夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
『あ、あぁぁぁ、ぁぁぁぁああああああああ!!!!』
なんとかもがき消そうとするも、弥幸の放つ炎は普通ではない。そのため、簡単に消すことは出来ない。
弥幸は追い打ちをするように拳銃を左手に持ちながら、刀を握っている右手を腰まで上げ、構える。そして、右足を前だし切り込んだ。
「斬る」
迅雷の如き速さで妖傀正面に向かう。刀を横にし、胴に刃を食い込ませ真っ二つに斬る。
胴体と下半身が離れ、力なく地面へと倒れ込む。切口から大量の黒いモヤが立ち上り、視界を悪くする。
「苦手って、普通に倒したじゃん……。浄化するんじゃ」
「ここから浄化するわ。女性型はそう簡単に倒すことは出来ないの。簡単に斬ることが出来る分、弱点が首しかないわ。男性型は体が硬い分、体を真っ二つにすれば倒すことが出来るけれど」
逢花の説明に、星桜は今までの戦闘を思い返していた。
「え、でも、硬いと言いながら赤鬼君は簡単に斬ったいたように見えるけど……」
「ナナシだからね。あのくらいは簡単よ」
「そ、そうなんだ……」
星桜は弥幸が妖傀を倒したことにより安心しきっていた。だが、普通に説明していた逢花は顎に手を当て、倒れている妖傀を不思議そうに見続けている。
「おかしい」
「え、何が?」
彼女がいきなり呟き、星桜はその言葉の真意がわからず聞き返す。それは翔月も同じだったようで、逢花の方に目を向けた。
「なぜ体を再生させようとしない。普通ならくっつけようとするはず。そして、くっついたところをナナシが動きを止め浄化する。これが今までの流れ。今の状態では浄化が出来ない」
額から一粒の汗を流し、彼女は口にする。それは弥幸も気付いているらしく、チラッとこちらに目を向けていた。
「ナナシも警戒しているみたい」
「その浄化ってなんだ?」
翔月はこの場に意識がある状態で居合わせるのは初めてなため、星桜達が話している内容がよく分かっていない。
星桜が簡単に説明すると、また首を傾げてしまった。
「どうして今は出来ないんだ?」
「浄化は精神力と体力がかなり持っていかれるのよ。それはナナシだけの話ではないの。その対象──つまり、妖傀も体力を消費する。今の瀕死状態で無理に浄化をしてしまえば、体が持たずに灰になってしまうわ。そうなれば、また明日同じことをしなければならない」
逢花の説明を耳にし、翔月と星桜は納得したらしく弥幸の方に目を向けた。
「なら、どうすればいいの?」
「分からない。今までこんな事は無かったから」
逢花は顎に手を当て、考え込んでしまう。すると、弥幸がゆっくりと妖傀に近づき始めた。
「おい、大丈夫なのかよ。あいつ近付いて行くぞ」
「何か考えがあるんじゃ……」
星桜達がそんな話をしていると、弥幸がいきなり足を止め下に目線を向けた。
「────っち!!!」
弥幸の足元から突如として鎖が複数、勢いよく現れる。いきなりのことに動くことが出来ず、彼の体に鎖が巻き付き捕まってしまった。
「ナナシ!!!」
「赤鬼君!!!」
捕まってしまった弥幸はなんとか鎖を解こうともがいたり、炎で燃やそうとするが全て意味がない。
鎖はどんどん体にくい込んでいく。
『おいれ、おいれ〜。わだじは、にんぎものになる。にんぎもの。だがら、おいでぇ〜』
「くっ、そ……」
地面にうつ伏せになりながらも、妖傀の両手には鎖が握られている。
口角を上げ、楽しげに鎖を引っ張り弥幸を引き寄せようとする。
両足で踏ん張り、弥幸も引き摺られながらも耐えていた。だが、地面がズズッ……ズズッ……と抉れてしまい、徐々に近づいてしまう。
「逢花ちゃん!! 私達は何も出来ないの!? なんとかしないと赤鬼君が──」
「何とかって、何をするつもりなのかしら」
「えっ、そ、それは……」
逢花は自分の兄が危険な状態になっているにも関わらず、冷静に状況を見続けている。
「おい、お前は何か出来ねぇのかよ。このままだったらお前の兄貴が死んじまうかもしれねぇだろ!!」
翔月も冷静さを失い、逢花の肩を掴み叫ぶようにそう言い放つ。だが、彼女は何も言わずに、首だけを弥幸の方に向け続けた。
弥幸はなんとか踏ん張っていたが、妖傀は体をくっつけ終わり立ち上がる。
引く力が強くるのと同時に、あと二本鎖を作り出した。
ケラケラと笑いながら、増えた二本を右手で投げ、弥幸の両足に巻き付ける。それにより、彼は歯を食いしばり、せっかく耐えていたがとうとう両足が地面から離れてしまった。
「「赤鬼/赤鬼君!!!!」」
二人がそう叫んだ時、弥幸は妖傀の目の前まで引かれ鎖を首に巻かれてしまう。
その鎖は徐々に力が増していき、身動きの取れない彼は苦痛の表情を浮かべるだけだった。
「がっ、ぐ……」
鎖を解こうにも両腕は、腰に固定されているため動けない。何も出来ない状態なため、このままでは首の骨が折れるか窒息死してしまう。
星桜と翔月はもう我慢できないというように弥幸に向かって走ろうとするが、結界がそれを邪魔する。
「おい! これをさっさと消せ!!」
「早く助けないと赤鬼君が死んじゃうよ!!!」
翔月は怒りで顔を赤くし、星桜は今にも泣き出しそうな表情で逢花にそう言い放つ。だが、彼女の冷静さは変わらず、それどころか笑みまで浮かべていた。
「お前、なんで笑ってんだよ!!」
「か、翔月待って!!」
翔月が怒りに身を任せ逢花の胸ぐらを掴み持ち上げる。
彼女の足がギリギリ地面についている状態。苦しいはずなのに、それでも彼女は口角を上げたまま弥幸から目を離さない。
「お前の兄貴が殺されそうなんだぞ!! 何笑ってやがんだふざけるな!!」
翔月の言葉に、逢花は口元に浮かべていた笑みを消し、やっと弥幸から目を離し彼の顔を見返す。
「貴方は、まだ知らない」
「は?」
逢花の突然の言葉に、翔月は理解が追いつかず変な声を出す。それは星桜も同じらしく、心配そうに逢花を見ていた。
「貴方はまだ知らない。ナナシの本当の強さを──」
「本当の強さってなんだよ……」
翔月が逢花の言葉を聞き返そうとした時、後ろの方が急に赤く光り出す。
「翔月!! あれを見て!!」
「な、なんだよ。あれ……」
翔月と星桜が後ろを向くと、なぜか弥幸は地面に足をつけしっかりと立っていた。
その目の前には、炎の竜巻がパチパチと鳴らしながら妖傀を囲い燃え上がらせていた。
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