どうぶつれいといっしょ   作:黄田田

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満月の夜に

クラウンピースは昂っていた

 

目の前の人間をどうしてやろうかと考えるだけで心が躍っていた。地面に倒れ伏し、何が起きているのかわからないといった表情で自分を見つめるこの男を

 

クラウンピースにはちょっとした癖があった。それは人間をいじめるということだ。友人様、である純狐の勧めで幻想郷に住まうことになったのだが行き場がなく、友人もできず、退屈していたクラウンピースにとって人間をいじめることは一種の娯楽だった

 

虐めるといってもそんな凝ったことはしない。里人に弾幕をぶつけたり、狂った妖精をけしかけて嫌がらせをしたりそれぐらいだ。それはいつも唐突に始まり、いじめる相手に事前に話しかけたりはしなかった。興味がないからだ

 

しかしこの男は違った。記憶喪失だというこの男、ただでさえ人間は近寄らない妖怪の山を真夜中に歩いていたのだ、とてつもない霊力を奔出しながら。それだけでなくさらに目を引いたのが男の容姿で、純化した純狐に並ぶかもしれないほどの浮世離れした美しさをもっていた

 

それに加えて、クラウンピースは一度この男にあった気がした

 

クラウンピースは興味を持ち、話しかけることにした。その時ちょうど男は最近増えた動物霊に襲われておりクラウンピースが助けるような形となった。男は助けられたことへの礼をのべ、自身が記憶喪失であることと自分がどうしてここにいるのかわからないという旨を伝え、ここはどこなのか聞いてきた

 

クラウンピースは最初はこの男に親しくし、ここは幻想郷で、この妖怪の山という場所は危険だから案内するということにしたのだが数分移動するうちに湧き上がる欲望が抑えられなくなったのだ

 

この男を食いたいという欲望を

 

男に弾幕の奔流を食らわせる、逃げる男にレーザーを当て、男が倒れるとクラウンピースは三日月のような笑みを浮かべ男に近づく

 

「これは、どういうことなんですかクラウンピースさん」

「あたいは人間を泣かせるのが好きなの、同時に人間を食べるのも」

「妖怪と違って妖精は人を食べないといったじゃないですか」

「確かにそうかもね。でもあたいは別、知ってる?草食恐竜で知られているトリケラトプスも時には肉食もしていたのよ。だからあたいはあんたを食べる、おなかが空いたからね」

 

クラウンピースは嘘をついていた。本来生命の象徴である妖精族は人を食べることがない、必要がなく、クラウンピースも当然人など今まで食ったことがない

 

男の絶望する顔が見たい、泣く様が見たいという欲望からついた嘘だった

 

「あんたは顔もいいし、私を妖精だと見下してこなかったから生かしてやってもよかったんだけどねー」

 

そう言って男の喉を蹂躙する。ほとばしる血漿、心地よい悲鳴が聞こえ、そのたびに興奮し何度も何度も男の肉をえぐる。

 

---脆い、なんと脆いのか

 

卓越した霊力があってもこの程度、クラウンピースは男を凌辱しながら食らうことに決めた

 

「やめてくれ、やめろ!」

 

激しく抵抗を続ける男の首をしめ、服を破き、現れた肌を破壊する。人間をどうやれば壊せるのか地獄の妖精たるゆえんよく知っていた

 

抵抗をつづけるたび傷ついていく男の様子にクラウンピースはことさら興奮したが同時にどこか自分の中で冷静な部分は不思議に思っていた

 

---どうしてこんなにおなかが空いていてこの男をいじめ殺したいと思うのだろう。

 

これではまるで狂気を振りまく自分が狂気に侵されてしまったようではないかと。しかしそう思っても熱は止められない。食欲に押され男にとどめを刺そうと思ったその時だった

 

「きゃっ」

 

高速で飛ぶ紫色の物体、オオワシ霊の強襲がクラウンピースを襲う

「ちょっと離しなさいよ!動物霊風情が」

 

