夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「あからさますぎ」

 星桜は今、自身の家に帰り、部屋にあるベットの上で横になっていた。

 

 妖傀を灰にしたあと、弥幸は刀や炎狐を御札に戻しながら星桜に近づき「明日が最後のチャンスだよ」と言い残し、その場から消えてしまった。

 残された星桜は言葉の意味も理解出来ず、ただただ困惑するばかり。

 それだけではなくこの後どうやって家に帰ればいいのかもわからないでいた。

 その時、木の影から前回も送ってくれたアイが「送って行くわ」と言って、今回は家まで送ってくれた。

 

 崖を登る際、またしてもひとっ飛びだったため、星桜が叫んだのは言うまでもない。

 

 そんな事がありながらも、星桜はベットの上で妖傀の流していた涙について考えていた。

 

「なんで妖傀は私を呼んでいたんだろう。それに、なんか……。すごく悲しげで苦しそうだった」

 

 そう呟き、寝返りを繰り返す。今回の出来事か気になってしまい、寝付けていない。

 次の日が土曜日なため、無理にすぐ寝る必要は無い。気兼ねなく考えに没頭することが出来る。

 

「妖傀の正体って本当に──なのかな……」

 

 星桜は暗い顔のまま仰向けになり、目を閉じた。

 

 ☆

 

 次の日の朝、なぜかスマホが鳴り響いた。

 まだ眠っていた星桜は目を擦りながら、誰からの着信か確認する。だが、なぜか非通知からかかってきており、最初は出るのに躊躇した。だが、ずっと鳴り響いているため、意を決してスマホに写っている電話のマークを横へとスライドし、耳に当てた。

 

「も、もしも──」

『遅い。僕を待たせるなんて君はなんて偉い人なんだ。命の恩人である僕をもっと称えなよ』

「……………………僕僕詐欺ならお断り──」

 

 一瞬にして誰かわかった星桜は、寝ているところを起こされたのもあり怒りの言葉を口にしようとしたが、それを遮り電話の主は脅しのような言葉を口にする。

 

『今すぐ準備して僕の家に来るように。遅かったら僕が繰り出す炎でお前の家を燃やし尽く──』

「わかったわかった!! 今行くから待っててよ!!」

 

 星桜がそう叫ぶと、なんの返事もせず電話はプツンと切れる。

 暗い画面になったスマホを見て、星桜は肩を落としスマホをベットに叩きつけた。

 

「〜〜〜〜赤鬼君のアホ!!!」

 

 そう叫びながら、星桜は準備を整え急いで弥幸の家である、紅城神社へと走った。

 

 ☆

 

「遅い」

 

 星桜が全速力で走り、十三時くらいに紅城神社に辿り着いた。電話が来たのが十二時半ぐらい。

 

 電話を切った後飛び起き、その辺に置いてあったピンク色の短パンと白いシャツ、ピンク色のパーカーを着て、髪は走りながら寝癖を誤魔化すように結んだ。そのため、今日は珍しくポニーテールをしている。

 

 そして、全速力で走り三十分以内で辿り着いたにもかかわらず、第一声がこの一言である。

 

「こ、これでも……急いんだん、だけど……はぁ」

 

 息を切らし、鳥居に寄りかかっている弥幸を睨みながら文句を口にした。それでも彼は、星桜の様子を気にせず、ただただ見下ろしているだけだった。

 

 今の弥幸は、昨日の服と同じ物を身にまとっていた。

 大きな襟が風で揺れ、腰には狐の面が付けられている。

 

「くそっ。赤鬼君って本当に性格がわるっ──」

「なら、これはいらないかな」

 

 弥幸はそう言いながら、手に持っていたであろう未開封のスポドリを星桜に見せた。

 

「え、くれるの?」

「君は性格悪い人からスポドリなんて物貰いたくないでしょ? 仕方がないから僕が飲むね」

 

 そう言って彼は、未開封のペットボトルを開け飲もうとする。

 

「ま、待って待って!!! 赤鬼君って本当に優しくて紳士的な出来る人だよね!!! 人の事をしっかり見ていて、本当に尊敬しちゃうなぁ!!」

 

 星桜は必死に笑顔を作り、弥幸を褒め称える。それを見ている弥幸は、ペットボトルを下ろし口角を上げ、星桜を見下ろす。

 

「君、あからさますぎ、却下」

「あぁ!!! 私のスポドリ!!!!」

 

 弥幸は遠慮なくスポドリを飲んでしまった。それを目の当たりにし、星桜は叫んだ後肩を落とし、膝をつく。

 

「くそっ。この悪魔……」

 

 項垂れる星桜に弥幸は冷たい目を向けている。すると、屋敷の方から元気で明るい声が聞こえた。

 

「弥幸お兄ちゃん、あまり虐めないであげなよ。せっかくできた唯一の友達なんだからさ」

「へ、お兄ちゃん?」

 

 星桜はいきなり女性の明るい声が耳に入ったため、顔を上げた。

 そこには、黒髪に銀色のメッシュ。目は弥幸と同じく真紅に染まっており、綺麗に赤く輝いている。

 目はぱっちり開いており、可愛い顔立ちをしている女性が、弥幸の背中に手を添え笑顔で話しかけていた。

 すると、地面に膝をつき、唖然とした顔を浮かべている星桜と目が合い、軽やかに近づき目の前でしゃがむ。右手には、未開封のスポドリが握られていた。

 

「初めましてではないんだけど分かるかな。私は赤鬼逢花《あかぎあいか》。弥幸お兄ちゃんの妹だよ。はい、これ星桜さんのスポドリ」

 

 逢花は笑顔で自己紹介をし、スポドリを渡す。

 星桜は釣られるように「ありがとう」と呟き、差し出されたスポドリを素直に受け取る。

 

「──って、赤鬼君妹さんいたの!?」

「うん」

「うんって、私聞いてない!!」

「言う必要性今まであったかな?」

「……ない」

 

 星桜は弥幸に完全に負け、肩を落としながらも立ち上がり、スポドリを開ける。

 相当喉が渇いていたらしく一気に半分くらいまで飲み喉を潤した。

 

「ぷはぁ!! 運動の後はやっぱりスポドリだよ!!」

「ジジィ」

「おだまり!!」

 

 星桜と弥幸の会話をくすくすと笑いながら見ている逢花。その様子に気付き、星桜は慌ててペットボトルの蓋を閉める。

 

「えっと、はじめまして。私は──って、さっき私の名前言ってた?」

「うん。知ってるよ。それに、私と貴方ははじめましてじゃない」

 

 ニコニコ笑いながらそう言う逢花に、星桜はよく分からないというように、首を傾げながら彼女を見返した。




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)
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