夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
次の日の屋上。星桜と凛、翔月と弥幸でいつも通りご飯を食べていた。
弥幸は今までお昼休みになると机に突っ伏しているか、姿を眩ませるかのどちらだった。だが、今では屋上に行けば会える。
それの理由を弥幸に問いかけると「君達はもう知っているから隠す必要ないでしょ。めんどくさいし。君達からこっちに来てくれるから楽」という言葉が返ってきた。
確かにと星桜は頷き、凛と翔月は哀れみの目を星桜に向けていた。
「星桜が洗脳されてる」
「だな。こちら側が良いように使われていると知らずに……」
「え、なんの話?」
凛と翔月は首を振り「なんでもない」と言いながら自身のお弁当やパンを頬張った。
「ところで赤鬼、昨日の手紙は結局どうすんの?」
「受けることにするよ。報酬もそれなりに貰えるみたいだし、こっちから向かわなければならないのがめんどくさいけどね。そこは報酬のために我慢する」
凛の問いかけに、少し不機嫌そうに弥幸は答えた。
「それはお前一人で行くのか?」
「こいつ以外は自由でいいよ。来たかったら来ればいいし。ただしお金は自己負担だから」
こいつというのは星桜の事だ。
星桜は今初めてそのことを聞いたため、飲み込もうとしていた卵焼きを喉に詰まらせてしまった。
翔月が背中を摩り、凛が飲み物を渡す。
「ゲホッ、ゴホッ。えっと、私は確定なの?」
「人間一度楽を知ると抜けられないものなんだよ。君がいると僕が色々楽だから頑張って」
「えっと、精神の核には興味なかったんじゃ……」
「自ら欲する程でもないってだけ。あれば使うよ。固定電話と同じ。今はスマホがあるからあまり必要ないけど、あれば使うでしょ。一緒一緒」
「絶対に違う……」
星桜は肩を落とし項垂れ、凛と翔月は再度哀れみの目を向けた。
「それで、君達はどうするの? 来るの? 来ないの?」
弥幸は哀れみの目を星桜に向けている二人に問いかけた。
その問いに二人はすぐに答えることが出来ず、少し考え込んでしまう。
「行きたいけど、私達はまだ力すら持ってないし──」
「なら来ないってことだね、わかった。なら、今回は二人って事で返事するよ。手紙は書いたけど、まだ出てないし変更可能」
弥幸は凛の言葉をさえぎり、勝手に話を進めてしまう。
「ちょっと、まだ行かないなんて言ってないんだけど」
「なら来るの?」
「いや、行ったところで力になれないし……」
「来ないってことじゃん。僕は来ない理由を聞いているわけじゃない。ただ、行くか行かないか、それだけ。それ以外の言葉は求めてないから話さなくていいよ」
そう言いながら弥幸は、片手に持っている飲むヨーグルトを飲み干す。
凛はその態度に苛立ち、飲んでいるヨーグルトを少し押し込んだ。そのため、弥幸は「ングッ!」と変な声を出して咳き込む。
「ゴホッゴホッ、殺す気?」
「別に。少し苦しめばいいかなって思ってさ。それに、少ししか押してないんだから大袈裟だと思うけど?」
凛は顔を逸らし言い放った。そして、最後に残したトマトを口の中に入れる。
「そんなんだから好きな人に振り向いて貰えないんだと思うよ」
「ングッ!!! ゴホッ、ちょっと黙れよクソキツネ!!!」
「今は狐じゃないよ。目はしっかりと見えてる? もしかして日光に弱いのかな。屋上にいて大丈夫?」
「余計なお世話だよ!!!」
凛と弥幸は口喧嘩をしているが、その二人を翔月は呆れ顔で見ている。
星桜はニコニコと楽しげに、二人の会話を眺めていた。
「なんでお前はそんなに笑ってるんだ?」
「え? だって、こんなに仲良くなっているんだよ? 私はすごく嬉しい!!」
星桜の天然発言に翔月は頭を抱え、口喧嘩していた二人は星桜を睨み声を荒らげた。
「「仲良くない!!!」」
「へっ!? ななななんで怒ってるの?!?!」
二人の怒声と星桜の困惑した声が、雲一つない青空の下で響き渡った。
☆
弥幸は屋敷に戻り、手紙の返事を書こうと自室へと入った。
弥幸の部屋は必要最低限の物しかなく、壁側に布団が畳まれており、その隣には小さな丸テーブル、座布団。
他にあるとすれば、よく旅館に置かれていそうな高価な壺やテレビがある程度。だが、そのテレビも使っていないのか少しだけホコリが溜まっていた。
弥幸は鞄を壁側に置き、座布団の上に座り姿勢を正す。
途中まで文字が書かれている便箋を準備して手紙の返答を書く。
あともう少しで終わりだったらしく、直ぐにボールペンを置き封筒へと入れる。
弥幸の部屋には小さな窓が付けられており、今日は天気が良いため顔を覗かせると綺麗な青空を見ることが出来た。
弥幸はその青空を見上げ、何かを考えるように佇む。すると、廊下の方で逢花が彼を呼んでいる声が聞こた。
窓から目を離し、返事をしたあと封筒を手にし部屋を出て行く。
テーブルの上に残されているのは、弥幸の子供時代に撮ったであろう家族写真だけだった。
そこには、母親と父親が隣同士で肩を並べ、その手にはまだ小さかった逢花と弥幸が抱き抱えられていた。
父親の足元では、明るい笑顔でブイサインをしている一人の少年。
黒髪に銀髪のメッシュ。髪型などが弥幸と同じで、父親の服を掴みながら満面な笑みを浮かべ映っていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです
出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)