名誉。人の品格は二の次でいい。最も重要なのは、わかりやすい実力――力だけ。

 そして冒険者と並行して特筆すべきは、バベルを伝い降りてきた〈神〉の存在。神がいなければ、ダンジョンを潜る冒険者も生まれていない。

 神は自らの血を分け与えることで〈眷属〉を手に入れる。

 人は神の血で、ダンジョンの魔物《モンスター》に対抗しうる人知及ばぬ(ちから)――レベル、数値、スキルからなる〈ステータス〉を手に入れる。

 そして神と、同じ神の血を与えられた人々は〈ファミリア〉という集まりを作る。

 目的は神の得意分野、またはファミリアの方針によって異なる。

 鍛治に関する神なら、武具の作製を主目的とするファミリアに。食物に関する神なら、食物の生産を主目的に。

 一概に冒険者とは言え、その分野は様々となる。

 

 とまあ、オラリオについての語りはここらへんで切り上げるとして。場面は二人の愛の巣ゲフンゲフン……自宅から移ろわせよう。

 

 ここは〈ロキ・ファミリア〉という、オラリオ二大探索系ファミリアの片方の館で、本拠地。通称〈黄昏の館〉だ。

 敷地内にある外の広場では、数人が刃が潰されている練習用武器をしっかりと握り込んで、二人一組で腕を磨いて(特訓して)いる。

 喧騒から少し遠ざかったある一室では、テーブルを挟んで大きい人影と小さい人影が椅子に着いて向かい合っていた。

 その片方である小さい影――見た目が金髪ショタが「へぇ」と興味深々そうにしていた。

「珍しいね。オラリオ(ここ)の街中で演奏しているなんて」

 彼は〈フィン・ディムナ〉。ロキ・ファミリアの団長を務めている。

 見た目がショタ――もとい、小人族(パルゥム)という一般的な人間の少年期程度で成長が止まる種族だ。種族特有である若々しい見た目でありながら42歳という、世の女性陣垂涎の冒険者だ。

 問いかけの先では緑髪で耳がとんがっている女性。

「どんな曲を演奏していたかとかは聞いてないのかい?」

 エルフらしき彼女はコップの水を飲むのを止めて。

「私が聞いたところでは知らない曲を演奏しているらしい。歌を唄っているわけではないようでな」

「唄っていない……。吟遊詩人ではない、ってことかな」

「おそらくはな。もしかしたら普通に詩人かもしれないが」

 彼女は〈リヴェリア・リヨス・アールヴ〉。ロキ・ファミリア副団長を務める魔術師。艶やかな緑髪は由緒正しき血筋を受け継ぎしエルフの王族、ハイエルフであることを表している。

 ほうと言いたげな表情をした。

「……聴いてみたいって顔だな」

「そう聞いちゃうと、一回はね」 

 うすら苦笑いのフィンを、可笑しいものを見たかのようにリヴェリアは微笑んだ。

「まさか、フィンが音楽に興味を示すとはな」

「そんな大層なことじゃないよ。ただみんながスゴいと言ってる音色を、一回でも聞いてみたいって思っただけだから」

 吟遊詩人自体はオラリオにも訪れる。街のどこかで唄っているのも耳にする。そしていつのまにか、まだ見ぬ物語を求めて旅に()く。

「毎日演奏していたりするのかい?」

「事前の告知はなく、運が良ければ、だそうだ」

「運かぁ〜」

 おおかたが流浪の旅をしている吟遊詩人が事前に演奏会を告知するのは、それはそれで「本当に吟遊詩人なのか」と疑問が浮かぶ。

 行って帰って、そして奏者を見つけようと外周地区を散策して――どこで行われているか分からないゲリラライブ目当てで毎日足を運ぶのは、団長業をしている傍らだとなかなかに骨が折れそうだ。

「……明日、行ってみようかな」

 でも聞いた翌日に即行動するくらいは、いいかも。リヴェリアが「ふふっ」と笑ったのが見えた。

 

 

 宵闇(よいやみ)がオラリオの人々へ夜ご飯時を知らせて回る。食事処はもう満席の店もある。

 繁華から離れた街の一角に、廃墟と言うほかない小さな建物がある。とんがり屋根に縦長な部屋。ガラスは一部がひび割れてなくなっていたり。形から想像するに、元々は50人くらいが入れた教会だったのだろう。

