夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
電車の中では弥幸がキャリーケースを隣に置き、座席に座っていた。星桜も合わせになっている座席の向かい側に座り、本を読んでいる。
今二人は、応援要請があった水光の港へと向かっていた。
☆
弥幸は返事の手紙を返した。
日時などは、二週間以内なら何時でも良いと手紙の最後に書かれている。それを確認したため、彼は三連休の時に合わせることにした。
星桜は親に友達と旅行に行ってくると伝えたのだが、やはり最初は許してくれなかった。それを弥幸に伝えるとそれが美禰子に伝わり、親同士で話し合い納得してくれたのだ。
☆
弥幸達の住む町、
しかし、さすがにもう二時間近くずっと読んでいたため疲れと飽きがではじめていた。
弥幸はずっと俯いたまま動いていない。肩を上下に動かし眠っていた。
「…………赤鬼君、暇になったんだけど」
星桜が周りの人に迷惑かけないように小さな声で彼に声をかけるが、聞こえていないらしくなんの反応も見せない。
彼女は溜息をつき、弥幸に目線を送り続ける。
今日の弥幸の服装は、いつも制服の時に着ている黒いパーカー。その中には白いTシャツに、ジーンズにハイカットシューズを履いていた。
フードは深く被り、黒のマスクをつけているため、顔が全く見えない。
星桜は興味本位で手を伸ばし、弥幸のフードを少しだけ上げた。すると、サラサラな銀髪がフードの隙間から覗かせる。
目は閉じてしまっているため真紅色の綺麗な瞳を見ることが出来ないのは少し残念だ。
「やっぱり、見た目は良いのよね。なんだかもったいない……」
星桜がフードから手を離そうとした時、不意に弥幸が目を開け真紅の瞳を彼女に向けた。
そのことに驚き、大きな声を上げないように星桜は掴んでいたフードを思いっきり下に引っ張り驚きを誤魔化した。
「いって!!」
弥幸のマスクとフードによりぐぐもった声など気にせず、飛び跳ねている心臓を落ち着かせようと背を向け息を整える。
「い、いきなり目を開けないでよ。驚くじゃん!!」
顔を赤くして弥幸に文句を言う星桜だったが、今回弥幸は悪くない。
フードを少し上げ、眉間に皺を寄せ弥幸は星桜を睨む。
「君は一体何がしたかったの」
その声には怒りが含まれており、星桜は冷や汗を流しながら言い訳をタラタラと伝え始めた。
「ひ、暇だったから……。赤鬼君は本当に寝ているのかなぁ〜っと、気になったというか……なんと、言いますか……」
「つまり君は、時間を持て余し僕に構えという訴えをしようとしたが、生憎僕は眠っていたためフードを少しあげ確認したと。君は人がいないと生きていけないめんどくさい奴なのか?」
「人は皆、一人じゃ生きていけないもん……」
「今は一人でも問題なさそうだけどね。僕の眠りを妨げたんだから、それ相応のことはしてもらうよ。まぁ、君がフードを上げる前から起きてはいたけれどね」
「起きてたんだったら別にいいじゃない!! というか、私が声をかけたのも知ってたの?」
「あえて無視した。面倒くさそうだったからね」
「酷い……。私、めんどくさくないもん」
「君が僕を付け回していた日の事を絶対に忘れないから」
「その説は誠に申し訳ありませんでした」
「許してやらなくもない」
そんな適当な会話をしていても、電車は徐々に目的にまで移動して行く。
予定の時刻まで残り三十分となっていた。
「…………しりとり」
「リアス式海岸」
「めっちゃ終わらせに来たじゃん。リモコンとかリボンとかは想像してたけど、まさかのリアス式海岸」
星桜は残り三十分をしりとりで潰そうとしたらしいが、弥幸が乗る訳もなく最初で終わらされてしまった。
「せめてリンゴまではやってほしい……」
星桜がそう言うと、弥幸が「しりとり」と静かに口にした。そのことに喜び、顔を上げ「リンゴ!!」と意気揚々と返す。
「ゴリラ」
「定番だね。ラッパ!」
「それこそ定番じゃん。なら、パイナップル」
「る? るるるる……ルンバ!!」
「…………バルク」
「くくくくく………
「……………わざと?」
「え、何が?」
その後、弥幸が無理やりしりとりを終わらせてしまった。そのため、星桜はまたしても暇になってしまう。だが、あと二十分くらいで着くため、残りの時間は窓の外を眺めて待っていることにした。
窓の外に目を向けると青く輝く海が見え、星桜は口元に笑みを浮かべ目を輝かせながら窓に食いついている。
「赤鬼君赤鬼君。外見てる? 海がすごく綺麗だよ」
海から目を離さずに、弥幸に声をかけるが返答がない。
星桜は頬を膨らませながら横に顔を向けた。
「もぅ、だから赤鬼君てばっ──」
先程まで座っていたはずの弥幸の姿がなかった。どこに行ったのかと周りを見ると、まだあと十分近くはあるはずなのだが弥幸はもうドア付近に立って、ドアが開くのを待っていた。
その姿を星桜は苦笑いを浮かべながら見ている。
「赤鬼君って、難しい性格してるね……」
ボソッとそう呟いた星桜は、溜息をついたあと自身の荷物を持ち弥幸の隣へと移動した。
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