夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
「ふふっ。そんなに驚かなくてもよろしいかと」
美禰子は星桜と凛の間に座り、笑みを浮かべながら会話に入っていた。
逢花は、星桜と翔月の間にちゃっかりと座っている。
「いや、だって……。見た目だけなら普通に20代……」
「あら、嬉しいわぁ。ありがとう」
口元に手を持っていき、控えめに笑う美禰子は本当に美しい。誰かの母親など考えられないほど若々しく見える。
「てっきりお姉さんかと……」
「残念だけれど、
優しい目で逢花を見て、後ろで手紙を確認している弥幸にも目を向けた。
逢花は手を振り、弥幸は気付いていないのかなんの反応も見せない。
「やさ、しい?」
凛の言葉に、三人は一斉に弥幸に目線を向けた。
さすがに三人の目線は無視できなかったらしく、彼は眉間に皺を寄せ不機嫌な声で「なに」と言ってくる。
その言葉に、三人は苦笑いを浮かべたり怒りを露にしたりと。反応はバラバラだが思っていることは同じだろう。
「優しくはないかと思いますが……」
凛が代表として口にし、その後に二人が「うんうん」と頷く。その様子を見て、美禰子は「あらあら〜」と楽しそうに笑っていた。
「ところで、三人兄弟なんですか?」
星桜が手を挙げ、美禰子に問いかける。
「えぇ。弥幸は次男なの。逢花が長女。赤鬼家には長男が居るのだけれど、今はどこで何をしているのか分からないわ」
目を伏せ、少し悲しげに彼女は静かにそう口にした。
その様子に、星桜達は顔を見合せ少し後悔したような表情を浮かべ俯いてしまう。
「あら、ごめんなさい。せっかく楽しい雰囲気でしたのに邪魔をしてしまいましたね」
「あ、いえそんなことは……」
「私はこれで失礼します。弥幸、しっかりと手紙の返事は送りなさいね」
美禰子は立ち上がり、今は手紙を横に置き寝そべっている弥幸に言った。
わかったのか分かってないのか。弥幸は左手をフリフリと振るだけで返答しない。その事に美禰子は少し呆れたような顔を浮かべるが、直ぐにいつもの優しい笑みに戻り「失礼しますね」と部屋を出ていってしまう。
残された三人と逢花、弥幸はそのまま誰も言葉を発することはしない。
沈黙の時間が続いたが、その沈黙を破ったのは逢花の質問の言葉だった。
「そういえば弥幸お兄ちゃん。どこからの手紙だったの?」
「
弥幸の言葉に、逢花は納得した表情を浮かべる。だが、ほかの三人は聞き覚えがないらしく首を傾げた。
「水泉というのは人の苗字だよ。ほら、私達は苗字が赤鬼でしょ。だから、他の退治屋も赤鬼家って呼ぶの。それで、今回は水泉さんという人から手紙が届いたってこと。水泉家はここから片道三時間半にある港。【水光の港】にあるの」
水光の港は、港なだけあって海に囲まれた場所だ。
人々も水を大事にしており、海を汚すもの達は絶対に許さない。
他にも、魚介類がものすごく美味しいらしく、観光に行く際には必ず魚介類は食べておくというのが鉄則になっている。
「それで弥幸お兄ちゃん。水泉家からなんて?」
「【いきなりお手紙申し訳ございません。赤鬼家の実力については風の噂で耳にしております。今まで複数の妖傀を退治してきたとの事。その実力を我々水泉家にお貸しいただけないでしょうか。報酬は、赤鬼家の方で話し合いで決めていただいて構いません。お返事、お待ちしております。 水泉
手紙をヒラヒラと無意味に振りながら、弥幸は四人にそう説明した。
「応援要請ってこと? でも、学校あるし……。片道三時間半なんて、あっちで何泊か泊まらないと無理なんじゃ」
「休めば問題ないよ。それに、来週は運がいいのか悪いのか。三連休がある。そこで向かえばいい」
凛が携帯でカレンダーを確認すると「あ、本当だ。ここ三連休になってる」と星桜達に画面に写っているカレンダーを見せた。
「なら、そうやって返事するの?」
「まぁ、報酬はこっちで考えていいって言ってるし。手伝いに行っても良いと思うよ」
弥幸は立ち上がり、そのまま部屋を出ていってしまった。
手紙の返事を書きに、違う部屋へと向かってしまう。
「メールとかにすれば早いのに」
凛がそう呟くと、逢花が軽く説明をする。
「メールでやり取りすると、もしかしたら他に漏れてしまう恐れがあるでしょ? でも、この手紙は退治家について知っている有力者が運んでいるから、周りに漏れることはないし安心なんだよね」
逢花が説明し、三人は納得。そして、弥幸が抜けてしまったことにより、火を付けることが出来ず、三人は素直に帰ることにした。
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