夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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狐面の男
「その狐の名前は」


 学校の教室内。壁掛け時計の時間は、十三時の少し前を指している。

 昼休みなため、一つの教室に沢山の人が集まり楽しく話しをしていた。

 

 そんな騒がしい教室内に、机に突っ伏して寝ている男子生徒が一人、窓側の一番後ろの席に座っていた。

 その男子生徒の名前は赤鬼弥幸(あかぎやこ)

 

 ワイシャツの上に黒いパーカーを羽織り、フードを深く被っている。

 窓が空いているため、フードから見え隠れしている銀髪が揺れていた。

 

 人と関わるのが嫌いらしく、普段からずっと一人で行動している。そのため、周りからも遠巻きにされており誰とも話さない。謎が多い人物だ。

 

 そして、ずっと机に突っ伏して寝ている弥幸を横目で見ている人物が一人。

 黒髪を肩まで伸ばし、目はぱっちり二重。

 肌白でスタイルも良い。だが、服を着てしまうと男の子と間違われてしまうため、それをコンプレックスとして抱えている女子生徒。名前は緋翠星桜(ひすいしおん)

 

 見た目も可愛く、人当たりの良い性格なため、男女共に人気の高い人物。

 そんな星桜(しおん)だが、今気になる人がおり、その人物を横目で見続けていた。

 

 その人物は謎多きクラスメート、赤鬼弥幸だ。

 

 星桜は教科書で顔半分を隠し、目線だけ弥幸に向け監視しているような目で見続けている。

 そんな中、一人の女子生徒が星桜に話しかけた。

 

「星桜どうしたの? 何を見てるの?」

「ん? んとね。今赤鬼君の観察してたの」

 

 星桜に声をかけた女子生徒は、武永凛(たけながりん)

 見た目からして活発そうな女子生徒だ。

 

 明るい茶色の髪を後ろでポニーテールにし、ワイシャツの袖をまくっている。スカートは膝より少し上まで上げていた。

 

 星桜(しおん)は至極真面目な顔で凛の質問に答えた。

 

 基本嘘をつくことが無い星桜(しおん)は、どんな質問も素直に答えてしまう。

 嘘をつく時でも、一生懸命人と目を合わせようするため、それが返って怪しく思われ直ぐにバレてしまうほど、嘘をつくのが苦手だ。

 

「あぁ、赤鬼君ねぇ……」

 

 凛は弥幸に目を向け、少し苦笑いを浮かべながら曖昧にそう呟く。その反応に、星桜(しおん)は不思議に感じたらしく目を丸くして凛を見上げる。

 

「どうしたの?」

「うーん。赤鬼君ってさ、あまり……というか、全く人と話さないでしょ? 話しかけてもすごく嫌な顔をするし……。だから、誰も話しかけようとしないんだよ」

「あぁ。確かに。一度日直の仕事で一緒になった時あったけど、話しかけても無視されたんだよね。沢山話しかけると嫌かなぁって思って、その後は何も話さなかったんだけど」

「あんたに対してもそうなんだ」

「まぁ……」

 

 曖昧に星桜は返答し、凛を見る。その時、凛は何かを思い出したかのように、笑みを浮かべ口を開いた。

 

「そういえば、最近噂になってる狐に少し似てない?」

「噂? あぁ、闇夜を駆け回る狐──だっけ?」

「そうそう。夜、外を出歩くと人間とは思えない化け物──()()に追いかけられる。その妖怪に捕まってしまうと手足を引きちぎられ殺される。でも、そこへ颯爽と現れる狐が妖怪を一瞬のうちに切り刻み、助けてくれる。その狐の名前は、闇夜の狐──夜狐。と、いう噂」

 

 怖い話をするように、ゆっくりと噂の話をする凛。それに対し、彼女は真剣に聞き、うんうんと頷いている。

 その際、特徴を確認するため、横目でもう一度弥幸に目を向ける。すると、そこにはもう誰もいなかった。

 

「あれ、いなくなってる……」

「あ、本当だ。どこ行ったのかな」

 

 教室内を見回す二人だが、見つけることが出来ない。すると、一人の男性が星桜(しおん)に話しかけた。

 

「星桜」

「あ、翔月(かける)!!」

 

 声をかけてきたのは月宮翔月(つきみやかける)

 髪の色は焦げ茶。ワイシャツは三つぐらいボタンを開け、中には黒いTシャツを着ていた。

 耳には複数のピアス穴が空いているが、学校にいる時はしっかりと取っている。

 

 翔月と星桜は幼馴染で、今でもよく一緒に話していた。

 

「星桜、次移動教室だぞ。急いだ方がいい。武永も」

「あ、そうだった。ありがとう翔月。凛、準備して行こ?」

「…………うん。あ、でも少しやることがあるから先行ってて」

 

 凛は翔月を無表情でじぃっと見たあと、すぐに口角を上げ星桜の方に顔を向ける。

 その様子を不思議に思った星桜だったが、何も言わずに「わかったよ」と言って、翔月と共に教室を後にした。

 

 その二人が教室から出たことを確認すると、凛は浮かべていた笑顔を消し、能面のような無表情でドアを見続けている。

 

「最初は、やっぱり星桜(しおん)に話しかけるんだ──」

 

 そう呟いた凛は、舌打ちをしたあとそのまま自身の机に戻り、次の授業の準備を始めた。




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)
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