夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
「初めまして」
今、四人は弥幸の部屋に集まっていた。
中心には丸テーブル、その上には火のついたロウソクが三本立てられている。
その周りを星桜、凛、翔月が険しい顔で囲うように座っている。そして、星桜の後ろには寝そべっている弥幸の姿があった。
緊張の面持ちで、凛がおそるおそる両手をロウソクへと近づける。
プルプルと震えており、額からは汗が滲み出ていた。
固唾を飲み、炎に手を添えた。次の瞬間、火が大きく揺らめきシュッと消えてしまった。
「だぁぁあ!!!! 出来ない!!!!」
炎が消えてしまったことにショックを受け、翔月と星桜は「まぁまぁ」となだめている。
「そう簡単に出来ないよ。私も二時間以上かかってやっとできたもん」
「確かにこれは難しいわ」
次に翔月が挑戦しようと両手を火に添えようとするが、やはり凛と同じく近付けると勢いよく消えてしまう。
「クソが!!!!」
「おおおお落ち着いて翔月!!」
「望月落ち着いて!!」
テーブルを叩く翔月をなだめる二人。
最後は気合十分の星桜が挑戦する。1度成功しているため、二人よりは期待ができる──のだが……。
「────あ」
「「あっ」」
なぜか星桜は、手を少し近づかせただけで消えてしまった。
「嘘っ?!」
その様子を二人は笑いを堪えながら見ている。
「ふふっ。え、えっと。つーか、これ本当に出来るわけ?」
「星桜は一度成功させてるから、できないことはないと思うけどな」
「うーん……。なんでだろう……」
星桜は肩を落として項垂れてしまった。
☆
翔月と凛は正式に弥幸の
彼も「最後までそばに居るなら分けてやらんことも無い」と上から目線で言っていた。
まず力を分ける前提として、彼は二人にロウソク修行をするように言った。そのため、星桜の怪我が完全に治るまで待ち、今日から本格的に修行を始めていた。
「赤鬼君、火おねがーい」
星桜が後ろで寝ている弥幸に声をかけたのだが、反応がない。
「赤鬼君??」
星桜が弥幸の方を振り向き、何度も名前を呼ぶが返ってくるのは寝息だけ。完全に眠ってしまっているらしい。
凛が痺れを切らし、その場に立ち上がる。
そして──
「起きろや赤鬼!!!!」
「ごふっ!!!!」
「あああああ赤鬼君!?!?」
凛が弥幸のお腹を思いっきり殴った。そのため、彼は飛び起きその場に蹲ってしまう。
「てめぇ……。僕にそんな事していいと思ってるのかよ」
恨めしそうな目を凛に向け、弥幸は震える声で文句を言っている。口調がいつもより荒い。
「貴方には感謝しているけれど、それとこれでは話が違うと思うの。お願いだから真面目に修行見てよ!! 素人が集まっても意味なんてあまりないんだからさ!」
三人が弥幸の家に集まってからもう三時間は経とうとしていた。ずっとロウソクとにらめっこしていた三人だが、一度も成功していない。星桜でさえも。
今回弥幸は、星桜から精神力を貰いながら行っている。そのため、倒れることは無かった。
「無理。こういうのは逢花の方が合っているよ」
「逢花って。誰?」
凛はいきなり知らない名前が出てきて困惑していた。
「そっか。凛は知らないんだったね。逢花ちゃはね──」
星桜が説明しようとした時、襖がいきなり開き元気な声が部屋いっぱいに響き渡った。
「私の事だよー!! 弥幸お兄ちゃんの実の妹、赤鬼逢花!! 初めましてだね、よろしくー!!」
逢花が元気いっぱいに挨拶し、そのままの流れで凛の目の前まで移動しナチュラルに握手をした。腕を上下にブンブンと振っている。それがあまりに自然な流れだったため、凛は何も反応出来ずされるがままだった。
「え、あ。え? ドチラサマ?」
「私が弥幸お兄ちゃんの妹、逢花だよ」
困惑している凛に、逢花が再度元気いっぱいに自己紹介をした。今回はしっかりと耳に入ったらしく、凛は瞬きしたあと「こんにちわ」と返す。
「んで、逢花はいきなりどうしたの? まだ着替えてないじゃん」
弥幸の言う通り、逢花は学校から帰ってきたばかり。セーラー服を身にまとい、鞄を廊下に投げ出していた。
「あ、そうそう。弥幸お兄ちゃんに手紙が──」
逢花がそう説明しようとした時、閉まっていなかった襖からもう一人、女性が顔を覗かせた。
「こんにちわ。楽しく話しているところごめんなさい。弥幸、貴方に大事な手紙が届いていたわよ。こ渡しておくわね」
女性は長い髪を後ろで結っており、そこに簪が刺さっていた。そして、服は藍色を主体としている着物で、蝶の柄が控えめ程度に入っている。まるで、夜闇の中に飛び交う蝶のような模様に、凛も星桜も見とれていた。
着物も綺麗だがそれだけではなく、その綺麗な着物を着こなしている女性も肌白で、赤い瞳が優しく光っているように見える。そして、口元にあるホクロがなんとも色っぽい。
そして、どことなく弥幸や逢花に似ている気がする。
三人が見惚れていると、女性はその視線に気づいた。
優しい笑みを浮かべ、三人に目線を向ける。
「初めまして。私は弥幸の母、
そう自己紹介している横で、弥幸は渡された手紙を開き見ていた。
三人はその自己紹介を聞いたあとしばらくは放心状態だったが、顔を見合せたあと我に戻り。
「「「母親ぁぁぁぁああああ?!?!!?!」」」
三人の叫び声が屋敷に外にまで響き渡った。
ここまで読んでいただきありがとうございます
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