夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
「そういえば、妖傀を出している本人には自覚ないの?」
「寝てるんだから当然だよ。オートで操り、人を襲ってるの。妖傀は簡単に言えば操り人形だからね」
弥幸がそう言葉をこぼし、星桜は「そっか」と周りを見回した。すると、何かに気づいたらしくその場に立ち止まり、再度首を回す。
「ここって……?」
「着いたよ。目的の家だ」
弥幸は二階建ての一軒家の前に立ち止まり、星桜に教える。
その一軒家の表札には【
「やっぱりそうなの……? 勘違いじゃなくて?」
「勘違いじゃないよ。考えないようにしていたみたいだけど、現実は変わらない。間違いは、ないよ」
「そうかもしれないけど……」
以前名前だけは聞いていたが、やはり認めたくなかったらしく、顔を青くして確認するように弥幸にそう問いかける。だが、期待していた返答ではなく、目を伏せ俯いてしまった。
そんな彼女の様子など気にせず、弥幸はなんの躊躇となくチャイムを鳴らそう手を伸ばす。
「ちょ、待ってよ!!!」
伸ばされた手を星桜は両手で掴み全力で止めた。
腕を掴まれてしまい、弥幸はチャイムを鳴らすことが出来ず、不機嫌そうな顔を浮かべる。
「離せ」
「めんどくさいのは分かるけど、ちょっとこっち!!!」
星桜は思いっきり弥幸を引っ張り、翔月の家から少し離れた。
「なんでいきなりチャイムを押そうとしたのさ。私の気持ちぐらい考えてくれてもいいと思うんだけど」
「考えてなんになる。チャイムを押すことには変わりないでしょ」
「気持ちの整理をさせてって言ってるの。私、翔月に何か変なことをしてしまったってことだから。でも、何も分からないのにただ謝るのも嫌だし。ちゃんと翔月のことを知って、どうして私を恨んでいるのか考えて、打開策をしっかりと思いついてから話し合いたっ──だから待ってってば!!!」
星桜の話を最後まで聞かず、弥幸はまた翔月の家に向かおうとした。だが、それを再度星桜が腕を掴み止める。
「つーか、今の君にはわかんないと思うけど? 月宮がなんで君を恨んでんのか」
「ど、どういうこと?」
「とりあえず、あとは本人に聞け。僕はただ、お前達に話し合いの場を設けてやるだけだ」
そう口にし星桜の手を払い、今度こそ弥幸は翔月の家へと向かってしまった。
「あ、待ってよ!!」
星桜は最初動けずにいたが、直ぐに追いかけ、弥幸の両肩に手を置き、後ろに隠れながらチャイムが鳴らされるのを待っていた。
「おい、暑い」
「で、でも……」
「これだから君は恨まれるんだと思うよ」
「え、何が?」
「血の海にならない事を祈ってる」
不穏の言葉と共にチャイムが鳴らされた。
インターホンからは翔月の声が聞こえ、弥幸は星桜に声を出すように顎で指示を出す。
「あ、えっと……星桜だよ。翔月、今時間あるかな」
『星桜? 暇してたからいいけど、いきなりどうしたんだ?』
「い、色々あって」
『よくわかんないけど。とりあえず玄関行くわ。待ってて』
「いきなりごめんね、ありがとう」
『あいよ』
翔月が返事してから数秒後、中からはトタトタと人が歩く音が聞こえ、それから直ぐに扉は開かれた。
「いきなりどうしたんだっ────誰?」
翔月は弥幸を見ると、眉間に皺を寄せ怪訝そうな顔を向けた。
「え、翔月。この人、同じクラスのあかっ──」
「はじめまして、僕はナナシ。貴方の悩みの種を取り除きに来ました」
弥幸は星桜を押しのけ、真面目な表情で翔月に自己紹介する。
「はっ? ナナシ? 何をふざけて──」
「ふざけていません。今の貴方は自身の想いを閉じ込め、そのせいで大事な人を傷つけていますよ。貴方は自身のせいで人を傷つけていると知りながら、このまま放置しますか?」
弥幸は少し早口で翔月に訴える。
その圧に負けるように少し後退り、翔月は「お、おう……」と曖昧な返事をした。
「詳しい話をしたいので場所を変えましょう。付いてきて頂けますか?」
弥幸は、今まで見た事がない笑みを浮かべて翔月にそう伝える。その表情を見て、星桜は何か言いたげに口をパクパクと動かし、驚いていた。
指をさし「誰なのこの人」と言うような目だった。
「……………怪しい所に連れていく訳では無いだろうな。勧誘とかならお断りだ」
「あんたを勧誘するわけねぇだろ」
弥幸は顔を逸らし、翔月に聞こえないように笑みを消しそう呟いた。星桜は「あ、やっぱり赤鬼君だ」と小さく呟く。
「何か言ったか?」
「いえ何も。勧誘とかでは無いので安心してください。では、準備が出来次第来ていただけると嬉しいです。ここでお待ちしておりますね」
再度笑みを浮かべそう告げる。
翔月も「わかった」と口にし、そのまま中へと戻って行った。
「…………貴方は赤鬼君ですか?」
「それ以外に誰がいる」
「得体の知れない誰かが一瞬居た気がして……」
「君は霊感少女なの? 今はそんなの流行らないと思うよ」
「違いますがね!!!」
そんな会話をしながら、中に入っていった翔月を、二人は今か今かと待っていた。
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