 中もぼろぼろであっても、聖堂――信者たちが着席する長椅子や、神父が聖書を置いている机が原型を残していた。

 床に下へ続く階段がある。降りた先光が漏れる扉。

 扉を潜ろう。

 地上の暗さとは正反対の明るい地下室。広さは6畳ぐらいか、真ん中のテーブルにジャガ丸くん入りカップが数個。そこからひとつ摘んだのは、黒髪ツインテ、ヘスティア。

「――そういう人がいるって噂になってるみたいだぜ、ベル君」

 同じカップからジャガ丸くんをひとつ摘んだのは、白髪くりくり赤目の少年。

「へー。神様にそう言ってくれるなんて、とても親切ですね――――(あむっ)

「あはは……ボクが、来るたびに喋ってたのがアレだったみたいなんだけどね……」

 ヘスティアの催促と受け取られても仕方がない愚痴の末の情報提供だったがために、彼の純粋な言葉がなかなかに痛かった。

 そんな純粋無垢な可愛げのある少年、ベル・クラネル。ぴっかぴかの14歳で、ヘスティアの初めての眷属。冒険者となってまだ日が浅い、初心者だ。

 食べて小さくなったジャガ丸くんを飲み込む。

「神様ぁ。それって、僕が来る前から言い続けていたんですか?」

「そ、そうだね……あそこでバイトしてからおじさんが来るたびに、ずっと……」

「あはは……」

 目を逸らしているヘスティアに、なんと声を掛ければいいのか。

「でもそれって、どこ決まった場所でやっているんですか?」

「あー、オラリオの外周で時たまやっているって言ってたから、ボクは詳しく聞かなかったんだよねー」

 おじさんに聞いていけばよかったなー。持ち続けていたジャガ丸を口へ放り入れる。

 

 音楽。

 ベルでももちろん、言葉と存在は知っている。なんならオラリオへ来る前の村では童謡を歌っている人はいた。

 でも。芸術作品としての音楽を聴いたことは無い。

 当然だ。現代社会ではもはや当たり前のCD(コンパクトディスク)MP3とFLAC(デジタル形式)、これら持ち運び可能で便利なシロモノはこの世界に存在しない。

 この世界において〝本物〟と呼ばれるものをお手軽に、常日頃(つねひごろ)から聴けるのは、人や金が飛び交う社交界や劇場に足繁く通う金持ちやら貴族達に限られる。

 庶民だったら、大きな街に住んでいて年に数回聞けるか聞けないか。そんなものだろう。

 普段から聴くことのない、その音楽。どんなのなんだろう、興味がそそられる。

 

 ベルが手を止めているのを、ヘスティアはめざとく。

「ベル君、ちょっと興味湧いた?」

「あ、はい」

「初めてダンジョン以外に興味を持った気がするよ」

「あはは……」

 言われてみれば確かに。オラリオに来てやったことといえば、ヘスティアとファミリアを結成して、冒険者となってダンジョンに潜るようになったこと。

 日が浅いから仕方はないとはいえ、他のことにあまり目を向けることがなかった。

 ヘスティアはベルの顔を見て。

「そうだ。音楽ってベル君どれだけ知ってたりするのかい?」

「えっと……おじいちゃんと暮らしていた時に、近所のおばさんが歌っていたのは……」

「あー……そうだよねぇ」

 いわゆる、童謡だったり伝え唄だったり。ベルが聞いていた音楽というのは、そういう地元や知識に根付いたものだったのかもしれない。

「ボクも音楽には詳しくないからなぁ〜」

「神様も、興味無かったんです?」

「うん。ボクもこの話聞いて興味湧いた程度だよ」

 ヘスティアも同様に、音楽は耳に届いていたのを流し聞いていた程度。知っている音楽というのも、ベルとほぼ同じ具合だ。

「なんとなく一回聞いてみたいけど、明日バイト入れてるんだよなぁ……」

 しかも不定期なんだもんなーと残念そうにし、いつのまに手にあったジャガ丸くんを口に放る。

 

 ベルはなんとなしに思案中。あした、どうしようかな。

 ファミリアのお金にはちょっと余裕がある。ヘスティアがバイト先から持ってくるジャガ丸君が、意外と食費を浮かす分には大きかった。

 この余裕を増やそうとダンジョンに潜ってもいいのだけれど……。

 せっかくだ。翌日のダンジョンはお休みにしよう。

 まだ来たばかりでオラリオは知らないことだらけ。例の音楽を聞いてみようと外周地区を回るついでに、この際だから街を知るためにも散策しよう。

 

 よし。そう決まったなら、言ってしまおう。

 

 

「僕は、明日探してきますね!」

 

 

 ボクも連れてけー!

 そう言われても、神様バイトじゃないですか。

 苦笑いがこぼれた。

 




ティンバー
【timber】
(建築用の)材木、木材

ヒューラン族の命名法則に則ってる苗字だったりする。
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