夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
星桜は次の日も、また次の日も。
諦めずに何度も何度も弥幸を見失わないように後を付いていく。その行動は、一歩間違えればストーカーと思われてしまう。
そのため、近くで見ている翔月は、毎度溜息をつき頭を抱えていた。
ストーカーもどきをされている弥幸は、毎度星桜の隙を突き、姿を眩ませていた。
その度、星桜は肩を落とし落ち込んでしまう。
そんな彼女の姿を
「そんなに好きなら、あいつといればいいだろ」
憎しみの声が口から漏れ、彼はハッとなり被りを振る。だが、その声は星桜に届いてしまったらしく、驚きで目を開き彼を見ていた。
その目線に気づき、慌てて誤魔化そうと口を開く。
「い、いや。なんでもない」
「え、でも。今……」
「そんなことより、次の授業が始まるぞ。先行っているからな」
誤魔化すように翔月は口にし、足早にその場を後にする。
そんな彼の後ろ姿を、彼女は悲しげに瞳を揺らし見続けることしか出来なかった。
☆
星桜と別れ、翔月が廊下を歩いていると偶然弥幸と見合わせた。
彼はフードを深く被り、黒いマスクで口元を隠している。それだけでも話しかけにくいのだが、纏っている雰囲気が異質で、翔月は一瞬息を飲む。
気を取り直し、何事も無かったかのように、彼は弥幸の隣を険しい顔で通り抜けようと進む。その時、彼が翔月の右手を掴み止めた。
その事に驚き、彼は振り向き目を開き目の前にいる弥幸を見下ろす。
「な、んだよ……」
「想いを外に出せ。取り返しがつかなくなるぞ」
翔月の質問に被せるように、弥幸が淡々とした口調で伝える。その声に張りはなく、気だるげで。だが、心がしっかりと通っているようにも感じ取ることができ、翔月はすぐ反応できなかった。
弥幸はそんな反応などお構い無しに掴んでいた手を離し、彼とは逆側へと歩き去ってしまった。
「なんだ、今の。まさか、赤鬼の声?」
星桜は、弥幸の声を聞いた人はいないと口にしていた。それは翔月も知っていたため、今初めて彼の声を耳にし、驚きを隠しきれずその場にしゃがみ、膝に顔を埋める。
「つーか。なんなんだよいきなり」
話しかけられたことにも驚きだが、それより言われた言葉の方がずっと気になる物だった。
『想いを外に出せ。取り返しのつかないことになるぞ』
その言葉が意味する答えとは何か。なぜ、翔月にそう言ったのか。
膝を抱えながら考えるが答えは見えてこず、最後まで分からなかった。
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