夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「見失うよ」

 弥幸と星桜は、放課後校舎裏で待ち合わせすることにした。理由としては、弥幸が教室で人と話しているのを他人に聞かれたくないからだ。

 

 理由を聞いた時、星桜は苦笑いを浮かべつつもその場で了承した。そして、授業が終わり、放課後になる。

 

 鞄に教科書などを詰め込み、横目で弥幸の机を見る。だが、そこにはもう誰もいなかった。

 

「はやっ!!」

 

 咄嗟にそう口に出してしまった星桜だったが、直ぐに口を閉じ急いで帰る準備をして教室を出た。

 

 その様子を、凛は目を細め、意味ありげな瞳を向け、小さく舌打ちをした。

 

「今度こそ……」

 

 ☆

 

 校舎裏は草が生い茂っているため、人はあまり立ち入っていないのがわかる。手入れすらされていない。

 人気が全く無く、弥幸みたいな1人になりたい人にとっては取っておきの場所だった。

 

 そんな中、生い茂っているはずの校舎裏で、円形に刈られている場所を星桜は見つける。

 そこ近付くと、横になって寝ている彼の姿を確認することが出来た。

 

 フードとマスクで顔が隠れてしまっているが、寝息が聞こえるため直ぐに寝ているのだとわかった。

 

 星桜はそっと弥幸に近付き、隣にしゃがむ。

 起こそうと右手を伸ばした彼女の手首を、いきなり彼が掴む。

 起きているとは思っていなかっため、彼女は肩をビクッと震わせる。

 

「寝込みを襲うなんて。僕がイケメンだからってそういうのは良くないと思うよ」

「た、確かに赤鬼君はかっこいいし儚く美しい顔してるけど、別に襲おうとしたわけじゃ……。ただ、起こそうと……」

「はぁ。君には冗談も通じないのか」

 

 呆れ気味に弥幸は手を離し、欠伸を零しながら体を起こす。

 

「冗談を言う人だと思ってないもん」

 

 星桜は頬を膨らませそう口にする。

 

「ところで、これって何? なんで円状に赤鬼君の周りだけ刈り取られてるの?」

「刈り取ったから──というか、燃やした」

「なんだ、燃やしたのか────どうやって?!」

 

 星桜は自身が座っている草に手を触れてみる。よく見ると葉先が少し焦げているため、弥幸の言葉が本当と分かる。だが、綺麗に円形になっているため、どのようにしたのかまでは分からなかった。

 

「これ」

 

 弥幸が出したのは、以前星桜が足に怪我をした時、傷を治してくれた時の長方形の紙に似ている物だった。

 

「紙?」

「ただの紙じゃない。アニメとかでよくある、式神だよ」

「式神? 式神って陰陽師とかがよく使うってやつ?」

「そうだよ。これには炎狐(えんこ)という狐が入ってる」

 

 式神の説明をしてくれた弥幸だったが、直ぐにその場から立ち上がり、ポケットに御札を入れ歩き出してしまう。

 

「え、ちょ。まだまだ聞きたいことが──」

「歩きながら話すよ。今は付いてきて。目当てを見失うよ」

 

 そう口にする弥幸は、なぜかまた校舎へと戻ってしまった。

 

「あれ、また戻るの?」

 

 疑問に思った星桜だったが、その質問に答える声はなく弥幸はどんどん進んでしまう。

 何を言ってももう答えてくれないと悟った星桜は、仕方なく弥幸の後ろを付いて行くことにした。

 

 ☆

 

 校舎内に戻り、弥幸は自身の教室である『2ーB』に辿り着いた。

 

「なんで教室に──」

「静かにして」

 

 星桜が口を開くと、バッサリとそう切り捨てた弥幸。

 文句を口にしようとしたが、なぜか弥幸は教室に入らず、気付かれないようにドアの横に立った。

 それを見て、星桜も足音に気をつけながら弥幸の隣に立つ。

 

 教室内には男子生徒がまだ残っており、その中には星桜の幼馴染である翔月の姿もあった。

 

「なぁ、今日のなんだったんだ?」

「あぁ、朝の一悶着な。確かになぁ。翡翠が武永を──いや、逆か?」

「武永が翡翠をあんだけ怒らせるのが不思議なんだよな。だってよ、翡翠ってそんなに怒るイメージねぇじゃん?」

「確かにそうなんだよ。それに、教室のアイドル的存在だろ? いつも笑っててさ。俺はあの笑顔が見れるだけで幸せになれるわぁ〜」

「言ってろよ」

 

 そんな会話している男子高校生達。

 星桜は少し頬を染め、弥幸は面倒くさそうにその場にしゃがみこむ。立っているのがめんどくさくなっていた。

 

「そんで、そんなアイドルと幼馴染である翔月君。なんであんなに翡翠が怒ってたかわかるか?」

「しらね。つーか、最近話してねぇし」

 

 話しかけられた翔月は、冷たく突き放すような言い方で返す。その言葉に、星桜は少し胸を痛め俯いてしまった。

 弥幸はそんな星桜を見上げ、何か考えるようにそのまま顔を逸らす。

 

「なんだよぉ。喧嘩したのか?」

「喧嘩してんのは星桜と武永だろ」

「たしかになぁ。まぁ、この2人が喧嘩しているのも珍しいけど、1番珍しかったのってさ……」

「あぁ、赤鬼だろ?」

 

 弥幸の苗字を会話に出され、星桜はハッとしたように隣でしゃがんでいる彼に目を向ける。

 

「赤鬼がまさかあんな行動をとるなんてな」

「確かに驚きだよな。他人に全く興味無いと思ってたんだけど……。もしかして、密かに翡翠の事狙ってたとかか?!」

「いやいやそれは──」

 

 男子生徒が話していると、なぜかガタッという音が響く。それに驚いた星桜は中を確認しようと乗り出すが、直ぐに弥幸によって止められてしまった。

 

「何やってんだお前」

「うるせぇわ」

 

 先程の音は、翔月が一人の生徒の言葉に驚き、座っていた机からバランスを崩して倒れてしまった物だ。

 

 その後は「何やってんだよー」と笑い声と共に関係ない話へと移った。

 そのことを確認した弥幸はその場から立ち上がり、教室から離れる。星桜も少し戸惑いながらも彼の後ろを付いていく。

 

「今夜の退治に向けての()()()()完了だ」




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)
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