その瞬間に出血著しい喉を抑えながら男は逃げ出す。上空に輝く満月のように狂った夜だった

 

 

 

***

 

 

---走る、ただひたすらに山を下る

 

幸い森を抜けた場所は川沿いだったのでこれにそってひたすらに下る。疲れた、肺が苦しい、喉が痛い、足が重い。それでもただひたすら走る

 

どれくらい走っただろう、振り返るともうあの金髪は見えない、みえなくなった

 

「げほっゲホッツ!ゲホ」

 

安堵でそのまま倒れた、生き延びたのだ。この異世界を、この地獄を。---そう思った矢先激痛に襲われる。

 

---痛い。

痛い痛い痛い痛い痛い

 

血と吐しゃ物が喉からせりあがってくる。窒息しないように顔を地面に向けるのが精一杯だった。もう動かない、歩けない。喉も含め全身が痛い。改めて先ほど撃たれた箇所を見るとひどい有り様だった

 

腕、所々が焼け爛れ骨が見えている、レーザーに焼かれたんだ。胴体、特にひどい肉ごと持っていかれている。直々にえぐり取られたからだ、脚、狼にやられた箇所と弾丸に撃たれた傷が二つある、大きな赤い歯型と点在するやけど、ひどく痛む

 

川の水が飲みたいが、動けない。岩になぜか留まっている雛人形が憐れむような表情でおれを見ていた

 

なんとかほふく前進で川まで近づこうとしたら、背中に凍土が生まれたような悪寒が走る。

 

振り返ると赤黒い凶悪な姿の狼たちが4匹もおり今にも襲ってきそうだった

 

もう走れるほどの体力はない。狼たちはこちらが弱っているのを知っているようですぐには襲ってこない。そのかわり弱った獲物がくたばるのを待つハイエナのようにじっとおれを見つめていた

 

何とか逃げるすきを作れないか考えていると

 

『助けてやろうか』

 

後ろの何者かがおれに語り掛け、つい振り返った瞬間それが契機となったのか狼たちが一斉に襲い掛かってきた

 

しかし束の間大きな音がして狼たちは瞬く間に目の前に現れた怪物に食われてしまった

 

『ふふ…危ないところだったな』

 

この大鰐の口に…

 

 

 

***

 

 

 

鰐の全長は8メートルはあるかのようで、でっぷりと太っていた。爬虫類特有の濁った瞳がこちらを射抜く

 

「…ゲホッ、お前は…おれを助けてくれたのか」

『少し違うな、私はお前が現れたときからずっと見てきたんだ』

『外来人なんだろう?お前』

「外来人?」

「ふふ…その様子だとあの妖精には幻想郷について対して教わっていないらしいな」

 

妖精と聞いてつい身構えてしまう、ずっと見ていたということは本当らしい

 

「お前は鰐なのか?妖怪か」

『どちらでもないな。私は動物霊だよ。お前を襲った連中と同じ種族だ』

「動物霊…?お前が?」

『ふふ…ちょうどいい、真の姿を見せてやろう』

 

瞬間、ワニの灰色の体色は一瞬でタールのごときどす黒い不吉な姿に変貌し、黒目が消え、裂けたおおきな白目をのぞかせる

 

化け物だった。同じ動物霊なのにさきほどの狼霊たちとは違うこの圧倒的な威圧感

 

『おびえるのもわけないが私は敵ではないぞ』

『なんせ私もお前と同じような立場だからな』

『お前には特別な力がある、その莫大な霊力、生かすことも知らぬままここで朽ちさせるには惜しい』

 

霊力?特別な力?

 

『あぁ説明するのが手っ取り早いから少しお前の体を借りるぞ』

「な…」

 

疑問視を返す前に巨体が突っ込んできて、おれの意識は突っ込んでくる鰐の顎をとらえたのを最後に失った

 

 




畜生界の正体不明の組織の全容が気になりすぎて書きました。基本的に毎日18時~19時あたりに投稿します
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