夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「受け取った」

 弥幸は緩い声で星桜に言葉をかけた。それにより彼女は咄嗟に手を止め、彼の方に目を向けた。その顔は焦りと緊張で強ばっている。

 汗が額から流れ、息を切らしており相当力んでいたのだと分かる。

 

「君は僕より精神力が莫大なんだから、正直そんな数時間で成功するなんて思ってないよ」

「で、でも──」

「別に、君がいなくても今まで僕は戦ってきた。確かに君がいれば楽にはなるけど、今のように自身を追い込む必要はない」

 

 淡々と弥幸は伝える。それでも、星桜は成功させたいという気持ちを全面に出しすぎており、今は焦りしかない。

 

「私は必ず成功させて、貴方の役に──」

「だから、その考えが迷惑なんだよ」

「えっ……」

 

 星桜は弥幸の意外な言葉に顔を強ばらせた。翔月もその言葉には怒りが芽生えたらしく「そんな言い方はないだろ!!」と叫ぶ。

 

「別に。僕は思ったことを口にしただけ」

「それがお前のために頑張っている星桜にかける言葉かよ!!」

「このままじゃ成功しないし、仕方がないんじゃない?」

「そういう問題じゃないだろ!!」

「なら、どういう問題なのさ。僕は精神の核を持っているから期待してたのにさ、ガッカリだよ」

 

 弥幸の言葉に翔月は我慢が出来なくなったらしく、思わず拳を握り殴ろうとしてしまう。だが、それを星桜が止めた。

 

「待って翔月!! 私が悪いの。私が出来ないから。だから、赤鬼君は何も悪くない!!」

「いやこいつは悪い。そもそもこれは難しいんだろ? なら出来ないのも無理はないじゃねぇか。それなのに──」

「諦めないのはそっちの方じゃん。出来ないなら諦めるのもまた手だよって事」

 

 弥幸の言葉にまた翔月が突っかかる。星桜は弥幸の言葉を聞き俯き、拳を握る。

 

 殺伐とした空気が流れ、こんな状態で集中するのは不可能。

 逢花も呆れたように三人を見ていた。

 

「────赤鬼君。お願い、教えて」

「……」

「星桜……」

 

 星桜は俯きながら弥幸にそうお願いした。その声は震えているが、決意が込められている分かる。

 

「私、絶対に出来るようになりたいの。絶対に貴方の力になりたいの」

 

 弥幸の方に真っ直ぐ目を向け、彼女は真っ直ぐと宣言する。その目を弥幸は受け止め見返し、口を開いた。

 

「簡単にそう口にしない方がいい。今回出来たとしても、次の壁がある。今回より酷いものかもしれない。命が関わることなんだからね。それでも君は、僕の力になりたいの?」

 

 弥幸の言葉に、星桜は迷うことなく大きく頷き、再度お願いした。

 

「私は絶対に諦めない。途中で逃げ出さない。約束するよ。だからお願い!! 出来るコツか何かを教えて欲しいの!!」

 

 頭を下げ、星桜は精一杯お願いした。その姿を弥幸は赤く鋭い目で見ていたがその後、何を思ったのか優しげな笑みを浮かべる。

 

「んっ。君の覚悟は受け取った」

 

 そう口にすると、右手を伸ばし星桜の頭を優しく撫でる。

 それを星桜はポカンと見上げ、翔月は顔を青くし「ゲッ」と苦い顔を浮かべた。

 逢花は顔を赤くして「キャー」と一人で興奮している。

 

 そんな三人の様子など気にせず、弥幸は手を引っ込めて何も無かったかのように話を続けた。

 

「なら、これから僕が言うことをしっかり聞いて、想像して」

「────え、あ、はい」

 

 星桜は撫でられた頭を触りながら、曖昧な返事をしてしまった。そのため、弥幸からは疑いの目を向けられてしまったが、なんとか誤魔化すように、何度も頷いた。

 

 その間、逢花は呆れたような顔で「天然タラシ」とボソッと呟いていた。

 

「んじゃ、まずは集中して」

 

 星桜はそう言われ、目を閉じ集中したが気ばかり焦ってしまい上手くできない。すると、弥幸が立ち上がり星桜の隣に座り直す。そして、背中を一定のリズムでぽんぽんと優しく叩き始めた。

 

「えっと、赤鬼君?」

「まずは呼吸を一定にすること。焦らなくていい。焦ったところで意味なんてないよ。目を閉じ、呼吸に意識を集中させて」

 

 弥幸が優しくそう口にし、星桜も頷き再度目を閉じ呼吸を整える。すると、彼のぽんぽんと叩くリズムに合わせるように、徐々に集中力が増し呼吸も一定になる。

 

「頭の中で広い海を想像するの」

「海を、想像……」

「波が立っていない、静かな海が目の前には広がっている」

 

 まるで童話を聞かせているように、優しく語りかける。

 

「目の前には静かな海。澄んだ様な光景が広がっている」

 

 星桜は無言だったが、イメージはしっかりとできているらしく、薄く笑みを浮かべていた。

 

「その海に身を任せるんだ。大丈夫、波が立っていない海は、優しく君を包み込んでくれる」

 

 星桜はその言葉に反応するように、左手をゆっくりと火へと近づかせる。

 少しだけ火は揺らいでいたが、星桜の手が近づくにつれ揺れは収まり、今回は火に手を添えることが出来た。

 

 その時に逢花は、右手に持っていたストップウォッチのボタンを押し、スタートさせる。

 

 時間がどんどん進んでいき、一分が過ぎた。だが、星桜は余裕そうな笑みを浮かべ、火を消さないように添え続けている。

 

 少しも火が揺れない。

 星桜がしっかりと精神力をコントロール出来ている証拠だ。

 それからも星桜は集中を切らさず操り続け、当初五分と言っていたが、二十分も灯し続けることが出来た。




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)
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